-
- 板谷内科クリニックブログ
- 糖尿病性腎症と高血圧の関係性|血圧管理で合併症を防ぐ治療法と対策
糖尿病性腎症と高血圧の関係性|血圧管理で合併症を防ぐ治療法と対策
2025.06.10
この記事では、「糖尿病性腎症と高血圧の関係性」について解説します。後半部分では、「糖尿病性腎症の降圧目標値」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症と高血圧の関係について
糖尿病で高血圧が起こる原因
糖尿病性腎症の降圧目標値
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
高血圧を下げる生活習慣改善のポイント
早期発見のための検査と症状チェック
まとめ|血圧管理で糖尿病性腎症の進行を防ぐために
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症は、糖尿病における主要な合併症の一つで、長期間の高血糖状態により腎臓の血管や組織が障害される疾患です。糖尿病患者の約30-40%に発症し、透析導入の最も多い原因疾患となっています。腎臓には約100万個の糸球体が存在し、これらが老廃物の排泄を担っています。しかし、血糖値の高い状態が続くと糸球体が損傷し、尿中にタンパク質が漏れ出るようになります。そして病状が進行すると、糸球体が破壊され、老廃物や水分が体内に蓄積し、腎不全や尿毒症を引き起こす可能性があります。なお、糖尿病性腎症は初期には自覚症状がほとんどなく、気づきにくいのが特徴です。しかし進行すると、微量アルブミン尿や蛋白尿が認められるようになり、さらに悪化すると浮腫、血圧上昇、貧血、疲労感などの症状が現れます。この疾患の予防には、血糖値の厳格な管理が不可欠です。定期的な血糖値の測定に加え、医師の指導に基づく食事療法、運動療法、薬物療法を継続することが求められます。また、高血圧は腎臓への負担を増大させるため、血圧管理も重要です。加えて、定期的な腎機能検査も予防の一環として重要です。糖尿病患者は年に一度、尿検査や血液検査を受けて腎機能の状態を確認することが推奨されます。早期に異常を発見できれば、進行を遅らせる治療が可能となります。
糖尿病性腎症と高血圧の関係について
高血糖状態が持続すると、腎臓の微小血管である糸球体毛細血管に深刻な影響を与えます。具体的には、高血糖により糖化最終産物(AGEs)が蓄積し、腎糸球体基底膜の肥厚と糸球体硬化症が進行します。同時に、血管内皮細胞の機能障害により一酸化窒素の産生が低下し、血管拡張能が減弱します。これらの変化により糸球体内圧が上昇し、腎機能低下が始まります。そして腎機能が低下すると、ナトリウムと水分の排泄能力が減少し、循環血液量が増加して血圧上昇をもたらします。さらに、腎臓からのレニン分泌が増加し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化されることで、血管収縮と体液貯留が促進され、高血圧が持続します。この高血圧状態は腎臓への負荷をさらに増大させ、糸球体内圧をより上昇させて腎症の進行を加速させます。また、蛋白尿の出現は腎機能低下の指標となり、この悪循環により最終的に末期腎不全へと進行する可能性があります。したがって、早期からの血糖管理と降圧治療が極めて重要です。
糖尿病で高血圧が起こる原因
糖尿病が高血圧を引き起こすメカニズムは複雑で多面的であり、インスリン抵抗性、血管障害、腎機能への影響が相互に関連しています。ここでは、糖尿病で高血圧が起こる「主要な原因」について解説します。
インスリン抵抗性と肥満による血圧上昇
インスリン抵抗性は糖尿病の根本的な病態の一つであり、高血圧発症の重要な要因となります。インスリン抵抗性により代償性に「高インスリン血症」が生じると、腎臓でのナトリウム再吸収が促進され、体内のナトリウム貯留により血液量が増加します。同時に、高インスリン血症は交感神経系を活性化し、心拍数増加と血管収縮をもたらします。さらに、インスリン抵抗性は内皮由来血管拡張因子である一酸化窒素の産生を抑制し、血管拡張機能を低下させます。多くの糖尿病患者に見られる肥満、特に内臓肥満は、アディポサイトカインの分泌異常を引き起こし、炎症性サイトカインの増加により血管内皮機能がさらに悪化します。これらの複合的な作用により、インスリン抵抗性と肥満は血圧上昇の基盤を形成します。
高血糖による血管障害と糸球体高血圧
持続的な高血糖状態は、血管内皮細胞に直接的な障害をもたらし、血管機能の異常を引き起こします。具体的には、高血糖により糖化最終産物(AGEs)が血管壁に蓄積し、血管の弾性が失われて動脈硬化が進行します。また、高血糖は酸化ストレスを増大させ、血管内皮の一酸化窒素合成酵素の活性を低下させることで、血管拡張能が著しく減弱します。なお、腎臓においては、高血糖により糸球体毛細血管の自律的な血流調節機能が障害され、糸球体内圧が異常に上昇する「糸球体高血圧」が生じます。この状態では、全身血圧の変動が糸球体に直接伝達されやすくなり、糸球体構造への負荷が増大します。さらに、高血糖はレニン・アンジオテンシン系(RAA系)を活性化し、血管収縮および体液貯留を促進することで、全身の血圧上昇にも関与します。
腎症進行に伴う体液・塩分貯留
糖尿病性腎症の進行により腎機能が低下すると、水分およびナトリウムの排泄能力が著しく損なわれます。健常な腎臓では、体内の水分・電解質バランスを精緻に調節していますが、糸球体濾過率(GFR)の低下により余剰な水分およびナトリウムが体内に蓄積します。その結果、循環血液量が増加し、心拍出量の増大を介して血圧が上昇します。さらに、腎機能の低下は腎実質におけるレニン分泌の亢進を引き起こし、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)が過剰に活性化されます。アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用を有し、アルドステロンはナトリウム再吸収を促進することで、体液貯留をさらに助長します。一方で、腎臓から分泌される血管拡張因子であるプロスタグランジンやカリクレインの産生が低下し、血管拡張能の減弱が持続します。これら複数の機序が複合的に作用することで、腎症の進行に伴い血圧のコントロールは次第に困難となります。
