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【医師監修】糖尿病とがんの意外な関係性について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病とがんの関係性」について解説していきます。後半部分では「糖尿病患者さんが注意すべきがんの症状」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病とがんの意外な関係性
なぜ糖尿病患者さんはがんになりやすいのか?
糖尿病患者さんが注意すべきがんの症状
がん予防のための糖尿病管理
糖尿病患者さんのがん治療
がんと診断された糖尿病患者さんの生活管理
糖尿病とがんは早期発見と治療が重要です
糖尿病とがんの意外な関係性
糖尿病とがんは、一見すると全く別の病気のように思えます。しかし実際には、両者に密接な関係があることが近年の研究で明らかになっています。日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で設立した委員会の報告では、糖尿病患者さんは非糖尿病者と比較して、がんになるリスクが約1.2倍高いことが示されています。また、日本での研究結果によれば、糖尿病は男性において、胃がんのリスクを1.23倍、大腸がんを1.36倍、肝臓がんを2.24倍、膵臓がんを1.85倍、腎臓がんを1.92倍上昇させることが分かっています。そして女性においても、胃がんのリスクが1.61倍、肝臓がんが1.94倍上昇するという結果が得られています。さらに、国内外の多くの研究をまとめた解析では、これらのがん以外にも、乳がんが1.20倍、子宮体がんが2.10倍、膀胱がんが1.24倍のリスク上昇と関連があることが報告されています。なお、糖尿病患者さんが「がん」になった場合、非糖尿病者と比較して、生存に関する予後が悪いことも示されています。したがって、糖尿病は生命に関わる深刻な疾患であるといえます。糖尿病の適切な管理が、がんリスクの低減にも寄与する可能性があることから、両疾患を統合的に捉えたアプローチが今後の医療において重要です。
なぜ糖尿病患者さんはがんになりやすいのか?
糖尿病の既往があると、がんにかかりやすくなる理由は、現在でも完全には解明されていません。また、がんの種類によっても、その理由は様々であると考えられています。しかし、主要な要因の一つとして注目されているのは、糖尿病に伴う体内の変化です。具体的には、膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足すると、それを補うために高インスリン血症やIGF-I(インスリン様成長因子1)の増加が生じます。これらの変化が、肝臓や膵臓などの臓器における腫瘍細胞の増殖を刺激し、がん化に関与すると考えられています。さらに、肥満や運動不足も高インスリン血症を引き起こし、これらの要因と関連が深いがんでは、同様のメカニズムが働く可能性があります。次に、糖尿病患者さんに特徴的な高血糖状態は、体内の酸化ストレスを増加させます。これにより、細胞のDNAが損傷され、遺伝子変異が引き起こされる可能性があります。この遺伝子変異の蓄積が、がん発症のリスクを高める一因となっています。また、慢性炎症も糖尿病患者さんのがんリスク上昇に関与していると考えられています。さらに、肝炎ウイルスやピロリ菌感染がインスリン分泌に影響を与え、慢性肝炎や肝硬変が糖尿病状態を引き起こし、肝がんのリスクを上昇させる可能性も指摘されています。これらの複雑な要因が相互に作用し合うことで、糖尿病患者さんのがんリスクが上昇していると考えられますが、その詳細なメカニズムについては、さらなる研究が必要です。糖尿病とがんの関連性の解明は、両疾患の予防と治療戦略の改善に大きく貢献する可能性があるため、今後の研究の進展が期待されています。
糖尿病患者さんが注意すべきがんの症状
がんの早期発見は治療の成功率を高めるため、次のような症状に気をつけることが重要です。まず、急激な体重減少は糖尿病患者さんにとって重要な警告サインとなります。通常、糖尿病の治療により体重は安定するか、緩やかに減少していく傾向がありますが、意図せず短期間で著しい体重減少が見られる場合は、がんの可能性を考慮する必要があります。特に、食事療法や運動療法に変更がないにもかかわらず急激な体重減少が起こる場合は要注意です。次に、説明のつかない血糖コントロールの悪化も重要なサインです。これまで安定していた血糖値が突然乱れ始めたり、インスリンや経口薬の効果が急に弱まったりする場合、がんの存在が疑われることがあります(がんによるストレスや代謝の変化が血糖値に影響を与えるためです)。さらに、がん特有の症状にも注意が必要です。例えば、持続する咳や痰、血痰(肺がん)、便通の変化や血便(大腸がん)、黄疸や右上腹部の痛み(膵臓がん、胆道がん)、排尿時の痛みや血尿(膀胱がん、前立腺がん)などが挙げられます。また、原因不明の発熱、倦怠感、食欲不振が続く場合も要警戒です。これらの症状は必ずしもがんを意味するわけではありませんが、糖尿病患者さんは通常よりも注意深く自分の体調変化を観察し、気になる症状があれば速やかに医療機関を受診することが大切です。
