千葉県千葉市の東千葉駅周辺の糖尿病・代謝内科
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- 千葉県千葉市の東千葉駅周辺の糖尿病・代謝内科
こんな症状はありませんか?
- 皮膚の傷が治りにくい・痒くなる
- 頻尿
- 手足が痛む
- 目がよくかすむ
- 病気にかかりやすい
- 疲れやすい
板谷内科クリニックで行なっている検査
血液検査
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検査内容
個々の病態に応じ、HbA1cの他にも1,5-AG(イチゴエージー)やグリコアルブミンなども計測します。
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検査をお勧めする方
体がだるい、のどが渇く、多尿などの症状がある方
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検査時間
およそ30分〜1時間ほど
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検査によってわかる病気
- 糖尿病
- 高血圧など
尿検査
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検査内容
尿に含まれる血液(血尿)やタンパク(尿タンパク)成分を調べます。
血液やタンパクがあることは腎機能に異常がある可能性があります。 -
検査をお勧めする方
脂ものをよく食べる、多尿、のどが乾く、倦怠感があるなどの症状がある方
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検査時間
およそ10〜15分ほど
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検査によってわかる病気
- 糖尿病
- ネフローゼ症候群
- 腎症など
画像検査
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検査内容
超音波検査によって肝臓や腎臓、心臓機能や頸動脈(首の動脈)の厚さなどを確かめます。
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検査をお勧めする方
血糖値が高め、疲れやすい、多尿、糖尿病の方が家族にいるなどの症状がある方
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検査時間
およそ10〜20分ほど
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検査によってわかる病気
- 動脈硬化
- 糖尿病
- 脂肪肝
- 心筋症など
千葉市の糖尿病に対する取り組みのご紹介
千葉市では糖尿病対策の一環として『花見川糖尿病ゼロプロジェクト』を推進しています。
千葉市に流れる花見川の名前を冠するこちらの糖尿病ゼロプロジェクトでは、糖尿病の特徴や予防となる生活習慣について紹介されています。
(千葉市公式HP 花見川糖尿病ゼロプロジェクトの紹介より抜粋)
千葉市公式サイトに花見川糖尿病ゼロプロジェクトの紹介がありますので、興味のある方はご覧ください。
千葉市で糖尿病にお悩みの方へ
糖尿病は症状が現れにくく糖尿病と自覚できるまで時間がかかることから非常に厄介な病気です。
さらに糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害といった合併症を引き起こしやすいため、「もしかして糖尿病かも?」と感じられた方はすぐにかかりつけ医にご相談ください。
当院院長を務める藤本も日本糖尿病学会に所属する糖尿病の専門医です。
千葉市内や、若葉区近隣にお住まいの方は勿論のこと、市外にいらっしゃる方でも気兼ねなくご相談ください。
(日本糖尿病学会公式HPより抜粋)
千葉市の糖尿病専門医がいらっしゃる病院は15件ほどございます。
お近くで糖尿病についての診察を受けたい方は、ぜひ参考になさってください。
千葉市の糖尿病予防プログラムのご紹介
千葉県では糖尿病の合併症である糖尿病性腎症予防の一環として、千葉県糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定しております。
こちらの糖尿病予防プログラムの内容としては、千葉市を含む千葉県内で糖尿病リスクのある方に対して病院期間への継続的な受診の推奨と主治医による指導を行う、といったものになります。
主な対象者としては以下の通りです。
- 糖尿病の診断を受けていないが、検診結果から重症化リスクが高い方
- 糖尿病ではないが、腎機能低下・尿異常が見られる方
千葉市でも生活習慣病の重症化対策として糖尿病性腎症重症化予防事業を始めるなど、糖尿病および患者の方への対策や予防策は極めて重要です。
3年前までの推移ですが千葉県内でも人工透析を導入する患者数は徐々に増えているなど、千葉市および県全体での取り組みが急務となります。
(千葉県公式HPより抜粋)
千葉県の糖尿病予防プログラムについてより詳細に知りたい方は、公式HPからご参照ください。
千葉市の糖尿病など生活習慣病への取り組み紹介
千葉市では糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病に対する取り組みの一つとして、『健康作りに関する講演会』を行なっております。
こちらの講演会では糖尿病や健忘症といった病気の特徴や予防法について専門の講師をお呼びし、普段からできる対策などをご紹介いただく内容になっています。
昨年度は認知症や尿漏れといった身近な症状に対する講義を行なっております。
(千葉市公式HPより抜粋)
今年度のスケジュールについて詳細は公表されていませんが、糖尿病などでお困りの方はぜひ千葉市主催の講演会に参加してみてはいかがでしょうか。
糖尿病かもしれないと思った千葉市内の方へ
都賀ではおよそ30の糖尿病治療が可能な病院があります。
当院の藤本副院長は糖尿病専門医(日本糖尿病学会)の資格をもち、これまで糖尿病疾患をお持ちの患者の方を多く診られています。
糖尿病や高血圧など関連疾患をお持ちの方専門の糖尿病・代謝内科もありますので、糖尿病の症状にお悩みの方・糖尿病かもしれないと少しでも不安に感じた方はいつでも当院にお越しください。
「花見川糖尿病0プロジェクト」標語優秀作品が決まりました
千葉市内花見川区役所が主体となっている「花見川糖尿病0プロジェクト」にて、糖尿病予防啓発のための標語コンテストを行いました。
(千葉市公式サイト「糖尿病0プロジェクト」標語ページより引用)
小学生から一般の方まで糖尿病啓発に関する素晴らしい作品が並んでいます。
ぜひそれらをご覧になり、糖尿病予防に励みましょう。
糖尿病・代謝内科関連ブログ記事
糖尿病と遺伝の関係:1型・2型別の遺伝リスクと予防法
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病と遺伝の関係」について解説していきます。後半部分では、「糖尿病の治療法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病と遺伝の関係:1型・2型別の遺伝リスクと予防法
1型糖尿病の遺伝リスク、自己免疫疾患としての特性について
1型糖尿病:MHCとの相関について
2型糖尿病の遺伝要因や生活習慣病としての側面
血縁関係との関係:親や祖父母が糖尿病だった場合の影響
日本人特有の糖尿病遺伝因子:人種による違い
ピマ・インディアンと糖尿病
糖尿病の遺伝と環境要因:相互作用のメカニズム
遺伝的な糖尿病の治療法:最新アプローチと従来療法
生活習慣改善と定期検診にて適切に予防、糖尿病遺伝リスクを抑えましょう
糖尿病と遺伝の関係:1型・2型別の遺伝リスクと予防法
糖尿病は、体内で作られるインスリン(血糖値を抑えるホルモン)の働きが不足することにより、高血糖状態になる病気です。糖尿病は血糖値の調節だけでなく、脂質やタンパク質など、ほぼ全ての体内代謝に異常を及ぼします。また、糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞、失明、腎不全など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せず、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。なお、糖尿病において、家族歴は重要なリスク因子の一つとされています。疫学研究によると、両親が2型糖尿病である場合、その子供の発症リスクは3〜4倍程度高まるとされています。さらに、2型糖尿病は1型糖尿病に比べて遺伝的影響がより強いとされています。したがって、血縁者に2型糖尿病患者がいる場合、生活習慣をより注意深く管理することが重要です。1型糖尿病と2型糖尿病の違いについては、以下をご覧ください。
<1型糖尿病>
1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓のβ細胞に異常が起こることで発症する糖尿病で、インスリン依存型とも呼ばれます。1型糖尿病は、子供や青年などの若年層に多く見られますが、その割合は世界の糖尿病全体のうち「わずか5%」です。糖尿病は大きく分けて1型と2型がありますが、1型は自己免疫によるβ細胞の破壊が原因で発症します。一方、2型糖尿病は運動不足や過食などの生活習慣によって発症するため、性質が異なります。なお、1型糖尿病の主な治療方法は薬物療法で、インスリン製剤を注射することで症状の管理を行います。
<2型糖尿病>
2型糖尿病は、生活習慣や遺伝によって引き起こされる糖尿病です。2型糖尿病では、膵臓から分泌されるインスリン(ホルモン)が十分に働かなくなることで、血糖値が上昇します。なお、2型糖尿病の原因となるインスリン作用の低下には主に二つの理由があります。一つは、体内の組織がインスリンに対する抵抗性を増すことです。筋肉や肝臓などの組織がインスリンの作用に鈍感になり、インスリンが分泌されていても効果が発揮されにくくなります。そしてもう一つは、膵臓の機能低下によってインスリンの分泌量が減ることです。これらの要因は、遺伝に加えて、過食・過飲や運動不足などの生活習慣の乱れによっても引き起こされることがあります。したがって、糖尿病を予防するためには、健康的な食生活と適度な運動を続けることが重要です。
※1型糖尿病と2型糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病の分類について解説しているサイト」や「糖尿病が遺伝するのは何型?1型, 2型, その他の型の特徴と遺伝との関係について」をご覧ください。
1型糖尿病の遺伝リスク、自己免疫疾患としての特性について
1型糖尿病の発症には、環境因子と遺伝的要因の両方が関与していることが知られています。
環境因子とは、個人の生活環境や外的要因のことを指します。1型糖尿病に関連する主な環境因子には以下のようなものがあります。
・ウイルス感染(特に腸内ウイルスなど)
・食事要因(早期の牛乳摂取、グルテンの摂取時期など)
・衛生環境(過度に清潔な環境での成長)
・ストレス
・季節性(冬季に発症が多いという報告がある)
一方、遺伝的要因とは、個人の遺伝子に関連する因子のことを指します。そのため、1型糖尿病の親を持つ子供は、そうでない親の子供と比較して、やや高い発症リスクがあります。ただし、遺伝子を受け継いだからといって、必ずしも発症するわけではありません。1型糖尿病の発症には複数の遺伝子が関与していると考えられており、まだ完全には解明されていません。また、糖尿病は典型的な多因子遺伝疾患であり、遺伝因子に加えて環境因子が大きく影響します。したがって、たとえ遺伝的に糖尿病になりやすい体質を持っていても、不規則な食生活や運動不足、肥満といった環境因子を適切に管理することで、発症リスクを低減できる可能性があります。なお、1型糖尿病の遺伝性は2型糖尿病と比較すると相対的に低いとされています。具体的には、両親が共に1型糖尿病である場合、子供の発症リスクは3%〜5%程度です。片親のみが1型糖尿病の場合は、さらに低く1%〜2%とされています。詳しくは「1型糖尿病について解説しているサイト」をご覧ください。
1型糖尿病:MHCとの相関について
1型糖尿病の発症メカニズムにおいて、膵β細胞の主要組織適合性複合体(MHC)抗原の異常発現が重要な役割を果たしていると考えられています。大阪大学の研究では、1型糖尿病における膵β細胞でのMHC抗原異常発現のメカニズムを分子生物学的手法を用いて分析しました。まず、どのサイトカインが膵β細胞でMHC抗原を誘導するかを明らかにするため、ラットのインスリノーマ細胞株RINm5Fを用いて、さまざまなサイトカインがMHC抗原mRNAの発現に与える影響をNorthern blotting法で検討しました。その結果、サイトカイン無添加の状態では、正常なβ細胞と同様にクラスI MHC抗原のmRNAは検出されましたが、クラスII MHC抗原のmRNAは検出されませんでした。また、クラスI抗原のmRNAは、IFNγ単独またはIFNγ+TNFγの添加により増加しましたが、クラスII抗原のmRNAはどのサイトカインによっても発現しませんでした。一方、インスリンのmRNAは、IFNγ+TNFαの刺激により減少しました。次に、膵β細胞のインスリン分泌能がMHC抗原の発現によってどのように影響を受けるかを調べるため、ヒトMHC抗原(HLA-Cw2)遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子をリン酸ストロンチウム法でRINm5F細胞に導入し、さまざまな程度のMHC抗原を持続的に発現する12個のクローンを得ました。それぞれのクローンのグルコース刺激に対するインスリン分泌反応を調査したところ、MHC抗原の発現量とグルコースに対するインスリン分泌量との間に負の相関関係が認められました。この研究により、膵β細胞におけるMHC抗原の発現は様々なサイトカインによって制御され、また、MHC抗原の発現程度とインスリン分泌能との間には負の相関関係が存在することが明らかになりました。これらの結果は、1型糖尿病の発症における膵β細胞におけるMHC抗原発現の重要性を示しています。
2型糖尿病の遺伝要因や生活習慣病としての側面
2型糖尿病は多因子遺伝の典型例であり、家族内での遺伝的素因が重要な役割を果たします。両親がともに糖尿病である場合、その子供が発症する確率は約40%〜50%と高くなります。これは、父母から受け継ぐ遺伝的素因が影響していることを示しています(片親が糖尿病の場合、子供の発症確率は約27%です)。しかし、2型糖尿病の発症は遺伝要因だけで決まるわけではありません。環境因子も大きな影響を及ぼします。例えば、不健康な食生活、運動不足、ストレス、肥満などが発症リスクを高める要因となります。そのため、家系に糖尿病患者さんがいる場合は、遺伝リスクを認識しつつ、生活習慣の改善に努めることが重要です。家族全体で健康的なライフスタイルを共有することが予防の鍵となります。なお、遺伝因子を変えることはできませんが、環境因子はコントロール可能です。家族に糖尿病患者さんがいる方は、定期的な健康診断を受けるとともに、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、健康的なライフスタイルの維持に努めてください。「2型糖尿病について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
血縁関係との関係:親や祖父母が糖尿病だった場合の影響
糖尿病になりやすい体質(=遺伝因子)は親から子供へと受け継がれるため、家族に糖尿病患者さんがいる人は、そうでない人に比べて糖尿病になる確率が高くなります。例えば、片親が2型糖尿病の場合、その子供の発症リスクは約30%であり、両親が2型糖尿病の場合は50%以上に上昇します。つまり、おじいちゃんやおばあちゃんが糖尿病である場合、その子供の発症リスクが高まり、結果として孫の遺伝的リスクも上昇する可能性があります。しかし、2型糖尿病は多因子遺伝疾患であり、遺伝因子に加えて環境因子(生活習慣)や加齢などが発症に影響します。そのため、祖父母が糖尿病であっても、必ずしも、その子供や孫が糖尿病になるわけではありません。糖尿病の遺伝確率はあくまで目安であり、個々の家系や生活環境によって異なる可能性がありますので、必要以上に心配しないでください。重要なのは、血縁関係にある家族の糖尿病歴を把握し、自分のリスクを認識した上で、予防的な生活習慣を心がけることです。兄妹を含む家族全体で健康意識を高めることが、世代を超えた糖尿病予防につながります。遺伝的素因は変えることはできませんが、適切な食事管理、定期的な運動、ストレス管理などの生活習慣の改善によって、発症リスクを大幅に低減できることを忘れてはいけません。なお、糖尿病が遺伝する確率について詳しく知りたい方は「糖尿病が遺伝する確率は?血縁関係や型による確率の違い」をご覧ください。
日本人特有の糖尿病遺伝因子:人種による違い
日本の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病です。2型糖尿病は「生活習慣」と深く関わっているため、正しい生活習慣を身につけることが予防の基本です。しかし、日本人の場合は特別な注意が必要です。日本人は遺伝的に欧米人よりインスリンを分泌する能力が低いという特徴があります。そのため、軽度の肥満でも体内のインスリン需要に対応できず、糖尿病を発症することがあります。実際、日本人の2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」よりも、「インスリン分泌障害」が主な原因となるケースが多いです。しかし、この特徴は逆に糖尿病予防の可能性も示しています。生まれつきインスリンの分泌能力が低くても、適切な生活習慣でインスリン抵抗性の悪化を防げば、2型糖尿病の発症リスクを下げられる可能性があります。したがって、日本人の糖尿病予防には、体重管理だけでなく、バランスの良い食事や適度な運動など、総合的な生活習慣の改善が極めて重要です。なお、アジア7カ国90万人以上を対象とした大規模横断研究により、BMIと糖尿病の関連性が明らかになっております。この研究では、バングラデシュ、中国、インド、日本、韓国、シンガポール、台湾の18のコホートに所属するアジア人を対象に、BMIと糖尿病の関連を調査しました。その結果、BMIが高くなると糖尿病リスクが上昇する傾向が明らかになり、痩せ型(BMI 20.0-22.4)と肥満(BMI 35.0以上)の間で、糖尿病リスクは2.5~3倍の違いが見られました。また、BMIと糖尿病リスクの関係において、男女間で大きな違いは見られませんでしたが、年齢別に見ると、若年層ほどその関係が強く、特に50歳未満の階層では顕著でした。この現象には以下のような理由が考えられます。
1. 若年層では遺伝的要因が強く影響し、高いBMIとの複合的効果が糖尿病リスクを高める。
2. 急激な体重上昇が若年層で起こりやすく、速やかな糖尿病発病につながる。
3. 年齢に関連する他の要因(運動や食事習慣など)が影響している可能性がある。
4. 高齢の糖尿病患者では、長い病歴により体重が減少することが多く、統計的にBMIと糖尿病リスクの関係が弱く見える場合がある。
地域別の分析では、BMIの上昇に伴う糖尿病リスク増加の傾向は共通していましたが、詳細には地域差が見られました。具体的には、低いBMIと低い糖尿病有病率の相関は、インドとバングラデシュで最も強く、中国、台湾、韓国、シンガポールが中間、日本では最も弱く見られました。この差については、民族間の遺伝的相違や、低所得国における低BMIと低カロリー消費の強い結びつきなどが要因として考えられます。なお、日本の特徴として、糖尿病患者に対する生活習慣指導が行き届いており、多くの患者がデータ採取時点で減量していた可能性があります。また、国別のBMI区分と糖尿病有病率のグラフには水準や形状に違いがあり、糖尿病有病率の違いはBMIの違いだけでは説明できないことが示唆されています。詳しくは「東アジア人の2型糖尿病について解説しているサイト」をご覧ください。なお、日本人が糖尿病になりやすい理由について詳しく知りたい方は「日本人はなぜ糖尿病になりやすいの?遺伝と生活習慣の影響」や「日本人の糖尿病の遺伝素因・分子病態の解明」をご覧ください。
ピマ・インディアンと糖尿病
アメリカ・アリゾナ州に住むピマ・インディアンは、飢餓環境に適応するためにエネルギーを脂肪として蓄える体質を持つと考えられています。ピマ・インディアンは氷河期にベーリング海峡を渡り、アジアから北米に移住した部族で、狩猟や採集、原始的な農業で生活を支えていました。しかし、20世紀初頭にヨーロッパ系アメリカ人が到来し、生活環境が大きく変わりました。その結果、多くのピマ・インディアンは保護地区で生活費を支給されるようになり、欧米化した食事と運動不足により肥満と糖尿病が急速に広がりました。つまり、飢餓環境に適応していた体質が、現代の飽食と運動不足の環境では、肥満を引き起こしやすい遺伝的要因として働くことが分かったのです。なお、糖尿病専門医による調査では、アドレナリンβ3受容体遺伝子の多型が関係していることが明らかになりました。この遺伝子はエネルギーを節約する働きがあり、「倹約遺伝子」と呼ばれています。飽食の時代には、この遺伝子が肥満を引き起こす要因とされることが多いです。日本人の約3人に1人がこの「倹約遺伝子」を持っており、結果として、少量の食事でも肥満になりやすい体質を持っている可能性があります。
糖尿病の遺伝と環境要因:相互作用のメカニズム
糖尿病は、複数の「遺伝因子」と「環境因子」が複雑に絡み合う典型的な多因子遺伝疾患です。例えば、家族歴は重要なリスク因子の一つとされています。疫学研究では、兄妹に2型糖尿病患者さんがいる場合、発症リスクは2〜3倍に上昇するとされています。さらに、両親が2型糖尿病である場合、その子供の発症リスクは3〜4倍程度高まるとされています。しかし、家族に糖尿病患者さんがいるからといって、必ずしも発症するわけではありません。遺伝的素因に加え、生活習慣などの環境因子も大きく影響します。例えば、遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人でも、適切な食生活や定期的な運動習慣を維持することで、発症リスクを低減できる可能性があります。なお、2型糖尿病は1型糖尿病に比べ、遺伝的影響がより強いとされています。そのため、祖父母を含む家系や血縁者に2型糖尿病患者さんがいる場合、生活習慣をより注意深く管理することが重要です。遺伝因子を変えることはできませんが、環境因子はコントロール可能です。家族に糖尿病患者さんがいる方は、定期的な健康診断を受けるとともに、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、健康的なライフスタイルの維持に努めることが糖尿病予防の鍵となります。「糖尿病情報センター」でも同様の見解を述べています。
遺伝的な糖尿病の治療法:最新アプローチと従来療法
糖尿病治療の基本は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つの柱からなります。これらを適切に組み合わせることで、血糖値を正常範囲内に保ち、合併症のリスクを軽減することが可能です。
<食事療法>
糖尿病管理の基本となる食事療法では、適切な栄養バランスとカロリー摂取が重要です。炭水化物の質と量に注意を払い、食物繊維が豊富な野菜や全粒穀物を積極的に摂取します。また、タンパク質は適度に摂取し、脂質は不飽和脂肪酸を中心に控えめにします。食事の時間や量を規則的にし、間食を減らすことも大切です。個々の生活スタイルや嗜好に合わせた食事計画を立てることで、長期的な継続が可能になります。
<運動療法>
運動療法は糖尿病治療において重要な要素です。運動は体内のインスリンの効率的な利用を促進し、筋肉による血糖の取り込みを助けます。また、体重減少を通じてインスリン抵抗性を改善し、糖尿病の発症リスクを軽減します。さらに、運動は心血管の健康向上やストレス軽減にも効果があり、血圧やコレステロール値の改善も期待できます。適切な運動計画を立て、定期的に実施することで、血糖値のコントロールを改善し、糖尿病の合併症予防にも貢献します。したがって、医師や専門家と相談の上、自分に合った運動を定期的に行うことをお勧めします。
<薬物療法>
食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが困難な場合、薬物療法が導入されます。糖尿病の治療薬は、大きく分けて「血糖値を下げる薬(経口血糖降下薬)」と「インスリン注射」の2種類があります。経口血糖降下薬は、「食事療法」と「運動療法」を2~3ヵ月行っても血糖コントロールがうまくいかない2型糖尿病の患者さんに主に用いられます。一方、インスリン注射は1型糖尿病の患者さん全員と、経口血糖降下薬を使用しても血糖コントロールがうまくいかない2型糖尿病の患者さんに用いられます。詳しくは「」をご覧ください。
なお、近年、糖尿病治療において画期的な研究が進められています。特に、膵島細胞の再生と増殖に関する新たなアプローチが注目を集めています。以下は、MYCL遺伝子を活用した最新の研究情報です。
<MYCL遺伝子を用いた新アプローチ>
糖尿病を根本的に治療するためには、体内の膵島β細胞量を増やすことが必要です。現在の細胞移植治療では、脳死ドナーからの膵島細胞を使用していますが、深刻なドナー不足が問題となっています。この課題を解決するため、多能性幹細胞から膵島細胞を作製する研究が進められていますが、十分に機能する成熟膵島細胞の作製は難しく、まだ医療応用には至っていません。なお、最新の研究で、MYCL遺伝子が膵島細胞の発生と増殖に重要な役割を果たすことが明らかになりました。具体的には以下の通りです。
1.マウスの膵島細胞発生過程でMYCL遺伝子の発現が上昇
2.成体マウスでMYCL遺伝子を一時的に発現させることで、成熟膵島細胞の増殖に成功
3.増殖した膵島細胞は高い機能性を持ち、糖尿病モデルマウスの治療が可能
4.試験管内でも成熟膵島細胞の自己増殖誘導が可能で、これらの細胞移植によりマウス糖尿病を治療可能
5.ヒト膵島細胞の分化過程でもMYCL遺伝子の発現上昇を確認
6. MYCL遺伝子の誘導により、ヒト膵島細胞にも自己増殖活性を付与可能
この研究成果は、MYCL遺伝子を活用した革新的な糖尿病治療法の開発につながる可能性があります。具体的には、体外で増幅させた膵島細胞を用いた移植療法や、体内で直接膵島細胞を増やす技術の開発が期待されています。これらの新しいアプローチは、膵島細胞の再生医療を大きく前進させ、糖尿病患者さんに新たな治療の選択肢を提供する可能性があります。
生活習慣改善と定期検診にて適切に予防、糖尿病遺伝リスクを抑えましょう
糖尿病は遺伝的要因により発症リスクが高まるため、家族に糖尿病患者さんがいる場合、自身も糖尿病になる可能性が高いです。しかし、適切な予防策を講じることで、そのリスクを大幅に軽減できることが分かっています。まず、健康的な食事を心がけることが重要です。高カロリー、高脂肪、高糖質の食品を避け、野菜、果物、全粒穀物、良質なたんぱく質をバランス良く摂取することが推奨されます。次に、定期的な運動も効果的です。週に少なくとも150分の中等度の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)を行うことで、インスリンの感受性が改善され、血糖値のコントロールがしやすくなります。さらに、定期的な健康診断を受けることが大切です。血糖値のチェックやHbA1c(ヘモグロビンA1c)検査を通じて、早期に異常を発見することが可能です。特に遺伝的リスクが高い方は、年に一度の健康診断を欠かさず受けるよう心がけてください。早期に発見することで、生活習慣の改善や医療介入により糖尿病の進行を防ぐことができます。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2024.07.11
日本人はなぜ糖尿病になりやすいの?遺伝と生活習慣の影響
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「日本人はなぜ糖尿病になりやすいのか」について解説していきます。後半部分では、「アルコールと糖尿病の関係」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
日本人は糖尿病になりやすい?日本の糖尿病患者数について
なぜ日本人は糖尿病になりやすいのか?遺伝的要因について
日本人のBMIと糖尿病リスク:肥満度の基準の違い
日本人が糖尿病に罹りやすいのは糖質摂取量の増加の影響?
日本人が糖尿病になりやすいわけ:ストレス社会と糖尿病
日本人の飲酒習慣:アルコールと糖尿病の関係
糖尿病治療や相談に関してはいつでも当院にご相談ください
日本人は糖尿病になりやすい?日本の糖尿病患者数について
糖尿病は現代日本の重大な健康課題です。厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によれば、実に国民の5~6人に1人が該当するとされています。さらに、この調査では「食事習慣に関心はあるが改善するつもりがない」、という人は全体の25%、「関心もなく改善もしない」、という人は13%にのぼっています。したがって、生活習慣の改善に向けた取り組みは急務と言えます。令和2年患者調査による推計では、医療施設(病院・診療所)で受療した糖尿病患者数は、県内で43万5千人(全国では579万1千人)とされています。しかし、糖尿病は痛みなどの自覚症状や特別の症状がないことが多いため、医療機関や健診で糖尿病を指摘されても受診しない事例や、受診を中断する事例が少なくありません。そのため、実際の有病者数は、患者調査による患者数よりも相当程度多いものと考えられています。なお、糖尿病は大きく1型と2型に分けられ、それぞれ発症原因が異なります。以下に、1型糖尿病、2型糖尿病の違いについて説明します。
<1型糖尿病>
1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓のβ細胞に異常が起こることで発症する糖尿病で、インスリン依存型とも呼ばれます。1型糖尿病は、子供や青年などの若年層に多く見られますが、その割合は世界の糖尿病全体のうち「わずか5%」です。糖尿病は大きく分けて1型と2型がありますが、1型は自己免疫によるβ細胞の破壊が原因で発症します。一方、2型糖尿病は運動不足や過食などの生活習慣によって発症するため、性質が異なります。なお、1型糖尿病の主な治療方法は薬物療法で、インスリン製剤を注射することで症状の管理を行います。
<2型糖尿病>
2型糖尿病は、生活習慣や遺伝によって引き起こされる糖尿病です。2型糖尿病では、膵臓から分泌されるインスリン(ホルモン)が十分に働かなくなることで、血糖値が上昇します。なお、2型糖尿病の原因となるインスリン作用の低下には主に二つの理由があります。一つは、体内の組織がインスリンに対する抵抗性を増すことです。筋肉や肝臓などの組織がインスリンの作用に鈍感になり、インスリンが分泌されていても効果が発揮されにくくなります。そしてもう一つは、膵臓の機能低下によってインスリンの分泌量が減ることです。これらの要因は、遺伝に加えて、過食・過飲や運動不足などの生活習慣の乱れによっても引き起こされることがあります。したがって、糖尿病を予防するためには、健康的な食生活と適度な運動を続けることが重要です。詳しくは「2型糖尿病について解説しているサイト」をご覧ください。
なぜ日本人は糖尿病になりやすいのか?遺伝的要因について
日本の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病です。2型糖尿病は「生活習慣」と深く関わっているため、正しい生活習慣を身につけることが予防の基本です。しかし、日本人を含む黄色人種は、他の人種と比較して糖尿病の発症率が高いことが知られているため、特別な注意が必要です。日本人を含む黄色人種は、遺伝的に欧米人よりインスリンを分泌する能力が低いという特徴があります。そのため、軽度の肥満でも体内のインスリン需要に対応できず、糖尿病を発症することがあります。実際、日本人の2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」よりも、「インスリン分泌障害」が主な原因となるケースが多いです。しかし、この特徴は逆に糖尿病予防の可能性も示しています。生まれつきインスリンの分泌能力が低くても、適切な生活習慣でインスリン抵抗性の悪化を防げば、2型糖尿病の発症リスクを下げられる可能性があります。したがって、日本人の糖尿病予防には、体重管理だけでなく、バランスの良い食事や適度な運動など、総合的な生活習慣の改善が極めて重要です。定期的な健康診断を受け、必要に応じて早めに生活習慣を見直すことが、糖尿病予防の鍵となります。「2型糖尿病について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
日本人のBMIと糖尿病リスク:肥満度の基準の違い
アジア7カ国90万人以上を対象とした大規模横断研究により、BMIと糖尿病の関連性が明らかになっております。この研究では、バングラデシュ、中国、インド、日本、韓国、シンガポール、台湾の18のコホートに所属するアジア人を対象に、BMIと糖尿病の関連を調査しました。その結果、BMIが高くなると糖尿病リスクが上昇する傾向が明らかになり、痩せ型(BMI 20.0-22.4)と肥満(BMI 35.0以上)の間で、糖尿病リスクは2.5~3倍の違いが見られました。また、BMIと糖尿病リスクの関係において、男女間で大きな違いは見られませんでしたが、年齢別に見ると、若年層ほどその関係が強く、特に50歳未満の階層では顕著でした。この現象には以下のような理由が考えられます。
1. 若年層では遺伝的要因が強く影響し、高いBMIとの複合的効果が糖尿病リスクを高める。
2. 急激な体重上昇が若年層で起こりやすく、速やかな糖尿病発病につながる。
3. 年齢に関連する他の要因(運動や食事習慣など)が影響している可能性がある。
4. 高齢の糖尿病患者では、長い病歴により体重が減少することが多く、統計的にBMIと糖尿病リスクの関係が弱く見える場合がある。
地域別の分析では、BMIの上昇に伴う糖尿病リスク増加の傾向は共通していましたが、詳細には地域差が見られました。具体的には、低いBMIと低い糖尿病有病率の相関は、インドとバングラデシュで最も強く、中国、台湾、韓国、シンガポールが中間、日本では最も弱く見られました。この差については、民族間の遺伝的相違や、低所得国における低BMIと低カロリー消費の強い結びつきなどが要因として考えられます。なお、日本の特徴として、糖尿病患者に対する生活習慣指導が行き届いており、多くの患者がデータ採取時点で減量していた可能性があります。また、国別のBMI区分と糖尿病有病率のグラフには水準や形状に違いがあり、糖尿病有病率の違いはBMIの違いだけでは説明できないことが示唆されています。
日本人が糖尿病に罹りやすいのは糖質摂取量の増加の影響?