糖尿病における高血圧の発症は、インスリン抵抗性、高血糖による血管障害、腎機能低下という複数の病態が相互に関連し合って生じる複雑な現象です。初期段階ではインスリン抵抗性と高血糖による血管内皮機能障害が主体となりますが、病態の進行とともに腎症による体液貯留とレニン・アンジオテンシン系の活性化が加わり、より難治性の高血圧となります。これらのメカニズムを理解することで、早期からの包括的な治療戦略の重要性が明らかになります。血糖管理、体重管理、ACE阻害薬やARBによる降圧治療を組み合わせ、各病態に対応した多面的なアプローチが必要です。また、定期的な腎機能評価により腎症の進行を早期に発見し、適切な治療介入を行うことで、心血管疾患などの重篤な合併症の予防が可能となります。
糖尿病性腎症の降圧目標値
糖尿病性腎症において適切な血圧管理は、腎機能の保持と心血管疾患の予防において極めて重要です。腎症の進行段階に応じて降圧目標値が設定されており、早期からの厳格な血圧コントロールが腎症の進行抑制と予後改善に直結します。ここでは、糖尿病性腎症における「降圧目標値」について解説します。
初期段階での血圧目標130/80mmHg未満の重要性
糖尿病性腎症の初期段階、すなわち微量アルブミン尿期(30-299mg/g・Cr)では、血圧目標を130/80mmHg未満に設定することが推奨されています。この目標値は、大規模な臨床試験において腎機能低下の進行抑制効果が証明されており、特に糸球体高血圧の是正に重要な役割を果たします。また、初期段階での厳格な血圧管理により、糸球体内圧の上昇を抑制し、糸球体基底膜への機械的ストレスを軽減することができます。これにより糸球体硬化の進行を遅延させ、アルブミン尿の増加を防ぐことが可能となります。なお、この段階での適切な血圧コントロールは、腎機能の可逆的改善をもたらす場合もあり、後の顕性腎症への進行リスクを大幅に減少させます。さらに、心血管疾患のリスクも同時に軽減されるため、糖尿病患者の総合的な予後改善に寄与します。
顕性蛋白尿期以降では125/75mmHg未満への厳格管理
顕性蛋白尿期(300mg/g・Cr以上)に進行した糖尿病性腎症では、より厳格な血圧目標である125/75mmHg未満が推奨されています。この段階では既に糸球体硬化が進行し、腎機能低下が顕著になっているため、さらなる腎保護効果を得るためには厳しい血圧管理が必要となります。顕性蛋白尿期では、レニン・アンジオテンシン系の活性化により血圧上昇が持続し、これが腎症の進行をさらに加速させる悪循環を形成します。なお、厳格な125/75 mmHg未満の目標設定により、この悪循環を断ち切り、残存腎機能の保護を図ることが可能となります。さらに、ACE阻害薬やARBを中心とした降圧治療により、蛋白尿の減少と腎機能低下の進行抑制が期待されます。ただし、過度の降圧により腎血流量が低下し、急性腎障害のリスクが高まるため、慎重なモニタリングが不可欠です。
家庭血圧測定の意義と診察室血圧との使い分け
糖尿病性腎症の血圧管理において、家庭血圧測定は診察室血圧測定と同等またはそれ以上の重要性を持ちます。家庭血圧は日常生活における実際の血圧レベルを反映し、白衣高血圧や仮面高血圧の診断に有用です。糖尿病患者では自律神経障害により血圧変動が大きくなることが多く、診察室での単発測定では適切な評価が困難な場合があります。なお、家庭血圧の目標値は診察室血圧より5mmHg低く設定されており、腎症初期では125/75mmHg未満、顕性蛋白尿期では120/70mmHg未満となります。朝夕の測定により夜間高血圧や早朝高血圧の評価が可能となり、これらは腎症進行の独立したリスク因子として重要です。また、服薬アドヒアランスの評価や降圧薬の効果判定にも有用で、治療方針の決定において不可欠な情報を提供します。24時間血圧計による評価も併用することで、より精密な血圧管理が実現できます。
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
糖尿病性腎症における降圧薬の選択は、単なる血圧低下だけでなく腎保護効果を重視する必要があります。ここでは、糖尿病性腎症に最適な「降圧薬の選択方針」について解説します。
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
糖尿病性腎症における降圧薬選択の基本原則は、腎保護効果を有する薬剤を優先することです。最も重要な考慮点は、糸球体内圧の低下と蛋白尿の減少効果であり、これらを満たす薬剤がレニン・アンジオテンシン系阻害薬です。単剤では目標血圧に到達困難な場合が多いため、作用機序の異なる薬剤の組み合わせが必要となります。なお、薬剤選択において、患者の腎機能レベルは重要な判断基準となります。eGFR 30mL/min/1.73m²以上では標準的な用量で開始可能ですが、それ以下では腎機能悪化のリスクを考慮した慎重な投与が必要です。また、血清カリウム値の上昇リスクがあるため、定期的なモニタリングが不可欠です。併存する心血管疾患、糖尿病のコントロール状況、患者の服薬アドヒアランスも薬剤選択に影響する重要な因子となります。
第一選択薬|ACE阻害薬・ARBによる腎保護効果
ACE阻害薬とARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、糖尿病性腎症の第一選択薬として位置づけられています。これらの薬剤は、アンジオテンシンIIの作用を阻害することで、輸出細動脈の拡張を優位に促し、糸球体内圧を効果的に低下させます。この機序により血圧低下効果を超える腎保護効果が得られ、蛋白尿の顕著な減少が期待されます。大規模臨床試験では、ACE阻害薬とARBが腎機能低下の進行抑制、透析導入の延期、そして心血管イベントの減少に効果があることが証明されています。特に微量アルブミン尿期からの投与開始により、顕性腎症への進行を大幅に抑制することが可能です。なお、ACE阻害薬では約10-15%の患者に空咳の副作用がみられ、この場合はARBへの変更が推奨されます。さらに、両薬剤とも高カリウム血症のリスクがあるため、投与開始後1〜2週間で血清クレアチニンおよびカリウム値の確認が重要です。
