糖尿病・代謝内科

2型糖尿病患者の高血圧管理|最新ガイドラインに基づく血圧コントロールと合併症予防

2025.06.10

この記事では「2型糖尿病患者の高血圧管理」について解説します。後半部分では「糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
2型糖尿病の特徴
2型糖尿病と高血圧の併発が危険な理由
糖尿病患者における血圧目標値とガイドライン基準
糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方
血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズム
効果的な家庭血圧測定と記録方法
生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロール
まとめ

 

2型糖尿病の特徴

2型糖尿病の特徴

2型糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が慢性的に高くなる代謝疾患です。日本の糖尿病患者の約95%を占める最も一般的な糖尿病であり、生活習慣病の代表的な疾患として知られています。この疾患の主な特徴は、膵臓からのインスリン分泌低下と、筋肉や肝臓などの組織におけるインスリン抵抗性の両方が関与している点です。遺伝的要因に加えて、肥満、運動不足、食べ過ぎ、ストレスなどの環境要因が複合的に作用して発症します。また、多くの場合、中高年以降に発症し、初期段階では自覚症状が乏しいため、健康診断で発見されることが少なくありません。なお、2型糖尿病では慢性的な高血糖が全身の血管に障害をもたらし、その結果として網膜症、腎症、神経障害のいわゆる三大合併症が進行する可能性があります。さらに、動脈硬化が促進されることで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。特に高血圧を併発しやすいため、これらの合併症リスクを一層増大させる要因となります。したがって、血糖管理と並行して血圧管理を行うことが治療における重要な柱となります。

 

2型糖尿病と高血圧の併発が危険な理由

2型糖尿病と高血圧の併発が危険な理由

2型糖尿病と高血圧の併発は、単独の疾患よりもはるかに深刻な健康リスクをもたらします。この危険性の根本には、インスリン抵抗性と血管内皮機能障害による動脈硬化の著しい促進があります。インスリン抵抗性は血管の平滑筋細胞に直接作用し、血管壁の肥厚と硬化を引き起こします。同時に、慢性的な高血糖状態は血管内皮細胞を障害し、一酸化窒素の産生低下により血管の拡張能力が著しく低下します。これらの機序により動脈硬化が急速に進行し、血圧上昇がさらに加速されるという悪循環が形成されます。また、この相乗効果により、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクは健常人の3~4倍に増大し、腎機能低下も急激に進行します。特に糖尿病性腎症の進展は高血圧により著しく促進され、末期腎不全に至るリスクが飛躍的に高まります。さらに、網膜症の進行も血圧上昇により加速され、失明のリスクも増大します。このため、2型糖尿病患者における血圧管理は血糖管理と同等の重要性を持ち、より厳格な血圧目標値の設定が必要となります。

 

糖尿病患者における血圧目標値とガイドライン基準

糖尿病患者における血圧目標値とガイドライン基準

糖尿病患者における血圧管理は、心血管疾患や腎症などの合併症予防において極めて重要な位置を占めています。現在の日本高血圧学会の推奨では、糖尿病患者の診察室血圧目標値は130/80mmHg未満と、一般的な高血圧患者よりも厳格に設定されています。これは糖尿病患者における心血管リスクの高さを反映したものであり、複数の大規模臨床試験により、この目標値達成が心筋梗塞や脳卒中のリスク低下に有効であることが証明されています(家庭血圧においては125/75mmHg未満が推奨されており、診察室血圧よりもさらに低い設定となっています)。なお、現在、高血圧治療ガイドライン2025の草案が発表されており、2025年7月に6年ぶりの改訂が予定されています。新ガイドラインでは高血圧の基準値140/90mmHgや合併症のない75歳未満の降圧目標130/80mmHg未満は維持される方針ですが、糖尿病合併例に対する具体的な推奨事項の詳細な見直しが行われています。血圧管理においては薬物療法に加えて、減塩、適度な運動、体重管理といった生活習慣の改善が基本となり、患者個々の病態に応じた包括的なアプローチが不可欠です。