戦後、日本人の食生活は劇的に変化しました。高度経済成長期を経て、かつての質素な和食中心の食事から、豊かで多様な食生活へと移行しました。この変化に伴い、糖質摂取量も大きく増加しました。戦後直後、主食である米の摂取量は一日あたり約330グラムでしたが、1960年代には約350グラムまで増加しました。しかし、その後は徐々に減少し、現在では約150グラムにまで低下しています。一方で、パンや麺類などの小麦製品の消費が増加し、全体的な糖質摂取量は高い水準を維持しています。さらに、清涼飲料水や加工食品の普及により、単純糖質の摂取も増えました。これらの食品は血糖値を急激に上昇させやすく、インスリン分泌に負担をかけます。なお、糖質摂取量の増加は確かに糖尿病リスクを高める一因となっていますが、それだけが原因ではありません。運動不足や肥満、ストレスなども重要な要因です。また、日本人は欧米人に比べて膵臓のβ細胞の機能が弱いという遺伝的特徴も指摘されています。糖尿病予防には、バランスの取れた食事と適度な運動が重要です。糖質の質と量に注意を払いつつ、日本古来の和食の知恵を現代に活かすことも有効な対策となります。「糖尿病ネットワーク」でも同様の見解を述べています。
日本人が糖尿病になりやすいわけ:ストレス社会と糖尿病
日本は、経済的にも技術的にも高度に発展しているため、便利で快適な生活を享受できます。しかしながら、一方で「ストレス社会」という大きな課題を抱えています。例えば、長時間労働は日本の労働文化の特徴の一つです。残業や休日出勤が常態化し、仕事と生活のバランスが崩れやすい環境にあります。この結果、十分な睡眠や運動の時間が確保できず、不規則な食生活に陥りやすくなります。また、日本の都市部では、通勤ラッシュや狭小な生活空間など、慢性的なストレスにさらされやすい環境があります。このような持続的なストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を促し、血糖値の上昇やインスリン抵抗性を引き起こす可能性があります。さらに、日本社会特有の「空気を読む」文化や、集団主義的な価値観も、個人に心理的なプレッシャーを与える要因となっています。加えて、日本の高齢化社会も糖尿病リスクを高める要因の一つです。高齢者は社会的孤立や経済的不安などのストレスにさらされやすく、これらが糖尿病の発症や悪化につながる可能性があります。ストレスと糖尿病の関係は複雑ですが、ストレス管理が糖尿病予防に重要であることは明らかです。日本社会においては、労働環境の改善、ワークライフバランスの推進、そして個人レベルでのストレス対処法の習得が求められています。糖尿病予防には、日本社会特有のストレス要因を認識し、個人と社会の両レベルで対策を講じていくことが不可欠です。「糖尿病サイト」でも同様の見解を述べています。
日本人の飲酒習慣:アルコールと糖尿病の関係
日本の飲酒文化は、ビジネスや社交の場で深く根付いています。「飲みニケーション」という言葉に象徴されるように、アルコールを介したコミュニケーションは、日本社会の特徴の一つと言えます。しかし、この文化が糖尿病リスクに与える影響は無視できません。なぜならアルコールと血糖値の関係は複雑だからです。アルコールは、短期的には血糖値を下げる効果があります。これは、アルコールが肝臓でのブドウ糖生成を抑制するためです。しかし、この効果は一時的であり、長期的には血糖値の上昇や糖尿病リスクの増加につながります。そのため、過度な飲酒は明らかに糖尿病リスクを高めます。大量のアルコール摂取は、膵臓の機能を低下させ、インスリンの分泌や働きを妨げる可能性があります。また、アルコールは高カロリーであるため、過剰摂取は肥満につながります(肥満は糖尿病の主要なリスク因子の一つです)。さらに、日本の飲酒文化の特徴として、「つまみ」と呼ばれる食事と一緒にアルコールを摂取することが挙げられます。これらの食事は高カロリー、高脂肪、高塩分であるため、糖尿病リスクをさらに高める可能性があります。また、アルコールの種類も重要です。日本酒や焼酎などの蒸留酒は、ビールやワインよりも血糖値を急激に上昇させる傾向があります。アルコールは食欲を増進させるため、過食につながりやすく、結果として血糖コントロールを難しくすることもあります。特に糖尿病患者や予備群の方々にとっては、節度ある飲酒が重要です。アルコールと糖尿病の関係を理解し、適切な飲酒習慣を身につけることが糖尿病予防の重要な課題と言えます。「厚生労働省のe-ヘルスネット」でも同様の見解を述べています。
糖尿病治療や相談に関してはいつでも当院にご相談ください
糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病性網膜症や糖尿病ケトアシドーシスなど、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せず、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。合併症の早期発見と適切な治療は、生活の質を向上させるだけでなく、重篤な合併症の発症を防ぐ役割を果たします。したがって定期的な医師の診察と健康チェックを通じて、病気の進行を早期に把握し、必要な処置を行うことが重要です。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、糖尿病の症状かもと気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2024.07.10
糖尿病が遺伝するのは何型?1型, 2型, その他の型の特徴と遺伝との関係について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病の主な型」について解説していきます。後半部分では「糖尿病の遺伝リスク」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください .cv_box {
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【目次】
糖尿病の型とは:1型糖尿病, 2型糖尿病, その他の型について
1型糖尿病と遺伝:自己免疫疾患としての特性
2型糖尿病と遺伝:生活習慣病としての側面
その他の特殊な型の糖尿病:遺伝子異常と遺伝性
糖尿病ケトアシドーシスについて
糖尿病の遺伝因子:インスリン分泌とインスリン抵抗性への影響
糖尿病の遺伝リスクがわかる遺伝子検査の紹介
糖尿病予防で遺伝リスクを抑えましょう
糖尿病の型とは:1型糖尿病, 2型糖尿病, その他の型について
糖尿病は、体内で作られるインスリン(血糖値を抑えるホルモン)の働きが不足することにより、高血糖状態になる病気です。糖尿病は血糖値の調節だけでなく、脂質やタンパク質など、ほぼ全ての体内代謝に異常を及ぼします。また、糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞、失明、腎不全など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せずに速やかに専門医の診察を受けることが重要です。なお、糖尿病は大きく1型と2型に分けられ、それぞれ発症原因が異なります。また、妊娠中の女性が罹患する「妊娠糖尿病」もあります。以下に、1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病の違いについて説明します。
<1型糖尿病>
1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓のβ細胞に異常が起こることで発症する糖尿病で、インスリン依存型とも呼ばれます。1型糖尿病は、子供や青年などの若年層に多く見られますが、その割合は世界の糖尿病全体のうち「わずか5%」です。糖尿病は大きく分けて1型と2型がありますが、1型は自己免疫によるβ細胞の破壊が原因で発症します。一方、2型糖尿病は運動不足や過食などの生活習慣によって発症するため、性質が異なります。なお、1型糖尿病の主な治療方法は薬物療法で、インスリン製剤を注射することで症状の管理を行います。詳しくは「糖尿病情報センターのサイト」をご覧ください。
<2型糖尿病>
2型糖尿病は、生活習慣や遺伝によって引き起こされる糖尿病です。2型糖尿病では、膵臓から分泌されるインスリン(ホルモン)が十分に働かなくなることで、血糖値が上昇します。なお、2型糖尿病の原因となるインスリン作用の低下には主に二つの理由があります。一つは、体内の組織がインスリンに対する抵抗性を増すことです。筋肉や肝臓などの組織がインスリンの作用に鈍感になり、インスリンが分泌されていても効果が発揮されにくくなります。そしてもう一つは、膵臓の機能低下によってインスリンの分泌量が減ることです。これらの要因は、遺伝に加えて、過食・過飲や運動不足などの生活習慣の乱れによっても引き起こされることがあります。したがって、糖尿病を予防するためには、健康的な食生活と適度な運動を続けることが重要です。「糖尿病ネットワーク」でも同様の見解を述べています。
<妊娠糖尿病>
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です(糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す“血糖値”が上がった状態です)。今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には、糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に「妊娠糖尿病」と診断されます。なお、糖代謝異常には、大きく分けて「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」の3種類があります。「妊娠糖尿病」は前述した通り、妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。一方、「糖尿病合併妊娠」とは、既に糖尿病と診断されていた方が妊娠した状態を指します。最後に、「妊娠中の明らかな糖尿病」は、妊娠前から未診断の糖尿病が存在した可能性がある場合や、妊娠中に糖尿病と診断された場合を含みます。これらの状況では、妊娠糖尿病よりも重度であるため、血糖値の厳密な管理が必要となります。
1型糖尿病と遺伝:自己免疫疾患としての特性
1型糖尿病の発症には、環境因子と遺伝的要因の両方が関与していることが知られています。環境因子とは、個人の生活環境や外的要因のことを指します。1型糖尿病に関連する主な環境因子には以下のようなものがあります。
・ウイルス感染(特に腸内ウイルスなど)
・食事要因(早期の牛乳摂取、グルテンの摂取時期など)
・衛生環境(過度に清潔な環境での成長)
・ストレス
・季節性(冬季に発症が多いという報告がある)
一方、遺伝的要因とは、個人の遺伝子に関連する因子のことを指します。そのため、1型糖尿病の親を持つ子供は、そうでない親の子供と比較して、やや高い発症リスクがあります。ただし、遺伝子を受け継いだからといって、必ずしも発症するわけではありません。1型糖尿病の発症には複数の遺伝子が関与していると考えられており、まだ完全には解明されていません。また、糖尿病は典型的な多因子遺伝疾患であり、遺伝因子に加えて環境因子が大きく影響します。したがって、たとえ遺伝的に糖尿病になりやすい体質を持っていても、不規則な食生活や運動不足、肥満といった環境因子を適切に管理することで、発症リスクを低減できる可能性があります。なお、1型糖尿病の遺伝性は2型糖尿病と比較すると相対的に低いとされています。具体的には、両親が共に1型糖尿病である場合、子供の発症リスクは3%〜5%程度です。片親のみが1型糖尿病の場合は、さらに低く1%〜2%とされています。詳しくは「糖尿病が遺伝する確率は?血縁関係や型による確率の違い」や「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
2型糖尿病と遺伝:生活習慣病としての側面
2型糖尿病は多因子遺伝の典型例であり、家族内での遺伝的素因が重要な役割を果たします。両親がともに糖尿病である場合、その子供が発症する確率は約40%〜50%と高くなります。これは、父母から受け継ぐ遺伝的素因が影響していることを示しています(片親が糖尿病の場合、子供の発症確率は約27%です)。しかし、2型糖尿病の発症は遺伝要因だけで決まるわけではありません。環境因子も大きな影響を及ぼします。例えば、不健康な食生活、運動不足、ストレス、肥満などが発症リスクを高める要因となります。そのため、家系に糖尿病患者さんがいる場合は、遺伝リスクを認識しつつ、生活習慣の改善に努めることが重要です。家族全体で健康的なライフスタイルを共有することが予防の鍵となります。なお、遺伝因子を変えることはできませんが、環境因子はコントロール可能です。家族に糖尿病患者さんがいる方は、定期的な健康診断を受けるとともに、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、健康的なライフスタイルの維持に努めてください。
その他の特殊な型の糖尿病:遺伝子異常と遺伝性
糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病だけでなく、MODY(Maturity-Onset Diabetes of the Young)と呼ばれる遺伝子異常による若年発症型の糖尿病もあります。MODYは、若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種で、「若年発症成人型糖尿病」とも言われています。以下にMODYの特徴や注意点をご紹介します。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの型
MODYとは若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種で、若年発症成人型糖尿病とも言われています。MODYは通常、2型糖尿病と似た症状を示しますが、1型糖尿病や2型糖尿病とは異なる遺伝的原因によって発症します。具体的には、MODYは常染色体優性遺伝の形式で発症する糖尿病であり、糖代謝に関わる単一遺伝子の機能障害が原因で糖尿病が発症します。そのため、2型糖尿病患者のように肥満を伴わないことが特徴です。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの発症年齢
・通常25歳未満で発症します。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの特徴
・肥満を伴わないのが一般的です。
・強い家族性があり、複数の世代に糖尿病患者さんが見られます。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの診断方法
・家族歴の詳細な聴取が重要です。
・確定診断には遺伝子検査が必要です。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの注意点
・1型や2型糖尿病と誤診されることがあります。
・適切な診断は治療方針の決定に重要です。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの歴史
MODYの概念は1975年にTattersallとFajansによって提唱されました。当初の診断基準は以下の3点でした。
・25歳未満での糖尿病診断
・同胞の約半数に糖尿病がある
・少なくとも3世代に糖尿病患者さんがいる
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの可能性が高い方の特徴
MODYの可能性が高い方の特徴としては、通常25歳未満で糖尿病と診断され、肥満を伴わないことが一般的です。また、家族歴が重要な指標となり、特に親や兄弟姉妹、祖父母など、複数の世代にわたって若年発症の糖尿病患者さんがいる傾向があります。なお、MODYは1型糖尿病とは異なり、自己抗体検査が陰性であることが多く、また2型糖尿病の一般的なリスク因子(不健康な食生活、運動不足など)とは無関係に発症することがあります。したがって、これらの特徴を複数満たす方は、MODYの可能性を考慮し、専門医への相談や遺伝子検査の実施を検討することが望ましいです。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYの原因遺伝子
MODYは単一遺伝子の変異によって引き起こされる特殊な型の糖尿病です。MODYに関係する遺伝子は、これまでに約14種類が判明しており、その中でもHNF-1α(MODY3)、HNF-4α(MODY1)、GCK(MODY2)が主要なものです。そして、これらの遺伝子の多くは、膵臓のβ細胞の機能維持に重要な役割を果たしています。具体的には、インスリンの転写因子や膵臓の発生、グルコース代謝に関与する遺伝子などが含まれます。これらの遺伝子に変異が生じることで、インスリンの産生や分泌に異常が起こり、結果として糖尿病を発症します。なお、各遺伝子の変異によってMODYのサブタイプが決定され、それぞれ臨床像や治療反応性が異なる可能性があります。そのため、遺伝子検査による正確な診断は、個々の患者さんに最適な治療方針を立てる上で非常に重要です。また、MODYの遺伝様式は常染色体優性遺伝であり、親から子へ50%の確率で遺伝子変異が受け継がれる可能性があります。このような遺伝的背景を理解することは、家族内での早期診断や予防的介入にも役立つ可能性があります。「糖尿病について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
【若年発症する肥満を伴わない糖尿病の一種】MODYはなぜ遺伝するのか
MODYは常染色体優性遺伝の形式をとる遺伝性疾患です。これは、原因となる遺伝子変異を持つ親から子へ50%の確率でその変異が受け継がれることを意味します。つまり、両親のうち一方がMODYの原因遺伝子変異を持っている場合、その子供は2分の1の確率でその変異を受け継ぐ可能性があります。ただし、遺伝子変異を受け継いだからといって、必ずしも全ての人がMODYを発症するわけではありません。遺伝子の浸透率(遺伝子変異を持つ人が実際に疾患を発症する確率)は100%ではないため、変異を受け継いでも症状が現れない、あるいは軽度にとどまる場合もあります。また、MODYの発症年齢や症状の程度は個人差が大きいことも知られています。このような遺伝的特徴を理解することは、早期診断、適切な遺伝カウンセリングを行う上で重要です。MODYが疑われる場合や、家族にMODY患者さんがいる場合は、専門医に相談し、必要に応じて遺伝子検査や遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。
糖尿病ケトアシドーシスについて
糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病急性合併症である「糖尿病昏睡」の一つです。血糖値を下げる働きをするインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こります。糖尿病ケトアシドーシスの初期症状は、強い喉の渇きと頻尿、体重減少、吐き気、嘔吐、疲労などが起こり、小児の場合は腹痛がみられることもあります。詳しくは「糖尿病ケトアシドーシスについて解説しているサイト」をご覧ください。
糖尿病の遺伝因子:インスリン分泌とインスリン抵抗性への影響
糖尿病でインスリンが十分に働かなくなる主な原因には、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性の2つがあります。
<インスリン分泌不足>
インスリン分泌不足は糖尿病の主要な原因の一つです。通常、血糖値が上昇すると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。このインスリンは、血液中のブドウ糖を体の細胞に取り込ませる重要な役割を果たしています。しかし、インスリン分泌不足の状態では、この過程が適切に機能しません。その結果、血液中のブドウ糖が細胞に十分に取り込まれず、血糖値が上昇してしまいます。インスリン分泌不足の原因は複雑ですが、主にインスリン産生や分泌に関わる遺伝子の異常が関係していると考えられています。これらの遺伝子異常により、β細胞の機能が低下したり、インスリンの合成や放出に問題が生じたりすることがあります。また、1型糖尿病ではβ細胞が自己免疫反応により破壊されることでインスリン分泌不足が起こります。一方、2型糖尿病の初期段階では、インスリン抵抗性を補うために過剰なインスリン分泌が続き、やがてβ細胞が疲弊してインスリン分泌が低下することがあります。このように、2型糖尿病の進行は徐々にβ細胞の機能低下を伴い、最終的にはインスリン分泌不足に至ることがあります。なお、インスリン分泌不足は、適切な治療により、インスリン分泌を促進したり、外部からインスリンを補充したりすることで、血糖コントロールの改善が可能です。早期発見と適切な管理が、合併症の予防と生活の質の維持に重要です。「糖尿病について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
<インスリン抵抗性>
インスリン抵抗性とは、体内に十分量のインスリンが存在しているにもかかわらず、その効果が十分に発揮されない状態を指します。通常、インスリンは血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きをしますが、インスリン抵抗性がある場合、この機能が低下します。つまり、標的臓器(主に筋肉、肝臓、脂肪組織)におけるインスリンの感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態です。インスリン抵抗性の原因は、遺伝的要因と環境要因の両方が関与するため複雑です。遺伝的要因としては、インスリン感受性に関わる様々な遺伝子の変異や多型が知られています。一方、環境要因としては、肥満、過食、高脂肪食の摂取、運動不足、慢性的なストレスなどが挙げられます。これらの要因が複合的に作用することで、インスリン抵抗性が進行し、結果として2型糖尿病の発症リスクが高まります。しかし、生活習慣の改善(適切な食事管理、定期的な運動、ストレス管理など)によってインスリン感受性を向上させることが可能です。そのため、早期の介入と継続的な管理が、インスリン抵抗性の改善と糖尿病の予防・管理に重要な役割を果たします。
糖尿病の遺伝リスクがわかる遺伝子検査の紹介
近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、日本人においても多数の糖尿病関連遺伝子多型が同定されています。大規模な研究では、約4,750人の日本人を対象に、11箇所の代表的な遺伝子多型と糖尿病発症リスクの関連を調査しました。その結果、CDKAL1、KCNQ1、CDKN2A/B遺伝子領域の特定の多型を持つ人は、糖尿病発症リスクが1.21〜1.28倍高くなることが判明しました。さらに、リスク遺伝子の数が最も多いグループは、最も少ないグループと比較して2.34倍の発症リスクがありました。しかし、従来のリスク因子(年齢、性別、BMI、喫煙歴、家族歴など)に遺伝的リスクスコアを加えても、予測能の向上はわずか2.1%にとどまりました。このため、研究グループは、遺伝子多型情報の臨床的有用性は現時点では限定的である可能性を指摘しています。なお、今後の課題として、血糖値変動を考慮したモデルの開発や、より多くの遺伝子多型を含めた分析が挙げられています。
糖尿病予防で遺伝リスクを抑えましょう
糖尿病は遺伝的要因により発症リスクが高まるため、家族に糖尿病患者さんがいる場合、自身も糖尿病になる可能性が高いです。しかし、適切な予防策を講じることで、そのリスクを大幅に軽減できることが分かっています。まず、健康的な食事を心がけることが重要です。高カロリー、高脂肪、高糖質の食品を避け、野菜、果物、全粒穀物、良質なたんぱく質をバランス良く摂取することが推奨されます。次に、定期的な運動も効果的です。週に少なくとも150分の中等度の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)を行うことで、インスリンの感受性が改善され、血糖値のコントロールがしやすくなります。さらに、定期的な健康診断を受けることが大切です。血糖値のチェックやHbA1c(ヘモグロビンA1c)検査を通じて、早期に異常を発見することが可能です。特に遺伝的リスクが高い方は、年に一度の健康診断を欠かさず受けるよう心がけてください。早期に発見することで、生活習慣の改善や医療介入により糖尿病の進行を防ぐことができます。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2024.07.09
糖尿病が遺伝する確率は?血縁関係や型による確率の違い
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病と遺伝の関係」について解説していきます。後半部分では「糖尿病の予防策」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病と遺伝の関係について
親から子へ糖尿病が遺伝する確率について
母親が妊娠糖尿病の場合の子供への遺伝について
祖父母から孫へ糖尿病が遺伝する確率について
兄弟姉妹が糖尿病の時の遺伝確率について
糖尿病の遺伝因子:特定の遺伝子と体質の関係
糖尿病遺伝を予防できるか?
糖尿病に関してはいつでもご相談ください
糖尿病と遺伝の関係について
糖尿病は、複数の「遺伝因子」と「環境因子」が複雑に絡み合う典型的な多因子遺伝疾患です。例えば、家族歴は重要なリスク因子の一つとされています。疫学研究では、兄妹に2型糖尿病患者さんがいる場合、発症リスクは2〜3倍に上昇するとされています。さらに、両親が2型糖尿病である場合、その子供の発症リスクは3〜4倍程度高まるとされています。そのため、90%の2型糖尿病患者さんは家族に2型を持つことが知られています。しかし、家族に糖尿病患者さんがいるからといって、必ずしも発症するわけではありません。遺伝的素因に加え、生活習慣などの環境因子も大きく影響します。例えば、遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人でも、適切な食生活や定期的な運動習慣を維持することで、発症リスクを低減できる可能性があります。なお、2型糖尿病は1型糖尿病に比べ、遺伝的影響がより強いとされています。したがって、祖父母やおじいちゃん、おばあちゃんを含む家系や血縁者に2型糖尿病患者さんがいる場合、生活習慣をより注意深く管理することが重要です。遺伝因子を変えることはできませんが、環境因子はコントロール可能です。家族に糖尿病患者さんがいる方は、定期的な健康診断を受けるとともに、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、健康的なライフスタイルの維持に努めることが糖尿病予防の鍵となります。「厚生労働省の公式サイト」や「糖尿病情報センターのサイト」でも同様の見解を述べています。
親から子へ糖尿病が遺伝する確率について
2型糖尿病は多因子遺伝の典型例であり、家族内での遺伝的素因が重要な役割を果たします。両親がともに糖尿病である場合、その子供が発症する確率は約40%〜50%と高くなります。これは、父母から受け継ぐ遺伝的素因が影響していることを示しています(片親が糖尿病の場合、子供の発症確率は約27%です)。一方、1型糖尿病の場合、遺伝の影響は2型ほど顕著ではありません。両親が共に1型糖尿病である場合、子供の発症リスクは3%〜5%程度です。片親のみが1型糖尿病の場合は、さらに低く1%〜2%とされています。しかし、糖尿病の発症は遺伝要因だけで決まるわけではありません。環境因子も大きな影響を及ぼします。例えば、不健康な食生活、運動不足、ストレス、肥満などが発症リスクを高める要因となります。そのため、家系に糖尿病患者さんがいる場合、特に祖父母、兄妹を含む血縁者に糖尿病患者さんがいる場合は、遺伝リスクを認識しつつ、生活習慣の改善に努めることが重要です。家族全体で健康的なライフスタイルを共有することが予防の鍵となります。
母親が妊娠糖尿病の場合の子供への遺伝について
妊娠糖尿病の母親から生まれた子供は、小児期や成人期に太りやすく、また糖代謝異常(2型糖尿病や境界型糖尿病)になりやすいと言われています。遺伝的な側面から見ると、母親が2型糖尿病を持っている場合、その子供が糖尿病を発症するリスクは約40%〜50%と言われています。しかし、妊娠糖尿病に関しての遺伝確率は明確ではありません。多因子遺伝の要素が関与している可能性があるため、妊娠糖尿病の正確な遺伝確率は、まだ完全には解明されていません。なお、妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常を指します(糖代謝異常とは、血液中の糖の量を示す「血糖値」が高くなる状態です)。これまでに糖尿病の診断を受けたことがないにもかかわらず、妊娠中に初めて指摘される糖代謝異常で、糖尿病の診断基準を満たさない人を妊娠糖尿病と言います。具体的には、糖負荷試験で、空腹時血糖が92mg/dL以上、1時間値が180mg/dL以上、または2時間値が153mg/dL以上のいずれか1つ以上を満たす場合に「妊娠糖尿病」と診断されます。詳しくは「都賀で妊娠糖尿病にお悩みの方へ」をご覧ください。
祖父母から孫へ糖尿病が遺伝する確率について
2型糖尿病になりやすい体質(=遺伝因子)は親から子供へと受け継がれるため、家族に糖尿病患者さんがいる人は、そうでない人に比べて糖尿病になる確率が高くなります。例えば、片親が2型糖尿病の場合、その子供の発症リスクは約30%であり、両親が2型糖尿病の場合は50%以上に上昇します。つまり、おじいちゃんやおばあちゃんが糖尿病である場合、その子供の発症リスクが高まり、結果として孫の遺伝的リスクも上昇する可能性があります。しかし、2型糖尿病は多因子遺伝疾患であり、遺伝因子に加えて環境因子(生活習慣)や加齢などが発症に影響します。そのため、祖父母が糖尿病であっても、必ずしもその子供や孫が糖尿病になるわけではありません。糖尿病の遺伝確率はあくまで目安であり、個々の家系や生活環境によって異なる可能性がありますので、必要以上に心配しないでください。重要なのは、血縁関係にある家族の糖尿病歴を把握し、自分のリスクを認識した上で、予防的な生活習慣を心がけることです。兄妹を含む家族全体で健康意識を高めることが、世代を超えた糖尿病予防につながります。遺伝的素因は変えることはできませんが、適切な食事管理、定期的な運動、ストレス管理などの生活習慣の改善によって、発症リスクを大幅に低減できることを忘れてはいけません。
兄弟姉妹が糖尿病の時の遺伝確率について
疫学研究の結果では、兄弟姉妹に2型糖尿病患者さんがいる場合、自身の糖尿病発症リスクは一般人口と比べて2〜3倍に上昇することが分かっています。また、両親が2型糖尿病である場合、その子供の発症リスクは3〜4倍程度高まります。しかし、父母やおじいちゃん、おばあちゃんを含む家族に糖尿病患者さんがいるからといって、必ずしも発症するわけではありません。糖尿病は典型的な多因子遺伝疾患であり、遺伝因子に加えて環境因子が大きく影響します。たとえ遺伝的に糖尿病になりやすい体質を持っていても、不規則な食生活や運動不足、肥満といった環境因子を適切に管理することで、発症リスクを低減できる可能性があります。家系に糖尿病の方がいる場合は、環境因子に注意し、健康的な生活習慣を整えることが重要です。また、兄妹間で健康情報を共有し、互いに支え合うことも有効な予防策となります。積極的に健康的なライフスタイルを追求し、家族全員で糖尿病リスクの管理に努めてください。
糖尿病の遺伝因子:特定の遺伝子と体質の関係
家族歴は糖尿病のリスク因子として知られていますが、血縁者に糖尿病患者さんがいない場合でも発症することがあります。例えば、「父母や兄妹に糖尿病の人はいないのに」と驚かれる方もいますが、これには複数の理由が考えられます。一つは、遺伝的要因があまり強くなく、主に不適切な食生活や運動不足などの環境因子によって発症した可能性です。もう一つは、実は家族の中に未診断の糖尿病患者さんがいる可能性です。健康診断で空腹時血糖値のみを測定する場合、糖尿病を見逃すこともあります。また、自覚症状が乏しい初期段階の糖尿病患者さんも多いため、おじいちゃん、おばあちゃんを含む家族の中に、気づかれずに糖尿病を抱えている人がいる可能性もあります。したがって、家系に糖尿病患者さんがいないからといって安心せず、定期的な健康チェックが重要です。特に、両親や兄妹など近い血縁者に糖尿病患者さんがいる場合は、自身のリスクも高まる可能性があるため、より注意が必要です。遺伝的リスクの有無にかかわらず、健康的な生活習慣を維持することが糖尿病の予防と管理の鍵となります。なお、近年、日本人における糖尿病の発症要因は複雑化しています。したがって現在の研究では、遺伝するのは「糖尿病になりやすい体質」であり、その体質に環境因子が加わることで発症すると考えられています。
糖尿病遺伝を予防できるか?
日本人の糖尿病患者さんの95%を占める2型糖尿病は、糖尿病の家族歴があっても、生活習慣を見直して改善することで予防できます。特に、両親や祖父母、兄妹に糖尿病患者さんがいる家系では、遺伝的にリスクが高まる傾向にありますが、適切な生活習慣の維持によって発症リスクを大幅に低減できる可能性があります。したがって、普段からバランスの取れた食事、定期的な運動、ストレス管理などの健康的な生活習慣を心がけることが重要です。以下、予防のための具体的な取り組みです。
<運動>
糖尿病予防において、運動は極めて有効な手段です。運動は体内の「インスリン」の効率的な利用を促進し、筋肉が血糖を取り込むのを助けます。また、運動によって体重が減少し、肥満や過体重のリスクが低下します。そのため、インスリン抵抗性が改善され、糖尿病の発症リスクが軽減されます。さらに、運動は心血管の健康にも寄与します。血圧やコレステロール値の改善が期待できるため、糖尿病に関連する心血管疾患のリスクを低減します。また、運動はストレスの軽減にも効果があります。ストレスは血糖値の上昇に繋がるため、精神的な健康を保つことも糖尿病予防に重要です。このように、運動は血糖値管理、心血管の健康向上、ストレス軽減など、様々な面から糖尿病予防に役立ちます。したがって、運動は糖尿病予防において非常に効果的な手段と言えます。なお、糖尿病予防に効果的な運動には、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」があります。
<バランスの取れた食事>
糖尿病予防には、バランスの取れた食事が欠かせません。特に重要な栄養素として、食物繊維、良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが挙げられます。食物繊維は血糖値の急上昇を抑え、満腹感を持続させるため「全粒穀物」や「野菜」など、食物繊維が豊富に含まれている食品を積極的に摂取してください。 また、良質なタンパク質は血糖値を安定させる役割を果たします。良質なタンパク質は、豆類、魚、鶏肉などに含まれるため、これらの食品をバランスよく取り入れることが重要です。さらに、ビタミンやミネラルは代謝をサポートし、免疫力を強化します。特にビタミンDやマグネシウムは、糖尿病のリスクを低減する可能性があるため、積極的に摂取してください。なお、バランスの取れた食事の基本は、食材の多様性と適切な量です。定期的に食事を摂り、過剰なカロリーや糖分、飽和脂肪を避けることが大切です。このような食事習慣を維持することで、糖尿病予防に大きく貢献します。したがって、普段からバランスの取れた食事を心掛けてください。
<ストレスを解消>
ストレスを感じると、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されたり、インスリン抵抗性が強くなったりします。したがってストレスと上手く付き合うことも、糖尿病を予防するためには大切です。
血縁者に糖尿病患者さんがいる場合、自身のリスクを意識し、上記の予防策を積極的に取り組むことが不可欠です。また、家族全体で健康意識を高め、互いにサポートしあうことが効果的です。自らの健康を守るために、積極的に予防に取り組んでくださいね。糖尿病予防について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」や「糖尿病サイト」をご覧ください。
糖尿病に関してはいつでもご相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため、千葉市の健康診断や都賀のクリニックで検査をしている時に「偶然見つかる」ということも多々あります。千葉市の健康診断や、都賀のクリニックで糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは千葉市の検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2024.07.08
糖尿病合併症の種類と予防方法
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病の合併症の種類」について解説していきます。後半部分では、「糖尿病の合併症の予防方法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病とは
糖尿病と合併症の関係
糖尿病の合併症の種類:急性合併症と慢性合併症
糖尿病の足の合併症
糖尿病の皮膚の合併症
糖尿病合併症の予防方法
糖尿病合併症の予防と管理についてはお早めに相談ください
糖尿病とは
糖尿病は、体内で作られるインスリン(血糖値を抑えるホルモン)の働きが不足することにより、高血糖状態になる病気です。糖尿病は血糖値の調節だけでなく、脂質やタンパク質など、ほぼ全ての体内代謝に異常を及ぼします。また、糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞、失明、腎不全など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せずに速やかに専門医の診察を受けることが重要です。なお、糖尿病は大きく1型と2型に分けられ、それぞれ発症原因が異なります。また、妊娠中の女性が罹患する「妊娠糖尿病」もあります。以下に、1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病の違いについて説明します。
<1型糖尿病>
1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓のβ細胞に異常が起こることで発症する糖尿病で、インスリン依存型とも呼ばれます。1型糖尿病は、子供や青年などの若年層に多く見られますが、その割合は世界の糖尿病全体のうち「わずか5%」です。糖尿病は大きく分けて1型と2型がありますが、1型は自己免疫によるβ細胞の破壊が原因で発症します。一方、2型糖尿病は運動不足や過食などの生活習慣によって発症するため、性質が異なります。なお、1型糖尿病の主な治療方法は薬物療法で、インスリン製剤を注射することで症状の管理を行います。詳しくは「糖尿病情報センターのホームページ」をご覧ください。
<2型糖尿病>
2型糖尿病は、生活習慣や遺伝によって引き起こされる糖尿病です。2型糖尿病では、膵臓から分泌されるインスリン(ホルモン)が十分に働かなくなることで、血糖値が上昇します。なお、2型糖尿病の原因となるインスリン作用の低下には主に二つの理由があります。一つは、体内の組織がインスリンに対する抵抗性を増すことです。筋肉や肝臓などの組織がインスリンの作用に鈍感になり、インスリンが分泌されていても効果が発揮されにくくなります。そしてもう一つは、膵臓の機能低下によってインスリンの分泌量が減ることです。これらの要因は、遺伝に加えて、過食・過飲や運動不足などの生活習慣の乱れによっても引き起こされることがあります。したがって、糖尿病を予防するためには、健康的な食生活と適度な運動を続けることが重要です。「糖尿病とは?原因と症状」でも同様の見解を述べています。
<妊娠糖尿病>
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です(糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す“血糖値”が上がった状態です)。今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には、糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に「妊娠糖尿病」と診断されます。なお、糖代謝異常には、大きく分けて「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」の3種類があります。「妊娠糖尿病」は前述した通り、妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。一方、「糖尿病合併妊娠」とは、既に糖尿病と診断されていた方が妊娠した状態を指します。最後に、「妊娠中の明らかな糖尿病」は、妊娠前から未診断の糖尿病が存在した可能性がある場合や、妊娠中に糖尿病と診断された場合を含みます。これらの状況では、妊娠糖尿病よりも重度であるため、血糖値の厳密な管理が必要となります。
糖尿病と合併症の関係
糖尿病が合併症を引き起こす主な理由は、高血糖が体内の様々な組織や臓器にダメージを与えるためです。高血糖が持続すると、血管に障害を引き起こし、血液循環が悪化します。これにより、心臓病や脳卒中のリスクが増大します。また、高血糖は神経にも影響を及ぼし、末梢神経障害や神経痛を引き起こすことがあります。さらに、高血糖は眼にも悪影響を与え、網膜症や失明の原因となることがあります。このように、糖尿病は体内の様々な部位に及ぼす悪影響が合併症を引き起こす要因となっています。そのため、早期の血糖管理と定期的な健康チェックが重要です。糖尿病の症状に心当たりがある方、または検診などで血糖値に異常を指摘された方は、速やかに医療機関を受診してください。
糖尿病の合併症の種類:急性合併症と慢性合併症
糖尿病には様々な合併症があります。大きく分けて、緊急治療を必要とする意識障害が起こることがある「急性合併症」と、糖尿病が長期間にわたって未治療または不十分に管理された場合に進行する「慢性合併症」があります。急性合併症は、血糖が急速に上昇または低下し、体の正常な機能に重大な影響を与える症状です。例えば、低血糖症(低血糖)も急性合併症の一つであり、血糖が急速に低下することで意識障害や発作を引き起こすことがあります。一方、慢性合併症は糖尿病が長期間にわたって未治療または不十分に管理された結果、進行する病態です。例えば、糖尿病性網膜症は高血糖が網膜に与えるダメージに起因し、最終的には視力障害や失明を引き起こす可能性があります。また、糖尿病性腎症は腎臓に悪影響を与え、進行すると最終的には腎不全が進行する可能性があります。これらの合併症は、早期の血糖管理と定期的な健康チェックが重要です。したがって、糖尿病に詳しい方や健康診断で糖尿病の可能性が指摘された方は、迅速に医療機関を受診することが推奨されます。なお、急性合併症と慢性合併症のそれぞれの種類については、以下をご覧ください。
急性合併症
<低血糖>
低血糖とは、血糖値が正常範囲を下回る状態を指し、一般的に血糖値が70 mg/dL未満になると低血糖と診断されます。低血糖の症状は多様で、初期症状としては発汗、動悸、震え、めまい、おなかの空腹感などがあります。さらには意識喪失や痙攣を引き起こすこともあります。特に糖尿病患者さんは低血糖のリスクが高いため、早期に症状を認識し、適切な対処を行うことが重要です。低血糖の対処法としては、まず速やかに糖分を補給することが基本です。具体的には、ブドウ糖タブレットや砂糖を溶かした水、ジュースなどを摂取することが推奨されます。また、意識がある場合は、15グラムの速効性炭水化物を摂取し、15分後に再度血糖値を確認します。そして必要に応じてこれを繰り返し、血糖値が正常範囲に戻るまで続けます。一方、意識がない場合や自力で糖分を摂取できない場合は、グルカゴン注射を使用することが必要です。この場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。低血糖は適切に対処すれば重篤な合併症を避けることができますが、放置すると重篤な状態に進行する可能性があるため、早期の発見と迅速な対応が肝要です。
<糖尿病ケトアシドーシス(DKA)>
糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病急性合併症である「糖尿病昏睡」の一つです。血糖値を下げる働きをするインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こります。糖尿病ケトアシドーシスの初期症状は、強い喉の渇きと頻尿、体重減少、吐き気、嘔吐、疲労などが起こり、小児の場合は腹痛がみられることもあります。なお、糖尿病ケトアシドーシスは主に“1型糖尿病の方”に起こります(2型糖尿病の場合であっても引き起こされることはあります)。詳しくは「糖尿病情報センターのホームページ」をご覧ください。
<高血糖高浸透圧症候群(HHS)>
高浸透圧高血糖症候群(Hyperosmolar Hyperglycemic State, HHS)は、糖尿病の急性合併症の一つで、特に高齢の2型糖尿病患者さんに多く見られます。この病態は、非常に高い血糖値(通常800 mg/dL以上、時には2000 mg/dL近くにも達することがあります)と、それに伴う著しい脱水状態が特徴です。HHSでは、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と比較して、インスリンの欠乏やケトン体の増加はそれほど顕著ではありませんが、その重篤な高血糖と脱水によって命に関わる危険があるため、迅速な対応が求められます。死亡率も10〜20%と高いため、緊急の医療介入が必要です。なお、HHSの対処法としては、まず緊急の医療処置が必要です。病院では、静脈内に大量の生理食塩水を投与して脱水を改善し、インスリンを投与して血糖値を徐々に下げていきます。また、電解質のバランスを整えるための補充も行います。HHSは対応が遅れると命に関わる危険があるため、早期発見と医療機関での専門的な治療が非常に重要です。
慢性合併症
<糖尿病性網膜症>
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」と並んで糖尿病の三大合併症と言われております。糖尿病網膜症は、他の糖尿病合併症と同様、初期段階では自覚症状がありません。しかし気づかずに放置していると症状が悪化して、視力がぼやける、暗点が見える、視界に浮遊物が見えるといった症状が現れます。そして最悪の場合、網膜剥離や眼内出血を引き起こし、失明に至ることもあります。なお、糖尿病性網膜症の予防法としては、まず血糖値の厳密なコントロールが不可欠です。定期的な血糖値のモニタリングと、医師の指導に基づく食事療法、運動療法、薬物療法を徹底することが求められます。また、血圧やコレステロール値の管理も重要です。さらに、定期的な眼科検診も予防において重要です。糖尿病と診断されたら、年に一度は眼底検査を受けることが推奨されます。早期発見により、適切な治療を受けることで進行を抑えることが可能です。「糖尿病網膜症について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
<糖尿病腎症>
糖尿病腎症は、糖尿病の合併症の一つで、高血糖が腎臓の機能を低下させる疾患です。腎臓には約100万個の糸球体があり、これらが老廃物を排泄しますが、血糖値が高い状態が続くと糸球体が損傷し、尿にタンパク質が混ざるようになります。そして症状が進行すると、糸球体が壊れ、老廃物や水分が体内に蓄積され、腎不全や尿毒症を引き起こす可能性があります。糖尿病腎症は、初期には症状がほとんどなく、自覚しにくいのが特徴です。しかし、進行すると微量アルブミン尿や蛋白尿が見られ、さらに悪化すると浮腫、血圧上昇、貧血、疲労感などの症状が現れます。なお、糖尿病腎症の予防には、血糖値の厳格な管理が不可欠です。定期的な血糖値の測定、医師の指導に基づく食事療法、運動療法、薬物療法を徹底することが求められます。また、高血圧も腎臓への負担を増やすため、血圧の管理も重要です。ACE阻害薬やARBといった降圧薬が腎保護作用を持つため、これらの薬物の使用が推奨されます。さらに、定期的な腎機能の検査も予防の一環です。糖尿病患者さんは、年に一度は尿検査や血液検査を受け、腎機能の状態をチェックすることが重要です。早期発見により、進行を遅らせる治療が可能となります。
<糖尿病神経障害>
糖尿病神経障害は、糖尿病の合併症の一つで、高血糖が神経を損傷し、様々な身体の機能に影響を与える疾患です。主に末梢神経が侵されることが多く、手足のしびれや痛み、感覚異常が見られます。さらに、自律神経が影響を受けると、消化器系、心血管系、泌尿生殖器系の機能障害を引き起こすこともあります。糖尿病神経障害は、糖尿病の罹病期間が長く、血糖管理が不十分な場合にリスクが高まります。具体的な症状としては、手足のしびれやチクチクした痛み、筋力の低下、歩行の困難さ、消化不良、便秘や下痢、尿失禁、性機能障害などが挙げられます。また、心拍数の変動や低血圧などの自律神経症状も見られることがあります。なお、糖尿病神経障害予防には、まず血糖値の厳格な管理が不可欠です。定期的な血糖値の測定と、医師の指導に基づく食事療法、運動療法、薬物療法を徹底することが求められます。さらに、定期的な神経機能のチェックも重要です。糖尿病患者さんは、手足の感覚異常や痛みを感じた場合、早期に医師に相談することが推奨されます。また、生活習慣の改善も予防に有効です。禁煙し、適度な運動を行うことが神経障害のリスクを低減します。さらに、アルコールの過剰摂取を避け、バランスの取れた食事を心がけることも大切です。「糖尿病の合併症について解説しているサイト」でも同様の見解を述べています。
<大血管症>
大血管症は、糖尿病の合併症の一つで、主に冠動脈、脳血管、および末梢血管に影響を及ぼす疾患の総称です。冠動脈疾患には心筋梗塞や狭心症が含まれ、脳血管疾患には脳梗塞や脳出血が該当します。そして末梢血管疾患には動脈硬化や下肢動脈疾患があります。糖尿病における大血管症のリスクは、高血糖やインスリン抵抗性、高血圧、高コレステロール、喫煙、運動不足、および遺伝的要因によって増加します。これらの因子が組み合わさると、血管壁にダメージを与え、動脈硬化が進行し、最終的には血管狭窄や血栓形成を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。なお、大血管症の予防には、まず血糖値の厳格な管理が不可欠です。定期的な血糖値のモニタリングと、医師の指導に基づく適切な治療が重要です。さらに、血圧やコレステロールの管理、禁煙、健康的な食事と運動の維持が推奨されます。定期的な健康診断と血液検査を通じて、リスクの早期発見と対策を行うことも必要です。大血管症は進行性の疾患であり、早期の予防と適切な管理が重要となりますので、普段から注意してください。「糖尿病情報センターのホームページ」でも同様の見解を述べています。
糖尿病の足の合併症
糖尿病患者さんに生じる足のトラブルの総称を「糖尿病足病変(とうにょうびょうあしびょうへん)」といいます。病変には、足に生じる水虫や細菌感染による病変、たこやうおのめ、足の潰瘍や変形などがあります。さらに重症になると壊疽(えそ)という組織が死んでしまった状態になり、最悪の場合は足を切断することもあります。こうした状態になるのを避けるためには、糖尿病自体の治療をしっかり行って血糖を適切な状態に保つことはもちろん、毎日足の状態をよく観察して早く異常を見つけることが大切です。糖尿病性足病変の予防には、日頃から自分で足を見るセルフチェックが大切です。足に以下のような症状がある方は糖尿病の疑いがありますので、速やかに専門医による診察を受けてください。
<足に出る症状>
・足の先がしびれる
・足の先に痛みがある
・足の先がジンジン(ピリピリ)する
・足の感覚に異常がある(痛みを感じにくい、感覚が鈍いなど)
・足がつる
<足の外観に出る変化>
・うおのめ、たこ、まめ、靴ずれがよくできる
・小さな傷でも治らない
・足に感染症がある(水虫など)
・皮膚が赤くなったり、腫れたりしている部分がある
・皮膚が乾燥したり、ひび割れしている部分がある
・爪が変形したり、変色したりしている
糖尿病足病変について詳しく知りたい方は「糖尿病の方の足にみられる症状について」をご覧ください。
糖尿病の皮膚の合併症
糖尿病の皮膚の合併症は、高血糖が皮膚に与える影響に起因する疾患です。糖尿病による血糖値の上昇は、皮膚の健康に様々な影響を及ぼします。まず、糖尿病による神経障害が皮膚に影響を与えることがあります。末梢神経が損傷すると、皮膚の感覚が鈍くなり、痛みや刺激に対する感覚が低下します。このため、小さな傷や擦り傷が見逃されやすく、慢性的な潰瘍や感染症のリスクが高まります。また、糖尿病による血管障害も皮膚の問題を引き起こすことがあります。血流が悪化すると、皮膚の健康を維持するために必要な栄養や酸素が不足し、乾燥やかゆみが生じやすくなります。さらに、皮膚の癒着力が低下し、傷口の治癒が遅れることがあります。なお、糖尿病による皮膚病変の予防には、まず血糖値の管理が不可欠です。定期的な血糖値の測定と、適切な治療が皮膚の健康を保つ上で重要です。また、日常生活での皮膚ケアも大切です。適度な保湿を行い、乾燥を防ぎ、皮膚の健康を維持することが推奨されます。さらに、足のケアも忘れずに行い、潰瘍や感染症の予防に努めることが重要です。詳しくは「糖尿病による皮膚の症状について」をご覧ください。
糖尿病合併症の予防方法
糖尿病の合併症を予防するためには、日常的なケアと生活習慣の改善が重要です。まず、血糖値の管理が基本です。定期的な血糖値のモニタリングを行い、目標範囲内に保つことが合併症予防の鍵となります。次に、血圧の管理も重要です。高血圧は多くの合併症のリスク要因となりますので、定期的な血圧測定と必要に応じた治療が必要です。さらに健康的な生活習慣を維持することも効果的です。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適正体重の維持が推奨されます。また、定期的な健康診断と専門医の診察を受けることも予防につながります。早期に問題を発見し、適切な治療を開始することで合併症の進行を防ぐことができます。詳しくは「糖尿病の合併症を予防するためには?」をご覧ください。
糖尿病合併症の予防と管理についてはお早めに相談ください
糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病性網膜症や糖尿病ケトアシドーシスなど、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せず、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。合併症の早期発見と適切な治療は、生活の質を向上させるだけでなく、重篤な合併症の発症を防ぐ役割を果たします。したがって定期的な医師の診察と健康チェックを通じて、病気の進行を早期に把握し、必要な処置を行うことが重要です。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、糖尿病の症状かもと気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2024.06.27
食べても痩せるのは糖尿病の症状?原因と対策について解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病で痩せてしまう原因」について解説していきます。後半部分では「糖尿病で痩せた時の対処法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病とは
糖尿病で痩せるのはなぜ?