併用薬|カルシウム拮抗薬と利尿薬の使い分け
レニン・アンジオテンシン系阻害薬単剤で目標血圧に到達しない場合、カルシウム拮抗薬または利尿薬の併用を検討します。カルシウム拮抗薬の中でも、ジヒドロピリジン系は血管拡張作用により降圧効果が高く、糖代謝に悪影響を与えないため糖尿病患者に適しています。特にアムロジピンやニフェジピン徐放錠は、24時間持続する降圧効果により早朝高血圧の改善にも有効です。利尿薬については、チアジド系またはチアジド様利尿薬が推奨されます。これらは体液量減少による降圧効果を示し、ACE阻害薬やARBとの併用により相加的な効果が期待できます。ただし、血糖や尿酸値の上昇、電解質異常のリスクがあるため、定期的な検査が必要です。なお、腎機能が高度に低下している場合(eGFR 30mL/min/1.73m²未満)では、ループ利尿薬の使用を考慮します。浮腫や体液貯留の程度、心機能、電解質バランスを総合的に評価して最適な併用薬を選択することが重要です。
薬剤選択においては、患者の腎機能レベル、蛋白尿の程度、併存疾患、副作用のリスクを総合的に評価し、個別化された治療方針を立てることが必要です。また、治療開始後は定期的な腎機能と電解質のモニタリングを行い、適切な用量調整や薬剤変更を検討することで、安全で効果的な腎保護治療が実現できます。早期からの適切な降圧治療により、透析導入の延期と心血管疾患の予防が可能となり、患者の長期予後の改善に大きく寄与します。
高血圧を下げる生活習慣改善のポイント
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者において、生活習慣の改善は薬物療法と同等の重要性を持ちます。適切な食事療法、運動療法、体重管理により、降圧効果だけでなく腎保護効果も期待できます。しかし、腎機能低下を考慮した制約もあるため、個別化されたアプローチが必要です。ここでは、糖尿病性腎症患者における「効果的で安全な生活習慣改善のポイント」について解説します。
減塩療法|6g未満を目指す食事指導
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者では、1日の食塩摂取量を6g未満に制限することが推奨されています。減塩は体液貯留の改善により降圧効果をもたらし、同時に腎臓への負担軽減にも寄与します。日本人の平均食塩摂取量は約10gであるため、大幅な食生活の見直しが必要となります。なお、効果的な減塩のためには、調味料の使用量を段階的に減らし、だしや香辛料、酸味を活用して味付けの工夫を行ってください。具体的には、加工食品や外食には多量の塩分が含まれているため、これらの摂取頻度を減らし、新鮮な食材を使った手作り料理を心がけることが重要です。また、カリウムを多く含む野菜や果物の摂取は、ナトリウムの排泄を促進し降圧効果を高めますが、腎機能低下がある場合は高カリウム血症のリスクを考慮して摂取量を調整する必要があります。
糖尿病性腎症におけるタンパク質制限との両立
糖尿病性腎症の進行期では、腎機能を保護するためにタンパク質の摂取制限が必要となり、一般的には体重1kgあたり0.8-1.0g程度に制限されます。この制限と減塩療法を両立させるには、質の高いタンパク質源の選択と調理法の工夫が重要です。具体的には、魚類、鶏肉、卵、大豆製品などの良質なタンパク質を適量摂取し、同時に塩分を抑えた調理法を取り入れることが推奨されます。また、タンパク質制限によって食事の満足感が低下しがちですが、野菜や穀類を中心とした食事構成によってカロリー不足を補い、栄養バランスを維持することが求められます。さらに、リンの過剰摂取にも注意が必要であり、加工肉やインスタント食品の摂取は控えるようにします。管理栄養士と連携し、患者の嗜好や生活スタイルを考慮した個別化された食事療法を継続することで、減塩とタンパク質制限の両立が可能となります。
運動療法と体重管理の注意点
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者における運動療法は、腎機能レベルを考慮した安全な範囲で実施する必要があります。軽度から中等度の腎機能低下(eGFR 30mL/min/1.73m²以上)では、週3-5回、1回30-60分の有酸素運動が推奨されます。具体的には、ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水中歩行などの低強度から中強度の運動が適しており、最大心拍数の50-70%程度の強度で行ってください。なお、高度な腎機能低下がある場合には、運動強度をさらに制限し、理学療法士や運動指導士の監督下で、個別化されたプログラムを実施することが望ましいとされています。また、体重管理においては急激な減量が腎機能の悪化を招く可能性があるため、月に1-2kg程度の緩やかな減量を目標としてください。さらに、運動前後の血圧測定や脱水の予防、過度な疲労の回避も重要です。めまい、息切れ、動悸などの症状が現れた場合には、直ちに運動を中止してください。定期的な腎機能の検査により運動の安全性を評価し、病状の進行に応じて運動プログラムを柔軟に見直すことが求められます。
早期発見のための検査と症状チェック
糖尿病性腎症と高血圧は初期段階では自覚症状に乏しく、発見が遅れると不可逆的な腎機能低下を招く可能性があります。ここでは、糖尿病性腎症の早期発見に必要な「検査項目」と「症状」について解説します。
定期的な尿検査と血圧測定の重要性
糖尿病患者における糖尿病性腎症のスクリーニングには、年1回以上の尿中アルブミン測定および血清クレアチニンを用いたeGFRの算出が不可欠です。なかでも、尿中アルブミン排泄量は腎症の最も早期に現れる指標であり、微量アルブミン尿(30-299mg/g・Cr)の段階で発見することにより、適切な治療介入を通じて顕性腎症への進行を予防することが可能となります。また、アルブミン測定は一般に随時尿によって行われますが、より正確な評価を行うためには、24時間蓄尿あるいは早朝第一尿での測定が推奨されます。なお、血圧測定においては、診察室血圧だけでなく家庭血圧の併用が重要です。糖尿病患者では自律神経障害により血圧変動が大きく、診察室での単発測定のみでは正確な評価が困難なことがあります。そのため、家庭血圧は朝夕2回ずつ、1週間以上継続して測定し、平均値で評価することが望まれます。さらに、24時間血圧測定(ABPM)によって夜間高血圧や早朝高血圧の把握が可能となり、血圧管理の精度が高まり、腎症進行リスクの適切な評価に資することができます。