 

糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方

糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方

糖尿病患者における高血圧治療では、単純な血圧降下だけでなく、腎保護効果や血糖代謝への影響を総合的に考慮した薬剤選択が重要です。ここでは、「適切な降圧薬の選び方」について解説します。

糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方

糖尿病患者の降圧薬選択において最も重要な原則は、血圧降下効果に加えて臓器保護作用を持つ薬剤を優先することです。薬剤選択の基本戦略として、まず患者の腎機能、アルブミン尿の有無、心血管疾患の既往を評価し、個々の病態に最適化された治療方針を立てることが必要です。糖尿病患者では一般的に複数の降圧薬が必要となるため、薬剤間の相乗効果と副作用プロファイルを十分に検討する必要があります。また、血糖代謝に悪影響を与える薬剤は可能な限り避け、逆にインスリン感受性の改善に寄与する薬剤を積極的に選択することで、血圧と血糖の両方を効率的に管理できます。なお、薬剤選択に際しては、患者の年齢、併存疾患、生活習慣などの個別因子も考慮しながら、長期的な予後改善を見据えた包括的な治療アプローチが求められます。

第一選択薬として腎保護作用を有するACE阻害薬・ARB

ACE阻害薬とARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、糖尿病性高血圧患者における第一選択薬として強く推奨されています。これらの薬剤は、レニン・アンジオテンシン系を阻害することで、血圧降下に加えて顕著な腎保護効果を発揮します。具体的には、ACE阻害薬は、糸球体内圧を低下させ、アルブミン尿の減少と腎機能保持に優れた効果を示します。代表的な薬剤にはエナラプリル、リシノプリル、ペリンドプリルがあり、多くの大規模臨床試験でその有効性が証明されています。一方、ARBは空咳の副作用が少なく、患者の忍容性に優れているため、ACE阻害薬が使用できない場合の代替薬として有用です。両薬剤とも、糖尿病性腎症の進行抑制において、血圧降下効果を超えた独立した保護作用を持つことが特徴的です。特に微量アルブミン尿期から顕性腎症期にかけての患者では、これらの薬剤による早期介入が長期予後の改善に直結します。

カルシウム拮抗薬と利尿薬の併用療法における血糖値への影響と注意点

カルシウム拮抗薬は糖尿病患者に対して血糖代謝への悪影響が少なく、ACE阻害薬やARBとの併用において優れた降圧効果を発揮します。特にアムロジピンやニフェジピンCR錠は、血管選択性が高く、糖代謝に中性的な作用を示すため、糖尿病患者に適した選択肢です。一方、利尿薬の使用には慎重な検討が必要です。サイアザイド系利尿薬は血糖値を上昇させる可能性があり、特に高用量での使用時にはインスリン抵抗性の増悪リスクがあります。しかし、低用量での使用であれば血糖への影響は軽微であり、心血管イベント抑制効果が期待できます。なお、併用療法においては、薬剤相互作用と電解質バランスの監視が重要です。特にACE阻害薬と利尿薬の併用では高カリウム血症のリスクがあり、定期的な血液検査による安全性の確認が不可欠です。患者の腎機能と血糖コントロール状態を総合的に評価し、最適な薬剤組み合わせを選択することが治療成功の鍵となります。

 

血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズム

血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズム

糖尿病患者において、適切な血圧管理は合併症の発症・進行を劇的に抑制する重要な治療戦略です。血糖管理とともに血圧を厳格にコントロールすることで、腎症、網膜症、神経障害といった重篤な合併症を効果的に予防し、患者の長期的な生活の質向上が期待できます。

