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糖尿病患者が心房細動になりやすい理由と注意点
2025.02.05
この記事では「糖尿病患者が心房細動になりやすい理由」について解説していきます。後半部分では「心房細動による合併症リスク」や「心房細動の治療法」をご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
はじめに
糖尿病患者の心房細動リスク
糖尿病と心房細動の関連メカニズム
心房細動による合併症リスク
糖尿病患者の心房細動予防
糖尿病と心房細動の治療
まとめ:糖尿病専門医からのアドバイス
はじめに
糖尿病患者は、心房細動を発症するリスクが高いことが医学研究で明らかになっています。なぜなら慢性的な高血糖は、心臓の電気的活動に影響を与え、不整脈のリスクを増加させるからです。特に、インスリン抵抗性や慢性炎症は、心房細動の発症メカニズムに関与しています。したがって、糖尿病と心房細動は深い関連性を持っていると考えられています。なお、心房細動は、糖尿病患者の心血管系合併症として重大であり、脳卒中や心不全などのさらなる健康リスクを引き起こす可能性があります。そのため、適切な血糖管理と定期的な心機能チェックをして、合併症のリスクを軽減することが重要です。
糖尿病患者の心房細動リスク
2型糖尿病で血糖コントロール不良の状態が続くと、インスリン抵抗性や耐糖能異常が進行し、慢性的な炎症や酸化ストレスを引き起こします。これらの変化は、心臓の電気的活動に影響を与え、心房細動の発症リスクを高めます。さらに、糖尿病は心筋梗塞や心不全の危険因子であるため、心房細動との合併によってその危険性はさらに増大します。そのため、糖尿病患者は、糖尿病でない人と比較して「心房細動を合併するリスク」が高いことが知られています。なお、高血圧や肥満、慢性腎臓病などは、心房細動のリスクをさらに増大させる要因となります。したがって、適切な血糖管理と生活習慣の改善、定期的な心機能検査が極めて重要となります。
心房細動の症状と早期発見
心房細動は、症状の理解と適切な対応により、深刻な合併症のリスクを軽減することができます。以下に、心房細動の症状と早期発見のポイントをご紹介します。
【心房細動は不整脈の一種|ポイント1】心房細動の代表的な症状
心房細動の典型的な症状には、動悸、息切れ、胸部の不快感、めまい、疲労感などがあります。その他にも脈が不規則でリズミカルでない、あるいは心拍数が通常より速いあるいは遅いと感じることもあります。また、運動時に症状が顕著になり、日常生活に支障をきたすことがあります。これらの症状は、個人によって異なり、程度も様々です。
【心房細動は不整脈の一種|ポイント2】無症状の心房細動
驚くべきことに、多くの心房細動患者は無症状です。特に高齢者や糖尿病患者、高血圧患者では、自覚症状がないまま進行することがあります。なお、無症状の心房細動は、脳卒中などの重大な合併症のリスクを高めるため注意が必要です。定期的な健康診断や心電図検査が、こうした隠れた不整脈を発見する鍵となります。
【心房細動は不整脈の一種|ポイント3】早期発見のための自己チェック方法
自宅での簡単な脈拍チェックが、心房細動の早期発見に有効です。具体的には、手首や首の動脈で脈拍を測り、リズムの不規則さに注意してください。また、年齢や基礎疾患に応じて、医師と相談し、定期的な心電図検査や心臓超音波検査を受けることが推奨されます。なお、スマートウォッチなどの健康モニタリングデバイスも参考になりますが、あくまで補助的なツールであり、医療機関での正確な検査に代わるものではありませんので、ご注意ください。
心房細動は、早期発見と適切な管理が重要な不整脈です。自身の心臓の健康に関心を持ち、積極的に検査を受けることが、健康的な生活を維持する上で最も重要な対策となります。
糖尿病と心房細動の関連メカニズム
高血糖状態が長期間続くと、心臓の構造と機能に深刻な影響を及ぼします。また、慢性的な高血糖は、血管内皮細胞を傷つけ、酸化ストレスや炎症反応を引き起こし、心臓組織の線維化を促進します。この過程で、心房の電気的伝導系に異常が生じ、不整脈のリスクが高まります。さらに、糖尿病性神経障害も心房細動の発症に大きく関与しています。自律神経系の障害により、心臓の電気的活動の調節機能が低下し、不規則な心拍リズムを生み出す可能性があります。加えて、インスリン抵抗性や慢性的な炎症反応は、心房細動の発症メカニズムに深く関わっています。これらの複合的な要因により、糖尿病患者は心房細動を発症する確率が非常に高くなります。そのため、糖尿病患者は心血管系のリスクに常に注意を払う必要があります。
心房細動による合併症リスク
心房細動は、不整脈の一種であり、様々な深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。ここでは、心房細動に伴う合併症について解説します。
【心房細動は不整脈の一種|合併症1】脳梗塞
不規則な心臓の拍動により、血液凝固と血栓形成のリスクが増大し、脳の血管を塞ぐ可能性が高くなります。そのため、心房細動は脳梗塞発症リスクを4〜5倍に高めます。特に高齢者や糖尿病患者では、このリスクがさらに顕著になります。
【心房細動は不整脈の一種|合併症2】心不全
心房細動は心臓のポンプ機能を低下させ、心不全のリスクを高めます。また、不規則な心拍により、心臓は効率的に血液を送り出せなくなり、徐々に心筋の機能が低下します。そして長期的には、心臓の構造的変化や心筋のリモデリングを引き起こし、さらなる心機能障害につながる可能性があります。
【心房細動は不整脈の一種|合併症3】認知症
脳への血流障害や微小な血栓による脳の慢性的な酸素不足が、認知機能の低下を加速させます。そのため、心房細動は、認知症発症のリスクを約2倍に引き上げることが研究で示されています。なお、脳の微小血管障害や慢性的な炎症反応も、認知症発症に関与していると考えられています。
【心房細動は不整脈の一種|合併症4】腎機能障害
心房細動は腎臓への血流にも影響を与え、長期的に腎機能障害のリスクを高めます。また、不規則な心拍によって腎臓への血液供給が不安定になり、徐々に腎機能が低下する可能性があります。
心房細動は単なる不整脈ではなく、多臓器に重大な影響を及ぼす深刻な疾患です。早期発見、適切な治療、生活習慣の改善が、これらの合併症リスクを軽減する鍵となります。
糖尿病患者の心房細動予防