微量アルブミン尿や蛋白尿の意味と対処法
微量アルブミン尿は糖尿病性腎症の最も早期の徴候であり、この段階での発見と治療開始が腎症の進行抑制において極めて重要です。正常では、尿中アルブミン排泄量は30mg/g・Cr未満ですが、30-299mg/g・Crの微量アルブミン尿期では糸球体の軽度障害が既に始まっています。この段階では血糖管理の強化とACE阻害薬またはARBの導入により、腎機能の改善や正常化が期待できる場合があります。一方で、顕性蛋白尿期(300 mg/g・Cr以上)に進行すると、糸球体硬化が進行し、腎機能低下が顕著になります。この段階では、蛋白尿の程度が腎機能低下の速度と相関するため、蛋白尿の減少を治療目標として設定することが重要です。特に、蛋白尿が50%以上減少することで、腎機能低下の進行を著しく抑制できるとされています。そのため、定期的な尿検査により蛋白尿の推移をモニタリングし、増加傾向が認められる場合には治療の強化を検討する必要があります。また、蛋白尿が急激に増加した場合には、他の腎疾患の合併が疑われることがあり、このようなケースでは腎生検による確定診断が求められることもあります。
受診すべき症状と緊急性の判断基準
糖尿病性腎症の進行に伴い現れる症状には、浮腫、息切れ、倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐などがあります。これらの症状は腎機能低下による体液貯留や尿毒症の徴候として現れるため、出現した場合は速やかな医療機関受診が必要です。特に急激な体重増加(1週間で2kg以上)や下肢浮腫の出現は心不全や腎機能急性悪化の可能性があり、緊急性が高い症状として認識すべきです。なお、血圧に関連する症状では、頭痛、めまい、視野異常、胸痛などの高血圧緊急症の徴候に注意が必要です。収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧が120mmHg以上で、これらの症状を伴う場合は高血圧緊急症として直ちに救急受診が必要となります。また、尿量の急激な減少(1日400mL未満)、血尿の出現、発熱を伴う側腹部痛なども腎機能急性悪化や尿路感染症の可能性があるため、早急な医療機関受診が推奨されます。定期受診時には血圧手帳や症状日記を持参し、医師と情報共有することが適切な治療方針決定に重要です。
まとめ|血圧管理で糖尿病性腎症の進行を防ぐために
糖尿病性腎症における血圧管理は、腎機能保持と心血管疾患予防において極めて重要な治療戦略です。高血糖により生じる血管障害と腎機能低下による体液貯留が相互に影響し合い、高血圧の発症と腎症の進行を加速させる悪循環を形成するため、早期からの包括的なアプローチが不可欠となります。腎症初期では130/80mmHg未満、顕性蛋白尿期では125/75mmHg未満という病期別の厳格な血圧管理により、糸球体内圧の低下と蛋白尿の減少が期待できます。また、ACE阻害薬やARBを第一選択薬とし、必要に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬を併用することで、降圧効果と腎保護効果の両立が実現されます。さらに、生活習慣改善も薬物療法と同等の重要性を持ちます。1日6g未満の減塩療法、腎機能レベルに応じたタンパク質制限、安全な範囲での運動療法と体重管理により、降圧効果の向上と腎機能保護が図られるため、根気強く継続することが求められます。なお、当院では、患者一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは健康診断などで血圧値の異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
同じカテゴリのブログ記事
糖尿病予備群(境界型糖尿病)の症状や対策について解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」の結果では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)と推計されています。
この記事では、糖尿病の可能性を否定できない者「糖尿病予備群」について解説していきます。
後半部分では「糖尿病予備群にならないための予防法」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
.cv_box {
text-align: center;
}
.cv_box a{
text-decoration: none !important;
color: #fff !important;
width: 100%;
max-width: 400px;
padding: 10px 30px;
border-radius: 35px;
border: 2px solid #fff;
background-color: #ffb800;
box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%);
position: relative;
text-align: center;
font-size: 18px;
letter-spacing: 0.05em;
line-height: 1.3;
margin: 0 auto 40px;
text-decoration: none;
}
.cv_box a:after {
content: "";
position: absolute;
top: 52%;
-webkit-transform: translateY(-50%);
transform: translateY(-50%);
right: 10px;
background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg");
width: 15px;
height: 15px;
background-size: contain;
