糖尿病・代謝内科

糖尿病患者のための低血糖対策完全ガイド:症状、原因、対処法

2025.02.05

この記事では「低血糖」について解説していきます。後半部分では「低血糖状態になった時の対処法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
低血糖の状態と基準値について
低血糖の症状について
低血糖の主な原因について
低血糖状態になった時の対処法
低血糖の予防方法について
特殊な状況での低血糖対策
周囲で誰かが低血糖状態になった時の対応方法
低血糖を恐れずに適切な糖尿病管理を心がけましょう

 

低血糖の状態と基準値について

低血糖の状態と基準値について

一般的に、低血糖は血糖値が70 mg/dL未満に低下した状態と定義されます。しかし、個人差があるため、症状が現れる血糖値は人によって異なることがあります。そのため、健康な人の空腹時血糖値は通常70〜99 mg/dLの範囲内ですが、糖尿病患者さんの場合、血糖コントロールの目標値は個別に設定されます。なお、糖尿病患者さんが低血糖に注意を払う必要があるのは、低血糖が深刻な健康リスクをもたらす可能性があるためです。具体的には、低血糖状態が続くと、脳や他の重要な臓器が十分なエネルギーを得られず、意識障害や昏睡などの重篤な状態に陥る恐れがあります。また、低血糖の経験が頻繁にあると、低血糖に対する身体の警告反応が鈍くなり、重症低血糖のリスクが高まることもあります。したがって、低血糖には細心の注意を払う必要があります。糖尿病治療において、血糖値を適切な範囲内に保つことが重要ですが、過度な血糖降下は避けなければなりません。特に、インスリン療法や一部の経口血糖降下薬を使用している患者さんは低血糖のリスクが高くなるため、定期的な血糖モニタリングや適切な食事管理、運動と薬物療法のバランスを取ることが重要です。また、患者さん自身が低血糖の症状を認識し、対処法を知っておくことも、安全な糖尿病管理において不可欠です。

 

低血糖の症状について

低血糖の症状について

低血糖の症状は個人によって異なりますが、一般的に初期症状から重症化までの段階があります。多くの場合、低血糖の初期症状として動悸、発汗、手の震えが現れます。これらの症状は、体が血糖値の低下を感知し、アドレナリンなどのホルモンを分泌することで生じます。また、空腹感、めまい、頭痛、集中力の低下なども初期症状として現れることがあります。これらの初期症状は、体が低血糖を警告するサインであり、迅速に対処することで重症化を防ぐことができます。しかし、低血糖が進行すると、より深刻な症状が現れる可能性がありますので油断してはいけません。

低血糖が重症化した場合、意識障害や昏睡といった危険な状態に陥ることがあります。また、意識障害の前段階では、異常な行動、言動の混乱、視力障害などが現れることがあります。さらに重症化すると、痙攣や昏睡状態に至る可能性もあり、生命に関わる危険な状況となります。したがって、低血糖の症状を絶対に放置してはいけません。

無自覚低血糖について

無自覚低血糖(むじかくていけっとう)は、低血糖を繰り返すことで、通常の低血糖症状を自覚できなくなった状態を指します。この状態は、特に糖尿病患者にとって危険な合併症の一つです。無自覚低血糖の主な特徴:

1. 症状の欠如:血糖値が低下しても、発汗、動悸、震え、不安などの典型的な低血糖症状が現れません。
2. 危険性:症状を感じないため、適切な対処が遅れ、重度の低血糖に陥るリスクが高まります。
3. 発生メカニズム:頻繁な低血糖により、体が低血糖状態に順応してしまい、通常の警告信号が鈍くなります。
4. 対処の困難さ:症状を自覚できないため、血糖値の急激な低下を見逃す可能性が高くなります。

無自覚低血糖への対応:

・定期的な血糖自己測定を行い、血糖値の変動を把握することが重要です。
・一定期間、低血糖を起こさないよう血糖コントロールを行い、体を再度低血糖に反応させる必要があります。
・家族や周囲の人に状況を説明し、低血糖の兆候に気づいてもらうよう協力を求めることが大切です。

 

