内科

インフルエンザ治療薬の種類や効果、副作用について

2024.01.19

この記事では「インフルエンザの治療薬」について解説していきます。後半部分では「インフルエンザの治療薬の副作用」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
インフルエンザの薬の基本知識
市販でインフルエンザに有効な治療薬
抗インフルエンザ薬の副作用
インフルエンザの初期症状に適した薬の選び方
インフルエンザ市販薬を服用される際の注意点
インフルエンザ治療薬と予防接種の併用について
インフルエンザの治療薬の適切な使い方と管理方法
当院では予約なしでインフルエンザ予防接種が可能です

 

インフルエンザの薬の基本知識

インフルエンザの薬の基本知識

インフルエンザの治療薬は、大きく分けて飲み薬・吸入薬・点滴の3種類があります。飲み薬は、タミフル・ゾフルーザ・シンメトレル、吸入薬はリレンザ・イナビル、点滴はラピアクタという薬です。これらの薬は、体内でインフルエンザウイルスが増殖するのを抑える作用があります。

【インフルエンザの薬1】タミフル®︎

タミフルは、A型・B型両方のインフルエンザに有効と言われている抗インフルエンザ薬です。インフルエンザウイルスが増えるときに必要な酵素・ノイラミニダーゼの働きを妨げて、症状を緩和したり、予防したりします。ただし、インフルエンザウイルスが増えてしまってからタミフルを服用しても効果はないため、発熱などの症状が出てから48時間以内に服用を開始する必要があります。なお、タミフルは基本的に、成人は錠剤1錠を1日2回、計5日間服用します。

【インフルエンザの薬2】ゾフルーザ®︎

ゾフルーザは2018年2月に登場した「抗インフルエンザ薬」の新薬です。1回服用するだけでよいというのが最大の特徴になります。これまで、抗インフルエンザ薬は「ノイラミニダーゼ阻害薬」のみでしたが、ゾフルーザは「エンドヌクレアーゼ」と呼ばれる別の作用機序で効果を発揮します。インフルエンザウイルスを消失させる速度が速いと言われており、周囲の人への感染を減らせるのではないかとの期待がされています。ただし、薬剤相互作用や副作用については未知であり、その安全性は確定されていません。そのため、日本小児科学会は12歳未満の服用については推奨しないとしています。

【インフルエンザの薬3】リレンザ®︎

リレンザはA型・B型両方のインフルエンザに有効と言われている吸入薬です。リレンザは、インフルエンザウイルスの表面に存在する酵素を阻害するだけでなく、ウイルスが感染細胞から遊離するのも阻害し、インフルエンザウイルスの感染拡大を阻止します。なお、リレンザは、粉薬を直接気道に届けることで、ウイルスの増殖を抑えることが期待できる吸入薬です。したがって、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患など呼吸器に病気のある方は、気道に対する刺激になって「喘息発作」を誘発する可能性があるため注意が必要になります。

【インフルエンザの薬4】イナビル®︎

イナビルは、A型・B型両方のインフルエンザに有効と言われている吸入薬です。イナビルは、インフルエンザウイルスの増殖を防ぐ働きがあり、症状の緩和や感染予防に役立ちます。イナビルはリレンザと同様、気道に粉薬を入れるため慎重に使用する必要があります。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患などがある方は、必ず医師に相談してから使用してください。なお、イナビルは長時間作用型のため、処方された分を1回吸入するだけでよいというのが最大の特徴になります。

【インフルエンザの薬5】ラピアクタ®︎

ラピアクタは、A型・B型両方のインフルエンザに有効と言われている点滴薬です。ラピアクタは、インフルエンザウイルスの「ノイラミニダーゼ」というウイルス増殖に関与する酵素を阻害し、ウイルス増殖を抑える効果があります。したがって、インフルエンザウイルスが増殖してしまった後では薬の効果は発揮できず、発症後48時間以内に使用する必要があります。

【インフルエンザの薬6】シンメトレル®︎

シンメトレルはA型インフルエンザに対して効果のある飲み薬です。シンメトレルは、ノイラミニダーゼ阻害薬ではなく、A型インフルエンザウイルスに存在する「蛋白構造」に作用し、脱殻というウイルスの増殖工程を阻害することでウイルスの増殖を防ぎます。なお、シンメトレルは、感染初期に使用することで発熱の期間が1~2日短くなり、治りが早くなる効果が期待できます。

市販でインフルエンザに有効な治療薬

市販でインフルエンザに有効な治療薬

残念ながらインフルエンザの治療薬として使用される「抗インフルエンザ薬」は、市販薬では販売されていません。そして、市販の風邪薬はインフルエンザを完治させるほどの効果は期待できません。したがって、インフルエンザが疑われる場合は医療機関を受診してください。なお、インフルエンザと普通の風邪の違いについて知りたい方は「令和5年度インフルエンザQ&A」をご覧ください。

 

抗インフルエンザ薬の副作用

抗インフルエンザ薬の副作用

抗インフルエンザウイルス薬は、適切な時期(発症から48時間以内)から使用を開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します。しかし残念なことに「抗インフルエンザウイルス薬」には、吐き気、下痢、口内炎、めまい、頭痛、不眠などさまざまな副作用が報告されています。副作用については以下をご覧ください。