display: inline-block;
}
【目次】
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群にならないための予防法
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは、糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖値が正常より高い状態にあることを指します。
「HbA1c 6.5%未満」「空腹時血糖が110 mg/dl以上126 mg/dl未満」「75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値が140 mg/dl以上200 mg/dl未満」のいずれかを満たす人が該当します。
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群(境界型糖尿病)では、自覚症状がありません。
しかし体内では、既に血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
さらに高血圧や脂質異常症なども併発しやすくなり、全体として、血糖値が正常な状態に比べ、動脈硬化の進行は加速されます。
なお、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患が引き起こされる危険性が高くなります。
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群の方は、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直し、肥満や高血圧、ストレスなどに対する健康管理に取り組むことで、糖尿病へ進行するリスクを減らすことができます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、まずは生活習慣の見直しから始めてください。
なお上述した通り、糖尿病予備群でも、既に血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、絶対に放置してないでください。
糖尿病予備群にならないための予防法
糖尿病予備群では、生活習慣の改善により「糖尿病の発症のリスク」を減らすことができます。
では、具体的には何をすればいいのでしょうか。順番にご紹介していきます。
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
糖尿病を予防するためには「運動」が効果的です。運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進。インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。
また長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、できれば毎日、少なくとも週に3~5回は体を動かしてください。
なお、糖尿病を予防するための運動としては「有酸素運動」と「レジスタンス運動」が推奨されております。
<有酸素運動>
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。
ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。
有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<レジスタンス運動>
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。
スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。
レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
糖尿病予防の基本は「食生活を見直すこと」です。
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。
食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。
バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、膵臓の負担は軽くなり、膵臓の能力は回復されます。
なお、食事のポイントについては以下をご覧ください。
<ゆっくり食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<野菜類から食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<アルコールは適量にする>
アルコールには一時的にはインスリンの働きを改善する効果があります。
しかし長期間飲んでいると逆にインスリンの分泌量が低下することがわかっていますので、アルコールは、ほどほどにしてください。
<腹八分目でストップ>
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。
いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。
とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
<間食をしない>
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかります。
また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。糖尿病を予防するためにも間食はできる限り控えてください。
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため、たばこを吸うと「糖尿病にかかりやすくなる」といえます。
日本人を対象とした研究データによると、喫煙者は非喫煙者と比べ糖尿病を発症するリスクが38%高くなると言われています。