低血糖で注意すべきは、症状に個人差があることです。同じ血糖値でも、ある人は強い症状を感じる一方で、別の人はほとんど症状を感じない場合があります。また、長年糖尿病を患っている人や頻繁に低血糖を経験している人では、低血糖に対する身体の反応が鈍くなり、初期症状を感じにくくなることがあります。そのため、糖尿病患者さんは自身の低血糖症状のパターンを把握し、定期的に血糖値をチェックすることが重要です。

 

低血糖の主な原因について

低血糖の主な原因について

低血糖は、糖尿病治療と生活習慣の両面に関連しています。最も一般的な原因の一つは、インスリン注射や血糖降下薬の使用です。これらの薬剤は血糖値を下げる目的で使用されますが、適切な量を超えて投与された場合や、食事量と合わないタイミングで使用された場合に低血糖を引き起こす可能性があります。

特に、インスリン療法を受けている1型糖尿病患者さんや、スルホニル尿素薬などの強力な血糖降下薬を使用している2型糖尿病患者さんは、低血糖のリスクが高くなります。次に、食事量の不足や運動量の増加も、低血糖の重要な要因となります。具体的には、通常の食事量よりも少ない場合や食事を抜いた場合、体内の血糖値が低下しやすくなります。

また、予想以上に激しい運動や長時間の運動を行った場合も、体内のブドウ糖が急速に消費され、低血糖を引き起こす可能性があります。特に、インスリンや血糖降下薬を使用している患者さんが運動量を急に増やした場合、低血糖のリスクが高まりますので注意が必要です。なお、アルコール摂取も低血糖の原因となることがあります。アルコールは肝臓でのブドウ糖産生を抑制し、血糖値を低下させる作用があります。特に、食事を十分に摂らずにアルコールを飲む場合や、大量に飲酒する場合は注意が必要です。これらの要因は単独で作用することもありますが、複数の要因が重なって低血糖を引き起こすこともあります。

例えば、薬の過量投与と食事量の不足が重なったり、運動量の増加とアルコール摂取が組み合わさったりすることで、低血糖のリスクが高まります。そのため、糖尿病患者さんは自身の治療内容や生活習慣を十分に理解し、これらの要因のバランスを適切に管理することが重要です。

 

低血糖状態になった時の対処法

低血糖状態になった時の対処法

低血糖の症状が現れた際、まずは意識の有無を確認し、状況に応じて適切な対応をとる必要があります。ここでは、「意識がある場合」と「意識が朦朧としている場合」の2つのシナリオに分けて、具体的な対処法を紹介します。

<意識がある場合>

意識がある状態で低血糖症状が現れた場合、速やかに血糖値を上昇させることが重要です。まず、ブドウ糖10gまたは砂糖10g、あるいはブドウ糖を含むジュース150〜200mLを摂取します。これらの糖分は速やかに吸収され、血糖値の上昇を促します。ただし、ブドウ糖や砂糖以外の糖分は効果が現れるまでに時間がかかるため、避けるべきです。そして次に、摂取後15分経過しても症状が改善しない、または血糖値が60mg/dL以下の場合は、同量の糖分を再度摂取します。それでも回復が見られない場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

なお、特に注意が必要なのは、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している患者さんです。この薬剤は多糖類の分解・吸収を抑制するため、砂糖などでは低血糖への対処として効果がありません。そのため、必ずブドウ糖を携帯しておくことが重要です。低血糖への対処を効果的に行うためには、日頃から準備をしておくことが大切です。ブドウ糖や砂糖を常に携帯し、定期的に血糖値をチェックする習慣をつけてください。また、家族や周囲の人々にも低血糖の症状と対処法を理解してもらい、必要な際にサポートを受けられるようにしておくことが重要です。

<意識が朦朧としている場合>

意識が朦朧としている、または自分で対応できない重度の低血糖状態の場合は、周囲の人の助けが不可欠です。この状況では、患者さん自身がブドウ糖を摂取することが困難なため、家族や周囲の人が適切な対応をとる必要があります。まず、ブドウ糖や砂糖を患者さんの口に含ませたり、飲み込むことが難しい場合は、口唇や歯肉に塗りつけるなどの応急処置を行います。これにより、少量でも糖分が吸収され、血糖値の上昇が期待できます。さらに、より効果的な対処法として、グルカゴン注射があります。グルカゴンは血糖値を上昇させるホルモンです。