糖尿病以外で痩せてしまう原因
どのくらい痩せたら糖尿病の可能性があるか?
糖尿病症状で痩せた時の対処法
糖尿病症状による痩せを防ぐには
糖尿病治療ならいつでも当院にご相談ください
糖尿病とは
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。長期間にわたり血糖濃度が高い状態が続くと、血管が傷つき、将来的に心臓病、失明、腎不全など、深刻な合併症を引き起こすことがあります。そのため、糖尿病の症状が見られた際には、放置せずに速やかに糖尿病専門医の診察を受けることが重要です。なお、糖尿病は症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと「視力の低下」「頻尿」「体重減少」などの症状が現れることがあります。これらの症状が見られた場合には、糖尿病の可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが重要です。「日本糖尿病学会」でも同様の見解を述べています。
糖尿病で痩せるのはなぜ?
1型糖尿病では、膵臓がインスリンをほとんど分泌しなくなるため、細胞が糖を取り込むことができません。その結果、体は利用可能なエネルギー源としての糖を欠乏し、代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギーを供給しようとします。これが体重減少の主な原因です。一方、2型糖尿病では、インスリン抵抗性が生じ、インスリンの効きが悪くなります。そのため、血糖値が高くても細胞に十分なエネルギーが供給されず、体はエネルギーを確保するために脂肪や筋肉を分解します。これも体重減少の一因となります。さらに、糖尿病では高血糖が続くと、余分な糖が尿に排出されるため、多尿になります。この過程で大量の水分が失われるため、脱水状態が生じ、これも体重減少に寄与します。糖尿病による体重減少は、表面的には「痩せることができる」という利点のように見えるかもしれませんが、実際には深刻な健康問題を示すサインです。体重減少は、栄養不良や体力低下、さらには免疫力の低下を引き起こし、さまざまな合併症を招くリスクがあります。したがって、糖尿病の症状としての体重減少には十分な注意が必要です。なお、1型糖尿病の場合は、2型糖尿病よりも突然かつ急激に体重が減るのが特徴です。1型糖尿病と2型糖尿病の違いについては「糖尿病情報センター」や「糖尿病とは?原因と症状」をご覧ください。
糖尿病以外で痩せてしまう原因
体重減少は必ずしも望ましいわけではありません。特に意図せずに痩せる場合、その背後にはさまざまな健康問題が潜んでいることがあります。例えば、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)です。この病気では甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が異常に高まります。その結果、食欲があっても体重が減少することがあります。次に、消化器系の問題も原因となることがあります。例えば、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、栄養吸収が妨げられ、体重減少が起こります。これに伴い、腹痛、下痢、血便などの症状が見られることが多いです。また、がんも体重減少の大きな原因の一つです。特に胃がんや大腸がん、肺がんなどは、食欲不振や栄養吸収の障害を引き起こし、体重が減少することがあります。さらに、精神的な要因も無視できません。うつ病やストレスが長期間続くと、食欲不振や過剰なエネルギー消費が生じ、体重が減少することがあります。特にうつ病では、無力感や興味の喪失が伴い、食生活が乱れることが多いです。最後に、慢性感染症も体重減少の一因となります。例えば、結核やHIV感染症では、長期にわたる炎症反応や栄養吸収の障害により、体重減少が見られることがあります。これらの病状は、早期発見と適切な治療が重要です。意図しない体重減少が見られる場合は、早めに医師の診察を受けることを強くお勧めします。なお、糖尿病の慢性合併症については「都賀で糖尿病の慢性合併症にお悩みの方へ」で解説していますので、ご興味のある方はご覧ください。
どのくらい痩せたら糖尿病の可能性があるか?
意図的に減量していないにもかかわらず、6~12カ月で体重が4.5kg、または体重の5%以上減少した場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。したがって、思いがけない体重減少について心当たりのある方は放置せず、お近くの医療機関を受診してください。また、体重減少に伴って、次のような症状がある方も注意が必要です。
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・よく食べるのに体重が減っている
・目がかすむ
・視力の低下
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
上記の症状は糖尿病の初期症状の可能性があります。したがって、これらの症状が体重減少とともに現れた場合、早急に医療機関を受診することが重要です。
糖尿病症状で痩せた時の対処法
糖尿病による体重減少が起こった場合、まずは糖尿病の管理を見直すことが重要です。医師の指導のもとで適切な食事療法を行い、血糖値の安定を図ってください。また、適度な運動を取り入れることも推奨されます。有酸素運動や筋力トレーニングは血糖コントロールに役立ち、体重の安定や筋肉の維持に寄与します。さらに、ストレス管理も重要です。ストレスが過剰だと血糖値の乱れを引き起こすことがありますので、リラクゼーション法や趣味の時間を取ることが推奨されます。糖尿病を悪化させないためには、総合的なアプローチで、生活習慣の見直しと定期的な医療チェックを行うことが重要です。糖尿病は自覚症状のないままに進行し、将来的に心臓病や失明、腎不全など、より重篤な合併症を引き起こす可能性がありますので、ご注意ください。なお、体重が増加傾向にある場合は、まだ糖尿病の初期段階です。しかし、体重が急激に減少し始めた場合は、糖尿病が非常に悪化している可能性があります。そのため、体重が急激に減少し始めた際は早急に専門医の診察を受け、適切な治療を開始する必要があります。
糖尿病症状による痩せを防ぐには
糖尿病症状による痩せを防ぐには、健康的な生活習慣を実践することが重要です。以下、具体的な方法です。
【糖尿病に効果的な予防法1】運動
糖尿病予防において、運動は極めて有効な手段です。運動は体内の「インスリン」の効率的な利用を促進し、筋肉が血糖を取り込むのを助けます。また、運動によって体重が減少し、肥満や過体重のリスクが低下します。そのため、インスリン抵抗性が改善され、糖尿病の発症リスクが軽減されます。さらに、運動は心血管の健康にも寄与します。血圧やコレステロール値の改善が期待できるため、糖尿病に関連する心血管疾患のリスクを低減します。また、運動はストレスの軽減にも効果があります。ストレスは血糖値の上昇に繋がるため、精神的な健康を保つことも糖尿病予防に重要です。このように、運動は血糖値管理、心血管の健康向上、ストレス軽減など、様々な面から糖尿病予防に役立ちます。したがって、運動は糖尿病予防において非常に効果的な手段と言えます。なお、糖尿病予防に効果的な運動には、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」があります。
<有酸素運動>
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに酸素を使う運動のことです。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどが一般的な有酸素運動の例になります。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。なお、一般的に「週150分以上」の有酸素運動が推奨されています。この目標に向かって努力することで、健康的な生活習慣を築くことができます。
<レジスタンス運動>
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことです。ウエイトトレーニング、体幹トレーニング、ゴムチューブを使ったエクササイズなどがレジスタンス運動の例になります。レジスタンス運動は、筋肉量を増やし、血糖値の管理をサポートするのに役立ちます。また、筋力トレーニングは骨密度を向上させ、骨粗鬆症のリスクを減らすのにも効果的です。そのため、糖尿病予防に極めて効果的な運動だと考えられています。なお、レジスタンス運動は、筋肉量の増加、筋力の向上、筋持久力の向上を促す筋力トレーニングとして、高齢者からアスリートまで広く行われています。
【糖尿病に効果的な予防法2】バランスの取れた食事
糖尿病予防には、バランスの取れた食事が欠かせません。特に重要な栄養素として、食物繊維、良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが挙げられます。食物繊維は血糖値の急上昇を抑え、満腹感を持続させるため「全粒穀物」や「野菜」など、食物繊維が豊富に含まれている食品を積極的に摂取してください。 また、良質なタンパク質は血糖値を安定させる役割を果たします。良質なタンパク質は、豆類、魚、鶏肉などに含まれるため、これらの食品をバランスよく取り入れることが重要です。さらに、ビタミンやミネラルは代謝をサポートし、免疫力を強化します。特にビタミンDやマグネシウムは、糖尿病のリスクを低減する可能性があるため、積極的に摂取してください。なお、バランスの取れた食事の基本は、食材の多様性と適切な量です。定期的に食事を摂り、過剰なカロリーや糖分、飽和脂肪を避けることが大切です。このような食事習慣を維持することで、糖尿病予防に大きく貢献します。したがって、普段からバランスの取れた食事を心掛けてください。
糖尿病治療ならいつでも当院にご相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。なお、当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2024.06.26
糖尿病予防のための運動ガイド:効果的な方法と実践のコツ
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病予防に効果的な運動」について解説していきます。後半部分では、「運動の注意点」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
なぜ糖尿病予防には運動が効果的なのか?
糖尿病予防に効果的な運動の種類
糖尿病予防のための運動方法とタイミング
糖尿病予防のための運動メニュー例
糖尿病予防における運動の注意点
糖尿病予防のご相談なら板谷内科クリニックへ
なぜ糖尿病予防には運動が効果的なのか?
糖尿病予防において、運動は極めて有効な手段です。運動は、体内の「インスリン」の効率的な利用を促進し、筋肉が血糖を取り込むのを助けます。また、運動によって体重が減少し、肥満や過体重のリスクが低下します。そのため、インスリン抵抗性が改善され、糖尿病の発症リスクが軽減されます。さらに、運動は心血管の健康にも寄与します。血圧やコレステロール値の改善が期待できるため、糖尿病に関連する心血管疾患のリスクを低減します。また、運動はストレスの軽減にも効果があります。ストレスは血糖値の上昇に繋がるため、精神的な健康を保つことも糖尿病予防に重要です。このように、運動は血糖値管理、心血管の健康向上、ストレス軽減など、様々な面から糖尿病予防に役立ちます。したがって、運動は糖尿病予防において非常に効果的な手段と言えます。なお、運動療法の目的は、血糖値のコントロールを改善し、糖尿病の合併症を予防することです。運動は、筋肉の柔軟性や強度を向上させ、代謝を改善します。これにより、血糖値の上昇を抑え、インスリンの効果を高めることができます。そのため、適切な運動計画を立て、定期的に運動することが重要です。「厚生労働省のサイト」や「糖尿病を改善するための運動」でも同様の見解を述べております。
糖尿病予防に効果的な運動の種類
糖尿病予防に効果的な運動には、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」があります。
【糖尿病予防に効果的な運動の種類1】有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに酸素を使う運動のことです。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどが一般的な有酸素運動の例になります。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。なお、一般的に「週150分以上」の有酸素運動が推奨されています。この目標に向かって努力することで、健康的な生活習慣を築くことができます。
【糖尿病予防に効果的な運動の種類2】レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことです。ウエイトトレーニング、体幹トレーニング、ゴムチューブを使ったエクササイズなどがレジスタンス運動の例になります。レジスタンス運動は、筋肉量を増やし、血糖値の管理をサポートするのに役立ちます。また、筋力トレーニングは骨密度を向上させ、骨粗鬆症のリスクを減らすのにも効果的です。そのため、糖尿病予防に極めて効果的な運動だと考えられています。なお、レジスタンス運動は、筋肉量の増加、筋力の向上、筋持久力の向上を促す筋力トレーニングとして、高齢者からアスリートまで広く行われています。レジスタンス運動について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センターのサイト」をご覧ください。
有酸素運動とレジスタンス運動の併用は、それぞれの運動単独よりも効果的に糖尿病を改善させることが報告されています。したがって、両方の運動をバランスよく取り入れることが糖尿病予防にとって重要です。「糖尿病ネットワーク」でも同様の見解を述べております。
糖尿病予防のための運動方法とタイミング
食後1時間後に運動すると、食後の高血糖状態が改善されることが知られています。そのため、運動を実施するタイミングとしては、食後1時間後がお勧めです。次に、運動の頻度に関しては、「できるだけ毎日」、少なくとも「週に3~5回」行うのが良いとされています。そのため、時間に余裕のある方は週に5日間、1日あたり30分以上の運動を行ってください。なお、運動強度については、中等度の全身を使った有酸素運動がお勧めです。そして運動時間は各20~60分間行い、計150分以上が一般的に推奨されています。定期的に運動をすることで、血糖値のコントロールが向上し、糖尿病のリスクを軽減できます。したがって、適度な運動を定期的に行ってください。「運動に適した時間帯はいつ?」でも同様の見解を述べております。
糖尿病予防のための運動メニュー例
健康な生活を維持し、糖尿病のリスクを低減するためには、適切な運動が重要です。以下、糖尿病予防のための運動メニューの例になります。
有酸素運動(週3〜5回)
ウォーキング:毎日30分から60分のウォーキング。
ジョギング:20分から30分のジョギング。
サイクリング:1時間のサイクリングを週に2回行う。
水泳:週に1〜2回の水泳を取り入れる。
レジスタンス運動(週2〜3回)
ウエイトトレーニング:上半身と下半身の筋力トレーニングを行う。
ボディウェイトトレーニング:腕立て伏せ、スクワット、腹筋などのエクササイズを行う。
ヨガやピラティス:柔軟性を高め、筋力を向上させる。
ストレッチ(毎日)
朝起きてからのストレッチ:身体を目覚めさせ、柔軟性を保つ。
就寝前のストレッチ:リラックスし、筋肉の緊張を解く。
アクアエクササイズ(週1〜2回)
アクアエクササイズとは、水中で行う運動のことです。水中でのウォーキング、レジスタンスエクササイズ、ダンスなどが代表的なアクアエクササイズになります。アクアエクササイズは、有酸素運動とレジスタンス運動の両方を行うことができるため、バランス良く運動ができます。また、水の浮力を活用するため、肥満や関節への負担が心配な方に適しています。したがって、アクアエクササイズは健康的な運動習慣を築く上で優れた選択肢だと言えます。なお、アクアエクササイズは週に1〜2回、30分程度を継続的に行うことが推奨されています。
バランス運動(週1回)
バランス能力とは、静止状態を保ち続ける能力のことを指します。バランス能力を養うためには、片足で立ったり、ステップ運動を取り入れたりして、体幹を鍛えてください。また、バランスボールなどのトレーニンググッズの使用もバランス能力の向上に役立ちます。したがって、バランスボールなどのトレーニンググッズを積極的に活用してください。なお、バランス運動は簡単な動作で体を鍛えることができますが、転倒しないように注意してください。
糖尿病予防のためには、これらの運動をバランスよく取り入れることが重要です。ただし、運動を始める前には医師と相談し、個々の体力や健康状態に合わせたプランを立てることが大切です。
糖尿病予防における運動の注意点
糖尿病予防において、運動は極めて有効な手段です。ただし、運動は適切な方法で行うことが重要です。以下、運動における主な注意点になります。
【糖尿病予防における運動の注意点1】準備体操をする
急に運動を始めるとケガをする可能性があります。特に運動習慣がない方は注意が必要です。ケガをしないためにも、運動する前はしっかりと準備体操を行なってください。
【糖尿病予防における運動の注意点2】こまめに水分補給をする
運動中は、こまめに水分補給をし、脱水にならないようにすることも大切です。運動中は想像以上に汗をかいておりますので、こまめに水分補給を行ってください。
【糖尿病予防における運動の注意点3】血圧
運動をすると、一時的に血圧は上がります。ですので、重症の高血圧の方、労作性狭心症や心不全、腎不全などを合併している方は運動に注意が必要です。運動を始めるにあたっては、担当医とよく相談してから行ってください。
【糖尿病予防における運動の注意点4】軽い運動から始める
気合を入れて運動することはいいことですが、ケガをする可能性があります。特に運動習慣がない方は危険です。運動する際は無理せず、軽い運動から始めてください。
【糖尿病予防における運動の注意点5】高血糖と低血糖
運動中に高血糖や低血糖になるリスクがあります。特に糖尿病患者は、血糖値のコントロールが重要です。運動前後にはメディカルチェックを受け、血糖値の管理に留意してください。
※運動療法における注意点について知りたい方は「【糖尿病改善と予防】運動療法の効果や注意点について」をご覧ください。
糖尿病予防のご相談なら板谷内科クリニックへ
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2024.05.26
【専門医監修】糖尿病予防に効く食事|合併症予防のための食事療法
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病予防に効果的な食事」について解説していきます。後半部分では「糖尿病予防のための生活習慣」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病予防に効果的な食事とは?
糖尿病予防に良い食材とその効果
糖尿病予防のための食事の摂り方
糖尿病予防に効果的なメニュー例
糖尿病予防のための生活習慣
糖尿病予防に効果的な食事とは?
糖尿病予防には、バランスの取れた食事が欠かせません。特に重要な栄養素として、食物繊維、良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが挙げられます。食物繊維は血糖値の急上昇を抑え、満腹感を持続させるため「全粒穀物」や「野菜」など、食物繊維が豊富に含まれている食品を積極的に摂取してください。 また、良質なタンパク質は血糖値を安定させる役割を果たします。良質なタンパク質は、豆類、魚、鶏肉などに含まれるため、これらの食品をバランスよく取り入れることが重要です。さらに、ビタミンやミネラルは代謝をサポートし、免疫力を強化します。特にビタミンDやマグネシウムは、糖尿病のリスクを低減する可能性があるため、積極的に摂取してください。なお、バランスの取れた食事の基本は、食材の多様性と適切な量です。定期的に食事を摂り、過剰なカロリーや糖分、飽和脂肪を避けることが大切です。このような食事習慣を維持することで、糖尿病予防に大きく貢献します。したがって、普段からバランスの取れた食事を心掛けてください。「厚生労働省のサイト」や「千葉栄養士会のホームページ」でも同様の見解を述べています。
糖尿病予防に良い食材とその効果
糖尿病予防に役立つ食材には、以下のものがあります。
【糖尿病予防に良い食材とその効果1】緑黄色野菜
緑黄色野菜は低カロリーで食物繊維が豊富なうえ、糖質や脂質の代謝に必要なビタミンやミネラルも多く含んでいます。特にブロッコリーや小松菜には、糖の代謝を促進する葉酸が豊富です。したがって野菜を選ぶ際は、緑黄色野菜を中心に摂取してください。ただし、南瓜やれんこん、芋類は糖質が多いため、食べ過ぎには注意が必要です。
【糖尿病予防に良い食材とその効果2】魚
アジ、さば、さんまなどの青魚には、インスリン分泌を改善する脂肪が豊富に含まれています。特に、これらの魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、抗炎症作用があり、インスリンの感受性を高める効果があります。これにより血糖値の管理が容易になり、糖尿病予防に役立ちます。また、EPAとDHAは心血管の健康にも寄与するため、全身の健康維持にも効果的です。青魚を定期的に摂取することで、これらの健康効果を得ることができます。
【糖尿病予防に良い食材とその効果3】きのこ
きのこは低カロリーで食物繊維が豊富です。食物繊維は糖の吸収を遅らせるため、血糖値の上昇を抑制します。さらに、きのこに含まれるβ-グルカンは胃や腸で膨らみ、満腹感を得やすくし、お通じの調子も整えます。したがって糖尿病予防には、きのこ類を積極的に摂取することがお勧めです。
【糖尿病予防に良い食材とその効果4】豚肉
豚肉にはビタミンB1が含まれており、このビタミンは糖を分解してエネルギーに変える働きがあります。したがって、ビタミンB1を積極的に補給して糖代謝を高め、血糖値をコントロールしてください。なお、ビタミンB1が不足すると、糖が分解されずに血糖値が上がることがありますので、ご注意ください。
【糖尿病予防に良い食材とその効果5】大豆製品(高野豆腐)
高野豆腐にはレジスタントプロテインが含まれており、これは食物繊維と似た働きをします。レジスタントプロテインは糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぎます。したがって、高野豆腐を積極的に食事に取り入れてください。
【糖尿病予防に良い食材とその効果6】乳製品
乳製品はカルシウムやビタミンDを豊富に含み、骨の健康を維持するのに役立ちますが、糖尿病予防にも効果的です。低脂肪または無脂肪の乳製品を選ぶことで、カロリーや飽和脂肪の摂取を抑えつつ、健康的な栄養を得ることができます。特にヨーグルトには、プロバイオティクスが含まれており、腸内環境を整え、インスリン感受性を改善する効果があります。また、ギリシャヨーグルトは高たんぱくで低脂肪の選択肢としてお勧めです。なお、牛乳を選ぶ際は、無脂肪または低脂肪のものを選んでください。これにより、必要な栄養素を摂取しながら、カロリーと飽和脂肪の摂取を抑えることができます。
【糖尿病予防に良い食材とその効果7】海藻
海藻類は全般的に低カロリーで、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富です。特に「めかぶ」はお勧めです。ネバネバ成分が血糖値の上昇を緩やかにします。
【糖尿病予防に良い食材とその効果8】玄米や胚芽米
玄米や胚芽米にはクロムというミネラルが含まれています。クロムはインスリンが糖を細胞に取り込む際に助けとなり、インスリンの働きをスムーズにします。そのため、白米の代わりに玄米や胚芽米を選ぶことで、血糖値の管理がしやすくなります。なお、血糖値を下げるのに効果的な食べ物については「血糖値を下げるのに効果的な食べ物を紹介」に詳しく記載しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病予防のための食事の摂り方
糖尿病予防において、食べ方も重要です。適切な摂取方法を心掛けることで、血糖値のコントロールや体重の管理が促進されます。糖尿病予防のための食事の摂り方については、以下をご覧ください。
【糖尿病予防のための食事の摂り方1】野菜類から食べる
食事を始める際は、野菜類から摂ることが重要です。野菜や豆類を最初に摂ることで、食後の血糖値の上昇を緩やかにし、食事全体のカロリー摂取量を調整することができます。
【糖尿病予防のための食事の摂り方2】ゆっくり食べる
急いで食事をすると、食べすぎの原因となるだけでなく、血糖値の急激な上昇をもたらす可能性があります。食事をゆっくりと楽しむことで、適切な量を摂取しやすくなります。
【糖尿病予防のための食事の摂り方3】規則正しい食事を心掛ける
日々の食事を3食、規則正しく摂ることが重要です。不規則な食事や食事を抜くことは血糖値の乱れを招きやすく、糖尿病のリスクを高めますので、ご注意ください。「東京都保険医療局の公式サイト」でも同様の見解を述べています。
【糖尿病予防のための食事の摂り方4】間食は控える
間食は血糖値の急激な上昇を招き、糖尿病リスクを高める可能性があります。できる限り間食を控え、規則正しい食事を心掛けてください。
【糖尿病予防のための食事の摂り方5】腹八分目
食べ過ぎは血糖値の乱れや肥満の原因となります。食事を摂る際は腹八分目に留め、適度な量を摂取してください。
【糖尿病予防のための食事の摂り方6】よく噛んで食べる
食事をゆっくり噛むことで、満腹感を早く感じることができます。十分に噛んで食べる習慣を身につけてください。「糖尿病食の調理と食べ方のコツ」でも同様の見解を述べています。
糖尿病予防に効果的なメニュー例
糖尿病予防のためには、バランスの取れた食事が重要です。以下、糖尿病予防に効果的なメニューの例です。
<朝食>
野菜たっぷりのオムレツ
玄米パン
ヨーグルト(無糖)
<昼食>
レタス、トマト、キュウリ、ピーマンなどの野菜
グリルチキン
オリーブオイルとレモンのドレッシング
フルーツ(いちごやブルーベリーなど)
<夕食>
サーモンのステーキ
ほうれん草とトマトのソテー
ひよこ豆のハーブサラダ
茹でたサツマイモ
これらの食事は野菜や果物、たんぱく質、食物繊維を豊富に含んでいるため、血糖値の急激な上昇を防ぎます。したがって、糖尿病予防に役立つ食事療法の一例として参考になります。なお、糖尿病予防に役立つメニューの例について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センターのホームページ」をご覧ください。
糖尿病予防のための生活習慣
糖尿病は、日常生活における食事や運動の習慣に大きく影響される病気です。そのため、糖尿病予防のためには、健康的な生活習慣を身につけることが重要です。まずは、バランスの取れた食事を心掛けてください。毎日の食事では、野菜、果物、全粒穀物、健康な脂肪、たんぱく質を含む食品を適切な割合で摂取してください。また、運動も糖尿病予防に効果的です。適度な運動を続けることで、血糖値をコントロールし、体重を維持するのに役立ちます。さらに、十分な睡眠をとり、ストレスを管理することも大切です。睡眠不足やストレスは血糖値やホルモンバランスに悪影響を与える可能性がありますので、ご注意ください。なお、糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため、健康診断や他の病気の検査を受けている時に偶然発見されることが多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚して「糖尿病の症状かもしれない…」と感じた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2024.05.25
糖尿病の新たな名称候補「ダイアベティス」について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「糖尿病の新名称候補“ダイアベティス”」について解説していきます。後半部分では「ダイアベティスが生まれた背景」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病の新名称「ダイアベティス」
ダイアベティスとは
ダイアベティスが生まれた背景
新名称(ダイアベティス)に対する意見
新名称(ダイアベティス)による影響
糖尿病はどのように新名称に変わるのか
高血糖、糖尿病症状が不安な人はいつでも相談ください
糖尿病の新名称「ダイアベティス」
2023年9月22日、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は合同で会見を行い、糖尿病の新しい呼称として、「ダイアベティス」を提案すると発表いたしました。今後1~2年をかけて、糖尿病をもつ人や医療従事者からの意見を募り、「最終的に呼称変更するのかを検討する」と伝えております(変更が提案されたのは病名ではなく、あくまでも呼称です)。
ダイアベティスとは
糖尿病は、紀元2世紀にカッパドキアの医師「アレタイオス」によって「diabetes(ダイアビーティス)」と命名されたとされています。この言葉は英語の "diabetes" に相当し、"dia"は英語の前置詞 "through" に近く、「〇〇◯を通り過ぎる」という意味を持っています。一方で、「betes」は "pass" や "go" などの意味で、「行ってしまう」という意味合いがあります。したがって「Diabetes」は、文字通りには「水が」「体を」通り過ぎて行く、という意味合いを含んでいます。なお、この言葉には「尿」という意味は含まれていません。
ダイアベティスが生まれた背景
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが低下し、血糖値が慢性的に高まる病気です。この病名は1907年、日本内科学会が制定しました。糖尿病は、患者さんによっては尿から糖が出ないことがあるため、病名が実態を正しく反映していないと指摘されています。また、糖尿病という病名には、「尿」という言葉が含まれているため、不潔なイメージを連想させることもあります。さらに、糖尿病という単語は「生活習慣が悪い」「だらしない」などと周囲から見られがちです。そのため、糖尿病の方は、病名に伴う偏見を恐れて同僚や家族に病状を伝えず、医師の診察時にも状態を隠すことがあると言われています。このような事情から、日本糖尿病協会は「糖尿病に対する誤った認識が偏見を増幅させ、糖尿病スティグマを生んでいる」と指摘しています。スティグマを放置すると、糖尿病を抱える方が社会活動で不利益を被るだけでなく、治療に向かわなくなる可能性があります。また、病気を隠し続け、適切な治療の機会が逸失されることで、症状が重症化する可能性もあります。そのため、スティグマを放置すると、様々な影響が及ぶと考えられています(糖尿病であることを周囲に隠す→適切な治療の機会損失→重症化→医療費増→社会保障を脅かすという悪循環に陥る)。このような背景から、2022年に「日本糖尿病協会」の会長である清野先生は、糖尿病の病名が患者差別につながる可能性があるため、「名称の変更を検討すること」を発表いたしました。詳しくは「日本糖尿病協会のホームページ」をご覧ください。
※糖尿病スティグマについては「糖尿病の名称変更について」で解説していますので、ご興味のある方はご覧ください。
新名称(ダイアベティス)に対する意見
m3.comの意識調査では、医師会員1,467人に「糖尿病」を「ダイアベティス」と呼称変更することについて尋ねたところ、「46.15%(677人)が反対と回答しました」と伝えています。また、40.01%(587人)が「呼称変更は賛成だが、『ダイアベティス』には反対」との意見を示しています。なお、糖尿病の呼称の代替案を尋ねた結果、「糖代謝異常症」が43.66%(537人)で最も多く、次いで「高血糖症」が14.55%(179人)、そして「高血糖症候群」が11.22%(138人)となっております。
新名称(ダイアベティス)による影響
糖尿病の病名変更は、糖尿病に対する偏見を払拭できる可能性があります。なぜなら痴呆においては、“痴呆”という用語が“認知症”に置き換わることで、病気に対する社会の受け止め方が変わってきた歴史があるからです。もちろん呼び名が変わったことで認知症のある人が抱えていた“生きづらさ”が全て解決したわけではありませんが、少しずつ社会が良い方向に前進しました。したがって糖尿病に関しても、新名称「ダイアベティス」に呼称を変えることで、糖尿病のある人が生きやすい社会を築く一助となるかもしれません。
糖尿病はどのように新名称に変わるのか
糖尿病の新名称「ダイアベティス」に関しては、先述の通り、今後1~2年かけて、糖尿病を抱える人や医療従事者からの意見を集め、「最終的に呼称を変更するかどうか」を検討する予定です。なお、糖尿病の病名を変更する際には、国に報告し、行政文書を変更する必要があります。この手続きには煩雑な過程が伴うため、病名の変更が実現するまでには一定の時間がかかる見込みです。
高血糖、糖尿病症状が不安な人はいつでも相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということはよくあります。糖尿病を放置していると、神経や血管にダメージを与え、重篤な合併症に繋がる可能性がありますので、高血糖の方や健康診断で糖尿病の可能性が指摘された方は、早めに受診することをお勧めします。なお、当院では予約不要で診察を行っております。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは血糖値について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.12.08
【医師監修】目に現れる糖尿病の症状について解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「目に現れる糖尿病の症状」について解説していきます。後半部分では「糖尿病性網膜症」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病とは
糖尿病と目の関係
糖尿病網膜症とは
糖尿病性白内障
目に関する症状は早期発見が極めて重要です
不安な方はいつでもご相談ください
糖尿病とは
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つきます。そして将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。そのため糖尿病の症状が見られた際には放置せず、速やかに糖尿病専門医による診察を受けることが大切です。なお糖尿病は、症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし高血糖のままある程度の時間が経過すると、次のような症状が現れてきます。
<糖尿病の初期症状>
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
※糖尿病の症状について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。
糖尿病と目の関係
糖尿病になると、高血糖の影響で網膜の毛細血管が損傷し、「末梢神経障害」や「代謝異常」が生じることがあります。これにより、様々な目の合併症が発生します。合併症の中には、初期段階では症状が現れないこともありますので、注意が必要です。なお、糖尿病網膜症は最もよく知られた合併症です。糖尿病網膜症は、高血糖が網膜血管に損傷を引き起こし、視力の喪失につながる可能性があるため、早期に眼科検査を受けることが重要です。
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」と並んで糖尿病の三大合併症と言われております。糖尿病網膜症は、他の糖尿病合併症と同様、初期段階では自覚症状がありません。しかし気づかずに放置していると症状が悪化して様々な視覚障害が起こり、最終的には失明に至ることもあります。なお、糖尿病網膜症は、進行の度合いにより大きく三段階に分類されます。
【糖尿病網膜症の病期1】単純糖尿病網膜症
単純糖尿病網膜症(たんじゅんとうにょうびょうもうまくしょう)は、初期の糖尿病網膜症です。最初に出現する異常は、細い血管の壁が盛り上がってできる血管瘤や、小さな出血です。蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもあります。なお、これらは血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。
【糖尿病網膜症の病期2】前増殖糖尿病網膜症
前増殖糖尿病網膜症(ぜんぞうしょくとうにょうびょうもうまくしょう)は、単純網膜症より一歩進行した状態です。細い網膜血管が広い範囲で閉塞すると、網膜に十分な酸素が行き渡らなくなり、足りなくなった酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始めます。この時期になると「かすみ」などの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状がないこともあります。
【糖尿病網膜症の病期3】増殖糖尿病網膜症
増殖糖尿病網膜症(ぞうしょくとうにょうびょうもうまくしょう)は、糖尿病網膜症の重篤な状態です。この疾患は、高血糖の長期間の影響により、網膜の血管に損傷が生じ、異常な新生血管の増殖が引き起こされます。これらの新生血管は脆弱で、網膜内出血や網膜浮腫を引き起こす可能性があり、視力に深刻な損傷をもたらすことがあります。また、出血量が多い場合には視力低下を引き起こすこともあります。さらに、疾患が進行し、状態が悪化すると、線維性の増殖組織が形成され、網膜剥離のリスクが高まります。
※糖尿病網膜症について詳しく知りたい方は「糖尿病網膜症 - e-ヘルスネット - 厚生労働省」をご覧ください。
糖尿病性白内障
糖尿病性白内障(とうにょうびょうはくないしょう)とは、水晶体と呼ばれるレンズの部分が濁ってしまって見えにくくなる病気です。糖尿病患者さんに見られる特定の白内障の形態になります。残念ながら、糖尿病性白内障の具体的な原因は、まだはっきりとは分かっていません。主に高血糖が続くことにより、糖アルコールが蓄積して水晶体の混濁が起こると考えられています。また、糖化や酸化などの反応が関係しているとも言われています。なお、一般的に白内障は、加齢によって症状が発生しやすくなる病気です。しかし糖尿病性白内障の場合には20~30代の若年者であっても罹ることがありますので、注意が必要です。白内障の症状や白内障発症のリスクを高める危険因子については、「白内障 - e-ヘルスネット - 厚生労働省」をご覧ください。
目に関する症状は早期発見が極めて重要です
「糖尿病網膜症」や「糖尿病性白内障」など、糖尿病による目の合併症は視力を脅かす重要な問題です。これらの合併症は初期段階では症状が現れにくく、進行すると視力の喪失につながります。ですから、決して放置せず、積極的に定期的な眼科検査を受けてください。特に、「糖尿病にお心当たりのある方」や「健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方」は、目の健康に対する高い意識を持つべきです。定期的な眼科検査を受け、早期発見に努めてください。これにより、合併症が進行する前に適切な治療や介入が可能となり、視力の喪失を予防できます。
不安な方はいつでもご相談ください
糖尿病による目の合併症は、自覚症状がないまま進みます。自覚症状が出たころには、症状がかなり進んでいて、失明を覚悟しなくてはなりません。ですので、糖尿病やその予備軍と診断されたら、医師の指示どおり血糖のコントロールを行い、自覚症状がなくても眼科での定期的な眼底検査を行ってください。なお、糖尿病の指標のひとつに、ヘモグロビンA1c(HbA1c…正常値4.3~5.8)というのがあり、この数値が7.5以上になると、5倍以上失明する危険が高まるといわれています。ご自身の「ヘモグロビンA1c」について気になる方、あるいは糖尿病網膜症の症状について気になる方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.09.28
血糖値スパイクとは?症状や原因、糖尿病との関係を解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「血糖値スパイク」について解説していきます。後半部分では「血糖値スパイクを予防するための生活習慣」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
血糖値スパイクとは何か?