血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズムについて

糖尿病患者における血圧管理は、微小血管症と大血管症の両方の合併症予防において決定的な役割を果たします。高血圧と高血糖の相乗効果により、血管内皮細胞の機能障害が著しく促進され、全身の臓器に不可逆的な損傷をもたらすためです。具体的には、微小血管症では糖尿病性腎症、網膜症、神経障害が代表的な合併症として挙げられます。これらの病態に共通するメカニズムとしては、血管内皮細胞における一酸化窒素産生の低下、血管透過性の亢進、ならびに血管基底膜の肥厚が認められます。一方、大血管症においては、動脈硬化の進展によって心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患の発症リスクが飛躍的に増大します。加えて、適切な血圧管理は血管壁への機械的ストレスを軽減し、プラークの破綻や血栓形成の抑制にも寄与します。したがって、適切な血圧コントロールは、これらすべての合併症に対して包括的な保護効果をもたらす、糖尿病治療における根幹的なアプローチといえます。

糖尿病性腎症の進行抑制と腎機能保護における血圧コントロールの効果

糖尿病性腎症は、日本における末期腎不全の最大の原因疾患であり、血圧管理がその進行抑制において最も重要な介入手段です。腎症の病態には、糸球体内圧の上昇、メサンギウム細胞の増殖、基底膜の肥厚、ポドサイト障害が複合的に関与しています。また、血圧上昇は糸球体毛細血管への過剰な圧負荷を引き起こし、糸球体硬化症の進展を著しく加速します。特に収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の状態が持続すると、アルブミン尿の出現と腎機能低下が急速に進行します。なお、ACE阻害薬やARBによる血圧管理は、糸球体内圧を選択的に低下させ、アルブミン尿の減少と糸球体濾過率の保持に顕著な効果を示します。これらの薬剤は血圧降下効果を超えた腎保護作用を有し、微量アルブミン尿期からの早期介入により、透析導入のリスクを50%以上削減できることが大規模臨床試験で証明されています。

糖尿病網膜症リスク低減のための収縮期・拡張期血圧管理の重要性

糖尿病網膜症は、糖尿病患者における失明の主要原因であり、血圧管理がその発症・進行予防において極めて重要な位置を占めています。収縮期血圧の上昇は網膜血管への拍動性圧負荷を増大させ、血管壁の肥厚と内腔狭窄を引き起こします。一方、拡張期血圧の上昇は持続的な血管緊張を高め、血管透過性の亢進と血液網膜関門の破綻を促進します。これらの病態により、網膜出血、硬性白斑、軟性白斑といった典型的な網膜症変化が出現します。なお、大規模な疫学研究により、収縮期血圧10mmHgの低下により網膜症の進行リスクが13%減少し、拡張期血圧5mmHgの低下により新生血管緑内障の発症リスクが19%削減されることが明らかになっています。特に血圧130/80mmHg未満の厳格な管理により、重篤な増殖網膜症への進展を効果的に予防でき、患者の視機能保持に大きく貢献します。

 

効果的な家庭血圧測定と記録方法

効果的な家庭血圧測定と記録方法

糖尿病患者にとって家庭血圧測定は、診察室血圧だけでは把握できない日常の血圧変動を正確に評価し、適切な治療調整を行うために不可欠な管理手段です。正しい測定方法と記録の活用により、血圧管理の質を大幅に向上させることができます。

正確な血圧測定のタイミング

家庭血圧測定において最も重要なのは、一貫した条件下での測定を継続することです。測定タイミングは朝と夜の2回が基本となります。具体的には、朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、降圧薬服用前に実施します。また、夜間測定は就寝前に行い、入浴や飲酒後は避けることが重要です。なお、各回の測定では2回連続して行い、その平均値を記録してください。このとき、1回目と2回目の値に大きな差がある場合は、さらに1回測定して中央値を採用します。また、測定間隔は1〜2分間空けることで、血管への圧迫による影響を最小限に抑えることができます。週に最低でも5日間の測定を継続し、月単位での血圧変動パターンを把握することが、治療効果の評価において極めて重要です。