1バイアル(1mg)を筋肉内または皮下に注射することで、速やかに血糖値を上昇させることができます。特に1型糖尿病患者さんや重篤な低血糖のリスクが高い患者さんには、医師からグルカゴン注射が処方され、使用方法が説明されます。なお、これらの応急処置を行った後は、速やかに主治医に連絡を取るか、または救急医療機関を受診することが重要です。重度の低血糖は生命に関わる可能性があるため、専門的な医療処置が必要となる場合がありますので、ご注意ください。低血糖状態に対処するためには、日頃から、家族や周囲の人々に低血糖の症状と対処法について理解してもらい、グルカゴン注射の使用方法やブドウ糖の保管場所を共有しておくことが大切です。また、患者さん自身も定期的に血糖値をチェックし、低血糖のリスクが高まる状況(食事の遅れ、激しい運動後など)に注意を払うことが重要です。適切な準備と周囲の理解があれば、重度の低血糖にも迅速かつ効果的に対応することができます。

 

低血糖の予防方法について

低血糖の予防方法について

低血糖の予防は、糖尿病管理において非常に重要な要素です。その中でも、規則正しい食事は低血糖予防の基本となります。食事を抜いたり、食事時間が大幅に遅れたりすることで血糖値が急激に低下する可能性があるため、一日三食を定時に摂ることが推奨されます。また、長時間の活動や就寝前には、適度な間食を取ることで夜間や早朝の低血糖を予防できます。ただし、間食の量や内容は個々の治療計画に応じて調整する必要があります。なお、運動は血糖コントロールに有効ですが、低血糖のリスクも伴います。

したがって運動時は、その強度や持続時間に応じて事前に血糖値をチェックし、必要に応じて補食を摂るなどの対策が重要です。特に、インスリン注射や血糖降下薬を使用している場合は、運動のタイミングや薬の投与量を調整することが必要になる場合があります。また、長時間の運動や激しい運動を行う際は、運動中や運動後の低血糖にも注意が必要です。

さらに、万が一の低血糖に備えて、常にブドウ糖や砂糖を携帯することも重要な予防策です。特に外出時や運動時には、すぐに摂取できるよう準備しておくことが大切です。ブドウ糖タブレットやジュースなど、速やかに吸収される形態の糖分を選ぶことが推奨されます。

 

特殊な状況での低血糖対策

特殊な状況での低血糖対策

特殊な状況下での低血糖は、より危険を伴うため、適切な対策が不可欠です。ここでは、夜間、車の運転中、アルコール摂取時における低血糖のリスクと対策について詳しく解説します。これらの状況を理解し、適切な対応を取ることで、安全な日常生活を送ることができます。

<夜間低血糖>

夜間低血糖は、睡眠中に発生するため特に危険です。睡眠中は身体の反応が鈍くなり、低血糖の症状に気づきにくくなります。また、長時間の空腹状態や、日中の激しい運動の影響が夜間に現れることもありますので注意が必要です。夜間低血糖の対策としては、就寝前に血糖値をチェックし、必要に応じて軽い間食を摂ることが効果的です。特に、インスリン注射をしている場合は、夕方や就寝前のインスリン量を調整することも考慮すべきです。また、継続的な血糖モニタリングシステムの使用も、夜間低血糖の早期発見と予防に役立ちます。さらに、家族にも夜間低血糖の危険性を理解してもらい、異常に気づいた際の対応方法を共有しておくことも重要です。

<車の運転中の低血糖>

車の運転中の低血糖は、事故につながる可能性が高いため極めて危険です。運転前には必ず血糖値をチェックし、低血糖の兆候がある場合は運転を控えるべきです。特に長距離ドライブの際は、定期的に休憩を取り、血糖値の確認と必要に応じた補食を行うことが重要です。また、車内には常にブドウ糖や速やかに吸収される糖分を含む食品を備えておくことも大切です。さらに、低血糖症状を感じた場合は、直ちに安全な場所に車を停め、適切な処置を行うことが必要です。なお、同乗者がいる場合は、自身が糖尿病であることを伝え、低血糖時のサポートを依頼しておくことも有効な対策となります。運転中の低血糖は判断力や反応速度を低下させるため、常に注意を払い、安全運転を心がけることが重要です。