血糖値スパイクの原因
血糖値スパイクの症状
血糖値スパイクを起こしやすい人の特徴
血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣
血糖値スパイク、糖尿病についてはお早めに相談ください
血糖値スパイクとは何か?
血糖値スパイクとは、普段の血糖値は正常なのにもかかわらず、食後に限って血糖値が急上昇、急降下する現象のことです。この現象は、血糖値のグラフがまるで突出した「スパイク」のように上昇することから「血糖値スパイク」と呼ばれています。通常の場合、食後2時間経過時の血糖値は140mg/dL未満であるべきですが、血糖値スパイクの場合はこの基準値を超えて140mg/dL以上になることがあります。「糖尿病ネットワーク」でも同様の見解を述べています。
血糖値スパイクの原因
血糖値スパイクは、インスリンの分泌が正常に行なわれないことが原因です。老化や肥満などの影響でインスリンを分泌する膵臓の機能が衰えると、適切な量のインスリンを分泌できなかったり、インスリンを分泌するタイミングが遅れたりします。その結果、ブドウ糖を細胞内に取り込めず、血液中のブドウ糖の濃度が急激に上昇し、食後高血糖と呼ばれる状態になるのです。
<食後高血糖とは>
食後高血糖とは、食後2時間が過ぎても血糖値が高い状態のことを言います。食事をすると血糖値は高くなり、2~3時間以内に正常値(110mg/dl未満)に戻るのが一般的です。しかし、血糖値が低下せず長い時間140mg/dl以上の値が続く場合には「食後高血糖」と判断されます。食後血糖値が高い状態が続くと、糖尿病の発症リスクが高くなります。ですので、食後高血糖は糖尿病だけでなく糖尿病予備群においても重要な指標の一つとして注目されています。
血糖値スパイクの症状
血糖値スパイクの症状は、食後に急激な血糖値上昇が起こることから、眠気、頭痛、だるさなどを感じることがあります。血糖値スパイクの主な症状は次の通りです。
【血糖値スパイクの症状1】眠気・だるさ
急な血糖上昇に対応して過剰に分泌されたインスリンにより、「眠気」や「だるさ」を感じることがあります。食後の眠気については「食後の強い眠気は糖尿病症状の可能性があります」をご覧ください。
【血糖値スパイクの症状2】頭痛
食後血糖値と関連する頭痛には二種類あると言われています。一つ目は低血糖から引き起こされる頭痛です。二つ目は血糖値スパイクによる慢性的な動脈硬化により引き起こされる頭痛です。
【血糖値スパイクの症状3】気絶
過剰に分泌されたインスリンによって血糖値が急降下し、低血糖状態に陥ることがあります。低血糖状態では意識が朦朧とし、時には気絶することもあります。特に糖尿病患者さんにとっては、過剰なインスリンの効果による低血糖は注意が必要であり、適切な管理が求められます。
※血糖値スパイクは、自覚症状がほぼないと言われています。その理由は、時間が経つと血糖値が下がり、正常な範囲に戻るため、その間に特別な症状を感じにくいことが挙げられます。また、定期的な健康診断の空腹時血糖値測定では、食後の高血糖を検出しにくいという要因も影響しています。血糖値スパイクの症状に気づいた場合、糖尿病の進行が考えられます。したがって、「食後に急激に眠くなる」「頭痛がする」などの自覚症状がある場合は、放置せず、速やかに医療機関に相談してください。
血糖値スパイクを起こしやすい人の特徴
血糖値スパイクを起こしやすい人の特徴は、次の通りです。
・運動不足
・血縁者に糖尿病の人がいる
・満腹になるまで食べる
・炭水化物中心の食事をたくさん食べる
・朝食をとる習慣がない
・食べる速度が早い
血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣
血糖値スパイクを避ける上で大事なのは“食事”と“運動”です。血糖値スパイクを防ぐために、次のような生活習慣を心掛けてください。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣1】ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣2】規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく3食を食べることを心掛けてください。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣3】間食をしない
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌するすい臓に大きな負担がかかります。また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。糖尿病を予防するためにも間食はできる限り控えてください。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣4】野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は野菜類から食べてください。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣5】炭水化物・糖質の摂りすぎを避ける
炭水化物や糖質の摂り過ぎは、血糖値を急激に上昇させる要因です。したがって、炭水化物や糖質の摂りすぎにはご注意ください。なお、炭水化物や糖質の摂り過ぎに加え、果汁飲料の摂取にも注意が必要です。果汁には自然の糖分が多く含まれ、飲用することで血糖値が急上昇する可能性があります。特に加工された果汁飲料は糖分が濃く、大量の糖質摂取を招く恐れがあります。血糖値のコントロールを目指す方は、果汁飲料の代わりに水や無糖の飲料を選ぶことをお勧めします。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣6】食物繊維が含まれる食品を摂る
食物繊維には、食後の血糖値上昇を抑え、便通を改善させる効果があります。さらに、水に溶ける食物繊維(水溶性食物繊維)には、血中コレステロールの上昇を抑える効果があります。ですので、食物繊維が含まれる食品を多く摂るように心掛けてください。なお、食物繊維を多く含む食べ物には、野菜、海藻、きのこなどが挙げられます。
<野菜>
野菜は低カロリーで食物繊維が多く、糖質や脂質の代謝に必要なビタミン・ミネラルが含まれています。特にブロッコリーや小松菜などの緑黄色野菜には食物繊維以外にも、糖の代謝を促進する葉酸も多く含まれています。ですので、野菜を選ぶ際は緑黄色野菜を中心に食べてください。なお、南瓜やれんこん、芋類は糖質が多い野菜なので、食べ過ぎに注意してくださいね。
<海藻>
海藻は低カロリーで食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含みます。中でも「めかぶ」はおすすめです。
<きのこ>
きのこは低カロリーで食物繊維が多く含まれています。食物繊維は、糖の吸収を邪魔するため、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。さらに、きのこに含まれるβ-グルカンは胃や腸で膨らむので満腹感も得られ、お通じの調子も整います。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣7】たんぱく質を積極的に摂る
肉や魚、卵、豆類などのたんぱく質が血糖値の急激な上昇を緩和し、食後の血糖値を安定させる助けになります。したがって、積極的にたんぱく質は摂ってください。高齢の方は、食事の量が減ってたんぱく質が不足しやすく、加齢も影響して筋肉が衰えやすいので、特に注意してくださいね。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣8】運動をする
運動は血糖値スパイクの予防に有効です。定期的な有酸素運動や筋力トレーニングは、インスリンの効果を向上させ、血糖値の急上昇を緩和します。さらに、運動によってブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、細胞や筋肉が糖分を効果的に吸収することができるようになり、血糖値の低下が期待されます。したがって、血糖値スパイクを予防するためには積極的に運動を取り入れることが大切です。医師の指導を受けながら、適切な運動方法を選択してください。なお、有酸素運動については以下をご覧ください。
<有酸素運動>
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
【血糖値スパイクの対策・予防するための生活習慣9】ストレスを解消する
ストレスを感じると、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されたり、インスリン抵抗性が強くなったりします。したがってストレスと上手く付き合うことも、血糖値スパイクを予防するためには大切です。
血糖値スパイク、糖尿病についてはお早めに相談ください
血糖値スパイクは自覚症状がほとんどありません。また、糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということは多々あります。糖尿病を放置していると、神経や血管にダメージを与え、重篤な合併症に繋がる可能性がありますので、健康診断で糖尿病の可能性が指摘された方や、食後の眠気・だるさを感じている方は、早めに受診することをお勧めします。なお、当院では予約不要で診察を行っております。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは血糖値について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.08.09
不眠症と糖尿病の関係性について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「不眠症と糖尿病の関係性」について解説していきます。後半部分では、「不眠症と糖尿病の併発リスク」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
不眠症と糖尿病の症状
睡眠障害が糖尿病に与える影響について
不眠が糖尿病に与える影響について
糖尿病症状が不眠症に与える影響とは
糖尿病患者さんに起こり得る眠気のメカニズム
体内時計の乱れがもたらす影響
不眠症と糖尿病の併発リスク
不眠症、糖尿病についていつでもご相談ください
不眠症と糖尿病の症状
不眠症と糖尿病の症状の症状は、次の通りです。
<不眠症の症状>
不眠症とは、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡障害によって、その人にとって必要な睡眠時間が十分に取れないことや“睡眠の質”が低下することで、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠は、眠気、倦怠感、集中力低下、抑うつや不安などの精神症状を引き起こし、その結果として生産性の低下、交通事故の増加など、様々な人的及び社会経済的損失をもたらすと考えられております。したがって、「睡眠が浅い」「寝付けない」など、睡眠に関して気になる症状がある方は、早い段階で医療機関に相談することをお勧めします。なお、日本においては約5人に1人が不眠の症状で悩んでいると言われております。詳しくは「不眠症 - e-ヘルスネット - 厚生労働省」をご覧ください。
<糖尿病の症状>
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つきます。そして将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。そのため糖尿病の症状が見られた際には放置せず、速やかに糖尿病専門医による診察を受けることが大切です。なお糖尿病は、症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし高血糖のままある程度の時間が経過すると、次のような症状が現れてきます。
糖尿病の初期症状
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
睡眠障害が糖尿病に与える影響について
睡眠障害は、糖尿病と密接な関係があることが研究で示されています。「不眠症」や「睡眠時無呼吸症候群」などの睡眠障害は、「血糖コントロールの悪化」や「インスリン抵抗性の増加」を引き起こす可能性があります。また、睡眠障害はストレスホルモンの分泌を増加させ、炎症反応を促進することもあります。炎症反応の亢進は、インスリンの効果を妨げ、血糖値の上昇に寄与する可能性があるため、注意が必要です。なお、睡眠障害は様々な要因が組み合わさることで糖尿病の発症や進行を加速させる可能性があります。したがって、睡眠の質と量を適切に管理することは、糖尿病管理の重要な要素と言えます。
不眠が糖尿病に与える影響について
不眠は糖尿病に多様な影響を及ぼします。糖尿病のない人々においても、睡眠不足になると交感神経が刺激され、コルチゾールの分泌が増えてインスリン抵抗性が高まると報告されています。また、不眠により、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減少し、食欲を刺激するホルモンであるグレリンが増加するという研究結果もあります。これにより生じる食欲増進は血糖コントロールに当然不利に働きますので、これにより生じる食欲増進は血糖コントロールに当然不利に働きますので、適切な睡眠を確保することは糖尿病予防や管理において重要な要素と言えます。
糖尿病症状が不眠症に与える影響とは
糖尿病は不眠症に様々な影響を与える可能性があります。まず、高血糖状態が持続すると、夜間の頻尿や喉の渇きが生じ、眠りを妨げることがあります。また、糖尿病に伴う神経障害(神経症状)は、足のしびれや痛みを引き起こし、就寝時の快適さや眠りの質に悪影響を及ぼすことがあります。さらに、糖尿病患者さんは血糖コントロールのためにインスリンや薬物を使用することがありますが、これらの治療は低血糖(低血糖症)を引き起こす可能性があります。低血糖症は夜間に起こることがあり、悪夢や夜間覚醒を引き起こすことがありますので、注意が必要です。糖尿病が不眠症に与える影響は、生活の質を低下させるだけでなく、血糖コントロールの悪化や合併症のリスクを増加させる可能性があります。そのため、糖尿病患者さんは睡眠の問題に真剣に取り組み、適切な治療やライフスタイルの改善を検討することが重要です。
糖尿病患者さんに起こり得る眠気のメカニズム
糖尿病患者さんは、血糖値を下げる薬や「インスリン注射薬」を使って血糖値をコントロールするわけですが、インスリン注射薬や飲み薬が効きすぎてしまって、必要以上に血糖値が下がってしまうことがあります。低血糖状態になると脳に供給されるブドウ糖が不足してしまい、眠気が起こります。これが、糖尿病患者さんに起こり得る眠気のメカニズムになります。なお、日中の強い眠気は、糖尿病だけでなく、そのほかの病気や「生活習慣」によっても引き起こされます。例えば、睡眠時に無呼吸になり睡眠の質が低下する「睡眠時無呼吸症候群」や突然強い眠気に襲われてしまう「ナルコレプシー」といった病気です。また、寝る直前までパソコンやスマートフォンをいじっていたり、そもそも睡眠時間が少ないといった生活習慣なども眠気の原因になります。ですので、「糖尿病だから眠気が強いのだろう…」と考えるのではなく、眠気に強い悩みがあれば医師にしっかりと相談してください。
体内時計の乱れがもたらす影響
人間の体には、ほぼ24時間周期の体内時計があり、体温や血圧、ホルモン分泌などを調整しています。しかし、睡眠障害が起きると体内時計が乱れ、様々な機能に影響が及びます。まず、睡眠障害によって体と脳が十分に休まらず、糖分を細胞に取り込むためのインスリンへの反応が低下します。また、ホルモンバランスも変化し、交感神経に働きかけるコルチゾールやノルアドレナリンなどのホルモンが増加します。これにより、高血圧や高血糖といった症状が引き起こされます。一方で、食欲を制御するレプチンというホルモンは睡眠不足によって分泌が低下し、空腹感が増すため、食事のコントロールが難しくなります。つまり、糖尿病によって睡眠障害が起きると、血圧や血糖値が上昇し、糖尿病の症状が悪化するという悪循環に陥ってしまうのです。
不眠症と糖尿病の併発リスク
不眠症と糖尿病は密接な関係があり、互いに影響し合うことが知られています。そのため、糖尿病専門外来を受診している患者さんのうち、約40%が不眠に悩んでいると報告されています。糖尿病では、合併症による神経障害や高血糖による多飲・多尿などの身体的要素が不眠を引き起こすことがあります。一方、睡眠時間が不足している場合には、耐糖能異常が多いことも報告されております。このようなことから血糖コントロール不良の糖尿病では、睡眠障害と高血糖が負のサイクルを形成する可能性が考えられています。
不眠症、糖尿病についていつでもご相談ください
糖尿病は自覚症状のないままに進行し、将来的に心臓病や失明、腎不全など、より重篤な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、決して放置してはなりません。糖尿病の可能性が指摘された方や、日常生活の乱れにより「糖尿病の症状かもしれない…」と感じている方は、できるだけ早く医療機関を受診してください。また、不眠症にも注意が必要です。不眠症と糖尿病は密接に関連しており、互いに影響し合うことが知られています。睡眠障害がある場合、血糖コントロールが難しくなり、糖尿病の管理に悪影響を及ぼす可能性がありますので、不眠症に悩んでいる方も積極的に医療機関を受診してください。なお、当院では「糖尿病」や「不眠症」の診療を行っております。糖尿病の症状について悩んでいる方、あるいは不眠症の症状にお心当たりのある方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.05.24
糖尿病と眠気の関係を徹底解説|食後や朝のひどい眠気の解消方法も
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病と眠気の関係」について解説していきます。後半部分では「朝や食後のひどい眠気を解消するための対策」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
食後にひどい眠気がくるのはなぜ?糖尿病の症状?
食後にひどい眠気がくるのはなぜ?糖尿病の疑いについて
糖尿病とひどい眠気の関係性
糖尿病によるその他の症状
低血糖による中枢神経症状
糖尿病による食後のひどい眠気を解消するために
糖尿病が不安な方はいつでもご相談ください
食後にひどい眠気がくるのはなぜ?糖尿病の症状?
食後に眠くなるのは体内時計の「生体リズム」が働くためとか、消化吸収を促すことから「副交感神経」が優位になり、心身がリラックスモードに切り替わるからなど、いろいろな説があります。確かに少しくらいの眠気なら健康な人にもある自然な現象と言えるため、それほど心配することはありません。しかし強い眠気が長時間続いてしまうときは注意が必要です。もしかしたら糖尿病の初期症状かもしれません。
食後にひどい眠気がくるのはなぜ?糖尿病の疑いも
なぜ、食後に強い眠気を感じる方は「糖尿病の疑い」があるのでしょうか。
糖尿病を疑う理由として、血糖値が下がりにくくなっている可能性が挙げられます。
食後は誰でも血糖値が一時的に上がります(健康な人でも食後の血糖値は上昇します)。食後に上昇した血糖値は、時間の経過と共にゆっくり下降するのが一般的です。しかし糖尿病の方は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きが悪くなっているため、食後の高血糖状態が長く続きます。そのため、食後に強い眠気を感じやすいのです。なお、高血糖状態のときに眠気を感じやすいのは、覚醒を促す「オレキシン」というホルモンの分泌が止まるためです。オレキシンについては、以下をご覧ください。
<オレキシンについて>
睡眠と脳の覚醒にはオレキシンという物質が深く関わっています。脊椎動物のほとんどは、オレキシンが活発に働いているときに覚醒し、働きが鈍ると睡眠状態に入るといわれています。空腹になると血糖値が低くなるため「オレキシン作動性ニューロン」の活動が活発になり、オレキシンを刺激して活性化するため覚醒します。しかし、満腹になると血糖値が高くなり、オレキシン作動性ニューロンの活動が低下するため、オレキシンの活動が鈍くなり、眠くなってしまうと考えられています。つまり糖尿病の方は、オレキシンの分泌が長い時間抑制されるため、健康な方よりも「眠気を強く感じやすい」ということです。
糖尿病と眠気の関係性
糖尿病患者さんは、血糖値を下げる薬や「インスリン注射薬」を使って血糖値をコントロールするわけですが、インスリン注射薬や飲み薬が効きすぎてしまって、必要以上に血糖値が下がってしまうことがあります。低血糖状態になると脳に供給されるブドウ糖が不足してしまい、眠気が起こります。これが、糖尿病患者さんに起こり得る眠気のメカニズムになります。なお、日中の強い眠気は、糖尿病だけでなく、そのほかの病気や「生活習慣」によっても引き起こされます。例えば、睡眠時に無呼吸になり睡眠の質が低下する「睡眠時無呼吸症候群」や突然強い眠気に襲われてしまう「ナルコレプシー」といった病気です。また、寝る直前までパソコンやスマートフォンをいじっていたり、そもそも睡眠時間が少ないといった生活習慣なども眠気の原因になります。ですので、「糖尿病だから眠気が強いのだろう…」と考えるのではなく、眠気に強い悩みがあれば医師にしっかりと相談してください。
糖尿病によるその他の症状
糖尿病は症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし高血糖のままある程度の時間が経過すると、次のような症状が現れてきます。
<糖尿病によるその他の症状>
・立ちくらみ
・めまい
・頭痛
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
低血糖による中枢神経症状
血糖値が50mg/dl程度の状態が続くと「中枢神経症状」が現れます。具体的には、頭痛、眠気、めまい、目のかすみ、ろれつが回らない、ぎこちない動作、強い疲労感などです。さらに血糖値が50mg/dlを下回ってくると「異常行動」や「痙攣」、「意識が朦朧とする」、さらに昏睡状態に陥るケースも考えられるため早期の対処が不可欠です。普段から血糖値が低い場合は、無意識のうちに低血糖状態となっている可能性も考えられます。中枢神経症状が突然発症する恐れもありますので、十分に注意してください。
糖尿病による食後の眠気を解消するために
普段の血糖値は正常でも、食後に血糖値が異常に高くなる症状を食後高血糖といいます。食後に血糖値が急激に上がり過ぎると、糖をエネルギーに変えるインスリンが大量に分泌され、反動で血糖値が急降下します。そして今度は低血糖状態になり、食後に強い眠気や倦怠感を感じたり、イライラしやすくなったりします。そのため食事をする際は、血糖値の急上昇を起こさないように気を配る必要があります。以下、血糖値の急上昇を起こさないための対策です(血糖値が急上昇したのち急降下する現象は「血糖値スパイク」と呼ばれています)。
【糖尿病による食後の眠気を解消するために1】ゆっくり時間をかけて食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食べるスピードは非常に重要なのです。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
【糖尿病による食後の眠気を解消するために2】野菜類から食べること
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は野菜類から食べてください。
【糖尿病による食後の眠気を解消するために3】脂質を味方につける
脂質はカロリーが高いので敬遠されがちですが、実は消化吸収に時間がかかるため、最も血糖値を上昇させにくい栄養素です。パスタなどの洋食と相性のいい”オリーブオイル”をふりかけて食べれば、炭水化物単体で食べるより血糖値の上昇を抑えることができます。
【糖尿病による食後の眠気を解消するために4】規則正しく3食を食べる
1日3食を規則正しく食べているときには「血糖値スパイク」が生じなかった人でも、朝食を抜くと昼食のあとに「血糖値スパイク」が発生するという研究結果が出ています。ですので、食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく3食を食べることを心掛けてください。
※「日中の居眠り」や「食後の眠気」を解消するためには、睡眠の質を上げることも大切です。睡眠の質を上げる方法については「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
糖尿病が不安な方はいつでもご相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病かもしれない…」と感じている方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは健康的な食事について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.03.18
糖尿病による皮膚の症状について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病による皮膚の症状」について解説していきます。後半部分では「糖尿病が引き起こす皮膚の病気」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病による皮膚への影響
なぜ糖尿病にかかると皮膚に症状が出るのか
糖尿病が引き起こす皮膚の病気
糖尿病による皮膚病の予防策
糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために
まとめ
糖尿病による皮膚への影響
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。また、糖尿病は皮膚症状との関連性が高い病気の一つです。多くの糖尿病患者さんが、乾燥や痒み、痛みなどの肌のトラブルに悩まされています。糖尿病患者さんに現れる症状のうち、皮膚や肌に関係するものは以下の通りです。
・痒い
・乾燥する
・ちくちくと指すような痛みがある
・手足の感覚がない
・切り傷が治りにくい
なぜ糖尿病にかかると皮膚に症状が出るのか
多くの糖尿病患者さんが、乾燥や痒み、痛みなどの肌のトラブルに悩まされています。なぜ糖尿病にかかると皮膚症状が出るのでしょうか。
<高血糖による脱水症状>
血糖値が上がると、皮膚の水分が失われ乾燥肌になりやすくなります。乾燥した皮膚は傷つきやすいので、痒みが生じたり、痛みが走ったりします。
<多尿により体内が脱水傾向になる>
血糖値が高い状態が続くと、血液中のブドウ糖の多くが尿に排出されます。その際に体の中の水分も一緒に尿に排出されるため脱水気味となり、皮膚が乾燥しやすくなると考えられています。
<自律神経障害によって発汗作用が低下するため>
糖尿病で高血糖の状態が長く持続すると、自律神経に障害が及びます。自律神経の働きが障害されると汗をかきにくくなり、皮膚の水分量が低下するため、「乾燥」や「痒み」が生じやすいと考えれられています。
糖尿病が引き起こす皮膚の病気
糖尿病による「血管障害」や「神経障害」あるいは「脂質代謝異常増悪」により、下記のような皮膚病変が出現します。
【糖尿病が引き起こす皮膚の病気1】糖尿病性水疱
糖尿病性水疱とは、糖尿病による血管障害の影響で、突然手や脚の皮膚に水疱ができる病気です。高血糖状態が続くと細菌や真菌に対する抵抗力が低下し、血流が悪くなるため感染症を引き起こしやすくなることが原因と考えられています。なお、糖尿病性水疱はカビの一種である真菌に感染することで発症します。
【糖尿病が引き起こす皮膚の病気2】成年性浮腫性硬化症
成年性浮腫性硬化症とは、糖尿病や感染症などをきっかけとして引き起こされる皮膚変化のことを指します。顔や首、肩、上半身などを含めた全身各所の皮膚がむくみ、硬くなります。成年性浮腫性硬化症では、原因となっている疾患に対する治療が行われるほか、皮膚病変に対して光線療法や免疫抑制剤の使用などが検討されます。
【糖尿病が引き起こす皮膚の病気3】糖尿病性黄色腫
糖尿病性黄色腫は、重症糖尿病あるいは充分コントロールされない糖尿病にみられる稀な皮膚合併症です(糖尿病の家族歴を持つ20~30歳代に起こりやすい)。好発部位は四肢伸側で、特に肘頭、膝蓋、臀部で、米粒大から小豆大の黄色ないし赤褐色の丘疹または小結節が多発し、時に掻痒を伴います。
【糖尿病が引き起こす皮膚の病気4】リポイド類壊死症
リポイド類壊死症とは、肉芽腫性反応、血管壁の肥厚と脂肪沈殿とコラーゲンの変性疾患のことを言います。糖尿病性細小血管症に焦点を当てた原因説があげられています。なお、糖尿病患者さんにおいては、早期に発生すると言われています。
【糖尿病が引き起こす皮膚の病気5】糖尿病性皮膚潰瘍
糖尿病性潰瘍とは、糖尿病が進行すると起こる皮膚潰瘍のことです。症状としては足の指などに皮膚潰瘍ができるのですが、糖尿病による神経障害を併発していることが多く、無痛のため気付かないこともあります。なお、皮膚潰瘍を放置しますと“潰瘍部分”が壊死してしまいますので、注意が必要です。
糖尿病による皮膚病の予防策
糖尿病による皮膚病変は予防が重要です。糖尿病皮膚病変を予防するには以下のポイントを押さえて行うことが大切です。
・毎日皮膚をチェックする
・保湿して乾燥対策を行う
・低温やけどに注意する
糖尿病があるため、皮膚科的に特別な治療が必要になることはあまりないですが、一般的に病気が広がりやすく治りにくい傾向があるので、皮膚の小さな変化に気付いたらそのままにせず、早めに診察を受けてください。もちろん、血糖値をよく管理することも大切になります。
糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために
皮膚の痒みを予防する上で大切なのは、肌のバリア機能を低下させないことです。こまめに保湿剤を使用し、スキンケアを行ってください。以下、痒さへの対策になりますので、ぜひ参考にしてくださいね。
【糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために1】紫外線を防ぐ
紫外線は必要以上に浴びると皮膚の乾燥を起こしたり、皮膚の老化を早めたり、眼の病気や皮膚がんのリスクを高める可能性があります。また、長時間日光を浴びると皮膚が炎症を起こし(日焼け)、皮膚のバリア機能が低下します。ですので、紫外線が強い時期や時間帯に外出するときは、日焼け止めを塗ったり、腕や首などを覆う服を着たり、日傘をさしたりして肌を守ってください。
【糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために2】肌の乾燥を防ぐ
バリア機能が低下して乾燥した肌は、痒みが発生しやすくなります。保湿剤を塗り、肌を乾燥から守るケアを心がけてください。保湿剤によるスキンケアは1年をとおして毎日続けるものなので、季節や時間帯、塗る場所に応じて、使いやすい剤形を選んでください。
【糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために3】清潔の保持
この場合の清潔とは、皮膚の汚れや汗、アレルギーの原因物質、細菌(黄色ブドウ球菌)やウイルスなどを洗い落とすことをいいます。「汗をかいたら早めにシャワーで流す」「外出先では、こまめに汗を拭き取る」など、常に清潔さをキープしてください。
【糖尿病による皮膚の痒みを防ぐために4】バランスのとれた食事をする
たんぱく質、ビタミン・ミネラル、食物繊維などをバランスよくとってください。乾燥肌にはサバやイワシなどの青魚や、かぼちゃ、にんじんなどの緑黄色野菜がおすすめです。
まとめ
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病かもしれない…」と感じている方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは健康的な食事について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.03.17
糖尿病の名称変更について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病の名称変更」について解説していきます。後半部分では「糖尿病という病名が付けられた背景」や「病名変更による影響」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病という病名が変わります
病名変更の背景
糖尿病という単語がもつ印象
糖尿病スティグマとは
当初「糖尿病」という病名が付けられた背景
病名変更による影響
まとめ
糖尿病という病名が変わります
糖尿病という病名は、糖が「尿」に認められる病気と書きますが、糖尿病の診断基準を満たす方でも尿が糖に認められないこともあるため、必ずしも正しい病名とは言えません。このようなことから昨年、日本糖尿病協会は「“糖尿病”の名称変更を検討する」と発表いたしました。
病名変更の背景
糖尿病の病名変更を検討する理由は大きく2つあります。以下、ご覧ください。
【病名変更の背景1】病名が実態に合わないため
上述した通り、血糖値は高いけれども尿に糖が出ない人もいるなど、病名が実態に合わないことが分かってきたからです。
【病名変更の背景2】糖尿病患者さんが病名に不快感や抵抗感を持っているため
糖尿病という病名に尿がはいっていることで、患者さんの尊厳が傷つけられているとの指摘があるからです。実際に“糖尿病協会”が糖尿病患者さんを対象に行ったアンケート (2021年11月8日~22年9月30日) では、 回答者1068人のうち“約9割”が病名に「不快感」や「抵抗感」を持っていることが分かっております。さらに「疾病の実態を正確に表す言葉に病名を変更するように希望する方が8割に上った」と伝えております。
糖尿病という単語がもつ印象
糖尿病という単語は 「生活習慣が悪い」 「だらしない」 などと周囲から見られやすい傾向にあります。そのため糖尿病による偏見を恐れて、同僚や家族に糖尿病のことを話さず、「医師の診察時にも隠す方がいる」と言われております。このようなことから日本糖尿病協会では、「糖尿病に対する誤った認識が偏見を助長し、 差別を生んでいる(糖尿病スティグマ)」 と指摘しております。
糖尿病スティグマとは
糖尿病スティグマとは、その名の通り糖尿病を持つ人に対する“スティグマ”のことを指します。スティグマとは、一般に「恥・不信用のしるし」「不名誉な烙印」を意味します。ある特定の属性により、いわれのない差別や偏見の対象となることです。では、糖尿病のスティグマにおいては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。糖尿病におけるスティグマについては、以下の具体例をご覧ください。
<糖尿病スティグマの具体例>
糖尿病におけるスティグマでは、糖尿病になると失明や透析、脳梗塞になるなどと決めつけられることであったり、不摂生、だらしない、運動嫌い、自己管理ができていないとされたりすることで社会的に様々な不利益を被ることなどが挙げられます。また生命保険に加入できない、住宅ローンを組めない、結婚の障壁となる、就職に不利になる、なども糖尿病におけるスティグマだと言えます。
当初「糖尿病」という病名が付けられた背景
糖尿病は、紀元2 世紀にカッパドキアの医師「アレタイオス」が“diabetes(ダイアビーティス)”と命名したことから始まると言われています。日本では、のどが乾く症状があるため、古来から「消渇」と呼ばれ、平安時代の貴族、藤原道長も「消渇」だったと伝えられています。そして江戸時代には、オランダから医学の知識が輸入され、オランダ語で「尿」と「洪水」を意味する「pisvloed(ピスフルトゥ)」という病名を翻訳して「尿崩(にょうほう)」が使われるようになったということです。なお、その後は病気を尿の糖を検査するなどして診断するようになり、1907年”第4回日本内科学会講演会後“に「糖尿病」に統一されたという経緯があります。
病名変更による影響
糖尿病の病名変更は、糖尿病に対する偏見を払拭できる可能性があります。なぜなら痴呆においては、“痴呆”という用語が“認知症”に置き換わることで、病気に対する社会の受け止め方が変わってきた歴史があるからです。もちろん呼び名が変わったことで認知症のある人が抱えていた生きづらさが全て解決したわけではないでしょうが、少しずつ社会がよい方向に前進しました。したがって糖尿病に関しても、同じように取り組むことで、糖尿病のある人が生きやすい世の中をつくれるかもしれません。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病かもしれない…」と感じた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病の症状について不安な方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.03.06
糖尿病と塩分の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病と塩分の関係」について解説していきます。後半部分では「塩分摂取量を減らすコツ」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください
塩分の摂りすぎは糖尿病を悪化させます
なぜ塩分を摂ると高血圧になるのか
塩分を摂りすぎないために
まとめ
糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れる“ブドウ糖”という糖が増えてしまう病気です。糖尿病では、「糖分の多い“炭水化物”や“甘いお菓子”の摂りすぎを控えなければいけない」というイメージがあるかと思いますが、実はそれだけではありません。糖尿病では塩分の摂りすぎも大敵となります。ですので、糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください。
塩分の摂りすぎは糖尿病を悪化させます
塩分は血糖値に直接的に影響しませんが、高塩分で濃い味の食事はつい食べ過ぎたり、飲みすぎたりするため、体重増加の原因になります。その結果、インスリンが聞きにくくなる“インスリン抵抗性”を引き起こし、2型糖尿病のリスクを上昇させると考えられております。また、血糖値が高いと高血圧の影響を受けやすく、血糖値と血圧がコントロール不良であれば「心疾患」や「慢性腎臓病」などの合併症リスクが上昇します。糖尿病が引き起こす合併症については以下をご覧ください。
【糖尿病の合併症1】心筋梗塞
心筋梗塞とは、心筋に血液と酸素を送る冠動脈が動脈硬化で硬くなり、心筋に血液を送ることができない状態になることです。これにより、心筋が酸素不足に陥り壊死を起こしてしまう状態を言います。心筋梗塞は日本人の死亡原因の上位に挙げられている疾患で突然死の原因にもなり得る、恐ろしい疾患の一つです。
【糖尿病の合併症2】脳卒中
脳卒中とは、急性期脳血管障害のことを指し、突然脳の血管が詰まったり、破れたりして引き起こされる病気の総称です。脳卒中は原因によって「脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞、一過性脳虚血発作)」と「脳の血管が破れるタイプ(脳出血、くも膜下出血)」の2つに分けられます。脳卒中は、障害を受けた脳が司っていた「身体機能」や「言語機能」が失われたり、場合によっては死に至ることもありますので、非常に危険な疾患です。
【糖尿病の合併症3】腎不全
腎不全とは、腎臓の働きが正常の30パーセント以下に低下した状態を言います。腎不全は初期の頃には無症状のことが多く、進行するにつれて様々な症状が出現してきます。
【糖尿病の合併症4】動脈硬化
動脈硬化とは、文字どおり動脈が硬くなる状態のことです。動脈硬化は、中高年の人に生じる病態と思われがちですが、実は小児期から徐々に進行し、様々な病気の原因となります。そのため、若い頃から動脈硬化の進行を予防することが大切です。動脈硬化は、糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病によって進みますので、十分にご注意ください。
【糖尿病の合併症5】高血圧
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧症と診断されます。高血圧症は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」と言われております。
なぜ塩分を摂ると高血圧になるのか
人間の体の中では、水分と塩分が一定の濃度に保たれています。食塩をとり過ぎると、一時的に高くなった塩分濃度を下げるために、体内に水分がため込まれます。これによって、心臓に送り込まれる血液量が増え、血管にかかる圧力が増し、血圧が上がってしまうのです。
塩分を摂りすぎないために
糖尿病患者向けの治療ガイドラインでは、糖尿病の合併症の危険性を抑えるために、塩分摂取量を控えることが勧められております。日本食は健康的な食事として評価されておりますが、みそ・塩・しょうゆといった調味料から塩分を摂り過ぎる傾向がありますので、調理する際には工夫が必要です。なお、塩分摂取量を減らすコツについては、以下をご覧ください。
【塩分摂取量を減らすコツ1】食べる直前に味付けをする
食べる直前に味付けをすることで、少量の調味料でも味を感じやすくなります。ですので、味付けはなるべく食べる直前に行ってください。
【塩分摂取量を減らすコツ2】酸味や香辛料を積極的に用いる
酸味や、香辛料を用いると、味のアクセントとなるため、薄味でも気にならなくなります。
【塩分摂取量を減らすコツ3】練り製品や加工食品は茹でる
練り製品や加工食品(ハム・ソーセージなど)は塩分が多い食材です。これらの食材は、一度茹でることで、塩分を少し落とすことができます。
【塩分摂取量を減らすコツ4】低塩分のものを使う
ハーブやスパイスといった塩分を含まないもの、もしくはマヨネーズやケチャップといった低塩分の調味料を使用してください。塩とは別の風味になるものの、料理次第で満足度の高いおかずになります。なお、どうしても醤油や塩を使いたい場合は「減塩タイプ」の商品を使ってください。