測定機器選択のポイント

家庭血圧測定に適した血圧計の選択は、測定精度と継続性の両面から慎重に検討する必要があります。上腕式自動血圧計が最も推奨されており、日本高血圧学会や国際高血圧学会の認証を受けた機種を選択することが基本です。手首式血圧計は簡便性に優れますが、測定姿勢の影響を受けやすく、精度の面で劣る場合があります。なお、カフのサイズ選択は測定精度に直結する重要な要素です。上腕周囲長を正確に測定し、適切なサイズのカフを使用してください。標準カフは上腕周囲22〜32cmに対応しており、それ以外の場合は専用のカフが必要です。不適切なカフサイズは測定値に大きな誤差をもたらすため、定期的なサイズ確認が求められます。さらに、血圧計の精度維持のために、年に1回は医療機関で使用している血圧計との比較検証を行ってください。また、記録機能やスマートフォン連携機能を備えた機種を選択することで、データ管理の効率化と継続性の向上が期待できます。電池残量の確認や定期的な機器点検により、常に正確な測定が可能な状態を維持することが重要です。

血圧日記の活用方法と主治医との情報共有における注意点

血圧日記は、単なる数値の記録にとどまらず、血圧変動の要因分析や治療効果の評価に不可欠な医療情報です。測定値とともに、測定日時、服薬状況、体調、ストレスレベル、運動量、食事内容などの関連因子も併せて記録することが重要です。これらの情報により、血圧上昇の原因を特定し、生活習慣改善の具体的な指針を導くことが可能となります。なお、主治医との情報共有においては、測定データの信頼性を確保することが最も重要です。測定条件や使用している機器の状態を正確に報告し、数値の改ざんや選択的な記録は絶対に避けてください。また、診察直前の数日間だけを測定するのではなく、日常的かつ継続的な記録が求められます。これにより、治療方針の決定に有用な、より実態に即した血圧の把握が可能となります。血圧日記を通じて医師と患者が協力し、適切な血圧管理を実現することは、糖尿病合併症の予防にもつながる大切な取り組みです。根気強く記録を続けることが、将来の健康を守る第一歩となります。

 

生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロール

生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロール

糖尿病と高血圧を併発する患者において、薬物療法と並行した生活習慣の改善は治療効果を最大化し、合併症予防に不可欠な戦略です。食事療法、運動療法、体重管理を包括的に実践することで、血圧と血糖値の両方を効果的にコントロールし、患者の長期予後を大幅に改善できます。

生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロールの重要性

生活習慣の改善は、糖尿病と高血圧という両疾患に共通する根本的な病態、すなわち代謝異常およびインスリン抵抗性に直接的に作用し、薬物療法のみでは得がたい包括的な改善効果をもたらします。なかでも注目すべきは、生活習慣の改善によって血糖値と血圧の相互に悪影響を及ぼす関係を断ち切る点です。高血糖状態は血管内皮機能障害を引き起こし、結果として血圧の上昇を促進します。一方で、高血圧は末梢組織のインスリン抵抗性を悪化させ、血糖コントロールをより困難にします。このような悪循環を断ち切ることで、糖尿病と高血圧の双方の管理が飛躍的に向上します。さらに、生活習慣の改善は薬物療法の効果を高めるだけでなく、必要な薬剤数の削減や副作用リスクの軽減にも寄与します。加えて、患者自身が治療に主体的に関与し、自己効力感を獲得することで、長期的な治療継続率の向上にもつながることが、数多くの研究により示されています。

減塩6g/日未満を実現する食事療法と塩分摂取量の管理方法

日本人の平均塩分摂取量は男性10.9g、女性9.3gと過剰であり、糖尿病患者では6g/日未満への減塩が血圧管理において極めて重要です。減塩の第一歩は現在の摂取量把握であり、24時間蓄尿による正確な評価が理想的ですが、簡易的には随時尿による推定も可能です。具体的な減塩方法として、調味料の使用量削減が最も効果的です。醤油、味噌、塩の使用量を段階的に減らし、代わりに酢、レモン汁、香辛料、ハーブを積極的に活用します。出汁の旨味を十分に引き出すことで、少ない塩分でも満足できる味付けが可能になります。また、加工食品や外食の頻度制限も重要な戦略です。ハム、ソーセージ、漬物、インスタント食品は高塩分であるため、できる限り避けるか低塩分製品を選択してください。減塩効果は2〜4週間で血圧降下として現れ、継続により降圧薬の減量も期待できます。