<アルコール摂取時>

アルコールは肝臓でのブドウ糖産生を抑制するため、特に空腹時の飲酒は危険です。また、アルコールの影響で低血糖症状に気づきにくくなることもありますので注意が必要です。アルコール摂取時の対策としては、飲酒時には必ず食事を摂ることが重要です。特に炭水化物を含む食事を一緒に取ることで、血糖値の急激な低下を防ぐことができます。また、飲酒量を控えめにし、血糖値の変動に注意を払うことも大切です。さらに飲酒後は、就寝前と翌朝の血糖値チェックを忘れずに行い、必要に応じて補食を摂ることが推奨されます。アルコールの影響は個人差が大きいため、自身の反応を把握し、適切な対策を講じることが重要です。

特殊な状況下での低血糖対策は、日常生活の中で意識的に取り入れることが重要です。個々の生活スタイルや治療法に合わせて、医療チームと相談しながら最適な対策を見出していくことが、安全で快適な生活を送るための鍵となります。常に注意を払い、適切な準備と対応を心がけることで、特殊な状況下でも低血糖のリスクを最小限に抑えることが可能です。

 

周囲で誰かが低血糖状態になった時の対応方法

周囲で誰かが低血糖状態になった時の対応方法

ここでは、低血糖状態に陥った際の対応方法について3つの側面から詳しく説明します。

<意識障害時の対応>

低血糖による意識障害は緊急事態であるため、迅速かつ適切な対応が求められます。まず、患者さんの安全を確保することが重要です。転倒や怪我を防ぐため、患者さんを安全な場所に移動させ、横たわらせます。そして意識がある程度あり、飲み込む力がある場合は、ブドウ糖や砂糖水など、速やかに吸収される糖分を摂取させます。

ただし、完全に意識がない場合や飲み込む力が弱い場合は、窒息の危険があるため、絶対に口から何かを与えてはいけません。完全に意識がない場合や飲み込む力が弱い場合は、患者さんの頬の内側や歯茎にブドウ糖ゲルや砂糖を塗り、ゆっくりと吸収させてください。この方法は、窒息のリスクを軽減しつつ、少量の糖分を体内に取り入れることができます。なお、意識障害時は、患者さんの呼吸と脈拍を確認し、必要に応じて心肺蘇生法を開始することも重要です。また、他の人に救急車の要請を依頼するなど、迅速な医療介入を求めることも不可欠です。患者さんの回復後も、再度低血糖に陥る可能性があるため、医療機関での診察を受けるまで患者さんのそばを離れず、状態を注意深く観察し続けることが重要です。

<グルカゴン注射の使用方法>

グルカゴン注射は、重度の低血糖時に血糖値を急速に上昇させる効果的な手段です。しかし、その使用方法を正しく理解し、適切に実施することが重要です。まず、グルカゴンキットの内容物を確認します。通常、粉末の入ったバイアルと、希釈液の入ったシリンジが含まれています。使用手順は以下の通りです。

・まず、シリンジ内の希釈液を粉末の入ったバイアルに注入します。そしてバイアルを軽く振って、粉末を完全に溶解させます。
・次に、溶解した液体をシリンジに吸い戻します。そして空気を抜き、適切な量を準備します。

準備が整いましたら次は注射です。注射部位は、上腕、大腿、または臀部の皮下や筋肉内が適しています。アルコール綿で注射部位を消毒し、皮膚をつまんで注射針を刺し、ゆっくりと溶液を注入します。そして注射後は、患者さんを横向きに寝かせ、窒息を防ぐ姿勢を取らせます。なお、グルカゴン注射後、通常10〜15分程度で意識が回復し始めますので、意識が戻ったら、経口で糖分を摂取させ、血糖値の安定を図ります。ただし、グルカゴン注射の効果は一時的であるため、必ず医療機関での診察を受けることが重要です。また、使用後は医療従事者に報告し、新しいグルカゴンキットを入手する必要があります。

<医療機関への連絡のタイミング>

低血糖状態での医療機関への連絡は、状況の重症度と患者さんの反応に応じて判断する必要があります。基本的には、低血糖症状が現れた時点で、できるだけ早く医療機関に連絡することが望ましいです。特に、以下のような状況では、直ちに救急医療サービスを要請すべきです。

・患者さんが意識を失っている、または意識が朦朧としている場合
・グルカゴン注射を実施した場合
・糖分の摂取やグルカゴン注射後も症状が改善しない、または再び悪化する場合
・患者さんが一人で対応できない状況や、繰り返し低血糖を起こしている場合
・低血糖の原因が不明な場合や、通常とは異なる症状が現れた場合