【塩分摂取量を減らすコツ5】カリウムを積極的に摂取する
カリウムには体内の塩分を体外に排出する働きがあるため、塩分を控えたいと考えている方にとって重要な栄養素になります。ですので、摂取する塩分量をコントロールするためにも、カリウムの摂取を意識してください。なお、カリウムが多く含まれている食品としては、「ほうれん草」「わかめ」「アボカド」などが挙げられます。
【塩分摂取量を減らすコツ6】既製品や加工食品の使用をなるべく控える
既製品や加工食品には多くの塩分が含まれていることが多いため、使用を控えるようにしてください。たとえば、レトルトや加工肉、外食の食品などは意外にも多くの塩分が含まれています。薄味に感じても、塩分を大量に摂取している可能性がありますので注意してくださいね。
まとめ
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病かもしれない…」と感じている方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは健康的な食事について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.03.01
糖尿病の原因|糖尿病に関わるホルモンについて解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病に関わるホルモン」について解説していきます。後半部分では「ホルモンに関する病気」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
ホルモンの働きについて
糖尿病との関係
血糖値に関わるホルモンの種類
ホルモンに関する病気
まとめ
ホルモンの働きについて
ホルモンとは、体のさまざまな働きを調節する化学物質です。ホルモンは、体の外側、内側で環境の変化が起きても、体の働きが常に同じになるように保つ働きをしています。現在、ホルモンとして確かめられているものは100種類ほどあり、さらに発見され続けています。したがってホルモンの種類は、まだ増えると考えられております。
糖尿病との関係
血糖値を上げる働きのあるホルモンが何らかの病気によって正常よりも大量に分泌されるとインスリンとのバランスが取れなくなり、血糖値が必要以上に上がってしまいます。その結果、糖尿病やその一歩手前の“耐糖能異常”を引き起こしてしまう可能性があります。なお、血糖は人間が生きていくために必要不可欠なものです。そのため体の中では、血糖値を下げる働きのあるホルモンよりも上昇させる働きのあるホルモンの方が多く存在します。
血糖値に関わるホルモンの種類
血糖値を低下させるホルモンは“インスリン”だけです。一方、血糖値を上昇させるホルモンは“インスリン”と拮抗するグルカゴンだけでなく、成長ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、甲状腺ホルモンなど多数あります。血糖調節に関与するホルモンについては、以下をご覧ください。
【血糖調節に関与するホルモン1】インスリン
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。
【血糖調節に関与するホルモン2】グルカゴン
グルカゴンは、血糖値を上昇させる作用を持つホルモンの一つです。膵臓のα(アルファ)細胞で作られます。グルカゴンは肝臓で貯蔵してあるブドウ糖のもとを分解したり、アミノ酸からブドウ糖を合成したりして、血糖値を上げる効果があります。また、同じ膵臓のβ(ベータ)細胞から作られるインスリンの分泌を促進したり、成長ホルモンの分泌を促進する効果もあります。
【血糖調節に関与するホルモン3】成長ホルモン
成長ホルモンとは、下垂体前葉から分泌されるホルモンです。成長という名前がついていますが、成長ホルモンは“成長”のためだけに働くものではありません。人間の一生にわたって、代謝調節に関与し、現在では免疫機能、認知機能などにも作用を持つことがわかってきております。なお、成長ホルモンには脂肪を分解する作用があるため、蓄えられた脂肪が遊離脂肪酸に分解されて、その遊離脂肪酸はインスリン作用をブロックします。つまり、成長ホルモンが多く出ると、インスリン作用が低下して血糖値が上がる仕組みになっているのです。
【血糖調節に関与するホルモン4】コルチゾール
コルチゾールは、副腎皮質から分泌される、生命を維持するために欠かせないホルモンです。コルチゾールは,グルカゴンやアドレナリンの作用を高め、肝臓における糖新生を促進する一方、筋や脂肪組織における“インスリン抵抗性”を助長するため、高血糖となります。したがってのコルチゾールが必要以上にたくさん分泌されると血糖値が上昇します。なお、コルチゾールの主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などです。
【血糖調節に関与するホルモン5】アドレナリン(エピネフリン、エピペン)
アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎というところの中の髄質から分泌されるホルモンです。アドレナリンは、すい臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を抑制し、血糖値を上げる働きを持っています。またグルカゴンの分泌を促進したり、肝臓でグリコゲンからブドウ糖を作る事を促進したりすることによっても血糖値を上昇させます。
【血糖調節に関与するホルモン6】甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンとは、甲状腺で作られるホルモンです。甲状腺ホルモンは、血液の流れに乗って全身の細胞に働きかけ、新陳代謝を活発にする働きをしています。また骨や神経、精神状態にも関わり、子どもの成長や発育を促進するなど、人間が生きていくうえで必要なホルモンです。なお、甲状腺ホルモンの上昇により肝臓における糖新生が亢進するため、血糖値は増加するとされています。
ホルモンに関する病気
ホルモンが過剰に分泌してしまう病気には以下のようなものがあります。
【ホルモンに関する病気1】グルカゴノーマ
グルカゴノーマは、グルカゴンというホルモンを分泌する膵臓の腫瘍です。グルカゴンの作用により血液中のグルコース濃度(血糖値)が上昇することで、非常に特徴的な発疹が現れます。なお、グルカゴノーマのおよそ80%は悪性腫瘍です。しかし腫瘍の増殖が遅いため、多くの人が診断後15年以上生存します。
【ホルモンに関する病気2】下垂体性巨人症(かすいたいせいきょじんしょう)
下垂体性巨人症とは、脳の下垂体という小さな臓器から成長ホルモンがたくさん分泌される病気です。お子さんの場合は、骨が伸びる最中に成長ホルモンがたくさん分泌されるため、身長がとても高くなる特徴があります。なお、大人になってから発症した場合は、身長は伸びずに、手足が大きくなる、口唇・鼻が大きくなる、おでこや顎が出っ張ってくるなどの特徴を持ち、先端巨大症(せんたんきょだいしょう)と呼ばれます。
【ホルモンに関する病気3】クッシング症候群
クッシング症候群とは、副腎から分泌されるコルチゾールの作用が過剰になることにより、特徴的な身体徴候を呈する病気です。主な症状として、赤ら顔になる、顔が丸くなる満月様顔貌(まんげつようがんぼう)や、体幹に脂肪の付きやすくなる中心性肥満など、見た目から分かる症状のほか、階段の上り下りが難しくなる筋力低下や高血圧、糖尿病や骨粗しょう症、月経の異常、気分の落ち込みなどが挙げられます。
【ホルモンに関する病気4】甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺が活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気です。原因としては、健常な人には認められない甲状腺を刺激する異常な物質が「血中および組織の中に存在するため」と考えられております。なお、甲状腺機能亢進症の代表的なものについては「バセドウ病」が挙げられます。バセドウ病については「こちらのページ」で詳しくご説明しておりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と感じている方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいはホルモンバランスの乱れによって心身の不調を感じている方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.02.27
糖尿病と抜け毛の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病になると抜け毛のリスクが高まると考えられております。では、なぜ糖尿病になると抜け毛のリスクが高まるのでしょうか。
この記事では「糖尿病と抜け毛の関係」について解説していきます。後半部分では「AGA(男性型脱毛症)」や「円形脱毛症」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
なぜ糖尿病になると抜け毛のリスクが高まるのか
糖尿病と抜け毛の関係
糖尿病になると抜け毛のリスクが高まるのは糖質が原因かも
糖尿病により発症リスクが高まる脱毛症
糖尿病の疑いがある方で抜け毛の症状が見られた場合
まとめ
なぜ糖尿病になると抜け毛のリスクが高まるのか
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血液中の糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままでいると、血管が傷ついたり詰まったりして、血流が滞ってしまい、その結果、育毛環境に悪影響を与える可能性があります。なぜなら健康な髪の毛を維持するためには、血液から運搬される栄養素が必要不可欠だからです。また、血液によって不要な老廃物などを排出することも大切です。このようなことから、良好な血液循環が阻害されてしまうと健やかな育毛環境の維持が困難になり、「脱毛症状につながってしまう可能性がある」と考えられております。
糖尿病と抜け毛の関係
糖尿病の症状の一つとして起こりうる「脱毛のメカニズム」を明確に解析している研究結果は、まだありません。しかしながら、毛細血管のような細血管の障害が育毛状態を悪化させる可能性は充分に考えられます。また糖尿病患者さんにおいて“脱毛症状”がみられたという症例は報告されているため、相関関係を窺い知ることはできます。
糖尿病になると抜け毛のリスクが高まるのは糖質が原因かも
「抜け毛」や「薄毛」の悩みは、実は糖質中心の食生活に原因があるかもしれません。以下、糖質が髪に与える悪影響です。
【糖質が髪に与える悪影響1】ホルモンバランスの乱れ
糖質の摂取により血糖値が上昇すると、交感神経が刺激されて自律神経が乱れます。自律神経が乱れるとホルモンバランスが崩れてしまうため、抜け毛や薄毛の原因になってしまうのです。なお、ホルモンバランスの乱れは、皮脂の過剰分泌のほか、炎症やフケ・かゆみなどのトラブルにもつながりますので、ご注意ください。
【糖質が髪に与える悪影響2】皮脂が毛穴に詰まる
糖質を摂取すると、エネルギーとして消費されず余ったブドウ糖が中性脂肪や体脂肪となって蓄積されてしまいます。体脂肪が増えると皮脂が出やすくなり、皮脂が毛穴に詰まって雑菌が増えます。そして雑脱毛症や枝毛・切れ毛などを引き起こしてしまうのです。なお、頭皮にフケやかゆみが出たり、炎症が起こったりするトラブルのほとんどは雑菌が原因になります。
糖尿病により発症リスクが高まる脱毛症
糖尿病患者さんの中には、上述した通り「脱毛症状」がみられるケースが報告されています。糖尿病で併発する可能性のある脱毛症には、「AGA」と「円形脱毛症」が挙げられます。
【糖尿病により発症リスクが高まる脱毛症1】AGA(男性型脱毛症)
AGAとは「AndrogeneticAlopecia」の略で、男性ホルモン型脱毛症(男性型脱毛症)のことを指します。男性型脱毛症とは、成人男性特有の進行性の脱毛症です。生え際や頭頂部の毛髪が薄くなったりするのが特徴で、遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因だと言われています。なお、AGAは治療せずに放置すると進行していきますので、早めの治療が大切です。
【糖尿病により発症リスクが高まる脱毛症2】円形脱毛症
円形脱毛症とは、その名の通り“円形”や“楕円形”の脱毛斑が突然生じる疾患です。一般的には10円玉くらいの脱毛と思われていますが、頭部全体に広がるものや、眉毛やまつ毛、体毛などに及ぶ重度のものまで、その症状はさまざまです。なお、円形脱毛症の発症原因は明らかにされていませんが、自己免疫疾患による免疫機能の異常が主な原因として考えられています。
休止期脱毛症とは
体や精神に過度なストレスがかかると、「休止期脱毛症」を起こすことがあります。休止期脱毛症とは、成長期の髪の毛が一時的に休止期に移行し、頭部全体の脱毛量が増える病気のことです。急に発症した場合には「急性休止期脱毛症」と診断され、少しずつ脱毛する場合には「慢性休止期脱毛症」と診断されることが特徴です。なお、休止期脱毛症は「貧血」や「栄養バランスが乱れた食事」、「ストレス」などが原因で発症するとされています。しかし、甲状腺機能の持病や糖尿病といった病気が原因で発症するケースも少なくありません。
糖尿病の疑いがある方で抜け毛の症状が見られた場合
糖尿病患者さんにおいて、AGAによる“脱毛症状の進行具合”は病状を知らせるサインともなります。したがって糖尿病患者さん、あるいは糖尿病の疑いがある方で「抜け毛」や「薄毛」の症状がみられる場合は、適切な治療法を検討するためにも「かかりつけ医」への“現状の報告”や“相談”を徹底してください。
まとめ
抜け毛の症状がみられるからといって、必ずしも糖尿病と関係しているわけではありません。しかし万が一の可能性を避けるためにも、気になる点がある方は“早めに医師に相談すること”をおすすめします。抜け毛の症状がみられる方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.02.24
バナナと糖尿病の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
バナナは栄養豊富な果物ですが、糖質も多く含まれています。血糖値を気にする糖尿病の方は、どのくらいバナナを食べても良いのでしょうか。
この記事では、「糖尿病とバナナの関係」について解説していきます。後半部分では「バナナの適切な摂取量」や「バナナを食べるタイミング」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
バナナは糖尿病に効果的か
糖尿病の方がバナナを食べるメリット
バナナに含まれる栄養素
バナナの適切な摂取量
バナナを食べるタイミング
まとめ
バナナは糖尿病に効果的か
糖尿病予防の基本は、急激な血糖値の上昇を抑えることです。では、バナナを食べると血糖値は急激に上昇するのでしょうか。実は、バナナは食後の血糖値の上昇が緩やかな食べ物だと言われています。その秘密はバナナに含まれている食物繊維です。糖質と一緒に食物繊維を摂取すると、糖質を少しずつエネルギー源として使うことができるため、血糖値の急激な上昇を抑えることが可能となっております。そのため糖尿病の方がバナナを食べても問題ありません。ただしバナナには、それほど高くないですが、しっかりと糖質が含まれているため食べ過ぎには注意が必要です。甘いものを制限している糖尿病患者さんにとって、バナナは程よい甘さがあり、満足できる食品ですが、たくさん食べるとカロリーオーバーになるので十分に注意してください。
糖尿病の方がバナナを食べるメリット
日本糖尿病学会の「糖尿病食事療法のための食品交換表」では、私たちが普段よく食べる食品をグループ分けし、糖尿病の患者がカロリー計算をしなくても、栄養バランスのよい献立が作れるよう工夫されています。この中でバナナを含む果物は1つのグループとして位置付けられ、果物は1日80kcal分摂るよう推奨されています。なぜなら果物はエネルギー量当たりのビタミンCやカリウム、食物繊維の含量が高く、制限された食事でも必要な栄養素が効率よく摂れる食品だからです。このようなことからバナナを含む果物は糖尿病食事療法でも血糖値を上げにくい食品であると見直されており、糖尿病の食事に欠かせない食品となっています。
バナナに含まれる栄養素
バナナには炭水化物やタンパク質の他、ビタミン、ミネラル、葉酸、食物繊維などがバランスよく含まれています。以下、バナナに含まれている栄養素です。
【バナナに含まれる栄養素1】食物繊維
食物繊維は、食事でとった栄養素の吸収速度を遅くしたり、有害物質を体外に排出する働きがあります。この2つの働きによって、便秘対策に効果が期待できます。なお、食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があります。
【バナナに含まれる栄養素2】カリウム
カリウムにはナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧やむくみの解消、運動中に筋肉がけいれんするのを防ぐ、などバナナを摂取することで様々な効果が期待できます。
【バナナに含まれる栄養素3】ビタミン
バナナにはビタミンB1、B2、ナイアシン(B3)、ビタミンB6、葉酸が含まれています。ビタミンには、たんぱく質・糖質・脂質の代謝を助けたり、皮膚や髪、爪などの健康をサポートする働きがあります。
【バナナに含まれる栄養素4】ポリフェノール
ポリフェノールは、赤ワインや緑茶に多く含まれている成分ですが、バナナにも含まれています。ポリフェノールは強い抗酸化作用があり、活性酸素を取り除く働きがあるため、生活習慣病の予防にも効果が期待できます。なお、ポリフェノールは、熟したバナナほど多く含んでいます。
【バナナに含まれる栄養素5】アミノ酸
バナナは必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンを含むため、良質な睡眠が期待できます。トリプトファンは神経伝達物質であるセロトニンの材料です。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれており、その効果は睡眠の促進やリラックスを促す効果があります。なお、トリプトファンは、バナナに多く含まれていますが、他の果物にはほとんど含まれていません。
【バナナに含まれる栄養素6】マグネシウム
マグネシウムは、人の体に欠かせないミネラルの一つです。骨の正常な代謝を助けるマグネシウムは、カルシウムと並んで骨の健康にとって重要なミネラルです。神経の興奮をしずめ、体温や血圧を調整すると言われています。
バナナの適切な摂取量
厚生労働省や農林水産省では、1日の果物の摂取量として約200gが推奨されています。そのためバナナは1日1本程度、小ぶりなサイズなら2本程度を目安にすると良いでしょう(バナナだけではなく、他の果物もバランスよく食べることが大切です)。なお、バナナ1本は100gで約90キロカロリーと、果物の中でもトップクラスのカロリーの高さです。したがって1日に何本も食べていればカロリーオーバーになりかねませんので、バナナの食べ過ぎには注意してください。
バナナを食べるタイミング
栄養たっぷりのバナナは、朝、昼、夜、いつ食べてもメリットがあります。
【バナナを食べるタイミング1】朝
バナナには他のフルーツよりも多くの「ブドウ糖」が含まれているので、朝食バナナは、睡眠中に失われた栄養素を補給して、1日を元気に過ごすための原動力になります。そのため1日を元気に過ごしたい人には、朝食バナナをおすすめします。
【バナナを食べるタイミング2】昼
バナナにはブドウ糖以外にも、「果糖」や「ショ糖」が含まれています。糖分と聞くと避けたくなってしまいますが、疲れにくい体づくりに糖分は欠かせません。果糖は血糖を上げにくく緩やかに体内に吸収される性質があるので、昼に食べれば、午後の活動に向けてのよいエネルギーチャージとなります。
【バナナを食べるタイミング3】夜
夜バナナは、睡眠の質を上げる効果が期待でき、美肌や筋肉・骨づくりに役立ちます。なぜならバナナには、睡眠を促す「セロトニン」、セロトニンを作る「トリプトファン」、セロトニン生成を助ける「ビタミンB6」が含まれているからです。質のよい睡眠は疲労回復だけでなく、成長ホルモンの分泌を促し、美肌や筋肉、骨づくりにも役立ちますので、夜バナナにはメリットがあると言えます。ただしバナナに含まれる果糖は、夜食べると中性脂肪に変わりやすい傾向があるので、摂取量を調節してください。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.02.22
コーヒーと糖尿病の関係、予防効果や摂取量について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病とコーヒーの関係」について解説していきます。後半部分では「糖尿病予防のための摂取量」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
コーヒーは糖尿病リスクを抑える?
コーヒーは死亡リスクも下げる
なぜコーヒーが糖尿病を予防するのか
コーヒーによる肝機能等への効果
糖尿病予防のための摂取量
コーヒーの適切な飲み方
ブラックコーヒーがおすすめ
まとめ
コーヒーは糖尿病リスクを抑える?
コーヒーは2型糖尿病の予防に効果的な飲料として注目を集めており、日本を含む世界各国から「コーヒーには2型糖尿病を予防する効果がある」という報告が発表されております。 国立国際医療研究センターが2009年に発表した“JPHC研究”では、コーヒーを飲む回数が1日3〜4杯の方人は、ほとんど飲まない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが男性で17%、女性で38%低下することが分かっております(40〜69歳の日本人約5万6,000人を対象)。
コーヒーは死亡リスクも下げる
コーヒーをよく飲む人は糖尿病リスクが低下するだけでなく、死亡リスクも低下することが最近の研究で明らかになっております。英国バイオバンクの発表では、死亡リスクはコーヒーをまったく飲まない人に比べ、コーヒーを1日に2〜3杯飲む人は12%、4〜5杯飲む人は12%、6〜7杯飲む人は16%、6杯以上飲む人では14%低下したと伝えております。
なぜコーヒーが糖尿病を予防するのか
コーヒーが糖尿病の予防に効果がある理由として、コーヒーに含まれているカフェインやクロロゲン酸が代謝に関わっている可能性が指摘されております(コーヒーが2型糖尿病の発症を抑制するメカニズムは、まだ解明されておりません)。
<カフェイン>
カフェインを摂取すると基礎代謝率が3~11%上がり、摂取するカフェイン量が多いほど、その効果も上がることが分かっております。このようなことからカフェインの摂取は「運動時の脂肪燃焼を促進する可能性がある」と考えられております。
<クロロゲン酸>
クロロゲン酸とは“ポリフェノール”の一種で、主にコーヒー豆やじゃがいも等に含まれる成分です。クロロゲン酸には糖質の吸収を緩やかにする効果があるため、血糖値の急激な上昇が抑えられます。またクロロゲン酸には抗酸化作用のほか、脂肪の蓄積を抑える効果などが知られており、近年では糖尿病や肥満の予防のためのサプリメントなどに利用されています。
コーヒーによる肝機能等への効果
コーヒーに含まれるクロロゲン酸は抗酸化作用をもち、肝臓での「糖新生」を抑制する効果があります。またクロロゲン酸には、中性脂肪の蓄積による「脂肪肝」を予防する効果があります(脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が溜まった状態を表します)。脂肪肝はメタボリックシンドロームにもつながると言われており、放置すると肝炎などを引き起こす可能性が高くなります。
糖尿病予防のための摂取量
国立国際医療研究センターが2009年に発表した“JPHC研究”では、コーヒーを飲む回数が1日3〜4杯の方人は、ほとんど飲まない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが男性で17%、女性で38%低下することが分かっております。このようなことから、糖尿病予防のためのコーヒー摂取量は、1日3〜4杯が目安と言えます。ただし、コーヒーに含まれるカフェインを大量に摂取すると、不眠症や神経症、心拍数の増加、高血圧、不整脈が引き起こされる恐れがあります。また、コーヒーのカフェインは、血糖を下げるインスリンの産生と感受性にも影響すると考えられております。ですので、コーヒーの飲みすぎには注意してください。
コーヒーの適切な飲み方
コーヒーに含まれているカフェインは、インスリンが分泌していない空腹時に飲むと、血糖値を下げる“ミトコンドリア”を活性化させます。このようなことから糖尿病予防の効果を上げる飲み方としては満腹時よりも、「空腹時にコーヒーを飲むほうが良い」とされております。ただしコーヒーに含まれるクロロゲン酸には、胃腸の働きを抑制する働きがあります。そのため空腹時はよりダイレクトにその作用を感じやすく、胃の動きが弱まってしまう可能性があり、最悪のケースでは便秘による「腹痛」や「吐き気」を引き起こす可能性がありますので、注意してください。
ブラックコーヒーがおすすめ
糖尿病の方がコーヒーを飲む場合には、コーヒーに砂糖やミルクを入れると血糖コントロールを悪化させる可能性があるため、できるだけブラックコーヒーの形で飲んでください。甘くてまろやかなコーヒーは美味しいかもしれませんが、カフェインと砂糖が血糖値の急激な上昇を引き起こします。すると血糖コントロールが乱れ、血管が傷つきやすくなり、合併症のリスクにつながります。ですので、甘いコーヒーはできるだけ飲まないようにしてください。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.02.21
糖尿病とEDの関係や治療薬について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病とEDの関係」について解説していきます。後半部分では「糖尿病性EDの治療方法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 【目次】
糖尿病になるとEDリスクが高まる
なぜ糖尿病になるとEDになりやすくなるのか
器質性EDとは
糖尿病性EDの治療方法
糖尿病性EDを改善するために
糖尿病性EDについてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病になるとEDリスクが高まる
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。また糖尿病はED (勃起不全)との関連性が高い病気の一つです。米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の調査では、糖尿病のある男性は糖尿病のない男性に比べ、ED (勃起不全)を発症する割合が2〜3倍高いと報告されております。
※ED (勃起不全)とは、「勃起機能の低下」を意味する英語“Erectile Dysfunction”の略です。専門的には「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」とされています。つまり、勃起が起こらないケースはもちろんのこと、硬さが不十分、勃起状態が維持できない等、満足な性交が行えるだけの勃起が得られない状態は、いずれもED(イーディー)となります。なお、正常な勃起のためには脳や神経、海綿体、血流などが問題なく機能する必要があります。
なぜ糖尿病になるとEDになりやすくなるのか
勃起をするには、自律神経と陰茎平滑筋の働きが非常に重要です。しかし糖尿病を患うと、つねに高血糖の状態が続くため、自律神経に悪影響が生じ、血管障害とともに勃起機能が低下します。また性的欲求や感度も弱まってしまいます。このようなことから糖尿病性EDは、以下に挙げるような複数の問題が組み合わさって発症すると考えられております。
【糖尿病とEDの関係1】神経障害
勃起は、脳で感じた性的刺激が陰茎に伝わることによって起こりますが、糖尿病によってその神経回路に障害が生じやすくなります。
【糖尿病とEDの関係2】海綿体の機能不全
平滑筋の弛緩も勃起に必要不可欠です。しかし糖尿病により、海綿体動脈などの内皮細胞において「内皮型一酸化窒素合成酵素」(eNOS)の活性が低下することで、弛緩が起こりにくくなります。
【糖尿病とEDの関係3】動脈硬化
動脈硬化とは、動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変の総称です(正確に言うと病理学で使う呼び方であり、病名ではありません)。全身の血管に動脈硬化があらわれるのは、糖尿病の典型的な症状です。内腸骨動脈から陰茎動脈にかけて硬化が生じると、勃起機能の大幅な低下につながります。また性器海綿体の毛細血管は、体の中でも特に細い血管で、動脈硬化により、血流がもっとも低下しやすい血管です。なお、上記のような身体的な原因から生じるEDを「器質的(きしつてき)ED」と呼びます。
器質性EDとは
器質的(きしつてき)EDとは、体に何らかの原因があって、物理的に勃起が阻害されるEDのことを指します。この器質性EDを細かく分別すると『加齢や糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病に起因する動脈硬化、前立腺がんや前立腺肥大の外科的手術による陰茎付近の神経や血管の損傷などの血管障害によるもの』、『不慮な事故による脊椎などの脳から陰茎までの伝達神経の損傷等による神経障害によるもの』、『加齢やストレス、喫煙、飲酒などによる男性ホルモンの1つであるテストステロンの低下等の内部分泌機能低下によるもの』が挙げられます。つまり器質性EDを細かく分けると『血管障害によるもの(血管性ED)』『神経障害によるもの(神経性ED)』『内部分泌機能低下によるもの』の三つに分けられるということです。
<血管性ED>
血管性EDとは、文字通り 血管系の異常により正常な勃起が得られないものを言います。糖尿病の初期の方は陰茎海綿体や内陰部動脈の血管内皮機能障害が起こります。血管内皮由来のNO(一酸化窒素)は勃起(ぼっき)をおこしたり、勃起を維持したりするのに重要です(血管内皮障害があるとNO産生が低下します)。NO産生の低下により、陰茎に血液を貯めること=勃起ができなくなります。
<神経性ED>
神経性ED は中枢ならびに末梢(自律および体性)神経いずれか の異常により起こるEDです。重症の糖尿病になると、微小な血管の障害から、自律神経障害が進み、副交感神経である海綿体神経の障害が発生し、神経性EDが生じます。
<内部分泌機能低下によるED>
内分泌機能の低下で代表的なのは、男性ホルモンの一つであるテストステロンの低下です。精巣で主に作られるテストステロンには、男らしい体つきを作るほか、闘争心や意欲、そして性欲や勃起力、精子の産生などの性機能を維持するための働きもあります。したがってテストステロンの低下は、勃起力を弱めるためEDにつながります。また性欲自体を減退させるため、性行為の回数が減ることで、EDを更に進行させる悪循環となることがあります。
糖尿病性EDの治療方法
糖尿病性EDにはバイアグラ・レビトラ等を含むシルデナフィル等の「ED治療薬」が治療の第一選択です(糖尿病治療薬やインスリンとシルデナフィルやシェアリス等のED治療薬は併用することが可能です)。治療薬は即効性がありすぐに効果を実感していただけるため、糖尿病治療中の方もED治療薬を服用する方が多いです。2020年以降、全てのED治療薬のジェネリック医薬品が販売(処方)されるようになり、当院でもED治療薬が処方可能で、患者さんに合わせたお薬を処方することができます。
糖尿病性EDを改善するために
糖尿病が原因でEDを発症した場合、まずは糖尿病の治療を考えます。糖尿病の治療は、血糖値のコントロールが基本となり、その手段としては食事療法、運動療法、薬物療法の三つが中心となります。
【糖尿病性EDの改善1】食事療法
食事療法は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。
【糖尿病性EDの改善2】運動療法
運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療の基本です。運動により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病は改善します。生活習慣が原因で糖尿病になった2型糖尿病患者にとって、運動療法を行って体内の糖の利用率を高めることは、血糖値をコントロールする有効な手段の一つです。なお、運動療法は、これまで運動医学由来の整形外科的なアプローチが主体でしたが、近年では“生活習慣病改善”や“心臓リハビリテーション”のような内科的アプローチも臨床で活用されるようになってきています。
【糖尿病性EDの改善3】薬物治療
食事療法や運動療法を行っていても血糖値の改善がされない場合は「薬物治療」を行います。薬物療法で使用される薬剤には、大きく分けて「経口血糖降下薬」と「インスリン注射薬」があります。どの薬剤を使用するかは、年齢や肥満の程度、合併症の程度などを含め、医師と相談の上で決めます。薬物治療について詳しく知りたい方は「糖尿病情報サイト」をご覧ください。
糖尿病性EDについてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病性EDは、残念ながら“今の医学の力”で完治させることはできません。しかし完治こそ難しいものの、治療することでEDの症状を改善することは可能です。糖尿病性EDにお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
2023.02.16
糖尿病スティグマの種類や具体例の解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
近年、糖尿病にまつわる“スティグマ”が世界的なトピックとなっており、日本でも糖尿病における“スティグマ”を減らす運動が始まっています。
この記事では、「糖尿病スティグマ」について解説していきます。後半部分では「糖尿病スティグマの影響」や「アドボカシー活動」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 【目次】
糖尿病スティグマとは
糖尿病スティグマが生じる原因
糖尿病のスティグマの類型
糖尿病スティグマの影響
糖尿病スティグマが治療に与える影響
糖尿病スティグマの改善にはアドボカシー活動が効果的です
糖尿病スティグマとは
糖尿病スティグマとは、その名の通り糖尿病を持つ人に対する“スティグマ”のことを指します。スティグマとは、一般に「恥・不信用のしるし」「不名誉な烙印」を意味します。ある特定の属性により、いわれのない差別や偏見の対象となることです。では、糖尿病のスティグマにおいては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。糖尿病におけるスティグマについては、以下の具体例をご覧ください。
<糖尿病スティグマの具体例>
糖尿病におけるスティグマでは、糖尿病になると失明や透析、脳梗塞になるなどと決めつけられることであったり、不摂生、だらしない、運動嫌い、自己管理ができていないとされたりすることで社会的に様々な不利益を被ることなどが挙げられます。また生命保険に加入できない、住宅ローンを組めない、結婚の障壁となる、就職に不利になる、なども糖尿病におけるスティグマだと言えます。
糖尿病スティグマが生じる原因
糖尿病スティグマは、不正確な情報・知識に起因する誤った認識(言葉)により生じることが多いです。また糖尿病の病態を正確に表していない病名や、糖尿病医療で使われる不適切な用語の使用によるマイナスイメージの拡散により、社会から負の烙印(スティグマ)を押されているとも考えられております(糖尿病は排泄物の「尿」という文字が入っていることもあり、その病名自体がスティグマではないかという考えが話題に上がっています)。糖尿病協会が行ったアンケート調査では半数以上の患者さんが糖尿病という病名に抵抗があると答え、「変えて欲しい」という意見も約半数に見られたとのことです。なお昨年、日本糖尿病協会は「糖尿病」という名称の変更を検討する方針を明らかにしております。患者の大半が不快感を抱いていることなどを踏まえたもので、今後1、2年のうちに新たな病名を提案したいと伝えております。
糖尿病のスティグマの類型
糖尿病のスティグマには一般社会から受けるもの(社会的スティグマ)、医療従事者からうけるもの(乖離的スティグマ)、自分自身で感じてしまうもの(セルフスティグマ)があります。
<社会的スティグマ>
・生命保険に加入できなかった
・住宅ローンを断られた
・糖尿病が原因で就職できなかった
<乖離的スティグマ>
・間食を咎められた
・インスリンを拒否すると叱責された
<セルフスティグマ>
・自己尊重の低減
・自己効力感の低減など
糖尿病スティグマの影響
社会における糖尿病の知識不足、誤ったイメージの拡散により、糖尿病をもつ人は「特定の属性に対して刻まれる負の烙印=スティグマ」にさらされています。そのため糖尿病をもつ人は、「自己コントロールできない者」「親もそうだったから」「太っているから」と周囲から非難や差別をされたり、生命保険や住宅ローンに加入出来なかったりなど、社会的に様々な不利益を被ることがあります。このようなことから糖尿病スティグマは、就職や結婚にまで負の影響が出ると考えられております。
糖尿病スティグマが治療に与える影響
糖尿病をもつ人に対するスティグマを放置すると、糖尿病をもつ人が社会活動で不利益を被るのみならず、治療に向かわなくなるという弊害をもたらします(糖尿病であることを隠す→適切な治療の機会損失→重症化→という悪循環に陥る可能性があるからです)。ですので、糖尿病スティグマを軽く考えてはいけません。糖尿病を持つ方は、糖尿病スティグマをうけることにより、糖尿病の放置、通院治療の中断、ひいては糖尿病の重症化につながる恐れがあることを理解しておいてください。
糖尿病スティグマの改善にはアドボカシー活動が効果的です
アドボカシー活動とは、社会的弱者やマイノリティの人権を擁護するために、NGOやNPOなどの非営利団体が中心となって実施する活動です(アドボカシーとは「擁護」や「支持をする」などの意味を持つ英語です)。アドボカシー活動は、糖尿病患者さんの権利を守り,社会的地位を回復させるために非常に有用です。学会、協会や医療機関だけでなく、個人のレベルで行うアドボカシー活動でも、糖尿病に関するスティグマの解消を目指すために有用と考えられます。ですので、糖尿病スティグマに苦しめられている方は積極的にアドボカシー活動を行ってください。なお、公益社団法人日本糖尿病協会は、糖尿病があっても安心して社会生活をおくり、いきいきと過ごすことができる社会形成を目指し、「アドボカシー活動」を展開しております。詳しくは「糖尿病ネットワーク」に記載しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
2023.02.09
糖尿病とストレスの関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病の約95%を占める2型糖尿病の発症要因は「運動不足」「高脂肪食」「体質(遺伝)」などが原因だと考えられています。しかし現在では、これらの要素に加えて「ストレス」の影響も大きいことが分かっております。
この記事では、「糖尿病とストレスの関係」について解説していきます。後半部分では「合併症リスク」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
ストレスがなぜ糖尿病リスクを高めるのか
ストレス解消のための食べ過ぎに注意
ストレス解消のための喫煙に注意
ストレスは糖尿病の合併症リスクを上昇させる
ストレスが関係している精神疾患
ストレスを和らげ、糖尿病リスクを軽減しましょう
まとめ
ストレスがなぜ糖尿病リスクを高めるのか
糖尿病とストレスには深い関係があり、そこには“ホルモン”が関与しています。人がストレスを感じると、「アドレナリン」や「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
これらのホルモンは、「血圧」「心拍数」「血糖値」を上げます。コルチゾールは人がストレスに耐えるために必要なホルモンなので、そういった面では人を助けています。
しかし糖尿病の方の場合は、血糖値を上げる作用によって糖尿病の悪化を促します。またストレスを受け続けると、インスリンに対しての感受性が鈍くなり血糖値が下がりにくくなることが分かっています。
このように、ストレスを受け続けると高血糖の状態が続くため糖尿病を招いてしまうのです。
ストレス解消のための食べ過ぎに注意
ストレス解消の手段として、つい過食(食べ過ぎ)をしてしまうことがあります。
イライラしていたり精神的に不安定なときには、空腹でなくても、つい手近にあるものを口に運んでしまいます。
お酒を飲む人なら、その量も増えるでしょう。
このようなことが、血糖コントロールの悪化につながります。食生活の乱れは糖尿病の発症や悪化させる要因になりますので、十分に注意してください。
ストレス解消のための喫煙に注意
喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため、たばこを吸うと「糖尿病にかかりやすくなる」と言えます。
日本人を対象としたある研究では、喫煙者は、非喫煙者と比べて、2型糖尿病を発症するリスクが38%高くなることが分かっております。ですので、糖尿病の方は喫煙を控えてください。
ストレスは糖尿病の合併症リスクを上昇させる
ストレスが強いと糖尿病リスクが上昇するだけでなく、「心臓病」や「脳卒中」のリスクも悪化することが分かっています。
ストレスを放置していると、重大な病気に進行するリスクがありますので、十分にご注意ください。
以下、糖尿病の合併症です。
【糖尿病の合併症1】心筋梗塞
心筋梗塞とは心臓が酸素不足になり壊死する病気です。
心筋を取り巻いている冠動脈は心臓に血液と酸素を送っています。