糖尿病と高血圧の両方に効果的な有酸素運動とレジスタンス運動の実践法

以下、有酸素運動とレジスタンス運動の詳細です。

<有酸素運動>

有酸素運動は血糖値と血圧の両方に対して即効性と持続性を併せ持つ最も効果的な介入手段です。運動により筋肉への血流が増加し、インスリン非依存的な糖取り込みが促進されることで血糖値が低下します。同時に血管内皮機能が改善し、一酸化窒素の産生増加により血管拡張作用が高まり血圧が低下します。なお、推奨される運動強度は最大心拍数の50〜70%に相当する中等度の強度であり、具体的には軽く息が弾む程度の早歩き、水中歩行、サイクリングが適しています。そして運動時間は1回30〜60分間、週に150分以上の実施が目標です。運動後の血糖降下効果は24〜48時間持続するため、週3回以上の実施により持続的な血糖改善が得られます。

<レジスタンス運動>

レジスタンス運動は、筋肉量の増加を通じてインスリン感受性を高め、基礎代謝率を上昇させることで、長期的な血糖管理に非常に有効です。筋肉は体内で最大のインスリン感受性組織であり、その量の増加は血糖取り込み能力の向上に直結します。さらに、運動後の過剰酸素消費(EPOC:excess post-exercise oxygen consumption)により、運動終了後も代謝が亢進し、血圧低下効果が持続することも注目すべき点です。レジスタンス運動の実践にあたっては、週2〜3回の頻度で、主要な筋群を対象とした8〜12種目の筋力トレーニングを推奨します。各種目は、8〜15回の反復が可能な負荷で2〜3セット行い、セット間の休息時間は1〜3分程度を目安としてください。なお、始めは自体重を利用したスクワット、腕立て伏せ、プランクといった基本的な動作から開始し、筋力の向上に応じて段階的に負荷を増やすことで、安全かつ効果的に運動を継続することが可能です。

有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせにより、血糖値は平均0.6〜1.0%のHbA1c改善、血圧は収縮期で5〜10mmHg、拡張期で3〜5mmHgの低下が期待できます。運動療法の効果を最大化するには、個人の体力レベルに応じた段階的な負荷増加と、医師との定期的な相談による安全性確保が不可欠です。

体重管理と血圧・血糖値改善の関係

体重管理は、糖尿病および高血圧の両疾患に対して根本的な治療効果をもたらす、最も重要な生活習慣改善の一つです。体重を1kg減量するごとに、収縮期血圧は平均して約1mmHg低下し、HbA1cも0.1%改善することが、大規模な疫学研究により報告されています。例えば、内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインには血管収縮作用および炎症促進作用があり、高血圧や動脈硬化の進展に直接関与します。体重減少によって内臓脂肪が減少すると、逆に抗炎症性を持つアディポネクチンの分泌が増加し、インスリン感受性の改善および血管保護作用が期待されます。なお、適正体重を維持するには、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランス調整が基本です。1週間あたり0.5〜1kgの緩やかな体重減少を目標とし、極端なカロリー制限は避けるべきです。また、BMIが25未満、腹囲が男性で85cm未満、女性で90cm未満を達成することで、血圧および血糖コントロールが著しく改善され、薬物療法の効果も向上することが期待されます。安全で効果的な体重管理を実現するためには、体重の継続的なモニタリングと、医師との定期的な相談が不可欠です。

 