糖尿病患者における心房細動の予防は、包括的かつ慎重なアプローチが求められます。まず、血糖コントロールが最も重要な予防戦略となります。具体的には、HbA1cを適正範囲に維持することで、血管内皮機能の改善と炎症反応の抑制が可能となり、心房細動のリスクを軽減できます。また、食生活の改善も重要な予防策です。野菜、魚、全粒穀物を中心とした食事は、心血管系の健康維持に有効です。さらに、定期的な運動も心房細動予防に不可欠です。中強度の有酸素運動を週に150分程度行うことで、インスリン感受性が改善し、心臓の電気生理学的機能を安定させることができます。なお、定期的な健康診断が最も効果的な予防法です。心電図検査、血液検査を通じて、心房細動のリスク因子を早期に発見し、適切な対策を講じることが重要です。そして、糖尿病専門医と循環器専門医の連携による包括的な管理が、心房細動予防の鍵となります。
糖尿病と心房細動の治療
心房細動の治療は、患者の状態に応じた包括的なアプローチが求められます。ここでは、心房細動の治療戦略と選択肢について解説します。
【心房細動は不整脈の一種|治療法1】心房細動の治療概要
心房細動の治療は、症状の程度、患者の年齢、合併症、全身状態によって大きく異なります。現在の標準的なアプローチとしては、リズムコントロールと心拍数コントロールの2つの戦略を中心に展開されます。具体的には、若年層や症状が強い患者には根治的治療であるカテーテルアブレーションが推奨され、高齢者や合併症のある患者には薬物療法による管理が適切な場合が多いです。なお、治療の最終目標は、症状の改善、生活の質の向上、そして脳卒中などの重大な合併症のリスク低減にあります。
【心房細動は不整脈の一種|治療法2】薬物治療
薬物治療では、抗凝固薬による血栓予防が最も重要です。特に糖尿病患者は血栓形成リスクが高いため、ワーファリンやリバーロキサバンなどの新規経口抗凝固薬(DOAC)が処方されます。また、不整脈治療薬としては、アミオダロンやベプリジルなどが使用され、心拍数をコントロールするためにβ遮断薬やカルシウム拮抗薬も併用されます。なお、糖尿病治療薬との相互作用に注意しながら、個々の患者に最適な薬剤の組み合わせを慎重に選択していきます。
【心房細動は不整脈の一種|治療法3】アブレーション治療
近年、治療法として最も注目されているのがカテーテルアブレーション治療です。カテーテルアブレーション治療では、心臓の電気的異常を引き起こす部位を特定し、高周波や冷凍凝固によって選択的に焼灼または凍結します。特に発作性心房細動の患者に対して高い根治率を示し、薬物療法と比較して長期的な予後改善が期待できます。なお、近年はロボット支援手術や3Dマッピングシステムの導入により、治療の精度と安全性が大幅に向上しています。
【心房細動は不整脈の一種|治療法4】左心耳閉鎖術
抗凝固薬の服用が困難な患者や、脳卒中のリスクが非常に高い患者に対しては、左心耳閉鎖術が選択肢となります。左心耳は血栓形成の主要な部位であり、カテーテルを用いて閉鎖することで脳卒中リスクを低減できます。なお、近年、経カテーテル的左心耳閉鎖デバイスの技術は急速に進歩し、低侵襲かつ効果的な治療法として注目されています。
心房細動の治療は、患者の個別の状況に応じて最適化される必要があります。薬物療法、アブレーション、左心耳閉鎖術などの治療選択肢を、患者の年齢、全身状態、合併症、生活スタイルを総合的に考慮して決定することが重要です。
まとめ:糖尿病専門医からのアドバイス
糖尿病患者は、心房細動を発症するリスクが健常者と比較して約1.5倍高くなることが医学的に明らかになっています。そのため、両疾患の包括的な管理が極めて重要です。具体的には定期的な心電図検査、血液検査、そして身体所見の慎重な観察が、異常の早期検出につながります。また、自己管理も治療成功の鍵となります。
適切な食事管理、定期的な運動、ストレスコントロール、十分な睡眠は、糖尿病と心房細動の両方のリスクを軽減しますので、意識してください。さらに、医療専門家との連携も欠かせません。半年から1年に1回の定期的な専門医受診により、総合的な健康状態を把握してください。
なお、当院では、患者一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
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糖尿病予備群(境界型糖尿病)の症状や対策について解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」の結果では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)と推計されています。
この記事では、糖尿病の可能性を否定できない者「糖尿病予備群」について解説していきます。
後半部分では「糖尿病予備群にならないための予防法」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群にならないための予防法
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは、糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖値が正常より高い状態にあることを指します。
「HbA1c 6.5%未満」「空腹時血糖が110 mg/dl以上126 mg/dl未満」「75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値が140 mg/dl以上200 mg/dl未満」のいずれかを満たす人が該当します。
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群(境界型糖尿病)では、自覚症状がありません。
しかし体内では、既に血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
さらに高血圧や脂質異常症なども併発しやすくなり、全体として、血糖値が正常な状態に比べ、動脈硬化の進行は加速されます。
なお、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患が引き起こされる危険性が高くなります。
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群の方は、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直し、肥満や高血圧、ストレスなどに対する健康管理に取り組むことで、糖尿病へ進行するリスクを減らすことができます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、まずは生活習慣の見直しから始めてください。
なお上述した通り、糖尿病予備群でも、既に血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、絶対に放置してないでください。
糖尿病予備群にならないための予防法
糖尿病予備群では、生活習慣の改善により「糖尿病の発症のリスク」を減らすことができます。
では、具体的には何をすればいいのでしょうか。順番にご紹介していきます。