これが動脈硬化で硬くなり“コレステロール”などが沈着すると血液の通り道が塞がれ、心筋に血液を送ることができません。そのため心筋は酸素不足となり、心筋細胞が壊死を起こしてしまいます。
これが心筋梗塞です。なお、心筋梗塞は激しい痛みが特徴です。
しかし糖尿病になると神経障害のために痛みを感じにくくなり、心筋梗塞を起こしても胸の痛みを感じないことがありますので、注意が必要です。
【糖尿病の合併症2】脳卒中
脳卒中とは、急性期脳血管障害のことを指し、突然脳の血管が詰まったり、破れたりして引き起こされる病気の総称です。
脳卒中は原因によって「脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞、一過性脳虚血発作)」と「脳の血管が破れるタイプ(脳出血、くも膜下出血)」の2つに分けられます。
脳卒中は、障害を受けた脳が司っていた「身体機能」や「言語機能」が失われたり、場合によっては死に至ることもありますので、非常に危険な病気です。
【糖尿病の合併症3】狭心症
狭心症は、心臓の筋肉に供給される酸素が不足するため、胸部に一時的な痛みや圧迫感が起きる病気です。
狭心症になると、心筋を養う冠動脈の内腔が狭くなって、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなります。
その結果、心臓に必要なだけの栄養と酸素がなくなり、心筋は酸素と栄養不足に陥ってうまく働けなくなってしまいます。
【糖尿病の合併症4】脂質異常症
脂質異常症(高脂血症)とは、中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたした状態のことを言います。
脂質異常症は多くの場合、自覚症状がありません。
脂質異常症の状態が続くと動脈硬化症をきたし、狭心症や心筋梗塞といった合併症が生じるリスクが高まります。ですので、絶対に放置してはいけません。
【糖尿病の合併症5】大動脈瘤
大動脈瘤とは、心臓から始まる全身に血液を送る大動脈という臓器が拡大し破裂の恐れを呈する病気です。
発生する部位によって「胸部」「胸腹部」「腹部」に区別されます。
ストレスが関係している精神疾患
ストレスは、様々な精神疾患のリスク因子として知られており、最近では認知症との関係も注目されています。
以下、ストレスが関係している精神疾患です。
【ストレスが関係している精神疾患1】うつ病
うつ病とは、意欲の低下・無気力・気分の落ち込みなどが続き、日常生活に影響を及ぼす病気です。
症状が重度になると、自傷行為や自殺企図など、直接命に関わってくる場合もあります。
【ストレスが関係している精神疾患2】統合失調症
統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳機能にあると考えられています。約100 人に1 人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
ストレスを和らげ、糖尿病リスクを軽減しましょう
ストレスが強いと糖尿病リスクが上昇するだけでなく、心臓病や脳卒中のリスクも悪化することが分かっております。
そのため、普段からストレスを軽減させるように努めることが大切です。
代表的なストレス解消法については、以下をご覧ください。
【ストレス解消法1】適度な運動
運動はストレス解消に大きな効果があります。
加えて、脂肪を燃焼し、肥満を改善する効果が期待できます。
糖尿病の方は、習慣的に「ウォーキング」や「ジョギング」などの適度な運動を行ってください。
【ストレス解消法2】野菜を食べる
オーストラリアの「エディスコーワン大学栄養健康イノベーション研究所」の研究では、野菜を十分に食べている人は、「ストレスレベルが低く抑えられている傾向がある」と発表されております。
特に女性では、野菜を毎日食べている人は、ほとんど食べない人に比べ、ストレスのリスクが18%低いことが判明しております。
ホウレンソウ・レタス・リーフレタス・キャベツ・ブロッコリーなどの葉物野菜を食べていると、心臓病や脳卒中の発症が少ないことも分かっておりますので、積極的に摂取してください。
【ストレス解消法3】日光浴
日光を浴びると、私たちの脳内ではセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。
セロトニンが増えることで、ストレス発散や集中力アップ、気持ちが明るくなるなどの効果が期待できます。
ですので、ストレスを感じている方は積極的に日光浴を行ってください。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。
健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病の症状や“ストレス”への対応について不安な方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.27
糖尿病による目の症状
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病が目に及ぼす影響」について解説していきます。後半部分では「糖尿病網膜症の治療法」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病が目に及ぼす影響
糖尿病で視力が低下する仕組み
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症の病期
糖尿病網膜症の特徴と原因
糖尿病網膜症の治療法について
糖尿病網膜症の予防策
糖尿病網膜症は早期発見が非常に重要です
糖尿病が目に及ぼす影響
糖尿病になると、目の網膜の毛細血管が詰まったり、高血糖による“末梢神経障害”や“代謝異常”などが発生したりするため、様々な目の合併症が起こります。
合併症の中には、初期段階では自覚症状がないものもあり、また末梢神経障害を起こした糖尿病患者さんでは、痛みを感じない場合があるため注意が必要です。
糖尿病になったら目が悪くなる可能性があることを知っておいてください。
糖尿病で視力が低下する仕組み
糖尿病で視力が低下する仕組みは「眼球の透明な組織が混濁してしまうこと」と「網膜という光を感じる神経が破壊されること」の二つです。
“眼球の透明性が低下する原因”としては、水晶体が混濁する白内障、角膜が白濁する水泡性角膜症があります(さらに硝子体に出血が生じて血液がたまると、硝子体が混濁して見えにくくなります)。
一方、光を感じる神経である“網膜の機能が失われる原因”としては、網膜剥離や血管新生緑内障などがあります(糖尿病による直接的な 2 大失明原因です)。
なお、どちらも糖尿病によって網膜の血管が損傷される、「糖尿病網膜症糖」によって引き起こされます。
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。
「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」と並んで糖尿病の三大合併症といわれてます。
糖尿病網膜症は、他の糖尿病合併症と同様、初期段階では自覚症状がありません。
しかし気づかずに放置していると症状が悪化して様々な視覚障害が起こり、最終的には失明に至ることもあります。
<網膜とは>
網膜は、瞳から入った光の明暗や色を感知する役割をもっていて、物を見るために大変重要な器官です。
網膜症とは、なんらかの理由でこの網膜が傷められ、カメラでいうと、フィルムの感度が低くなったり、フィルム自体が破損してしまった状態になる病気のことです。
程度の差はありますが、糖尿病の患者さんの約3分の1に、網膜症が起きているといわれます。
糖尿病網膜症の病期
糖尿病網膜症は、進行の度合いにより大きく三段階に分類されます。
【糖尿病網膜症の病期1】単純糖尿病網膜症(たんじゅんとうにょうびょうもうまくしょう)
初期の糖尿病網膜症です。最初に出現する異常は、細い血管の壁が盛り上がってできる血管瘤や、小さな出血です。
蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもあります。
なお、これらは血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。
【糖尿病網膜症の病期2】前増殖糖尿病網膜症(ぜんぞうしょくとうにょうびょうもうまくしょう)
前増殖糖尿病網膜症は、単純網膜症より一歩進行した状態です。
細い網膜血管が広い範囲で閉塞すると、網膜に十分な酸素が行き渡らなくなり、足りなくなった酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始めます。
この時期になると“かすみ”などの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状がないこともあります。
【糖尿病網膜症の病期3】増殖糖尿病網膜症(ぞうしょくとうにょうびょうもうまくしょう)
増殖糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の重症な状態です。
新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきます。
新生血管は破れやすく、網膜や硝子体に出血することがあります。
硝子体に出血すると、少量なら視野に黒い影やゴミの様なものが見える飛蚊症がおこります。
また出血量が多いと視力低下をおこします。硝子体中に出血すると、よく墨を流したようなものが見えるといわれます。
何度も出血や状態の悪い期間が続くと増殖組織といわれる線維性の膜が出現し、網膜剥離を起こすことがあります。
糖尿病網膜症の特徴と原因
糖尿病にかかると、血液中の糖分を細胞がうまく吸収できなくなります。
血液中の糖分が多い状態が続くと、やがて糖が血管に障害を与えるようになります。
目の網膜にある血管は細いので特に障害を受けやすく、血管がつまったり、出血したりするようになります。
もともとある血管が障害を受けて機能しなくなってくると、栄養分などを届けられなくなるため、新しい血管(新生血管)が作られます。この血管はとてももろく、出血や成分の漏れをたびたび起こします。
この状態が、視界がかすむ、視力の低下などの症状の原因になります。
そして、さらに病気が進行すると「網膜剥離」や「緑内障」といった病気を併発し、失明に至ることもあります。
糖尿病網膜症の治療法について
糖尿病網膜症の治療法には、「薬物による治療法」と「外科的な治療法」があります。
進行の度合いによって治療法は異なり、早期に治療を始めるほど負担の小さな方法で視力障害や失明を防ぐことができます。
なお、糖尿病網膜症は完全に治すことのできない病気です。
そのため治療は、症状の悪化を防ぐために行われます。具体的な治療法については以下をご覧ください。
【糖尿病網膜症の治療法1】初期
初期の場合は血糖コントロールや、高血圧の治療など内科的治療を行います。
【糖尿病網膜症の治療法2】中期
新生血管の発生を防ぐために、レーザーで眼底を焼く「レーザー光凝固術」が行われます。
<レーザー光凝固術>
レーザー光凝固術とは、網膜をはじめとする眼底(眼球の奥)の病変部にレーザー光線を照射して焼き固めることによって、病気の進行を阻止するために行われる治療法です。
この治療法で視力を改善することはできませんが、今現在の視力をほぼ維持しながら病気がそれ以上悪化することを予防するという意味では、特に網膜に発生するさまざまな病気に対して非常に有効とされています。
【糖尿病網膜症の治療法3】末期
糖尿病網膜症が進行して「網膜剥離」や「硝子体出血」が起きている場合は、硝子体手術が行われます。
<硝子体手術>
硝子体手術とは眼の硝子体と呼ばれる組織を除去し、網膜硝子体の病気を治す手術です。
とても繊細で難しい手術に分類されます。
糖尿病網膜症の予防策
糖尿病網膜症を予防するための基本は、定期検診です。
一度検査を受け、異常がないとわかると安心してしまう人が多いのですが、それではいけません。
糖尿病に関係する目の病気は網膜症だけでなく、白内障や緑内障など沢山あります。
ですので毎年、眼底検査を受けてください。
なお、糖尿病網膜症を予防するためには「血糖」「血圧」「コレステロール」に注意を払うことも大切です。
<血糖>
1~2ヵ月の血糖の平均を反映し、血糖コントロールの指標となっているHbA1cを、7.0%未満に維持してください(可能であれば6.0%未満を目指してください)。
<血圧>
糖尿病患者さんの降圧目標は、診察室血圧が130/80mmHgで、家庭血圧が125/75mmHgとなっております。
糖尿病の人は高血圧を併発していることが多いです。
両方を併発すると、心臓病や脳卒中、腎臓病などのリスクがさらに高まりますので、積極的な血圧コントロールが大切です。
<コレステロール>
現在ガイドラインで推奨されている糖尿病の患者さんにおける血液中の脂質の管理目標値は、LDLコレステロール120mg/dl未満(冠動脈疾患がある場合は100mg/dl未満)、HDLコレステロール40mg/dl以上、中性脂肪150mg/dl未満です。
糖尿病網膜症は早期発見が非常に重要です
糖尿病網膜症は、自覚症状がないまま進みます。
自覚症状が出たころには、症状がかなり進んでいて、失明を覚悟しなくてはなりません。
ですので、糖尿病やその予備軍と診断されたら、医師の指示どおり血糖のコントロールを行い、自覚症状がなくても眼科での定期的な眼底検査を行ってください。
なお、糖尿病の指標のひとつに、ヘモグロビンA1c(HbA1c…正常値4.3~5.8)というのがあり、この数値が7.5以上になると、5倍以上失明する危険が高まるといわれています。
ご自身の「ヘモグロビンA1c」について気になる方、あるいは糖尿病網膜症の症状について気になる方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.26
糖尿病ケトアシドーシスの症状や原因、治療法について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病ケトアシドーシスの「症状」や「原因」について解説していきます。後半部分では「糖尿病ケトアシドーシスの治療法」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病ケトアシドーシスの特徴・初期症状
糖尿病ケトアシドーシスの原因
糖尿病ケトアシドーシスの主な症状
糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病妊婦さんに起きる最も重篤な合併症
糖尿病ケトアシドーシスの治療法
糖尿病ケトアシドーシスの予防策
まとめ
糖尿病ケトアシドーシスの特徴・初期症状
糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病急性合併症である「糖尿病昏睡」の一つです。
血糖値を下げる働きをするインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こります。
糖尿病ケトアシドーシスの初期症状は、強い喉の渇きと頻尿、体重減少、吐き気、嘔吐、疲労などが起こり、小児の場合は腹痛がみられることもあります。
なお、糖尿病ケトアシドーシスは主に“1型糖尿病の方”に起こります(2型糖尿病の場合であっても引き起こされることはあります)。1型糖尿病と2型糖尿病については以下をご覧ください。
<1型糖尿病>
1型糖尿病とは、インスリンを分泌する膵臓の「β細胞:べーたさいぼう」が壊れ、高血糖状態になる病気です。
世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われています。
糖尿病には大きく分けて1型と2型がありますが、1型はβ細胞の破壊によって生じるもので、運動不足や過食などの生活習慣によって起こる「2型糖尿病」とは性質が異なります。
<2型糖尿病>
2型糖尿病は、遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンの相対的不足に陥った場合に発症する糖尿病です。
一般的に生活習慣病と称されるタイプの糖尿病が2型糖尿病ですが、インスリン分泌能の低下が不可欠です。
生活習慣の乱れだけではなく、2型糖尿病患者さんは大なり小なり糖尿病になりやすい体質を持っているとも言えます。
なお、一般的に"糖尿病"と表現した場合は「2型糖尿病」を示すことが多いです。
糖尿病ケトアシドーシスの原因
糖尿病ケトアシドーシスの主な原因は、1型糖尿病の発症時やインスリン注射を中断したとき、あるいは感染症や外傷などによって、極端にインスリンの必要性が増加したときに起こります。
2型糖尿病でも同じように感染症や外傷などの強いストレスがあったとき、また清涼飲料水を多量に飲んだとき等で糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがあります。
なお、2型糖尿病では、ある程度インスリンが分泌されている時期から病期が進み、インスリンの分泌量がさらに減少、あるいはインスリンへの抵抗性が高くなることで血糖が異常に高くなってしまうことがあります。
インスリンの相対的不足状態に加えて、風邪などの感染症や暴飲暴食、さらにはストレスなどが重なり、血糖が著しく高くなると(500mg/dl以上)意識障害をきたします。
なお、意識障害に至る前駆症状として高血糖による著しい口渇、多尿がみられます。
糖尿病ケトアシドーシスの主な症状
糖尿病ケトアシドーシスでは、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感などの糖尿病に典型的な症状が急激に起こります。
さらに悪化すると、呼吸困難、速くて深い呼吸(クスマウル大呼吸と呼びます)、あるいは悪心、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こります。
糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病妊婦さんに起きる最も重篤な合併症
糖尿病ケトアシドーシスは、糖尿病の妊婦さんに起きる“最も重篤な合併症”だと言われております。
妊娠中、母親のからだは血糖を胎児に優先的に送ろうとするので、自分自身のエネルギーを補うため、脂肪を分解して“遊離脂肪酸”を作る働きが普段よりも活発になり、ケトン体が増えます(ケトン体は、からだの中で脂肪が変化して作られる物質でエネルギー源として利用されています)。
このケトン体が多く作られてしまった場合、「糖尿病ケトアシドーシス」の誘因となるため、妊娠中は糖尿病ケトアシドーシスのリスクが高くなります。
<妊娠糖尿病>
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です(糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す“血糖値”が上がった状態です)。
今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。
具体的には、糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に「妊娠糖尿病」と診断されます。
糖尿病ケトアシドーシスの治療法
糖尿病ケトアシドーシスの治療は、一刻も早く生理食塩水を中心とした“輸液”によって、水分とナトリウムを補充する必要があります。
そのほかには電解質の補正、適切なインスリンの投与によって高血糖とアシドーシスを是正することが重要です。
糖尿病ケトアシドーシスは、適切な処置が遅れると死に至ることもあります。
ですので、気になる症状があったときには、早めにかかりつけ医に相談してください。
糖尿病ケトアシドーシスの予防策
糖尿病ケトアシドーシスは、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感、体重減少といった典型的な症状に続いて起こります。
そのため、これらの症状をよく覚えておき、症状があったときには血糖自己測定、尿ケトン体の測定をおこない、予防・早期発見することが重要です。
まとめ
糖尿病ケトアシドーシスは生命の危険を伴う合併症です。
そのため早く気づき、速やかに治療を受けることが大切です。
糖尿病ケトアシドーシスの症状にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.01.25
喫煙が糖尿病に与える影響
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「喫煙が糖尿病に与える影響」について解説していきます。後半部分では「合併症のリスク」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
喫煙すると糖尿病にかかりやすくなります
喫煙がなぜ糖尿病に影響するのか
喫煙は既に糖尿病にかかっている人においても悪影響
喫煙が引き起こす糖尿病・合併症のリスク
糖尿病の方には禁煙をおすすめします
禁煙後の体重増加を心配している方へ
喫煙についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
喫煙すると糖尿病にかかりやすくなります
喫煙すると交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため糖尿病にかかりやすくなります。
我が国の7つの研究を含めた25の追跡調査を統合した研究では、喫煙者は、糖尿病に関係する他の要因(BMI・身体活動・飲酒など)を調整しても、2型糖尿病に1.4倍かかりやすいことが報告されています。
また喫煙本数が多いほど糖尿病になりやすく、禁煙した人ではリスクの低下がみられています。
(グラフ引用:厚生労働省e-ヘルスネット)
喫煙がなぜ糖尿病に影響するのか
喫煙すると糖尿病になりやすいのは、喫煙が「交感神経を刺激して血糖を上昇させること」と「体内のインスリンの働きを妨げる」という2つの作用が関係していると考えられています(喫煙が糖尿病発症を高めるメカニズムは必ずしも明らかではありません)。
健康成人を対象に、喫煙による血糖やインスリン、Cペプチドに対する急性作用を検討した研究では,喫煙テストによって“非喫煙者”でも“喫煙者”でも血糖値の上昇が認められました。
しかし、その程度は非喫煙者に比べ、喫煙者でより顕著でした。
さらに、喫煙テストによるインスリン値やCペプチドの上昇が“喫煙者でのみ”認められました。
このことは慢性的に喫煙を行うことで、インスリン感受性が低下することを示していると推察されます。
喫煙は既に糖尿病にかかっている人においても悪影響
喫煙は既に糖尿病にかかっている人においても悪影響を及ぼします。
糖尿病患者さんがたばこを吸い続けると、治療の妨げとなるほか、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症のリスクが高まることがわかっています。
また喫煙は腎機能を悪化させ、慢性腎臓病の発症と進行のリスクを高めます。
このようなことから日本腎臓学会発行の「CKD診療ガイド2009」では、「禁煙はCKDの進行抑制とCVD(心血管疾患)の発症抑制のために必須である」として、すべての病期ステージにおいて禁煙を推奨しております。
喫煙が引き起こす糖尿病・合併症のリスク
糖尿病患者さんが喫煙すると、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病性腎症などの合併症のリスクが高まることがわかっています。
また糖尿病による神経障害や網膜症についても、喫煙により発症のリスクが高まることが報告されています。
糖尿病が引き起こす「三大合併症」については、以下をご覧ください。
【糖尿病が引き起こす合併症1】糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、高血糖により手足の神経に異常をきたし、足の先や裏、手の指に痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です。
糖尿病神経障害は、手袋や靴下で覆われる部分に「左右対称」にあらわれる特徴があります。
なお、糖尿病神経障害の患者さんのなかには、痛みが慢性化したり、進行して知覚が低下した結果、足潰瘍や足壊疽となることもあります。
【糖尿病が引き起こす合併症2】糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する合併症です。
糖尿病網膜症は、他の糖尿病合併症と同様、初期には自覚症状はありません。
しかし気づかずに放置していると病気の進行に伴って、様々な視覚障害が起こり、最終的には失明に至ることもあります。
【糖尿病が引き起こす合併症3】糖尿病腎症
糖尿病腎症は、高血糖により、腎臓にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。
進行すると、老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が失われてしまうため、最終的に透析治療を要することになります。
この合併症も自覚症状がないまま進行していきますので、早期発見のためには、定期的に腎臓の機能を検査する必要があります。
なお、腎臓の働きが低下し透析治療を必要とされる患者さんのうち、糖尿病による腎臓病を原因とする方が40%以上と最も頻度が高く、1年間に約1万6千人が糖尿病のため透析治療を開始されています。
糖尿病と腎障害の関係については「日本腎臓学会のホームページ」をご覧ください。
糖尿病の方には禁煙をおすすめします
糖尿病の方が喫煙することは大変危険です。
喫煙は動脈硬化の進展を促進し、心臓血管死のリスクが確実に高まります。
また上述した通り、喫煙は膵臓から分泌されたインスリンの効きを悪くすることが判明しています。
インスリン効きが悪いことで、膵臓は「さらに働くことを要求され」、徐々に疲れインスリン分泌能が低下していきます。
ですので、糖尿病の方には、できるだけ早期に禁煙することをお勧めします。
「禁煙する自信がない…」という方には禁煙外来をお勧めします。
<禁煙外来>
禁煙外来とは、たばこをやめたい方のため病院に設けられた専門外来のことをいいます。
カウンセリングや生活指導といった精神面での禁煙サポートや、ニコチンガム・ニコチンパッチを使用したニコチン置換療法などによる禁煙治療が行われます。
禁煙補助薬を用いた治療では、禁煙後の離脱症状が緩和されるため自力で禁煙するよりも、ラクに禁煙することが可能です。
ですので、「禁煙する自信がない…」という方には禁煙外来をお勧めします。
禁煙後の体重増加を心配している方へ
たばこを止められない理由のひとつに「禁煙後の体重増加」が挙げられます。
確かに禁煙後は体重が増加することがありますが、たとえ体重が増えても禁煙によるメリットは大きいです。
たとえば、インスリン治療中の方では、治療に必要なインスリン量が禁煙によって減少するという報告があります。
また、糖尿病があり喫煙習慣のある方が禁煙すると、HbA1cが下がり、血糖コントロールを改善する最大の効果を得られるという研究も発表されております。
喫煙についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
上述した通り、喫煙すると交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため糖尿病にかかりやすくなります。
また既に糖尿病にかかっている人においても、喫煙は治療の妨げとなるほか、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症のリスクが高まることがわかっています。
ですので、糖尿病の方には、できるだけ早期に禁煙することをお勧めします。
糖尿病の方で喫煙している方、あるいは喫煙している方で糖尿病かもしれないと思う方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
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2023.01.24
糖尿病治療に使う薬の紹介
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病治療に使う薬」をご紹介していきます。後半部分では「薬による糖尿病治療で気をつけること」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病治療薬の特徴
糖尿病治療薬について
糖尿病治療薬|経口血糖降下薬
経口血糖降下薬による糖尿病治療が適している人とは
糖尿病治療薬|インスリン注射
薬による糖尿病治療で気をつけること
まとめ
糖尿病治療薬の特徴
糖尿病の治療薬は、大きく分けて「血糖値を下げる薬(経口血糖降下薬)」と「インスリン注射」の2種類に分けられます。
血糖値を下げる薬は、「食事療法」と「運動療法」を2~3ヵ月行っても血糖コントロールがうまくいかない2型糖尿病の患者さんに用いられます。
一方、インスリン注射は1型糖尿病の患者さんや、血糖降下薬を使用しても血糖コントロールがうまくいかない2型糖尿病の患者さんに用いられます。
糖尿病治療薬について
ここからは、「経口血糖降下薬」と「インスリン注射」について解説していきます。
糖尿病治療薬|経口血糖降下薬
血糖値を下げる飲み薬のことを「経口血糖降下薬(けいこうけっとうこうかやく)」と呼びます。
経口血糖降下薬は、その作用から大きく分けて3種類に分類されます。以下をご覧ください。
【経口血糖降下薬の種類1】インスリン抵抗性改善系
インスリン抵抗性改善系は、主に脂肪組織に働きかけ、脂肪細胞から分泌されるインスリン抵抗性を引き起こす物質を減少させます。その名の通り「インスリン抵抗性」を改善することで血糖を下げる薬です。
以下、インスリン抵抗性改善系の薬です。
<チアゾリジン薬>
チアゾリジン薬は、肝臓や筋肉に作用し、インスリンの効きを良くする薬です。
インスリンに対する体の感受性を高めることで血糖値を下げます。
<グリミン薬>
グリミン薬は、血糖値に応じて膵臓からインスリンを分泌させ血糖値を下げます。
また、肝臓で糖が作られるのを抑えたり、筋肉で糖が取り込まれるのを改善してインスリンの効果を高めたりします。
【経口血糖降下薬の種類2】インスリン分泌促進系
インスリン分泌促進系は、膵臓の「β細胞(べーたさいぼう)」に作用してインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる薬です。簡単にご説明すると「インスリンを出しやすくする薬」になります。
以下、インスリン分泌促進系の薬です。
<GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬>
GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌を促し血糖値を下げる薬です。
膵臓のβ細胞のGLP-1受容体に結合し、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促します。
そして血糖値を上げるホルモンのひとつであるグルカゴン分泌を抑制し、血糖を下げます。
<スルホニル尿素薬>
スルホニル尿素薬は、膵臓からのインスリンの分泌を増やし血糖を下げる飲み薬です。
膵臓のインスリンを作る働きがある程度、残っている患者さんで効果があります。
<速効型インスリン分泌促進薬>
速効型インスリン分泌促進薬は、インスリン分泌のスピードを早めて、食後の血糖の上昇を抑える働きがあります。
そのためインスリンをすばやく分泌させることで食後高血糖を改善することから、インスリン分泌パターンの改善薬ともいえます。
なお、食後のインスリン分泌量を増加させる作用は「スルホニル尿素薬」に比べて弱くなっています。
【経口血糖降下薬の種類3】糖吸収・排泄調節系
糖吸収・排泄調節系は、糖の腸管からの吸収、腎臓からの排泄を調節する薬です。
簡単にご説明すると「糖の吸収をゆっくりにして、血糖の急な上昇を抑える薬」になります。
なお、糖吸収・排泄調節系の薬には、体に取り込んだ糖を尿中に出させる効果もあります。
以下、糖吸収・排泄調節系の薬です。
<α-グルコシダーゼ阻害薬>
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸でのブドウ糖の分解・吸収を遅らせて、食後の急激な血糖値の上昇を抑える薬です。
食前の血糖値はそれほど高くないけれども、食後の血糖値があがりやすい患者さんに適しています。
<SGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬>
SGLT2阻害薬は、尿から余分な糖を出すことで血糖値を下げる薬です。
単独で使用する場合には低血糖のリスクも低く、国内では2014年に糖尿病の新薬として使用が開始されました。
なお、SGLT2阻害薬は副次的な効果として、体重の減少が認められています(尿から糖が出るので体重が減少します)。
経口血糖降下薬による糖尿病治療が適している人とは
経口血糖降下薬はインスリン非依存状態にあり、食事療法・運動療法を十分に行っていても血糖コントロールがうまくいかない患者さんに使われます。
つまり、経口血糖降下薬で治療効果を望むことができるのは、自分の膵臓からインスリンを出す力が残っている、「インスリン非依存状態」にある患者さんです(多くは2型糖尿病の方です)。
糖尿病治療薬|インスリン注射
インスリン注射は、効果があらわれるまでのタイミングと、持続時間によって、超速効型、速効型、中間型、混合型、配合溶解、持効型溶解の6つに分類されます。
注射の回数も1日1~4回以上のもの以外にも、最近では1日1回の注射で効果が24時間持続するタイプもあります。
<超速効型インスリン製剤>
超速効型インスリン製剤は、健康な人の食後のインスリン追加分泌パターンの再現を目的につくられたインスリン製剤で、生理的なインスリン追加分泌パターンにかなり近づけることができます。
食事直前の自己注射で、食後の血糖値の上昇を抑えて食後高血糖を改善します。
超速効型インスリン製剤は、注射してから効果が出るまでの時間は10~20分と早いので、食事の直前に注射でき、仕事などで食事時間が不規則になった場合への対応が可能ですので、生活の質を高めることができます。
<速効型インスリン製剤>
速効型インスリン製剤は、健康な人の食後のインスリン追加分泌パターンの再現を目的につくられたインスリン製剤で、生理的なインスリン追加分泌パターンに近づけます。
食事の約30分前に自己注射して、食後の血糖値の上昇を抑制して食後高血糖を改善します。
速効型インスリン製剤は、注射してから効果が出るまでの時間は30分~1時間で、インスリンの作用が持続する時間は5~8時間です。
レギュラーインスリンとも呼ばれ、筋肉注射や静脈注射が唯一可能なインスリン製剤です。
<中間型インスリン製剤>
中間型インスリン製剤は健康な人の生理的インスリン基礎分泌パターンに近づけるために、基礎分泌を補うことを目的として、インスリンの効果が持続的に作用するようにつくられたインスリン製剤です。
不足しているインスリンの基礎分泌を補い、空腹時血糖の上昇を抑制します。
注射してから効果が出るまでの時間は1~3時間で、インスリンの作用が持続する時間は18~24時間です。
<混合型インスリン製剤>
混合型インスリン製剤は、超速効型や速効型インスリンと中間型インスリンを、いろいろな割合であらかじめ混合したインスリン製剤です。
インスリンの基礎分泌、追加分泌の補填を同時に行えるようにつくられた製剤です。
混合型インスリン製剤の効果の発現は、「超速効型」または「速効型インスリン製剤」「中間型インスリン製剤」のそれぞれの作用時間にみられますが、作用の持続時間は「中間型インスリン製剤」とほぼ同じになります。
<配合溶解インスリン製剤>
配合溶解インスリン製剤は、超速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤を混ぜてある製剤です。
超速効型インスリンと持効型溶解インスリンのそれぞれの作用発現時間に効果が発現します。
なお、混合型インスリン製剤の作用時間は「持効型溶解インスリン」とほぼ同じになります。
<持効型溶解インスリン製剤>
持効型溶解インスリン製剤は、健康な人の生理的インスリン基礎分泌パターンに近づけるために、基礎分泌を補うことを目的につくられたインスリン製剤です。
不足しているインスリンの基礎分泌を補い、空腹時血糖の上昇を抑制して、1日中の血糖値を全体的に下げる働きがあります。
インスリンの作用が持続する時間はほぼ1日で、注射してから効果が出るまでの時間は1~2時間です。
糖尿病の薬物療法で気をつけること
糖尿病の薬物療法では、以下の点に注意してください。
【薬による糖尿病治療の注意点1】食事療法・運動療法をやめてしまう
経口血糖降下薬による治療を始めると、血糖コントロールの改善が認められ、食事療法・運動療法をやめてしまう患者さんがいらっしゃいます。
糖尿病の治療の基本は、食事療法・運動療法です。
薬物療法を開始しても、この二つは変わりません。食事療法・運動療法を継続することで体重の増加を防げます。
またお薬の量を抑えることもできますので、無理のない範囲で継続してください。
【薬による糖尿病治療の注意点2】副作用(副反応)
残念ながら、インスリンには副作用(副反応)があります。
インスリン療法における主な副作用(副反応)は、「低血糖症状」です。
インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。
低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。
そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。
まとめ
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。
健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
なお、糖尿病の治療薬は、患者さんの病状や合併症の有無、生活習慣などを考慮してから適したものを選びます。
糖尿病の治療薬についてご相談したい方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.23
糖尿病かもしれないと感じた方は、まずは糖尿病内科のある病院にご相談を
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病は自覚症状のないままに進行し、重篤な合併症を引き起こします。そのため、絶対に放置してはいけません。糖尿病にお心当たりのある方は、速やかに「糖尿病内科のある病院」を受診してください。
この記事では、糖尿病にお心当たりのある方に向けて「糖尿病の初期症状」や「糖尿病になりやすい人の特徴」をご紹介します。後半部分では「糖尿病の治療法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
糖尿病の初期症状
糖尿病になりやすい食事
早食いの方は糖尿病になりやすい
間食の習慣がある方は糖尿病になりやすい
糖尿病の診断基準
食後高血糖とは
糖尿病の症状を放置するリスク
2型糖尿病の治療法について
糖尿病の薬物療法について
経口血糖降下薬について
自分が糖尿病かもしれないと思った方へ
糖尿病の初期症状
糖尿病は症状の自覚が難しい疾患です。
血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。
しかし、高血糖のままある程度の時間が経過すると、次のような症状が現れてきます。
<糖尿病の初期症状>
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
糖尿病になりやすい食事
糖質の多い食品を多く摂取すると、血糖は上がりやすくなります。
特に甘いものなど単純糖質を含む食品は急激な血糖上昇の原因になりますので、注意が必要です。
以下、糖尿病の原因となりやすい食品です。
・白米
・食パン、菓子パン
・うどん、焼きそば、スパゲティなどの麺類
・かぼちゃ、じゃがいも、さつまいも、とうもろこし
・ホットケーキ、ケーキ
・饅頭
・スナック菓子、クッキー、せんべい
・ようかん、饅頭
・ジュース
早食いの方は糖尿病になりやすい
早食いは血糖値を急激に上昇させるため、血糖値を調整するホルモンの「インスリン」を分泌する膵臓の機能が低下してしまい、糖尿病を発症しやすくなります。
早食いの方は、「一口食べるごとにお箸を置く」「野菜から食べる」など、血糖値の上昇を緩やかにする食事習慣を身につけることが大切です。
早食いは糖尿病のリスクを高めますので、十分に注意してください。
間食の習慣がある方は糖尿病になりやすい
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかります。
また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。
ですので、間食はできる限り控えてください。
糖尿病の診断基準
糖尿病は簡単に述べると、HbA1cが6.5%を超えると診断に至ります。
基準となる正常値は4%~5.5%です。
しかし血糖値やHbA1cといった検査数値は、貧血など合併する疾患で値が変わることが知られています。
一般内科の先生方でも診断を誤らないように、複雑な診断チャートが容易されています。
HbA1c、空腹時血糖値、随時血糖値、75gOGTT値のいずれかが基準値を超えている場合を「糖尿病型」といいます。
空腹時血糖値、随時血糖値、75gOGTT値のいずれかとHbA1c値の両方が糖尿病型である場合、もしくは口渇、多飲、多尿、体重減少などの典型的な糖尿病の症状が出たり、糖尿病網膜症がある場合は、1回の検査で「糖尿病」と診断されます。
食後高血糖とは
食後高血糖とは、食後2時間が過ぎても血糖値が高い状態のことを言います。
食事をすると血糖値は高くなり、2~3時間以内に正常値(110mg/dl未満)に戻るのが一般的です。
しかし、血糖値が低下せず長い時間140mg/dl以上の値が続く場合には「食後高血糖」と判断されます。
食後血糖値が高い状態が続くと、糖尿病の発症リスクが高くなります。
ですので、食後高血糖は糖尿病だけでなく糖尿病予備群においても重要な指標の一つとして注目されています。
なお、食後高血糖の多くは、時間がたつと次第に下がり、正常な数値に戻ります。