まとめ

まとめ

インスリン抵抗性や血管内皮機能障害を背景とする動脈硬化の進展を抑制するためには、血圧と血糖の両者を適切にコントロールすることが不可欠です。そのための基盤となるのが生活習慣の改善です。具体的には、食塩摂取量を1日6g未満に抑える食事療法、有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ、適正体重の維持などが推奨されます。これらの取り組みは、薬物療法の効果を高めるだけでなく、病態そのものの進行を抑制する可能性があるとされています。また、患者が日常生活の中で治療に主体的に関与することにより、治療継続率や自己管理能力の向上が期待されます。実際、生活習慣の改善に成功した患者では、血圧・血糖の安定化のみならず、服薬量の減少や医療費の軽減にもつながるケースが報告されています。さらに、こうした非薬物療法の積極的な導入は、医療資源の最適配分という観点からも重要です。2型糖尿病と高血圧の両方を併存する患者においては、生活習慣改善を柱とした多面的アプローチによって、臓器障害の発症や進行を未然に防ぎ、QOLの維持・向上に寄与することが可能となります。なお、当院では、患者一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは健康診断などで血圧値の異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

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糖尿病治療法の一つ、インスリン療法を解説

糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病の代表的な治療法である「インスリン療法」について解説していきます。 後半部分では「インスリン療法のメリット・デメリット」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box { text-align: center; } .cv_box a{ text-decoration: none !important; color: #fff !important; width: 100%; max-width: 400px; padding: 10px 30px; border-radius: 35px; border: 2px solid #fff; background-color: #ffb800; box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%); position: relative; text-align: center; font-size: 18px; letter-spacing: 0.05em; line-height: 1.3; margin: 0 auto 40px; text-decoration: none; } .cv_box a:after { content: ""; position: absolute; top: 52%; -webkit-transform: translateY(-50%); transform: translateY(-50%); right: 10px; background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg"); width: 15px; height: 15px; background-size: contain; display: inline-block; } 【目次】 インスリンとは何か インスリン療法とは インスリン療法のしくみ インスリン注射を行う前に血糖自己測定 インスリン療法の具体的な手法 インスリン療法のメリット インスリン療法のデメリット インスリン注射はほとんど痛くありません インスリン療法は早期に始めることが効果的です インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい   インスリンとは何か インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。 糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。 なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。 糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。   インスリン療法とは インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。 インスリン製剤を投与する方法として、「頻回インスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。 頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。 一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。 インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。 なお、インスリン療法については「インスリンとは?特徴・種類・注意点」でも同様のことを伝えています。   インスリン療法のしくみ インスリンの自己注射を行うのは「1型糖尿病」の方、または「2型糖尿病」のうち内服治療が難しい方です。 不足したインスリンを注射で補うことで、健康な人のインスリン分泌に近づけます。 なおインスリンの自己注射では、効果が長時間持続するインスリン製剤を1日に1,2回と、即効性のあるものを毎食前に打つなどして、この2つの分泌を再現します(どのインスリン製剤を使うか、どのタイミングで注射するかは体格や生活様式などに合わせて調整します)。   インスリン注射を行う前に血糖自己測定 インスリン注射を行う前に、自分で血糖値を測定する「血糖自己測定」を行うことがあります。 なぜなら日々の血糖値を記録することで、血糖コントロールを良好に行えるからです。 また直前に測定することで、「血糖値が低いにも関わらず自己注射を行い、さらに低血糖になる」といったことを防ぐことができます。 血糖自己測定の方法は以下の通りです。   ⑴    血糖測定器、測定用チップ、消毒用アルコール綿、穿刺器、穿刺針、自己管理ノート、針捨て容器を準備し、手を洗ってください。 ⑵    血糖測定器に測定用チップを、穿刺器に針をセットします。 ⑶    指先などを消毒します。そして針を消毒した場所に押し当て、穿刺器のボタンを押して針を刺してください。 ⑷    血液を測定用チップに染み込ませて、血糖値を測定します。 ⑸    残った血液を拭き取り、血糖値を自己管理ノートに記録してください。   インスリン療法の具体的な手法 インスリン注射の具体的な方法は以下の通りです。 ⑴    注入器、製剤カートリッジ、消毒綿など必要な物品を準備します。インスリン製剤が混濁している場合は均一になるようにカートリッジを振ってください。 ⑵    インスリン製剤に注射針をセットします(針が曲がらないように真っすぐ刺してください)。 ⑶    インスリン製剤の空打ちをして針先まで薬液を満たします。 ⑷    ダイヤルを回転させて注射する単位数を医師の指示した値にセットしてください。 ⑸    注射する部位を消毒します。そして皮膚を軽くつまんで直角に注射針を刺してください。 ⑹    ダイヤルが0になるまで、しっかりと薬液を注入します。そして10秒程度数え、注入ボタンを押したままで針を抜きます。 ⑺    針はキャップをかぶせてから取り外します。なお、針は1回きりの使用になりますので、ご注意ください。 ※インスリン注射をする場所はお腹、太もも、おしり、腕です。   それぞれ薬の吸収速度が異なるため、注射部位を医師から指示される場合があります。 また、同じところに針を刺し続けると皮膚が硬くなり、痛みの原因になったり、薬の効きが悪くなります。 ですので毎回2〜3cmずらすようにしてください。 「糖尿病のインスリン注射器の使い方と副作用の対処法」でも同様のことを伝えています。   インスリン療法のメリット インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。 インスリン治療によって膵臓の働きが回復したら、インスリン注射の回数を減らせたり、経口血糖降下薬だけの治療に戻せる可能性があります(インスリン療法により、膵臓のインスリン分泌機能が回復することもあります)。   インスリン療法のデメリット 残念ながら、インスリンには副作用があります。インスリン療法における主な副作用は、「低血糖症状」です。インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。 低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。 そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。 インスリン療法における副作用について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。   インスリン注射はほとんど痛くありません インスリン注射は予防接種や採血などでイメージする注射とは異なり、痛みはそれほどありません。 なぜならインスリン注射で使う専用の注射針は、採血用の注射針とは違い、痛みが少なくなるようデザインされているからです(採血で使う注射針の3分の1ぐらいの細さで針の先も特殊なカットがしてあり、痛みが少ないように工夫されています)。   インスリン療法は早期に始めることが効果的です 上述した通り、インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。 そのため、インスリン療法は早期に始めることが効果的です。近年では、高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があります。 ですので、主治医にインスリン療法を勧められたら積極的に受け入れるようにしてください。 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会が発表した「糖尿病標準診療マニュアル」でも、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず,HbA1c 9%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要があると伝えています。   インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい 糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。 そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。 糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。   当日の順番予約はこちらから