ですので、糖尿病予備群の方は喫煙を控えてください。
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群の方は、自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。
健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
また糖尿病予備群の方の“適切な対策”を知りたい方も、いつでもご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.21
糖尿病治療法の一つ、インスリン療法を解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病の代表的な治療法である「インスリン療法」について解説していきます。
後半部分では「インスリン療法のメリット・デメリット」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
text-align: center;
}
.cv_box a{
text-decoration: none !important;
color: #fff !important;
width: 100%;
max-width: 400px;
padding: 10px 30px;
border-radius: 35px;
border: 2px solid #fff;
background-color: #ffb800;
box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%);
position: relative;
text-align: center;
font-size: 18px;
letter-spacing: 0.05em;
line-height: 1.3;
margin: 0 auto 40px;
text-decoration: none;
}
.cv_box a:after {
content: "";
position: absolute;
top: 52%;
-webkit-transform: translateY(-50%);
transform: translateY(-50%);
right: 10px;
background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg");
width: 15px;
height: 15px;
background-size: contain;
display: inline-block;
}
【目次】
インスリンとは何か
インスリン療法とは
インスリン療法のしくみ
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン療法の具体的な手法
インスリン療法のメリット
インスリン療法のデメリット
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
インスリンとは何か
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。
糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。
なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。
糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。
インスリン療法とは
インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。
インスリン製剤を投与する方法として、「頻回インスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。
頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。
一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。
インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。
なお、インスリン療法については「インスリンとは?特徴・種類・注意点」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のしくみ
インスリンの自己注射を行うのは「1型糖尿病」の方、または「2型糖尿病」のうち内服治療が難しい方です。
不足したインスリンを注射で補うことで、健康な人のインスリン分泌に近づけます。
なおインスリンの自己注射では、効果が長時間持続するインスリン製剤を1日に1,2回と、即効性のあるものを毎食前に打つなどして、この2つの分泌を再現します(どのインスリン製剤を使うか、どのタイミングで注射するかは体格や生活様式などに合わせて調整します)。
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン注射を行う前に、自分で血糖値を測定する「血糖自己測定」を行うことがあります。
なぜなら日々の血糖値を記録することで、血糖コントロールを良好に行えるからです。
また直前に測定することで、「血糖値が低いにも関わらず自己注射を行い、さらに低血糖になる」といったことを防ぐことができます。
血糖自己測定の方法は以下の通りです。
⑴ 血糖測定器、測定用チップ、消毒用アルコール綿、穿刺器、穿刺針、自己管理ノート、針捨て容器を準備し、手を洗ってください。
⑵ 血糖測定器に測定用チップを、穿刺器に針をセットします。
⑶ 指先などを消毒します。そして針を消毒した場所に押し当て、穿刺器のボタンを押して針を刺してください。
⑷ 血液を測定用チップに染み込ませて、血糖値を測定します。
⑸ 残った血液を拭き取り、血糖値を自己管理ノートに記録してください。
インスリン療法の具体的な手法
インスリン注射の具体的な方法は以下の通りです。