医療機関に連絡する際は、患者さんの状態、行った対応、血糖値(測定できる場合)などの情報を正確に伝えることが重要です。また、患者さんの糖尿病治療歴や使用している薬剤についての情報も、可能な限り提供することが望ましいです。これらの情報は、医療従事者が適切な処置を判断する上で非常に重要となります。低血糖への対応は、迅速さと適切さが求められる重要な場面です。周囲の人々が正しい知識と冷静な判断力を持つことで、患者さんの生命を守り、深刻な合併症を防ぐことができます。

 

低血糖を恐れずに適切な糖尿病管理を心がけましょう

低血糖を恐れずに適切な糖尿病管理を心がけましょう

適切な糖尿病管理のためには、定期的な血糖測定が不可欠です。これにより、自身の血糖値の傾向を把握し、低血糖のリスクを最小限に抑えながら、良好な血糖コントロールを維持することができます。また、日々の生活習慣の中で、食事、運動、服薬などを適切に管理することも重要です。これらの自己管理を通じて、自分の体調の変化に敏感になり、低血糖の前兆を早期に察知する能力も養われていきます。しかし、糖尿病管理は決して患者さん一人で抱え込むものではありません。定期的に医療機関を受診し、かかりつけ医と密接に連携を取ることで、より安全で効果的な糖尿病管理が可能となります。したがって、定期的に医療機関を受診してください。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。