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
糖尿病を予防するためには「運動」が効果的です。運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進。インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。
また長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、できれば毎日、少なくとも週に3~5回は体を動かしてください。
なお、糖尿病を予防するための運動としては「有酸素運動」と「レジスタンス運動」が推奨されております。
<有酸素運動>
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。
ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。
有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<レジスタンス運動>
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。
スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。
レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
糖尿病予防の基本は「食生活を見直すこと」です。
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。
食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。
バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、膵臓の負担は軽くなり、膵臓の能力は回復されます。
なお、食事のポイントについては以下をご覧ください。
<ゆっくり食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<野菜類から食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<アルコールは適量にする>
アルコールには一時的にはインスリンの働きを改善する効果があります。
しかし長期間飲んでいると逆にインスリンの分泌量が低下することがわかっていますので、アルコールは、ほどほどにしてください。
<腹八分目でストップ>
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。
いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。
とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
<間食をしない>
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかります。
また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。糖尿病を予防するためにも間食はできる限り控えてください。
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため、たばこを吸うと「糖尿病にかかりやすくなる」といえます。
日本人を対象とした研究データによると、喫煙者は非喫煙者と比べ糖尿病を発症するリスクが38%高くなると言われています。
ですので、糖尿病予備群の方は喫煙を控えてください。
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群の方は、自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。
健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
また糖尿病予備群の方の“適切な対策”を知りたい方も、いつでもご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.21
糖尿病治療法の一つ、インスリン療法を解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病の代表的な治療法である「インスリン療法」について解説していきます。
後半部分では「インスリン療法のメリット・デメリット」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
インスリンとは何か
インスリン療法とは
インスリン療法のしくみ
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン療法の具体的な手法
インスリン療法のメリット
インスリン療法のデメリット
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
インスリンとは何か
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。
糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。
なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。
糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。
インスリン療法とは
インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。
インスリン製剤を投与する方法として、「頻回インスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。
頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。
一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。
インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。
なお、インスリン療法については「インスリンとは?特徴・種類・注意点」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のしくみ
インスリンの自己注射を行うのは「1型糖尿病」の方、または「2型糖尿病」のうち内服治療が難しい方です。