⑴ 注入器、製剤カートリッジ、消毒綿など必要な物品を準備します。インスリン製剤が混濁している場合は均一になるようにカートリッジを振ってください。
⑵ インスリン製剤に注射針をセットします(針が曲がらないように真っすぐ刺してください)。
⑶ インスリン製剤の空打ちをして針先まで薬液を満たします。
⑷ ダイヤルを回転させて注射する単位数を医師の指示した値にセットしてください。
⑸ 注射する部位を消毒します。そして皮膚を軽くつまんで直角に注射針を刺してください。
⑹ ダイヤルが0になるまで、しっかりと薬液を注入します。そして10秒程度数え、注入ボタンを押したままで針を抜きます。
⑺ 針はキャップをかぶせてから取り外します。なお、針は1回きりの使用になりますので、ご注意ください。
※インスリン注射をする場所はお腹、太もも、おしり、腕です。
それぞれ薬の吸収速度が異なるため、注射部位を医師から指示される場合があります。
また、同じところに針を刺し続けると皮膚が硬くなり、痛みの原因になったり、薬の効きが悪くなります。
ですので毎回2〜3cmずらすようにしてください。
「糖尿病のインスリン注射器の使い方と副作用の対処法」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のメリット
インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
インスリン治療によって膵臓の働きが回復したら、インスリン注射の回数を減らせたり、経口血糖降下薬だけの治療に戻せる可能性があります(インスリン療法により、膵臓のインスリン分泌機能が回復することもあります)。
インスリン療法のデメリット
残念ながら、インスリンには副作用があります。インスリン療法における主な副作用は、「低血糖症状」です。インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。
低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。
そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。
インスリン療法における副作用について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン注射は予防接種や採血などでイメージする注射とは異なり、痛みはそれほどありません。
なぜならインスリン注射で使う専用の注射針は、採血用の注射針とは違い、痛みが少なくなるようデザインされているからです(採血で使う注射針の3分の1ぐらいの細さで針の先も特殊なカットがしてあり、痛みが少ないように工夫されています)。
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
上述した通り、インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
そのため、インスリン療法は早期に始めることが効果的です。近年では、高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があります。
ですので、主治医にインスリン療法を勧められたら積極的に受け入れるようにしてください。
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会が発表した「糖尿病標準診療マニュアル」でも、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず,HbA1c 9%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要があると伝えています。
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.21
糖尿病と高血圧の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。
この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
.cv_box {
text-align: center;
}
.cv_box a{
text-decoration: none !important;
color: #fff !important;
width: 100%;
max-width: 400px;
padding: 10px 30px;
border-radius: 35px;
border: 2px solid #fff;
background-color: #ffb800;
box-shadow: 0 0 10pxrgb(0 0 0 / 10%);
position: relative;
text-align: center;
font-size: 18px;
letter-spacing: 0.05em;
line-height: 1.3;
margin: 0 auto 40px;
text-decoration: none;
}
.cv_box a:after {
content: "";
position: absolute;
top: 52%;
-webkit-transform: translateY(-50%);
transform: translateY(-50%);
right: 10px;
background-image: url("https://itaya-naika.co.jp/static/user/images/common/icon_link_w.svg");
width: 15px;
height: 15px;
background-size: contain;
display: inline-block;
}
【目次】
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
糖尿病の血圧値について
糖尿病と高血圧予防
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
【糖尿病と高血圧予防】運動
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。