【抗インフルエンザ薬の副作用1】タミフル®︎

タミフルを服用した際の副作用としては、下痢、腹痛、吐き気などが報告されています。

【抗インフルエンザ薬の副作用2】ゾフルーザ®︎

ゾフルーザを服用した際の副作用としては、下痢、吐き気、頭痛、嘔吐などが報告されています。

【抗インフルエンザ薬の副作用3】リレンザ®︎

リレンザを服用した際に考えられる副作用は、血圧低下、呼吸困難、咽頭・喉頭浮腫などがあげられます。他にも、発作的な息切れ、下痢、発疹、吐き気、嘔吐、嗅覚障害、顔面浮腫、蕁麻疹なども報告されていますが、これらの可能性は低いです。

【抗インフルエンザ薬の副作用4】イナビル®︎

イナビルを服用した際に考えられる副作用は、失神、呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗などが挙げられます。また、発作的な息切れなどの症状も確認されていますが、どの副作用も発現する確率は低いです。

【抗インフルエンザ薬の副作用5】ラピアクタ®︎

ラピアクタを服用した際の副作用としては、下痢、吐き気、嘔吐などが報告されています。

【抗インフルエンザ薬の副作用6】シンメトレル®︎

シンメトレルを服用した際の副作用としては、めまい、ふらつき、立ちくらみ、不眠、幻覚、興奮、頭痛、便秘、食欲不振、吐き気、口の渇き、浮腫などが報告されています。

インフルエンザの初期症状に適した薬の選び方

インフルエンザは、感染してから約1~3日間程度の潜伏期間の後に、38℃以上の高熱、関節痛、頭痛、全身倦怠感などが突然あらわれます。インフルエンザの薬は市販されていないため、感染が疑わしい症状が出た場合は、速やかに医療機関で検査を受けてください。インフルエンザウイルスは初期ほど急激に増えるため、発症後48時間以内に投与することが重要です。したがって、市販の風邪薬で対処するようなことは絶対に避けてください。インフルエンザの治療薬を発症後48時間以内に投与することで、症状の軽減や合併症のリスクを低減することが期待されます。

 

インフルエンザ市販薬を服用される際の注意点

インフルエンザ市販薬を服用される際の注意点

インフルエンザにかかっている場合、市販の解熱剤を安易に使うことは望ましくありません。なぜなら解熱剤の成分のなかには、インフルエンザの合併症を引き起こす原因となりうるものがあるからです。具体的には、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸の3種です。これらが含まれる解熱剤をインフルエンザ感染時に服用すると、インフルエンザ脳炎・脳症の発症リスクを高めたり、重症化したりする危険性があります。またアスピリンには、肝機能障害や精神神経症状をきたす「ライ症候群」という合併症を引き起こす可能性も指摘されています。この合併症は主に乳幼児が発症しやすいとされていますが、成人でもまれに発症することがあるため、インフルエンザ感染時に服用することは避けてください。なお、こういった成分は市販の風邪薬にも含まれているケースが多いです。したがって、風邪かインフルエンザか判断できない場合は、安易に市販薬を使うことはやめてください。インフルエンザウイルスの感染が疑わしい症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

 

インフルエンザ治療薬と予防接種の併用について

インフルエンザ予防接種は、インフルエンザの重症化を防ぐ上で極めて有効な方法です。したがって、インフルエンザの重症化を予防するためにもインフルエンザ予防接種を推奨します。しかし、インフルエンザ予防接種をしても、手洗い・うがいをしっかりしても、完全にインフルエンザの感染を防ぐことはできません。そのため、インフルエンザウイルスの感染が不安な方は、抗インフルエンザ薬の予防投与をご検討ください。抗インフルエンザ薬の予防投与は、「インフルエンザに絶対かかりたくない」と考えている方にお勧めです。抗インフルエンザ薬を予防内服することによって、7~8割の方がインフルエンザの発症を防げると言われています。したがって、「大事なプレゼンが迫っている」「入学受験がある」など、人生の中で「どうしても今だけはインフルエンザにかかりたくない」という局面がある方は、抗インフルエンザ薬の予防投与をご検討ください。

インフルエンザの治療薬の適切な使い方と管理方法

インフルエンザの治療薬の適切な使い方と管理方法

インフルエンザの治療薬を適切に使用し、安全に管理をするためには医師の指示に従うことが大切です。用法・用量を正確に守り、予定通り服用を続けることが治療の鍵となります。また、薬物の保管は涼しい場所で湿気や直射日光を避け、小児の手の届かない場所に保管することが重要です。そして治療期間が終了したら、残った薬剤は処分し、再度使用しないように注意してください。なお、インフルエンザの治療薬を使用する際は、副作用やアレルギー反応に留意し、異常な症状が見られれば直ちに医師に報告するよう心掛けてください。

 

当院では予約なしでインフルエンザ予防接種が可能です

当院では予約なしでインフルエンザ予防接種が可能です

インフルエンザウイルスに感染すると、約1週間で回復する場合が多いです。しかし、「インフルエンザ脳炎」や「ウイルス性肺炎」といった重大な合併症が現れて重症化する場合もあります。したがって、重症化のリスクを下げるためにもインフルエンザ予防接種を推奨いたします。特に、高齢者や基礎疾患をお持ちの方には、インフルエンザ予防接種を強く推奨いたします。なお、当院では、予約なしでインフルエンザ予防接種を実施しております。現在、診察時間内であれば当日の接種も可能ですので、突然の接種希望にも柔軟に対応できます。インフルエンザ予防接種をご希望の方は、お気軽にご相談ください。