不足したインスリンを注射で補うことで、健康な人のインスリン分泌に近づけます。
なおインスリンの自己注射では、効果が長時間持続するインスリン製剤を1日に1,2回と、即効性のあるものを毎食前に打つなどして、この2つの分泌を再現します(どのインスリン製剤を使うか、どのタイミングで注射するかは体格や生活様式などに合わせて調整します)。
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン注射を行う前に、自分で血糖値を測定する「血糖自己測定」を行うことがあります。
なぜなら日々の血糖値を記録することで、血糖コントロールを良好に行えるからです。
また直前に測定することで、「血糖値が低いにも関わらず自己注射を行い、さらに低血糖になる」といったことを防ぐことができます。
血糖自己測定の方法は以下の通りです。
⑴ 血糖測定器、測定用チップ、消毒用アルコール綿、穿刺器、穿刺針、自己管理ノート、針捨て容器を準備し、手を洗ってください。
⑵ 血糖測定器に測定用チップを、穿刺器に針をセットします。
⑶ 指先などを消毒します。そして針を消毒した場所に押し当て、穿刺器のボタンを押して針を刺してください。
⑷ 血液を測定用チップに染み込ませて、血糖値を測定します。
⑸ 残った血液を拭き取り、血糖値を自己管理ノートに記録してください。
インスリン療法の具体的な手法
インスリン注射の具体的な方法は以下の通りです。
⑴ 注入器、製剤カートリッジ、消毒綿など必要な物品を準備します。インスリン製剤が混濁している場合は均一になるようにカートリッジを振ってください。
⑵ インスリン製剤に注射針をセットします(針が曲がらないように真っすぐ刺してください)。
⑶ インスリン製剤の空打ちをして針先まで薬液を満たします。
⑷ ダイヤルを回転させて注射する単位数を医師の指示した値にセットしてください。
⑸ 注射する部位を消毒します。そして皮膚を軽くつまんで直角に注射針を刺してください。
⑹ ダイヤルが0になるまで、しっかりと薬液を注入します。そして10秒程度数え、注入ボタンを押したままで針を抜きます。
⑺ 針はキャップをかぶせてから取り外します。なお、針は1回きりの使用になりますので、ご注意ください。
※インスリン注射をする場所はお腹、太もも、おしり、腕です。
それぞれ薬の吸収速度が異なるため、注射部位を医師から指示される場合があります。
また、同じところに針を刺し続けると皮膚が硬くなり、痛みの原因になったり、薬の効きが悪くなります。
ですので毎回2〜3cmずらすようにしてください。
「糖尿病のインスリン注射器の使い方と副作用の対処法」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のメリット
インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
インスリン治療によって膵臓の働きが回復したら、インスリン注射の回数を減らせたり、経口血糖降下薬だけの治療に戻せる可能性があります(インスリン療法により、膵臓のインスリン分泌機能が回復することもあります)。
インスリン療法のデメリット
残念ながら、インスリンには副作用があります。インスリン療法における主な副作用は、「低血糖症状」です。インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。
低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。
そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。
インスリン療法における副作用について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン注射は予防接種や採血などでイメージする注射とは異なり、痛みはそれほどありません。
なぜならインスリン注射で使う専用の注射針は、採血用の注射針とは違い、痛みが少なくなるようデザインされているからです(採血で使う注射針の3分の1ぐらいの細さで針の先も特殊なカットがしてあり、痛みが少ないように工夫されています)。
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
上述した通り、インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
そのため、インスリン療法は早期に始めることが効果的です。近年では、高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があります。
ですので、主治医にインスリン療法を勧められたら積極的に受け入れるようにしてください。
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会が発表した「糖尿病標準診療マニュアル」でも、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず,HbA1c 9%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要があると伝えています。
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.21
糖尿病と高血圧の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。
この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
糖尿病の血圧値について
糖尿病と高血圧予防
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
【糖尿病と高血圧予防】運動
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。
<高血圧とは?>
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。
糖尿病の血圧値について
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病と高血圧予防
糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
【糖尿病と高血圧予防】運動
運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。
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2022.10.05
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