がん予防のための糖尿病管理
糖尿病患者さんにおけるがん予防は、適切な糖尿病管理と健康的な生活習慣の維持が鍵となります。以下に、どのような取り組みが効果的かについて解説していきます。
<生活習慣の改善(食事、運動、禁煙)>
糖尿病とがんの予防には、生活習慣の改善が非常に重要です。まず食事面では、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。特に、野菜や果物、全粒穀物など食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取し、加工肉や精製糖の摂取を控えることが推奨されます。これにより血糖値が安定し、がんリスクの低減にもつながります。次に運動面では、適度な有酸素運動を定期的に行うことが推奨されます。週に150分程度の中強度の運動、または75分の高強度の運動を目標にしてください。運動は血糖コントロールを改善し、体重管理に役立つだけでなく、肥満関連のがんリスクを低減させる効果があります。なお、喫煙は糖尿病の合併症リスクを高めるだけでなく、多くのがんの主要な危険因子でもあります。禁煙することで、両疾患のリスクを大幅に減らすことができるため、早期の禁煙を強く推奨します。
<適切な血糖コントロールの重要性>
血糖値を適切に管理するためには、医師の指示に従った薬物療法や自己血糖測定を定期的に実施することが不可欠です。目標として、HbA1c値を7%未満に保つよう心がけ、必要に応じて治療法の調整を行ってください。インスリン抵抗性の改善は、特に肥満関連のがんリスク低減に効果的です。なお、適切な血糖コントロールは、糖尿病の合併症予防だけでなく、がん予防の面でも重要な役割を果たします。慢性的な高血糖状態は、体内で炎症を引き起こし、細胞の異常増殖を促進することで、がん発生のリスクを高めるため、十分な注意が必要です。
<定期的ながん検診の必要性>
糖尿病患者さんは、一般的にがんリスクが高いとされているため、定期的ながん検診が非常に重要です。特に膵臓がん、大腸がん、肝臓がん、乳がんなどは糖尿病との関連性が指摘されています。そのため、年齢や性別、家族歴などのリスク要因に応じた検診を定期的に受けることが推奨されます。例えば、50歳以上の方は大腸がん検診を、喫煙歴のある方は肺がん検診も考慮すべきです。
定期的ながん検診は、早期発見・早期治療の可能性を高め、がんの予後を大きく改善します。したがって、糖尿病の定期検診に加えて、がん検診も計画的に受けることが推奨されます。がんに対する不安や疑問がある場合は、担当医と相談して検診計画を立ててください。
糖尿病患者さんのがん治療
がん治療には、手術療法、薬物療法、放射線療法などがあり、糖尿病がある方の場合は、がん治療と同時に血糖コントロールを行うことが重要です。以下に、糖尿病のある方が各治療を受ける際に気をつけるべき点を説明します。
手術療法
手術を行う際、血糖値が高すぎると手術後の傷が治りにくく、細菌感染しやすくなります。そのため、事前に血糖値を整える治療が必要です。具体的には、インスリン治療を新たに開始したり、既存の治療を調整したりすることがあります。さらに、手術前の血糖コントロール目標としては、尿ケトン体陰性、空腹時血糖値110~140mg/dL、または食後血糖値160~200mg/dL程度が推奨されます。また、手術中には、点滴による糖分補給とインスリン投与で血糖管理を行います。しかし手術後、特に消化管、膵臓、肝臓の手術では、食事摂取量や臓器機能の変化により血糖コントロールが難しくなることがあります。したがって、食事内容や回数、薬の種類や量を適切に調整する必要があります。
<手術で入院するとき>
手術中に食事がとれない期間には、糖分を多く含む点滴が行われることがあります。これは、点滴からの糖分が口から摂取する場合と比べて血糖値が上がりやすいことが知られているためです。そのため、血糖値をコントロールするために、インスリンを皮下または静脈内に投与することがあります。
<自宅の療養で気をつけること>