そのため、通常の健診で行われる空腹時血糖値では異常なしと判断され、食後高血糖を見逃してしまうことがあります。
このようなことから食後高血糖は「隠れ糖尿病」と呼ばれています。
糖尿病の症状を放置するリスク
血糖値が高い状態が続くと、全身で様々な合併症が起こります。
糖尿病の恐さは、自覚症状のないままに進行し、重篤な合併症を引き起こすことです。血糖値が高い状態が持続すると、神経や目や腎臓などに様々な障害を起こすことが知られています。
ここでは、糖尿病が引き起こす3大合併症をご紹介します。
【糖尿病の症状を放置するリスク|合併症の種類1】糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する合併症です。
糖尿病網膜症は、他の糖尿病合併症と同様、初期には自覚症状はありません。
しかし気づかずに放置していると疾患の進行に伴って、様々な視覚障害が起こり、最終的には失明に至ることもあります。
【糖尿病の症状を放置するリスク|合併症の種類2】糖尿病腎症
糖尿病腎症は、高血糖により、腎臓にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。
進行すると、老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が失われてしまうため、最終的に透析治療を要することになります。
この合併症も自覚症状がないまま進行していきますので、早期発見のためには、定期的に腎臓の機能を検査する必要があります。
【糖尿病の症状を放置するリスク|合併症の種類3】糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、高血糖により手足の神経に異常をきたし、足の先や裏、手の指に痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です。
糖尿病神経障害は、手袋や靴下で覆われる部分に「左右対称」にあらわれる特徴があります。
糖尿病神経障害の患者さんのなかには、痛みが慢性化したり、進行して知覚が低下した結果、足潰瘍や足壊疽となったりする場合もあります。
2型糖尿病の治療法について
2型糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法により、適正に体重をコントロールし、インスリンの効きをよくすることです。
【糖尿病の治療法1】食事療法
食事療法とは、医師や管理栄養士の指示に基づいて献立を組み立て、食事の量や成分を増減させることで疾患の改善を目指すものです。
食事療法では、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。
食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。
バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、膵臓の負担は軽くなり、膵臓の能力は回復されます。
【糖尿病の治療法2】運動療法
運動療法とは、運動を行うことで障害や疾患の治療を行う療法です。運動により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病は改善します。
また長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。
ですので、糖尿病にお心当たりのある方は、できれば毎日、少なくとも週に3~5回は体を動かしてください。
糖尿病の薬物療法について
食事療法や運動療法を行っていても血糖値の改善がされない場合は「薬物療法」を行います。
薬物療法で使用される薬剤には、大きく分けて「経口血糖降下薬」と「インスリン注射薬」があります。
どの薬剤を使用するかは、年齢や肥満の程度、合併症の程度などを含め、医師と相談の上で決めます。
経口血糖降下薬について
経口血糖降下薬は、その作用から大きく分けて3つに分類することができます。以下をご覧ください。
【経口血糖降下薬1】インスリン分泌促進系
インスリン分泌促進系は、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる薬です。平たく言うと「インスリンを出しやすくする薬」になります。
以下、インスリン分泌促進系の薬で代表的なものです。
<GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬>
GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌を促して血糖値を下げる薬です。
膵臓のβ細胞(べーたさいぼう)のGLP-1受容体に結合し、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促します。
そして、血糖値を上げるホルモンのひとつであるグルカゴン分泌を抑制し、血糖を下げます。
<速効型インスリン分泌促進薬>
速効型インスリン分泌促進薬は、スルホニル尿素薬と同じように、膵臓のβ細胞に働きかけ、インスリン分泌を促します。
速効型インスリン分泌促進薬は、食事をする直前に内服していただくことで、インスリンが短時間だけ出るので食後の血糖のみを下げてくれます。
【経口血糖降下薬2】インスリン抵抗性改善系
インスリン抵抗性改善系は、インスリンの働きが悪くなっているのを改善し、効きめを良くする薬です。平たく言うと「インスリンを効きやすくする薬」になります。
以下、インスリン抵抗性改善系の薬で代表的なものです。
<チアゾリジン薬>
チアゾリジン薬は、肝臓や筋肉に作用し、インスリンの効きを良くする薬です。
インスリンに対するからだの感受性を高めることで血糖値を下げます。
<グリミン薬>
グリミン薬は、血糖値に応じて膵臓からインスリンを分泌させ血糖値を下げます。
また、肝臓で糖が作られるのを抑えたり、筋肉で糖が取り込まれるのを改善してインスリンの効果を高めたりします。
【経口血糖降下薬3】糖吸収・排泄調節系
糖吸収・排泄調節系は、糖の腸管からの吸収、腎臓からの排泄を調節する薬です。
平たく言うと「糖の吸収をゆっくりにして血糖の急な上昇を抑える薬」になります。
なお、糖吸収・排泄調節系のお薬には、からだに取り込んだ糖を尿中に出させる効果もあります。
<α-グルコシダーゼ阻害薬>
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸でのブドウ糖の分解・吸収を遅らせて、食後の急激な血糖値の上昇を抑える薬です。
食前の血糖値はそれほど高くないけれども、食後の血糖値があがりやすい患者さんに適しています。
<SGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬>
SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑制し、尿からの糖分の排泄を促進するユニークなお薬です(尿から糖が出るので体重も減少します)。
SGLT2阻害薬は、血糖を下げるだけではなく、心臓や腎臓にも良い効果が得られることが分かってきております。
そのため近年は、SGLT2阻害薬の一部の薬が「心不全」や「慢性腎臓病」の治療薬としても使用することが認められております。
自分が糖尿病かもしれないと思った方へ
糖尿病は自覚症状のないままに進行し、神経や目や腎臓などに様々な障害を引き起こします。
そのため絶対に放置してはいけません。
速やかに「糖尿病内科のある病院」を受診してください。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、できるだけ早く受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
2023.01.22
糖尿病予備群(境界型糖尿病)の症状や対策について解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」の結果では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)と推計されています。
この記事では、糖尿病の可能性を否定できない者「糖尿病予備群」について解説していきます。
後半部分では「糖尿病予備群にならないための予防法」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群にならないための予防法
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは
糖尿病予備群(境界型糖尿病)とは、糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖値が正常より高い状態にあることを指します。
「HbA1c 6.5%未満」「空腹時血糖が110 mg/dl以上126 mg/dl未満」「75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値が140 mg/dl以上200 mg/dl未満」のいずれかを満たす人が該当します。
糖尿病予備群の主な症状
糖尿病予備群(境界型糖尿病)では、自覚症状がありません。
しかし体内では、既に血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
さらに高血圧や脂質異常症なども併発しやすくなり、全体として、血糖値が正常な状態に比べ、動脈硬化の進行は加速されます。
なお、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患が引き起こされる危険性が高くなります。
糖尿病予備群と診断された方へ
糖尿病予備群の方は、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直し、肥満や高血圧、ストレスなどに対する健康管理に取り組むことで、糖尿病へ進行するリスクを減らすことができます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、まずは生活習慣の見直しから始めてください。
なお上述した通り、糖尿病予備群でも、既に血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする変化が起きています。
また糖尿病に特有の合併症である、網膜症、神経障害、腎機能障害も少しずつ進行するとも言われています。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、絶対に放置してないでください。
糖尿病予備群にならないための予防法
糖尿病予備群では、生活習慣の改善により「糖尿病の発症のリスク」を減らすことができます。
では、具体的には何をすればいいのでしょうか。順番にご紹介していきます。
【糖尿病予備群にならないための予防法1】運動
糖尿病を予防するためには「運動」が効果的です。運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進。インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。
また長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。
ですので、糖尿病予備群と診断された方は、できれば毎日、少なくとも週に3~5回は体を動かしてください。
なお、糖尿病を予防するための運動としては「有酸素運動」と「レジスタンス運動」が推奨されております。
<有酸素運動>
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。
ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。
有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<レジスタンス運動>
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。
スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。
レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
【糖尿病予備群にならないための予防法2】食生活の見直し
糖尿病予防の基本は「食生活を見直すこと」です。
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。
食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。
バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、膵臓の負担は軽くなり、膵臓の能力は回復されます。
なお、食事のポイントについては以下をご覧ください。
<ゆっくり食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<野菜類から食べる>
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。
食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<アルコールは適量にする>
アルコールには一時的にはインスリンの働きを改善する効果があります。
しかし長期間飲んでいると逆にインスリンの分泌量が低下することがわかっていますので、アルコールは、ほどほどにしてください。
<腹八分目でストップ>
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。
いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。
とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
<間食をしない>
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担がかかります。
また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。糖尿病を予防するためにも間食はできる限り控えてください。
【糖尿病予備群にならないための予防法3】禁煙
喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用があります。
そのため、たばこを吸うと「糖尿病にかかりやすくなる」といえます。
日本人を対象とした研究データによると、喫煙者は非喫煙者と比べ糖尿病を発症するリスクが38%高くなると言われています。
ですので、糖尿病予備群の方は喫煙を控えてください。
糖尿病予備群の疑いがある方、医師の診断を受けたい方へ
糖尿病予備群の方は、自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。
健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
また糖尿病予備群の方の“適切な対策”を知りたい方も、いつでもご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.01.21
糖尿病治療法の一つ、インスリン療法を解説
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病の代表的な治療法である「インスリン療法」について解説していきます。
後半部分では「インスリン療法のメリット・デメリット」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
インスリンとは何か
インスリン療法とは
インスリン療法のしくみ
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン療法の具体的な手法
インスリン療法のメリット
インスリン療法のデメリット
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
インスリンとは何か
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。
糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持っております。
なお、インスリンの働きが悪くなったり分泌される量が少なくなったりすることで、血糖値が高い状態が続いてしまうのが「糖尿病」です。
糖尿病について詳しく知りたい方は「糖尿病情報センター」をご覧ください。
インスリン療法とは
インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。
インスリン製剤を投与する方法として、「頻回インスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。
頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。
一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。
インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。
なお、インスリン療法については「インスリンとは?特徴・種類・注意点」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のしくみ
インスリンの自己注射を行うのは「1型糖尿病」の方、または「2型糖尿病」のうち内服治療が難しい方です。
不足したインスリンを注射で補うことで、健康な人のインスリン分泌に近づけます。
なおインスリンの自己注射では、効果が長時間持続するインスリン製剤を1日に1,2回と、即効性のあるものを毎食前に打つなどして、この2つの分泌を再現します(どのインスリン製剤を使うか、どのタイミングで注射するかは体格や生活様式などに合わせて調整します)。
インスリン注射を行う前に血糖自己測定
インスリン注射を行う前に、自分で血糖値を測定する「血糖自己測定」を行うことがあります。
なぜなら日々の血糖値を記録することで、血糖コントロールを良好に行えるからです。
また直前に測定することで、「血糖値が低いにも関わらず自己注射を行い、さらに低血糖になる」といったことを防ぐことができます。
血糖自己測定の方法は以下の通りです。
⑴ 血糖測定器、測定用チップ、消毒用アルコール綿、穿刺器、穿刺針、自己管理ノート、針捨て容器を準備し、手を洗ってください。
⑵ 血糖測定器に測定用チップを、穿刺器に針をセットします。
⑶ 指先などを消毒します。そして針を消毒した場所に押し当て、穿刺器のボタンを押して針を刺してください。
⑷ 血液を測定用チップに染み込ませて、血糖値を測定します。
⑸ 残った血液を拭き取り、血糖値を自己管理ノートに記録してください。
インスリン療法の具体的な手法
インスリン注射の具体的な方法は以下の通りです。
⑴ 注入器、製剤カートリッジ、消毒綿など必要な物品を準備します。インスリン製剤が混濁している場合は均一になるようにカートリッジを振ってください。
⑵ インスリン製剤に注射針をセットします(針が曲がらないように真っすぐ刺してください)。
⑶ インスリン製剤の空打ちをして針先まで薬液を満たします。
⑷ ダイヤルを回転させて注射する単位数を医師の指示した値にセットしてください。
⑸ 注射する部位を消毒します。そして皮膚を軽くつまんで直角に注射針を刺してください。
⑹ ダイヤルが0になるまで、しっかりと薬液を注入します。そして10秒程度数え、注入ボタンを押したままで針を抜きます。
⑺ 針はキャップをかぶせてから取り外します。なお、針は1回きりの使用になりますので、ご注意ください。
※インスリン注射をする場所はお腹、太もも、おしり、腕です。
それぞれ薬の吸収速度が異なるため、注射部位を医師から指示される場合があります。
また、同じところに針を刺し続けると皮膚が硬くなり、痛みの原因になったり、薬の効きが悪くなります。
ですので毎回2〜3cmずらすようにしてください。
「糖尿病のインスリン注射器の使い方と副作用の対処法」でも同様のことを伝えています。
インスリン療法のメリット
インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
インスリン治療によって膵臓の働きが回復したら、インスリン注射の回数を減らせたり、経口血糖降下薬だけの治療に戻せる可能性があります(インスリン療法により、膵臓のインスリン分泌機能が回復することもあります)。
インスリン療法のデメリット
残念ながら、インスリンには副作用があります。インスリン療法における主な副作用は、「低血糖症状」です。インスリンには、血糖値を下げ、良好な血糖コントロールが期待できる分、その裏返しで「低血糖症状」という副作用があります。
低血糖症状は、インスリン療法に限らず、糖尿病の治療に用いられる飲み薬全般でも起こりうる副作用です。
そのため、低血糖症状に対する適切な処置方法を把握し、血糖の自己測定などで自身を管理することが大切になってきます。
インスリン療法における副作用について詳しく知りたい方は「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
インスリン注射はほとんど痛くありません
インスリン注射は予防接種や採血などでイメージする注射とは異なり、痛みはそれほどありません。
なぜならインスリン注射で使う専用の注射針は、採血用の注射針とは違い、痛みが少なくなるようデザインされているからです(採血で使う注射針の3分の1ぐらいの細さで針の先も特殊なカットがしてあり、痛みが少ないように工夫されています)。
インスリン療法は早期に始めることが効果的です
上述した通り、インスリンを体外から補充することによって、無理にインスリンを出そうとする膵臓の働きすぎを防ぎ、疲れた膵臓を一時的に休めることができます。
そのため、インスリン療法は早期に始めることが効果的です。近年では、高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があります。
ですので、主治医にインスリン療法を勧められたら積極的に受け入れるようにしてください。
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会が発表した「糖尿病標準診療マニュアル」でも、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず,HbA1c 9%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要があると伝えています。
インスリン療法についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。
そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2023.01.21
糖尿病が高める認知症のリスクについて
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病の合併症として「神経障害」や「網膜症」は知られていますが、現在では「認知症」も、これらと同じ合併症の一つと考えられています。
この記事では、「認知症」について解説していきます。後半部分では「糖尿病と認知症の関係」や「認知症の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
認知症とは
認知症の種類
認知症の症状
糖尿病と認知症の関係
なぜ糖尿病がアルツハイマー型認知症リスクを高めるのか
糖尿病患者が認知症を予防するために
糖尿病患者の認知症に対する治療法
認知症の方の糖尿病治療
糖尿病や認知症についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
認知症とは
認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因によって「認知機能」が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態を言います。認知症は病名ではなく、まだ病名が決まっていない「症候群」です。
つまり医学的には、まだ診断が決められず、原因もはっきりしていない状態のことを表しています。
なお、日本における65歳以上の認知症の人の数は「約600万人(2020年現在)」と推計され、2025年には「約700万人」が認知症になると予測されております。
そのため、高齢社会の日本では、認知症に向けた取組が今後ますます重要になります。
認知症の種類
認知症には、原因となる病気によって色々な種類があります。
日本では「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が3大認知症と言われております。
なお、3大認知症の中で最も多いのは「アルツハイマー型認知症」です。
アルツハイマー型認知症については「認知症について解説しているサイト」をご覧ください。
認知症の症状
認知症の症状は「中核症状」と「行動・心理症状:BPSD」に大別されます。
中核症状は脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害で、症例には「新しいことが覚えられない」「物事の段取りができない」などが挙げられ、ほぼ全ての人に認められます。
一方、行動・心理症状は、中核症状によって引き起こされる二次的な症状です。
行動・心理症状は、周囲の不適切なケアや身体の不調や不快、ストレスや不安などの心理状態が原因となって現れます。
たとえば、「怒りっぽくなる」「妄想がある」「意欲がなくなり元気がない」「一人でウロウロと歩き回る」などになります。
糖尿病と認知症の関係
糖尿病の方は、高血糖の状態が長く続くことで認知機能が低下しやすくなります。
そのため、もともと軽度の認知障害がある方は、さらに進んで認知症を発症しやすいと言われています。
近年、糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。
また、糖尿病治療の副作用で重症な低血糖が起きると、認知症を引き起こすリスクが高くなると言われています。
なぜ糖尿病がアルツハイマー型認知症リスクを高めるのか
認知症の中で最も多いのは「アルツハイマー型認知症」です。
前述した通り、糖尿病の方はアルツハイマー型認知症のリスクが1.5倍高いという報告があります。
では、なぜ糖尿病の方はアルツハイマー型認知症のリスクが高くなるのでしょうか。糖尿病がアルツハイマー型認知症の発症リスクを高める理由は、主に2つあります。
【糖尿病が認知症の発症リスクを高める理由1】糖尿病がインスリンの働きを低下させるため
アルツハイマー型認知症が起こるメカニズムはまだわかっていませんが、脳内に「アミロイドβ」という蛋白が蓄積されて“神経障害”を起こすのではないかと考えられています。
このアミロイドβを分解して脳に蓄積しないように働いているのが「インスリン分解酵素」です。
ところが、糖尿病でインスリンの効きが悪い状態になると、インスリンが大量に必要となり、そのために「インスリン分解酵素」も大量に使われてしまいます。
その結果、脳内のアミロイドβを分解することができず、蓄積が進んでいくのです。このようにして、アミロイドβが脳に蓄積し、アルツハイマー型認知症のリスクが高まると考えられております。
【糖尿病が認知症の発症リスクを高める理由2】糖尿病が脳内の血流を悪化させるため
糖尿病による高血糖状態が続くと、血管の動脈硬化が起こります。動脈硬化が起こると、脳内の血流が悪くなり、脳細胞に酸素や栄養が届きにくくなります。
その結果、アミロイドβが脳に蓄積しやすくなり、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まります。
糖尿病患者が認知症を予防するために
認知症の予防には、低血糖を起こさない範囲で血糖値を良好に安定させることが重要です。
最新の研究では、糖尿病治療によって血糖値をよくすると、認知機能も一部改善することがわかってきています。
さらに、高血糖だけでなく、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどは認知症に繋がりやすいと言われていますので、こうした危険因子を減らすことも有効です。
認知症を予防するためにも、まずは生活習慣の改善から行ってください。
糖尿病患者の認知症に対する治療法
認知症の治療は大きく分けて「薬物治療」と「非薬物治療」の2つがあります。
【認知症の治療1】薬物療法
薬物療法とは認知症に効果的といわれる治療薬を服用することを言います。
認知症の治療薬には認知症の進行をなだらかにするという効果があり、薬物療法を取りいれるだけで急激な進行を未然に防ぐことが可能となっています。
【認知症の治療2】非薬物療法
非薬物療法は認知症の治療薬を服用することなく、認知症の進行を予防する方法になります。
非薬物療法には様々なアプローチ方法があります。詳しくは「厚生労働省のホームページ」をご覧ください。
※認知症には、根本的な治療が「困難な認知症」と「治療可能な認知症」があります。
根本的な治療が困難な認知症としては、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」などの変性性認知症が挙げられます。
認知症の方の糖尿病治療
認知症の方の糖尿病治療では、通常の糖尿病治療と同じように「食事療法」や「運動療法」が大切です。
【認知症の方の糖尿病治療1】食事療法
食事療法とは、医師や管理栄養士の指示に基づいて献立を組み立て、食事の量や成分を増減させることで病気の改善を目指すものです。
「食事療法=カロリー制限」の印象があるかもしれませんが、単に摂取カロリーを制限すればよいというものではなく、必要な栄養素を過不足なく摂取することが原則です。
そのため、食品に含まれる栄養素やエネルギー量を知っておくことも大切です。
なお、糖尿病の方が、血糖値の高くなりやすい食事を摂っていると、インスリンをたくさん打っても「血糖値の下がりが悪くなること」があります。
ですので、インスリン療法と食事療法は同時に行ってください。
【認知症の方の糖尿病治療2】運動療法
運動療法とは、運動を行うことで障害や疾患の治療を行う療法です。
糖尿病の方に対しては、薬物療法・食事療法と並び、重要性の高い治療方法であると言われています。
なお、運動の方法としては有酸素運動が効果的で、ウォーキングや水泳、自転車やラジオ体操などを無理なく続けることが大切です。
近年は、短時間高負荷の無酸素運動による筋肉トレーニングの効果も注目されています。
糖尿病や認知症についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
認知症になりやすいのは、糖尿病の方だけではありません。
糖尿病の前段階である「予備群(耐糖能障害)」の方でも、認知症になりやすいことがわかっています。
ですので、健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。
認知症にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2022.12.16
糖尿病が高める骨粗鬆症のリスクについて
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
骨粗鬆症とは、骨に含まれるカルシウムなどが減り、骨がもろくなる病気です。骨粗鬆症は、がんや脳卒中のように「直接的に生命をおびやかす病気」ではありません。しかし骨粗鬆症による骨折から介護が必要になったり、寝たきりになったりしますので、注意が必要です。
この記事では、「糖尿病と骨粗鬆症の関係」について解説していきます。後半部分では「骨粗鬆症の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症の症状
糖尿病の方は骨折しやすい
なぜ糖尿病が骨粗鬆症リスクを高めるのか
糖尿病患者が骨粗鬆症を予防するために
糖尿病や骨粗鬆症についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨に含まれるカルシウムなどが減り、骨がもろくなる病気です。
骨粗しょう症になると、それだけでは痛みなどの症状はないものの、転んだり、尻もちをつくなど、ちょっとしたはずみで骨折を起こしやすくなります。
なお、日本には約1000万人以上の骨粗鬆症患者さんがいると言われており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。
骨粗鬆症の症状
骨粗鬆症になっても、基本的に「痛み」は発生しません。
骨粗鬆症は自覚症状が乏しく、「背中が丸くなる」「身長が縮む」といった症状が徐々に起こるため「病気」と気付かないことが多いのです。そして、気付いた時には病状がかなり進行していたということも少なくありません。
なお、骨粗鬆症になると、「軽く転んでしまった」「尻もちをついてしまった」「重い物を持ち上げた」程度で圧迫骨折が起こります。圧迫骨折を起こすと激しい痛みを感じます。
しかし場合によっては、痛みを伴わないこともあり、特に高齢者は痛みに気付きにくいこともあるため注意が必要です。
糖尿病の方は骨折しやすい
骨は毎日新しく作り替えられていますが、糖尿病になると新しい骨を作るのが下手になり、古い骨は「サビつき」が増えます。
そのため、糖尿病患者さんの骨は、「質」が悪くなって折れやすくなるのです(骨質の低下)。
また、糖尿病による神経障害で足底の感覚が鈍かったり、網膜症で視力が低下していたりすると転びやすくなりますので、これも骨折しやすい原因とされています。
糖尿病の方は非糖尿病者と比べて、同じ骨密度であっても骨折する危険性がより一層高くなりますので、十分にご注意ください。
なぜ糖尿病が骨粗鬆症リスクを高めるのか
糖尿病とは、インスリンの作用不足によって慢性高血糖をきたす病気です。
インスリンの役目はブドウ糖の利用を高め、血糖値を下げるだけではありません。
インスリンの作用が低下すると、骨代謝にさまざまな影響を与え、骨量減少が進行します。
【インスリン作用不足の骨代謝への影響1】骨芽細胞の減少
新しい骨を作り出す骨芽細胞にはインスリンを受けとる受容体があり、インスリンには骨芽細胞を増殖させる作用があります。
インスリンが足りないと骨芽細胞は増えず、骨形成が低下します。
実際に糖尿病の方では、検査で骨代謝マーカーである「オステオカルシンの低下」が確認され、低代謝回転の骨量減少が起きています。
【インスリン作用不足の骨代謝への影響2】活性型ビタミンDの不足
カルシウムは単独で食べても体内に取り入れられず、腸から吸収する際には「活性型ビタミンD」が必要です。
活性型ビタミンDは、ビタミンDを材料としてインスリンの働きにより、腎臓で作られています。
インスリンの作用が不足している糖尿病の方では、活性型ビタミンDが足りずに、せっかく食べたカルシウムが腸から吸収されにくくなっています。
また、活性型ビタミンDには、骨芽細胞の働きを高める作用もありますが、高血糖状態ではその作用が低下します。
【インスリン作用不足の骨代謝への影響3】尿中カルシウムやマグネシウムが増加
インスリンの作用不足により高血糖になると、それにつれて尿が多くなります。
結果的に尿とともに排泄されるカルシウムが増え、体内はカルシウム不足になります。
同じ理由でマグネシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンの分泌が減って腎臓からカルシウムが排泄されやすくなり、また、骨代謝はさらに低代謝回転になります。
【インスリン作用不足の骨代謝への影響4】コラーゲンの減少
コラーゲンは骨の中にある蛋白成分で、骨の柔軟さを保つ役目を果たしています。
高血糖状態では蛋白質の糖化という現象が起きますが、それによって正常なコラーゲンが減り、骨がもろくなります。
糖尿病患者が骨粗鬆症を予防するために
骨粗鬆症を予防する方法には、カルシウムを多く含んだ食事を摂ることや、適度な運動、日光浴などがあります。
【糖尿病患者が骨粗鬆症を予防するために1】食事
骨に欠かせない栄養といえば、やはりカルシウムです。
しかし、カルシウムだけを摂取していれば骨粗鬆症を予防できるわけではありません。
骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムの吸収を助けてくれる「ビタミンD」や、骨を丈夫に保つ働きがある「ビタミンK」なども取り入れたバランス良い食事を心がけることが大切です。
なお、カルシウムは乳製品、大豆製品、緑黄色野菜、海藻、魚、ナッツ類などに多く含まれております。
【糖尿病患者が骨粗鬆症を予防するために2】運動
骨粗鬆症を予防するためには、骨に重力負荷が加わる適度な運動をすることが良いといわれています。
なぜなら運動で骨に力がかかると、骨に弱いマイナスの電気が発生し、カルシウムを呼び寄せるからです。
また運動は骨の血液の流れをよくし、骨をつくる細胞の働きを活発にします。
適度な運動はエネルギーを消費するだけでなく、生活習慣病の改善につながりますので、積極的に行ってください。
ただし、突然激しい運動をするのはかえって危険です。まずは毎日30分程度の散歩や、それに相当する家事や庭仕事をお勧めします。
【糖尿病患者が骨粗鬆症を予防するために3】日光浴
ビタミンDは食事から摂る以外に、太陽光に当たることにより「皮膚」で作られます。
日焼けしない程度に戸外を歩き、適度な日光浴をすると効果的です。
糖尿病や骨粗鬆症についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
骨粗鬆症とは、骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
ほとんどの場合、自覚症状がないため、進行してから気づくことも珍しくありません。
骨の状態は検査で確認することが可能で、早期に病気を発見できれば、食事、運動などで骨に含まれるカルシウムなどの量を増やしていくことができます。
ですので、骨粗鬆症の症状にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2022.12.15
糖尿病が高める心筋梗塞のリスクとは
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
心筋梗塞は突然起こり、命を奪うこともある恐ろしい病気です。糖尿病の方は、非糖尿病者に比べ、心筋梗塞を発症するリスクが高いと言われています。
この記事では、「心筋梗塞」について解説していきます。後半部分では「心筋梗塞を予防するために必要なこと」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
心筋梗塞とは
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の原因
なぜ糖尿病が心筋梗塞のリスクを高めるのか
無痛性心筋梗塞とは
心筋梗塞は再発します
糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと
入浴時の注意
糖尿病や心筋梗塞についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
心筋梗塞とは
心筋梗塞とは、心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈が詰まって血液が流れなくなり、心筋が死んでしまう病気です。突然死を起こしたり、心臓の機能を著しく落としたりします。心筋梗塞を発症する前には胸痛や圧迫感、背中の痛み、歯の痛みなどの前兆が起こる場合があります。しかし全ての患者さんに前兆が生じるわけではなく、半数程度の方は前兆なしに突然、心筋梗塞に至ると考えられています。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の主な症状は、突然の強い胸痛です。「押しつぶされる」「締め付けられる」「焼けるような」といった強い痛みを生じて、冷や汗、吐き気や嘔吐などを伴うこともあります。そして、その症状が20分から数時間続きます。心筋梗塞は、ニトログリセリンなどの薬は効果が乏しいことが多く、使用しても症状が続きます。ですので、痛みの長さに関わらず、締めつけられるような胸痛が突然起こり、冷や汗や吐き気がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化とは、血管が硬くなって柔軟性が失われている状態です。冠動脈の壁にコレステロールなどが沈着すると、こぶのように盛り上がった「プラーク:粥腫(じゅくしゅ)」ができます。薄い膜で覆われている粥腫は破れやすく、傷付くとその回りに血栓ができ、さらに血栓が大きくなると冠動脈を塞いでしまい血液を堰き止めてしまいます。そのため酸素不足となった心筋細胞が壊死を起こすのです。なお、動脈硬化は、中高年の人に生じる病態と思われがちですが、実は小児期から徐々に進行し、様々な病気の原因となります。そのため、若い頃から動脈硬化の進行を予防することが大切です。
なぜ糖尿病が心筋梗塞のリスクを高めるのか
糖尿病は血糖値が高くなりすぎる病気です。高血糖状態が続くと血液が糖でドロドロになって、血流が悪くなり血管が傷つきやすくなります。この状態が続くと動脈硬化を促し、心筋梗塞の原因となるのです。そのため、糖尿病が心筋梗塞のリスクを高めると言われております。なお、国内外の研究では、糖尿病は動脈硬化性疾患の発症・死亡リスクを2~3倍上げると言われております。「糖尿病ネットワーク」でも同様のことを伝えています。
無痛性心筋梗塞とは
心筋梗塞には、痛みの症状がない無痛性心筋梗塞があります。これは心電図や核医学検査などで心筋梗塞の存在が認められているにもかかわらず、胸痛などの症状が無いものを指します。無痛性心筋梗塞は、糖尿病の方に起こりやすいとされています。なぜなら糖尿病では、合併症の神経障害により痛みを感じないことがあるからです。無痛性心筋虚血は、前兆なく心臓発作を起こして突然死したり、心筋の大部分を壊死させる心筋梗塞を起こしたりしますので、十分にご注意ください。
心筋梗塞は再発します