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糖尿病治療法の一つ、インスリン療法を解説

糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病の代表的な治療法である「インスリン療法」について解説していきます。 後半部分では「インスリン療法のメリット・デメリット」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box { text-align: center; } .cv_box a{ text-decoration: none !important; color: #fff !important; width: 100%; max-width: 400px; padding: 10px 30px; border-radius: 35px; border: 2px solid #fff; background-color: #ffb800; box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%); position: relative; text-align: center; font-size: 18px; letter-spacing: 0.05em; line-height: 1.3; margin: 0 auto 40px; text-decoration: none; } .cv_box a:after { content: ""; position: absolute; top: 52%; -webkit-transform: translateY(-50%); transform: translateY(-50%); right: 10px; background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg"); width: 15px; height: 15px; background-size: contain; display: inline-block; } 【目次】 インスリンとは何か インスリン療法とは インスリン療法のしくみ インスリン注射を行う前に血糖自己測定 インスリン療法の具体的な手法 インスリン療法のメリット インスリン療法のデメリット インスリン注射はほとんど痛くありません インスリン療法は早期に始めることが効果的です インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい   インスリンとは何か インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。 糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。 なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。 糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。   インスリン療法とは インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。 インスリン製剤を投与する方法として、「頻回インスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。 頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。 一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。 インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。 なお、インスリン療法については「インスリンとは?特徴・種類・注意点」でも同様のことを伝えています。   インスリン療法のしくみ インスリンの自己注射を行うのは「1型糖尿病」の方、または「2型糖尿病」のうち内服治療が難しい方です。 不足したインスリンを注射で補うことで、健康な人のインスリン分泌に近づけます。 なおインスリンの自己注射では、効果が長時間持続するインスリン製剤を1日に1,2回と、即効性のあるものを毎食前に打つなどして、この2つの分泌を再現します(どのインスリン製剤を使うか、どのタイミングで注射するかは体格や生活様式などに合わせて調整します)。   インスリン注射を行う前に血糖自己測定 インスリン注射を行う前に、自分で血糖値を測定する「血糖自己測定」を行うことがあります。 なぜなら日々の血糖値を記録することで、血糖コントロールを良好に行えるからです。 また直前に測定することで、「血糖値が低いにも関わらず自己注射を行い、さらに低血糖になる」といったことを防ぐことができます。 血糖自己測定の方法は以下の通りです。   ⑴    血糖測定器、測定用チップ、消毒用アルコール綿、穿刺器、穿刺針、自己管理ノート、針捨て容器を準備し、手を洗ってください。 ⑵    血糖測定器に測定用チップを、穿刺器に針をセットします。 ⑶    指先などを消毒します。そして針を消毒した場所に押し当て、穿刺器のボタンを押して針を刺してください。 ⑷    血液を測定用チップに染み込ませて、血糖値を測定します。 ⑸    残った血液を拭き取り、血糖値を自己管理ノートに記録してください。   インスリン療法の具体的な手法 インスリン注射の具体的な方法は以下の通りです。 ⑴    注入器、製剤カートリッジ、消毒綿など必要な物品を準備します。インスリン製剤が混濁している場合は均一になるようにカートリッジを振ってください。 ⑵    インスリン製剤に注射針をセットします(針が曲がらないように真っすぐ刺してください)。 ⑶    インスリン製剤の空打ちをして針先まで薬液を満たします。 ⑷    ダイヤルを回転させて注射する単位数を医師の指示した値にセットしてください。 ⑸    注射する部位を消毒します。そして皮膚を軽くつまんで直角に注射針を刺してください。 ⑹    ダイヤルが0になるまで、しっかりと薬液を注入します。そして10秒程度数え、注入ボタンを押したままで針を抜きます。 ⑺    針はキャップをかぶせてから取り外します。なお、針は1回きりの使用になりますので、ご注意ください。 ※インスリン注射をする場所はお腹、太もも、おしり、腕です。   それぞれ薬の吸収速度が異なるため、注射部位を医師から指示される場合があります。 また、同じところに針を刺し続けると皮膚が硬くなり、痛みの原因になったり、薬の効きが悪くなります。 ですので毎回2〜3cmずらすようにしてください。 「糖尿病のインスリン注射器の使い方と副作用の対処法」でも同様のことを伝えています。   インスリン療法のメリット インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。 インスリン治療によって膵臓の働きが回復したら、インスリン注射の回数を減らせたり、経口血糖降下薬だけの治療に戻せる可能性があります(インスリン療法により、膵臓のインスリン分泌機能が回復することもあります)。   インスリン療法のデメリット 残念ながら、インスリンには副作用があります。インスリン療法における主な副作用は、「低血糖症状」です。インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。 低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。 そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。 インスリン療法における副作用について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。   インスリン注射はほとんど痛くありません インスリン注射は予防接種や採血などでイメージする注射とは異なり、痛みはそれほどありません。 なぜならインスリン注射で使う専用の注射針は、採血用の注射針とは違い、痛みが少なくなるようデザインされているからです(採血で使う注射針の3分の1ぐらいの細さで針の先も特殊なカットがしてあり、痛みが少ないように工夫されています)。   インスリン療法は早期に始めることが効果的です 上述した通り、インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。 そのため、インスリン療法は早期に始めることが効果的です。近年では、高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があります。 ですので、主治医にインスリン療法を勧められたら積極的に受け入れるようにしてください。 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会が発表した「糖尿病標準診療マニュアル」でも、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず,HbA1c 9%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要があると伝えています。   インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい 糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。 そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。 糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。   当日の順番予約はこちらから

2023.01.21

糖尿病・代謝内科

糖尿病と高血圧の関係

糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。 この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box { text-align: center; } .cv_box a{ text-decoration: none !important; color: #fff !important; width: 100%; max-width: 400px; padding: 10px 30px; border-radius: 35px; border: 2px solid #fff; background-color: #ffb800; box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%); position: relative; text-align: center; font-size: 18px; letter-spacing: 0.05em; line-height: 1.3; margin: 0 auto 40px; text-decoration: none; } .cv_box a:after { content: ""; position: absolute; top: 52%; -webkit-transform: translateY(-50%); transform: translateY(-50%); right: 10px; background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg"); width: 15px; height: 15px; background-size: contain; display: inline-block; } 【目次】 糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか 【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです 【糖尿病と高血圧の関係2】肥満 【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです 糖尿病の血圧値について 糖尿病と高血圧予防 【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善 糖尿病と高血圧予防|食事のポイント 【糖尿病と高血圧予防】運動 糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について   糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか 糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。 【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです 血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。 【糖尿病と高血圧の関係2】肥満 2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。 【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。 <高血圧とは?> 高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。   糖尿病の血圧値について 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。   糖尿病と高血圧予防 糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。 【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善 食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。   糖尿病と高血圧予防|食事のポイント 糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる 野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる 早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる 1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。 <糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目 慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。   【糖尿病と高血圧予防】運動 運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。 <糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動 有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。 <糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動 レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。   糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について 運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。 当日の順番予約はこちらから

2022.10.05