手術後に糖尿病の専門的な調整が必要になるのは、特に消化管、膵臓、肝臓の手術の場合です。まず、消化管の手術では、一度に食べられる量が少なくなるため、食事に加えて間食で栄養を補うことが重要です。また、膵臓を切除した場合には、その機能を補うために、これまで注射薬を使用していなかった方でもインスリン治療が必要になることがあります。さらに、肝臓を切除すると、食後の肝臓への糖の取り込みが減少し、その結果、食後血糖が高くなることがあります。このように、食事回数や食事内容によって血糖値のコントロールが変化することが予測されますので、糖尿病の薬を使用している方は、主治医にインスリンや飲み薬の量や飲み方について確認しておいてください。加えて、体調によっては食事が普段どおりに摂れない場合もあるかもしれません。このような状況でいつもと同じインスリンの量を注射したり、飲み薬を飲んだりすると、低血糖になるリスクがあるため、その場合の対応についても主治医に確認しておくことが大切です。
薬物療法
抗がん剤治療では、吐き気・嘔吐、発熱、口内炎、味覚変化、便秘、下痢などの副作用が出ることがあります。これらの症状によって食事摂取が困難になると、通常の糖尿病薬の服用で低血糖のリスクが高まります。一方で、症状を和らげるために摂取する食品が糖質の多いものであれば、血糖値が上昇することもあるため、注意が必要です。また、治療の一環としてステロイドを使用する場合があります。ステロイドは血糖値を上昇させる作用があるため、一時的にインスリン治療が必要になったり、既存のインスリン量を増やしたりする必要が生じることがあります。したがって、症状や血糖値の変動に応じて糖尿病治療薬の調整が必要となるため、がん治療と糖尿病治療の両方の主治医と相談しながら進めていくことが重要です。
放射線療法
放射線治療では、全身的な副作用として倦怠感や食欲不振が現れることがあります。また、放射線の照射部位に応じて皮膚炎、口内炎、腸炎などの局所的な副作用が生じる可能性もあります。これらの副作用により食事摂取が困難になると、通常の糖尿病薬の使用で低血糖のリスクが高まります。さらに、高血糖状態で皮膚のトラブルがあると感染のリスクが高まるため、適切な血糖コントロールが重要です。なお、食事摂取量の変化や皮膚のトラブルなど、体調の変化があった場合には速やかに主治医や看護師に相談し、必要に応じて糖尿病治療薬の調整を行うことが大切です。
いずれの治療法においても、糖尿病とがんの両方の専門家と連携しながら、症状や血糖値の変動に応じて適切に治療を調整していくことが、合併症のリスクを低減し、より良い治療成果につながります。
がんと診断された糖尿病患者さんの生活管理
がんと診断された糖尿病患者さんにとって、適切な生活管理は治療効果を高め、生活の質を維持する上で非常に重要です。健康的な食事、適度な運動、適正体重の維持、禁煙、節酒といった基本的な生活習慣の改善は、がんの予防だけでなく、治療中の患者さんの全身状態の改善にも大きく寄与します。そのため、普段から基本的な生活習慣の改善を意識することが大切です。なお、食事療法については、がん治療の影響で食欲不振や嚥下困難などの症状が現れることがあるため、個々の状況に応じた調整が必要です。栄養バランスを保ちつつ、血糖値の急激な上昇を避けるために、複数回の少量摂取や食物繊維を多く含む食品の摂取を心がけてください。また、運動療法に関しては、がんの種類や進行度、治療内容によって適切な運動量や種類が異なるため、過度な運動は避けるべきです。まずは体調に合わせて軽い散歩やストレッチから始めてください。さらに、メンタルヘルスケアも非常に重要です。がんと糖尿病の両方の診断を受けることで、患者さんは大きな不安やストレスを感じる可能性があるため、家族や友人との対話を大切にし、必要に応じて心理カウンセリングを受けることも検討してください。また、同じ境遇の患者さん同士のサポートグループへの参加も、精神的な支えとなることがありますので、ぜひご検討ください。なお、がんと診断された糖尿病患者さんは、定期的な血糖測定と主治医への報告を忘れずに行い、がん治療と糖尿病管理のバランスを取ることが重要です。個々の状況に応じた適切な生活管理を行うことで、より良い治療成果と生活の質の向上を目指してください。
糖尿病とがんは早期発見と治療が重要です
糖尿病とがんは体全体に影響を与える疾患であるため、総合的な健康管理が必要です。栄養バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、ライフスタイル全般を見直すことで、両疾患の進行を抑え、健康を維持することができます。特に糖尿病の場合、血糖値の管理が直接的に体の他の部分にも影響を与えるため、継続的なモニタリングが重要です。また、糖尿病患者さんはがんの発症リスクが高まるとされており、特に肝臓や膵臓などの臓器でのリスクが指摘されています。このため、これらの疾患を適切に管理するためには、定期的な健康チェックが欠かせません。血糖値の管理だけでなく、がん検診も同時に行うことで、早期に異常を発見できる可能性が高まりますので、定期的に医療機関を受診してください。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2025.02.04
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