<高血圧とは?>
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。
糖尿病の血圧値について
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病と高血圧予防
糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
【糖尿病と高血圧予防】運動
運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。
当日の順番予約はこちらから
2022.10.05
BLOG CATEGORY
-
神経内科
神経内科についての記事はこちらをクリック
-
アレルギー科
アレルギー科についての記事はこちらをクリック
-
リウマチ科
リウマチ科についての記事はこちらをクリック
-
糖尿病・代謝内科
糖尿病・代謝内科についての記事はこちらをクリック
-
美容注射
美容注射についての記事はこちらをクリック
-
各種検診
各種検診についての記事はこちらをクリック
-
内分泌内科
内分泌内科についての記事はこちらをクリック
-
腎臓内科
腎臓内科についての記事はこちらをクリック
-
循環器内科
循環器内科についての記事はこちらをクリック
-
消化器内科
消化器内科についての記事はこちらをクリック
-
呼吸器内科
呼吸器内科についての記事はこちらをクリック
-
内科
内科についての記事はこちらをクリック
BLOG TAG
- 夜間高血圧
- 手足のしびれ
- 管理
- 糖尿病性腎症
- 降圧目標
- 薬物療法
- 高血圧性脳症
- 尿泡
- 目が霞む
- 赤ら顔
- 鼻血が出やすい
- 耳鳴り
- 首の後ろが痛い
- 朝起きると頭が重い
- めまい
- 爪
- 検査方法
- いつから
- インフルエンザ検査
- 空腹
- 痺れる
- かゆい
- 赤い斑点
- 血糖トレンド
- インスリンポンプ
- 脈拍
- 間食
- 入院
- 自宅入院
- 心房細動
- 運動してはいけない
- グリコアルブミン
- スローカロリー
- 血糖自己測定
- フルミスト点鼻液
- 鼻から
- インフルエンザワクチン
- 低血糖
- 大血管症
- がん
- うつ病
- 血糖コントロール
- メタボリックシンドロームとは
- ミトコンドリア糖尿病
- 家族性若年糖尿病
- MODY
- なりやすい
- 日本人
- 何型
- 確率
- 遺伝
- 副鼻腔炎
- 痩せる
- 治らない
- 頭痛
- 血糖値スパイクとは
- いつまで
- コロナ後遺症
- 中耳炎
- インフルエンザ脳症とは
- ワクチン
- 麻疹
- 違い
- D型
- C型
- B型
- A型
- インフルエンザC型
- インフルエンザB型
- インフルエンザA型
- インフルエンザ潜伏期間
- 潜伏期間
- インフルエンザ
- SAS
- 睡眠時無呼吸症候群
- 内科
- ダイアベティス
- 下げる
- 若い女性
- ピーク
- タバコ
- 変異株
- ピロラ
- エリス
- 目
- 食後
- 吐き気
- 60代
- 不眠
- 血糖値スパイク
- カフェイン
- 30代
- うつ
- 50代
- 40代
- 更年期
- 相談
- 方法
- タイプ
- 関連
- 20代
- 診察
- 評価法
- 診断基準
- 関係性
- 女性ホルモン
- 女性
- 副作用
- 費用
- デメリット
- メリット
- 減感作療法
- 男性
- チェック
- 不眠症
- 居眠り
- 意識が朦朧
- 眠気
- 痒み
- 皮膚
- 病名変更
- 名称変更
- 塩分
- 病気
- 脱毛症
- 糖質
- 抜け毛
- バナナ
- 摂取量
- コーヒー
- 糖尿病性ED
- ED
- 偏見
- 例
- 病名
- 言葉
- アドボカシー活動
- スティグマ
- ホルモン
- 精神疾患
- ストレス
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病ケトアシドーシス
- 影響
- 喫煙
- 経口血糖降下薬
- 糖尿病かもしれない
- 境界型糖尿病
- 糖尿病予備群
- インスリン療法
- 骨折
- 骨粗鬆症
- 心筋梗塞
- 後遺症
- 脳梗塞
- 1型糖尿病
- 検診
- 生活習慣
- 歯周病
- 重症化
- 新型コロナウイルス
- 敗血症性ショック
- 感染症
- 敗血症
- 水分補給
- 関係
- 脱水症状
- 注意
- 効果
- 糖尿病予防
- 糖質制限
- 食べ物
- アルコール
- お酒
- 妊娠糖尿病
- 初期症状
- 慢性合併症
- 糖尿病腎症
- 理由
- スキンケア
- 保湿剤
- 痒さ
- 血糖値
- 食事
- 食べてはいけないもの
- 乳製品
- おすすめ
- 食生活
- ヒトヘルペスウイルス
- ウイルス
- 発熱
- 突発性発疹
- 呼吸器
- ヒトメタニューモウイルス感染症
- ヒトメタニューモウイルス
- 感染経路
- 小児
- RSウイルス感染症
- 手足口病
- 特徴
- 夏風邪
- ヘルパンギーナ
- 糖尿病足病変
- 血糖
- 糖尿病チェック
- 足
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- 合併症
- インスリン
- 運動療法
- 子供
- くしゃみ
- 新型コロナウイルス感染症
- 点眼薬
- 点鼻薬
- 内服薬
- 有効
- 薬
- 対策
- 飛散
- 舌下免疫療法
- アナフィラキシーショック
- アレルギー
- 治療法
- 花粉症
- 無症状
- 待機期間
- 濃厚接触
- 期間
- 甲状腺ホルモン
- 甲状腺機能低下症
- 風邪
- 初期
- 感染対策
- オミクロン株
- 接種券
- 対象
- 新型コロナワクチン
- 3回目
- 甲状腺
- 栄養素
- 糖尿病
- 血圧
- 減塩
- 動脈硬化
- 食事療法
- 生活習慣病
- DASH食
- 高血圧
- 若葉区
- 脂質異常症
- 都賀
- 高脂血症
- 感染
- 運動
- 飲酒
- 接種後
- 接種率
- 千葉市
- 副反応
- 種類
- 接種
- 予約
- コロナワクチン
- コロナ
- 診断
- 予防
- 治療
- 改善
- 原因
- 検査
- 症状