2023.01.21

糖尿病・代謝内科

糖尿病と高血圧の関係

糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。 この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box { text-align: center; } .cv_box a{ text-decoration: none !important; color: #fff !important; width: 100%; max-width: 400px; padding: 10px 30px; border-radius: 35px; border: 2px solid #fff; background-color: #ffb800; box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%); position: relative; text-align: center; font-size: 18px; letter-spacing: 0.05em; line-height: 1.3; margin: 0 auto 40px; text-decoration: none; } .cv_box a:after { content: ""; position: absolute; top: 52%; -webkit-transform: translateY(-50%); transform: translateY(-50%); right: 10px; background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg"); width: 15px; height: 15px; background-size: contain; display: inline-block; } 【目次】 糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか 【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです 【糖尿病と高血圧の関係2】肥満 【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです 糖尿病の血圧値について 糖尿病と高血圧予防 【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善 糖尿病と高血圧予防|食事のポイント 【糖尿病と高血圧予防】運動 糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について   糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか 糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。 【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです 血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。 【糖尿病と高血圧の関係2】肥満 2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。 【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。 <高血圧とは?> 高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。   糖尿病の血圧値について 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。   糖尿病と高血圧予防 糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。 【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善 食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。   糖尿病と高血圧予防|食事のポイント 糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる 野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる 早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる 1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目 慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。   【糖尿病と高血圧予防】運動 運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。 <糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動 有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。 <糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動 レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。   糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について 運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。 当日の順番予約はこちらから

2022.10.05