心筋梗塞を起こしたことがある人は、起こしたことがない人よりも、心筋梗塞を繰り返したり、心臓がだんだん悪くなり命を縮める「心不全」などを起こしたりするリスクが高いことがわかっています。そのため、一度心筋梗塞を起こした人は、さらに注意して再発を予防することが大切です。
糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと
心筋梗塞を繰り返さないためには、心筋梗塞で死亡するリスクを高める「糖尿病」「高血圧」「肥満」などをしっかりとコントロールし、運動、食事、喫煙などの生活習慣を改善する必要があります。心筋梗塞を予防するためにも、まずは生活習慣の改善から行ってください。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと1】禁煙
心筋梗塞の要因となる生活習慣のなかで、極めてリスクが大きいのが喫煙です。喫煙をすると血管に傷ができたり、炎症が促進されるため動脈硬化が進行します。動脈硬化が進むと心筋梗塞は再発しやすくなりますので、ご注意ください。「厚生労働省」も同様のことを伝えています。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと2】お酒はほどほどに
過度な飲酒は動脈硬化に繋がると言われています。また飲酒の際には塩分の高い食事をとりがちです。適量のアルコール摂取に努めてください。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと3】ストレスを溜めない
過度のストレスや緊張状態は血圧を上昇させ、心筋梗塞を引き起こす原因となります。ストレスの上手な解消法を身につけ、リラックスする時間を持つようにしてください。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと4】塩分を控える
食塩は1日8g未満が目標です。高血圧のある方は6g未満と言われています。漬物や梅干し、ラーメンの汁など塩分の高い食品を避けたり、量を少なくするなど工夫してください。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと5】適度な運動
適度な運動はエネルギーを消費するだけでなく、生活習慣病の改善につながります。ウォーキングなどの軽い運動でも十分な効果が得られますので、まずは散歩から始めてください。
【糖尿病患者が心筋梗塞を予防するために必要なこと6】水分補給
体内の水分が不足して脱水症状になると血液が凝縮されて血栓ができやすくなり、血管が詰まる可能性が高まります。特に高齢の方は、体に蓄えられる水分量が減っているため普段から不足しがちです。1日に必要な水分量は1.5~2リットルになりますので、意識的に水分を摂取してください。
入浴時の注意
入浴は心筋梗塞の引き金になることがあるため注意が必要です。主な原因としては、入浴にともなう「急激な血圧の変化」や「脱水」などが挙げられます。血圧の変動により血管に負担がかかり、心筋梗塞を引き起こす可能性がありますので、注意してください。なお、入浴の時間は10分を目安とし、湯と温室の温度差を少なくしてください。また冬場は脱衣場にヒーターを置くようにする等の工夫も積極的に行ってください。
糖尿病や心筋梗塞についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病患者さんが心筋梗塞を繰り返さないためには、「血糖コントロール」が大切です。糖尿病の方は非糖尿病者に比べ、心筋梗塞を起こした後の1年以内の死亡率が高くなっています。また、血糖値がそれほど高くない糖尿病予備軍の人であっても、心筋梗塞を起こすリスクが高まることが知られています。そのため、心筋梗塞の再発を予防するにあたっては、糖尿病の方は「早期から血糖コントロールを行うこと」、糖尿病にかかっていない方では、「予備軍になっていないか検査でチェックしておくこと」が勧められています。「心筋梗塞の症状」や「糖尿病の症状」にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.15
糖尿病が高める脳梗塞のリスクとは
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
脳梗塞は脳の血管が詰まって、その先に栄養が届かなくなり、脳細胞が死んでしまう病気です。糖尿病の方は、非糖尿病者に比べると「脳梗塞発症リスク」が2〜4倍高いと言われています。
この記事では、「脳梗塞」について解説していきます。後半部分では「脳梗塞の再発率」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
脳梗塞とは
脳梗塞の症状
なぜ糖尿病が脳梗塞リスクを高めるのか
脳梗塞の再発率
糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと
入浴時の注意
糖尿病や脳梗塞についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳動脈が狭くなったり、塞がってしまったりして、必要な血液を得られない「脳組織細胞」が死んでしまう病気です。呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、など様々な症状が突然出現し、多くの方が後遺症を残します。そのため、脳梗塞後の後遺症を最小限に食い止めるためにも、少しでも早く体が出すサインを見つけて、早く治療を開始することが大切です。なお、厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」では、平成29年「1年間」の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万9,880人で全体の8.2%を占めており、内訳をみると、「脳梗塞」が最も多く6万2,122人となっております。
脳梗塞の症状
脳梗塞の主な症状は「言語障害」「感覚障害」「視覚障害」「運動障害」です(これらの症状は複合して現れるケースもあります。もちろん1つだけ発症することもあります)。
【脳梗塞の症状1】言語障害
・言葉が出てこない
・言葉の意味が分からない
・話し方がぎこちない
・呂律が回らない
【脳梗塞の症状2】感覚障害
・片側の手足が突然しびれる
・片側の手などの感覚が鈍くなる
【脳梗塞の症状3】視覚障害
・一瞬ものが見えなくなる
・ものが二重に見える
・視野が狭くなる
・視野が半分欠ける
【脳梗塞の症状4】運動障害
・食事中に箸や茶碗を落とす
・身体の片側に力が入らない
・傾いてまっすぐ歩けない
・急に片側の手足が動かなくなる
・同じ側の顔に麻痺がある
なぜ糖尿病が脳梗塞リスクを高めるのか
糖尿病は血糖値が高くなりすぎる病気です。血糖値が上がりすぎると、血液がドロドロになるため血管が詰まりやすくなり、「脳梗塞のリスク」が高まることがわかっています。また血糖値が高い状態が続くと、細い動脈だけでなく太い動脈にもダメージを与えます。動脈は心臓から全身に酸素と栄養素を送り込む血管で、動脈硬化が進行すると内壁の弾力性がなくなったり詰まったりして脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすことがあります。国内外の研究で、糖尿病は動脈硬化性疾患の発症・死亡リスクを2~3倍上げることが知られています。
<動脈硬化とは>
動脈硬化とは、文字どおり動脈が硬くなる状態のことです。動脈硬化は、中高年の人に生じる病態と思われがちですが、実は小児期から徐々に進行し、様々な病気の原因となります。そのため、若い頃から動脈硬化の進行を予防することが大切です。動脈硬化は、糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病によって進みますので、十分にご注意ください。
脳梗塞の再発率
一度脳梗塞を起こした患者さんは再発しやすく、発症後1年で10%、5年で35%、10年で50%の人が再発すると言われています。また糖尿病があると、血管を傷めるため、さらに脳梗塞の再発率が高くなると言われています。脳梗塞の再発を予防するには、まず生活改善を行うことが大切です。医師や栄養士などの指導の下、規則正しい生活を送ってください。なお、合併症予防のためにはヘモグロビンA1c値7.0%未満、空腹時血糖値130m/dL未満、随時血糖値180mg/dL未満にするのが良いとされています。
糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと
脳梗塞を引き起こす主な原因は動脈硬化です。その動脈硬化を招く要因としては、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙などが挙げられます。つまり、脳梗塞は生活習慣病が要因となっているのです。脳梗塞を予防するためにも、まずは生活習慣の改善から行ってください。
【糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと1】塩分を控える
食塩は1日8g未満が目標です。高血圧のある方は6g未満と言われています。漬物や梅干し、ラーメンの汁など塩分の高い食品を避けたり、量を少なくするなど工夫してください。
【糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと2】禁煙
脳梗塞の要因となる生活習慣のなかで、極めてリスクが大きいのが喫煙です。喫煙をすると血管に傷ができたり、炎症が促進されるため動脈硬化が進行します。動脈硬化が進むと脳梗塞は再発しやすくなりますので、ご注意ください。
【糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと3】お酒はほどほどに
過度な飲酒は動脈硬化に繋がると言われています。また飲酒の際には塩分の高い食事をとりがちです。適量のアルコール摂取に努めてください。
【糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと4】適度な運動
適度な運動はエネルギーを消費するだけでなく、生活習慣病の改善につながります。ウォーキングなどの軽い運動でも十分な効果が得られますので、まずは散歩から始めてください。
【糖尿病患者が脳梗塞を予防するために必要なこと5】水分補給
体内の水分が不足して脱水症状になると血液が凝縮されて血栓ができやすくなり、血管が詰まる可能性が高まります。特に高齢の方は、体に蓄えられる水分量が減っているため普段から不足しがちです。1日に必要な水分量は1.5~2リットルになりますので、意識的に水分を摂取してください。
入浴時の注意
入浴は脳梗塞の引き金になることがあるため注意が必要です。主な原因としては、入浴にともなう「急激な血圧の変化」や「脱水」などが挙げられます。血圧の変動により血管に負担がかかり、脳梗塞を引き起こす可能性がありますので、注意してください。なお、入浴の時間は10分を目安とし、湯と温室の温度差を少なくしてください。また冬場は脱衣場にヒーターを置くようにする等の工夫も積極的に行ってください。
糖尿病や脳梗塞についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
脳梗塞は治療が早いほど、脳を救える可能性が高くなります。血栓を効果的に溶かす薬が登場してから、特に早期治療の重要性が高まっています。ですので、深刻な後遺症を残さないためにも、「おかしい」と思ったらすぐに受診してください。「脳梗塞の症状」や「糖尿病の症状」にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.14
1型糖尿病の原因や治療法について解説します
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
1型糖尿病はインスリンを作る膵臓に異常が起こることで発症する糖尿病で、「インスリン依存型」と呼ばれています。
この記事では、「1型糖尿病」について解説していきます。後半部分では「1型糖尿病の原因」や「治療法」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
1型糖尿病とは
1型糖尿病の症状
1型糖尿病の種類
1型糖尿病の原因
1型糖尿病の主な治療法
1型糖尿病のその他の治療法
1型糖尿病についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
1型糖尿病とは
1型糖尿病とは、インスリンを分泌する膵臓の「β細胞:べーたさいぼう」が壊れ、高血糖状態になる病気です。世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われています。糖尿病には大きく分けて1型と2型がありますが、1型はβ細胞の破壊によって生じるもので、運動不足や過食などの生活習慣によって起こる「2型糖尿病」とは性質が異なります。2型糖尿病について「糖尿病の方へ」でご説明していますので、ご興味のある方はご覧ください。
1型糖尿病の症状
1型糖尿病の典型的な症状は、口渇、多飲、多尿、体重減少です。インスリンが分泌されないと、血糖の上昇に伴い尿糖が排出され、浸透圧利尿が増えるため、脱水になります。またインスリンの不足はエネルギーの同化(蓄積)が出来なくなり痩せていきます。さらに、インスリンが全くなくなった状態ではケトン体が産生され、ケトーシスやケトアシドーシスという危機的状態となり、昏睡や死に至るケースもあります。ケトーシスやケトアシドーシスについては「日本糖尿病学会のホームページ」をご覧ください。
1型糖尿病の種類
1型糖尿病は、その破壊の進行のスピードによって以下の3タイプに分類されます。
【1型糖尿病の種類】劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病は、1型糖尿病の中で最も急激に発症し、数日間でβ細胞が破壊されてインスリン依存状態になるタイプです。1週間前後以内に糖尿病の急性合併症である「糖尿病ケトアシドーシス」になり危機的な状態に陥ることもあるため、速やかなインスリン投与が必要になります。
【1型糖尿病の種類】急性発症1型糖尿病
急性発症1型糖尿病は、1型糖尿病の中で最も頻度が高いタイプです。β細胞の破壊から数週間、数か月で症状が現れ、インスリン依存状態となります。
【1型糖尿病の種類】緩徐進行1型糖尿病
緩徐進行1型糖尿病は、発症から半年か数年をかけてインスリンの分泌が低下していき、最終的にインスリン依存状態に陥るタイプです。このタイプでは、すぐにインスリン依存状態になりませんが、早期に膵臓を保護する治療を行うことで進行を遅らせることができる場合があるため、早期治療が望まれます。
1型糖尿病の原因
1型糖尿病の原因はまだ不明な点もありますが、主に「自己免疫異常」と「ウイルス感染」が関わっていると考えられています。自己免疫とは、細菌やウイルスなどの外敵から体を守るための防御システムで、何らかの原因によって免疫に異常が生じると、正常な細胞を攻撃してしまいます。β細胞も例外ではなく、免疫異常がβ細胞を破壊することでインスリンの分泌が低下します。ウイルス感染においては、「レトロウイルス」「サイトメガロウイルス」「麻疹ウイルス」などが関連していると言われています。「日本内分泌学会」でも同様のことを伝えています。
1型糖尿病の主な治療法
1型糖尿病の治療はインスリン療法が基本です。
【1型糖尿病の主な治療法】インスリン療法
インスリン療法とは、患者さん自身がインスリン製剤を継続的に投与して血糖をコントロールする治療法のことです。インスリン製剤を投与する方法として、「頻回ひんかいインスリン注射療法」と「持続皮下インスリン注入療法」があります。頻回インスリン注射療法は、一般的にペン型の注射器を用いて1日に数回インスリン注射を行う方法です。お腹、太もも、上腕、お尻に注射することが推奨されています(これらの部位を少しずつ、ずらしながら注射します)。一方、持続皮下インスリン注入療法は、携帯型のインスリンポンプを使用して皮下に留置した挿入した「カニューレ」からインスリンを持続的に注入する方法です。インスリンの注入量や注入速度を細かく調整できるため、頻回インスリン注射療法で血糖コントロールが困難な人や低血糖を頻発する人、食事や勤務時間が不規則な人、妊娠中あるいは妊娠の予定がある人などに向いています。
1型糖尿病のその他の治療法
1型糖尿病の治療には、インスリン療法以外に「経口血糖降下薬による治療」や「移植手術」があります。また1型糖尿病は、生活習慣の乱れを原因としたものではありませんが、2型糖尿病と同様、食事・運動習慣に良くない点があれば、その改善が必要です。
※経口血糖降下薬とは、血糖値を下げる飲み薬のことです。
【1型糖尿病の治療法】経口血糖降下薬による治療
1型糖尿病に対する主な経口血糖降下薬に「α(アルファ)グルコシダーゼ阻害薬」があります。この薬には食べ物に含まれる糖質の消化・吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を緩やかにする作用があるため、食後過血糖がある場合に使用されます。
【1型糖尿病の治療法】移植手術
1型糖尿病が重症の場合には、「膵臓移植」や「膵島移植」が適応となる場合があります。ただし、根治を目指せる治療法であるものの、ドナー不足などの問題から日本ではまだあまり行われていません。しかし近年では、IPS細胞などからβ細胞をつくる研究が行われているため、今後はドナーの有無にかかわらず移植できることが期待されています。
【1型糖尿病の治療法】食事療法
食事療法とは、医師や管理栄養士の指示に基づいて献立を組み立て、食事の量や成分を増減させることで病気の改善を目指すものです。「食事療法=カロリー制限」の印象があるかもしれませんが、単に摂取カロリーを制限すればよいというものではなく、必要な栄養素を過不足なく摂取することが原則です。そのため、食品に含まれる栄養素やエネルギー量を知っておくことも大切です。なお、1型糖尿病の方が、血糖値の高くなりやすい食事を摂っていると、インスリンをたくさん打っても「血糖値の下がりが悪くなること」があります。ですので、インスリン療法と食事療法は同時に行ってください。
【1型糖尿病の治療法】運動療法
運動療法とは、運動を行うことで障害や疾患の治療を行う療法です。糖尿病の方に対しては、薬物療法・食事療法と並び、重要性の高い治療方法であると言われています。なお、運動の方法としては有酸素運動が効果的で、ウォーキングや水泳、自転車やラジオ体操などを無理なく続けることが大切です。近年は、短時間高負荷の無酸素運動による筋肉トレーニングの効果も注目されています。
1型糖尿病についてご相談したい方はいつでもご相談下さい
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。1型糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.13
糖尿病と歯周病の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
歯周病は細菌感染による慢性の炎症です。歯周病が進行すれば膿が出たり、歯がグラグラして抜けてしまうことはよく知られていますが、近年では口の中だけに留まらず、様々な生活習慣病と関係があることがわかってきております。その一つが糖尿病です。
この記事では、「糖尿病と歯周病の関係」について解説していきます。後半部分では「糖尿病患者の歯周病治療」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
歯周病とは
糖尿病患者は歯周病になりやすい
糖尿病と歯周病がそれぞれに及ぼすリスク
糖尿病患者の歯周病治療
歯周病治療で血糖値が下がります
歯周病予防のために必要なこと
糖尿病患者で歯周病が不安な方はご相談ください
歯周病とは
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯茎(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。炎症が歯茎に限定されているときは歯肉炎、それ以上に進行すると歯周炎(歯槽膿漏)と呼ばれます。歯周病は自覚症状に乏しいため、気がつかないうちに進行します。そして、さらに進行すると膿が出たり歯が動揺してきて、最後には歯を抜かなければならなくなってしまいます。このようなことから歯周病は、初期の段階でしっかりケアすることが何より大切だと言えます。
糖尿病患者は歯周病になりやすい
糖尿病を持つ人は、歯周病になりやすいことが知られています。また糖尿病のコントロールがよくない場合や罹病期間が長い場合には、歯周病の進行が速く、早期に重症化しやすいと言われています。これには「歯周病細菌が糖分を好むため、唾液中の糖によって増殖しやすいこと」「免疫力の低下」「唾液量の低下」「血液の循環が悪いこと」、さらに「歯肉の血管がもろくなり傷が治りにくいこと」など、様々な理由が関係しています。
糖尿病と歯周病がそれぞれに及ぼすリスク
近年、歯周病は「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」などと並び、糖尿病の合併症の一つに数えられています。糖尿病は、血糖をコントロールするインスリンが不足したり、うまく作用しないために、血液中に糖分があふれてしまう病気です。歯周病により、炎症を引き起こすサイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質の総称)の一種であるTNF-αという物質が作られ、血液中を巡りだすと、さらにインスリンの働きが低下します。その結果、高血糖が続いて糖尿病が悪化してしまいます。また、歯周病で歯を失ってしまうと、食べ物をよくかむことができなくなり、軟らかい物ばかりを食べてしまうなど、食生活の偏りを招き、糖尿病の要因となります。このように糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が悪化すると糖尿病をさらに悪化させるという悪循環が起こります。そして糖尿病が悪化すると、歯周病以外の深刻な合併症を引き起こすリスクが高まることにつながってしまうのです。
糖尿病患者の歯周病治療
歯周病の治療は、早期発見、早期治療が重要です。炎症がまだ歯肉にとどまっている歯肉炎であれば、ほとんどの場合に正しい歯磨きや歯石除去で治ります。正しい歯の磨き方をぜひ歯科医にご相談ください。なお、炎症が歯肉を通り越して歯槽骨や歯根膜まで及んでいる歯周炎であれば、歯周ポケットの深部まで徹底的に感染源を除去するなど、専門的な治療が必要となります。歯周病の進行の程度によっては外科的な処置をすることもありますので、歯周病専門医や、日本糖尿病協会の歯科医師登録医に受診することをお勧めします。
歯周病治療で血糖値が下がります
歯周病の治療をすると「血糖コントロールが改善する」という研究成果が数多く報告されています。ここで言う「歯周病治療」とは、患者さん自身のブラッシングによるプラークコントロールをしっかり行い、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に取り除くことです。歯肉の炎症をコントロールできればインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールも改善するということが、日本での研究を含めた多くの臨床研究で報告されています。「糖尿病ネットワーク」でも同様のことを伝えています。
歯周病予防のために必要なこと
歯周病は感染症であるとともに、生活習慣が発症のきっかけになることから「生活習慣病」とも言われています。そのため、「正しい歯磨き」や「歯石除去」だけでなく、規則正しい生活リズムを心掛け、適切な食生活を送る必要があります。また、歯周病を防ぐには、毎日のブラッシングによるお家でのケアとともに、定期的な検診や歯石除去などの、専門家によるケアが必要です。ぜひ定期的な検診や予防処置を受けるよう心掛けてください。なお、歯磨きだけでは取り除くことができない歯石については、歯科医院でスケーリングやルートプレーニングという歯周病の治療があります。スケーリングとは、スケーラーという器具を用いて歯にこびりついた歯石を除去する歯周病の治療法です。ルートプレーニングとは、キュレットという器具を用いて歯茎の内部に入り込んだ歯石を除去する歯周病の治療法です。詳しくは「日本歯周病学会のホームページ」に記載していますので、ぜひご覧ください。
糖尿病患者で歯周病が不安な方はご相談ください
歯周病と糖尿病は、どちらも好ましくない生活習慣によって発症する生活習慣病であり、どちらも自覚症状がないまま進行します。そのため定期的な「歯科検診」や「健康診断」が大切です。どちらかの病気が見つかったら進行を止める治療をするとともに、歯周病なら糖尿病、糖尿病なら歯周病の「発症」や「兆候」がないか、こまめに確認するようにしてください。歯周病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.12
糖尿病が高める感染症リスクと予防について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病の方は様々な感染症にかかりやすく、また重症化しやすいと言われています。この記事では、「糖尿病と感染症の関係」について解説していきます。後半部分では「糖尿病と新型コロナウイルスの関係」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病はなぜ感染症リスクを高めるのか
糖尿病の方がかかりやすい感染症
糖尿病と新型コロナウイルスの関係
糖尿病の方が感染症にかかったら
糖尿病の方は自己判断で薬物療法を中止しないこと
感染症予防について不安な方はお気軽にご相談ください
糖尿病はなぜ感染症リスクを高めるのか
糖尿病をお持ちの方は様々な感染症にかかりやすく、また重症化しやすいと言われています。では、なぜ糖尿病をお持ちの方は感染症にかかりやすいのでしょうか。主な理由は以下の5つです。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由1】免疫反応の低下
免疫反応とは、一度感染した病原体に対し、体内でそれに対する抗体が作られ、次に同じ病原体が体内に侵入しようとしたときに、それを防ぐように働く仕組みのことです。高血糖では、この免疫反応が弱くなっています。ですので、糖尿病をお持ちの方は感染症にかかりやすいと言われています。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由2】免疫機能の低下
白血球の一種である好中球は、体内に入り込んだウイルスや細菌を食べる働きがあります。しかし、高血糖時はこの機能が低下してしまいます。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由3】血流が悪くなる
高血糖では、細い血管の血液の流れが悪くなります。このような状態では、酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下したり、白血球が感染部位に到達しにくくなって、感染しやすくなります。また、感染で受けたダメージの回復にも時間がかかります。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由4】神経障害
糖尿病に特有な合併症の一つに神経障害があります。神経障害があると、内臓の活動が乱れやすく、膀胱炎や胆嚢炎の原因になります。また、痛みを感じる神経も障害されるので、症状が現れにくく感染症に気づくのが遅れ、その間に病気が進行してしまいます。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由5】血糖値がいつもより上昇する
細菌類に感染すると、インスリンを効きにくくする物質が多くなり、血糖値はいつもより上昇します。このことが、糖尿病の状態をより悪くし、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環が生まれます。
糖尿病の方がかかりやすい感染症
糖尿病の方は、どのような感染症にかかりやすいのでしょうか。ここでは、「糖尿病の方がかかりやすい感染症」をいくつかご紹介します。
【糖尿病の方がかかりやすい感染症1】歯周病
歯周病は、口の中の細菌による歯茎の慢性感染症です。炎症が歯茎に限定されているときは歯肉炎、それ以上に進行すると歯周炎(歯槽膿漏)と呼ばれます。歯周病はある日突然、重度の症状が出るのではなく、徐々に進行する病気です。したがって初期の段階では、痛みがほとんどないため症状に気がつかなかったり、放置したりする人も多いようです。しかし、放っておけば症状はどんどん進んでしまうので、そうなる前にしっかりケアすることが大切です。糖尿病の方は歯周病になりやすいばかりでなく、歯周病のために血糖コントロールが改善しにくくなってしまいますので、ご注意ください。
【糖尿病の方がかかりやすい感染症2】尿路感染症
尿路感染症とは、尿の通る経路で起こる感染症です。尿路感染症は頻度が一番多く、膀胱炎、急性腎盂腎炎がその代表です。糖尿病の神経障害をお持ちの方では、「神経因性膀胱」といって排尿がうまくいかず尿が滞る場合があり、尿路感染にかかりやすいと言われています。
【糖尿病の方がかかりやすい感染症3】皮膚感染症
糖尿病患者さんの中には、皮膚に病原体が入り込み「皮膚感染症になる人」がいます。単に皮膚感染症といっても、「足白癬(水虫)」や「カンジダ症」など様々なものがあります。皮膚感染症については「糖尿病情報センターのホームページ」で詳しくご説明しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。
【糖尿病の方がかかりやすい感染症4】呼吸器感染症
呼吸器感染症とは、鼻やのど、気管支や肺など、空気の通り道に関連した臓器に生じる感染症を指します。風邪やインフルエンザといった身近な病気だけではなく、結核なども呼吸器感染症に含まれます。呼吸器感染症は、どの年齢層の誰にでも発症し得る病気であり、重症度も軽症から重症まで様々であることから、病気の原因や重症度に合わせて治療を行なうことが重要となります。なお、糖尿病の方は結核にかかる割合が高いと言われており、結核と診断がついた人の約15%が糖尿病だったと言われています。
糖尿病と新型コロナウイルスの関係
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第8.1版」によると、コロナウイルスに感染して重症化するリスクが高い基礎疾患のひとつとして、糖尿病が挙げられています。糖尿病が新型コロナウイルスに感染すると、糖尿病がない患者さんと比較して、重症化や死亡のリスクが2 倍程度まで上昇することが明らかになっています。また血糖コントロールが不良の場合、死亡率が高いことも報告されています。
糖尿病の方が感染症にかかったら
糖尿病の方が感染症にかかった際は、重症化する前に適切な治療を行うことが重要です。症状が軽いからといって決して侮ることなく、早めに医療機関を受診してください。なお、糖尿病の方が感染症にかかり、熱が出る・下痢をする・吐く、また食欲不振によって、食事ができないときのことを「シックデイ(体調の悪い日)」と言います。このような状態では、血糖コントロールが日頃は良好な方でも、著しい高血糖になり、たいへん重い状態になることがあります。また、体調が悪いことで食事ができずに低血糖になる可能性もあるため、血糖値の確認が大切です。糖尿病の方はシックデイの対処を予め主治医に聞いておくこと、実際シックデイでどうしたらよいか迷った場合は、「主治医に連絡をして相談すること」が重要です。
糖尿病の方は自己判断で薬物療法を中止しないこと
感染症にかかり、食事の量がいつもより少なくなったからといって、糖尿病の経口薬の服用やインスリン注射を、患者さん自身の判断で中止するのはとても危険です。病気により血糖値が高くなっているのに加え、薬を中止することで血糖値が極端に高くなり、ケトーシス(血液の酸性化)が起き、昏睡に陥ることもあります。薬の量をどう調節するかは、あらかじめ主治医の指示「シックデイルール」を受けて、それに沿って判断してください。
※シックデイの時の家庭での対応の基本を「シックデイルール」と言います。
感染症予防について不安な方はお気軽にご相談ください
糖尿病の方が、「新型コロナウイルスに感染しやすい」ということはないようですが、他の感染症と同じく“重症化の危険”は指摘されています。ですので、まずは感染予防のための「マスク着用」や「手洗い」、「三密を避ける」などの対策をしっかりと行い、普段から血糖値を良好に保って“重症化を防ぐこと”が何より重要です。感染症予防について不安な方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.11
糖尿病が引き起こす敗血症のリスク
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
敗血症は、あらゆる感染症に続いて起こりうる病態です。敗血症をより早期に察知するためにも、敗血症に関する基本的な知識をもっておく必要があります。
この記事では「敗血症」について解説していきます。後半部分では「敗血症予防のために気をつけること」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
敗血症とは
敗血症の症状
敗血症性ショックとは
敗血症と敗血症性ショックの違い
糖尿病の人はなぜ敗血症にかかりやすいのか
敗血症予防のために気をつけること
敗血症や糖尿病について不安な方はお気軽にご相談ください
敗血症とは
敗血症とは、何らかの細菌やウイルスに感染することによって全身に様々な影響が及び、心臓、肺など体の重要な臓器の機能が障害(臓器不全)される病気のことです。全身性炎症反応症候群(ぜんしんせいえんしょうはんのうしょうこうぐん)とも言います。
敗血症は組織障害や臓器障害をきたすため、敗血症と診断されたら、ただちに治療を開始することが重要です。治療が遅れると、全身のバランスが崩れ、低血圧による意識障害などを引き起こしてショック状態となります。
その結果、多数の臓器に障害が及ぶ「多臓器不全」となります(多臓器不全になると、数時間で死亡してしまう可能性が高くなります)。
敗血症は軽度な感染症から進行することもあるため、特に乳幼児や高齢の方、持病のある方などで発熱などの症状が長引く場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
「敗血症について解説しているサイト」でも同様のことを伝えています。
敗血症の症状
敗血症では、何か1つの症状が出るというようなことは基本的にありません。
障害が起きている臓器によって、様々な症状が現れるのが特徴です。
初期の主な症状としては、悪寒を感じたり、全身のふるえや発熱、発汗などが見られたりすることが多く、症状が進行してくると、心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じてきます。
なお、重症化してしまうと、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まります。
敗血症性ショックとは
敗血症性ショックとは、日本救急医学会の定義では「臓器障害または臓器灌流異常をともなう敗血症のうち、適切な輸液負荷を行っても低血圧が持続する状態」とされています。
臓器障害を伴う敗血症は一般に重症敗血症と言われますので、平たく言えば「血圧が下がった重症敗血症」となります。
敗血症性ショックでは、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が放出され、人の血管の中の血管内皮細胞と呼ばれる細胞を傷つけます。
その結果、血管内に微小血栓を作り、DIC(播種性血管内凝固症候群)と呼ばれる状態などに落ち入り多臓器障害や多臓器不全を起こすことになります。
敗血症性ショックについて詳しく知りたい方は「敗血症および敗血症性ショックについて解説しているサイト」をご覧ください。
敗血症と敗血症性ショックの違い
敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加え、体の重要な器官の機能不全が起こる病態です。
一方、敗血症性ショックは、敗血症によって生命を脅かす低血圧(ショック)および臓器不全が引き起こされている病態です。
つまり、重症敗血症の病態のなかでショックを呈したものが「敗血症性ショック」になります。
敗血症性ショックは、放置することで命にかかわります。
そのため積極的な治療が必要になります。
糖尿病の人はなぜ敗血症にかかりやすいのか
糖尿病の方は感染症にかかりやすい状態です。
そのため、糖尿病をお持ちの方は敗血症を引き起こしやすいと言われています。
では、なぜ糖尿病をお持ちの方は感染症にかかりやすいのでしょうか。
主な理由は以下の5つです。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由1】血流が悪くなる
高血糖では、細い血管の血液の流れが悪くなります。
血液の流れが悪くなると、細胞の働きが低下し、白血球が感染部位に到達しにくくなり、感染しやすくなります。
また感染で受けたダメージの回復にも時間がかかります。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由2】免疫機能の低下
白血球の一種である好中球は、体内に入り込んだウイルスや細菌を食べる働きがあります。しかし、高血糖時はこの機能が低下してしまいます。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由3】免疫反応の低下
一度感染したことのある病原体には「抗体」が作られるため、次に体内に侵入しても感染しづらくなります。これを「免疫反応」といいます。
高血糖時の時は、この免疫反応が弱くなることがわかっています。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由4】神経障害
糖尿病に特有な合併症の一つに神経障害があります。
神経障害があると、内臓の活動が乱れやすく、膀胱炎や胆嚢炎の原因になります。
また、痛みを感じる神経も障害されるので、症状が現れにくく感染症に気づくのが遅れ、その間に病気が進行してしまいます。
糖尿病の神経障害については「糖尿病情報センターのホームページ」をご覧ください。
【糖尿病の人が感染症にかかりやすい理由5】血糖値がいつもより上昇する
細菌類に感染すると、インスリンを効きにくくする物質が多くなり、血糖値はいつもより上昇します。
このことが、糖尿病の状態をより悪くし、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環が生まれます。
敗血症予防のために気をつけること
敗血症を予防するには感染症を予防することが大切であり、万が一感染症にかかったとしても悪化させないよう注意することで発症のリスクを下げることができます。そのためにも、日頃から手洗いや手指消毒、マスク着用などの基本的な感染対策をしっかり行い、規則正しい生活を心がけることが最も重要です。また、感染症が悪化して敗血症に進行するのを防ぐには、感染症が疑われる症状がある場合、できるだけ早く医療機関を受診して、適切な治療を受けることが大切です。
敗血症や糖尿病について不安な方はお気軽にご相談ください
上述した通り、敗血症は軽度な感染症から進行することもあるため、できるだけ早く治療することが大切です。持病がある人(糖尿病、呼吸器疾患、心疾患、透析を受けている人など)や免疫抑制剤などを内服している人は、体調が悪い際は我慢せず、早めに受診することをお勧めします。敗血症の症状にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.11
糖尿病と脱水症状の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
脱水症状が起こるのは、夏の暑い時や熱中症の時だけではありません。糖尿病によって「高血糖」の状態が続くと、のどが渇いたり、尿の量や回数が増えたりすることがあります。
この記事では、「糖尿病と脱水症状の関係」について解説していきます。後半部分では「水分の摂取目安」や「水分補給のポイント」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
脱水症状は糖尿病症状の1つ
なぜ糖尿病になると脱水症状になるのか
糖尿病が引き起こす危険な脱水症状
水分は食事からも摂取できます
水分の摂取目安
水分補給のタイミング
水分補給のポイント
糖尿病についてはお気軽にご相談ください
脱水症状は糖尿病症状の1つ
糖尿病は症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし高血糖のままある程度の時間が経過すると、のどが渇いたり、尿の量や回数が増えたりすることがあります。以下、糖尿病の主な初期症状です。
<糖尿病の初期症状>
・のどが渇いて沢山の水がほしくなる
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の回数が多くなり、量も増える
・尿の臭いが気になる
なぜ糖尿病になると脱水症状になるのか
糖尿病になると次のような理由から脱水症状を起こしやすくなります。
【糖尿病になると脱水症状になる理由1】尿量が増えるから
血糖値が高い状態が続くと、それを薄めるために血液の水分量が増えます。すると、増えた水分を排出するために尿の量が増え、脱水を起こしやすくなります。
【糖尿病になると脱水症状になる理由2】治療薬の影響
糖尿病の治療薬に「SGLT2阻害薬」という種類の薬があります。この薬はグルコースの再吸収を阻害し、尿へ糖の排泄を促す仕組みで血糖を下げるのですが、糖とともに水分も排泄されるため、尿の量が増えます。
【糖尿病になると脱水症状になる理由3】汗の量が調整しにくいから
糖尿病の合併症として神経障害が起こると、汗を調整する神経が鈍り、汗を異常にかいて脱水を起こしやすくなります。
糖尿病が引き起こす危険な脱水症状
高血糖による脱水症状が続くと「糖尿病ケトアシドーシス」や「高血糖高浸透圧症候群」などの合併症が起こり、意識が朦朧とすることがあります。重症になると昏睡状態で倒れることもありますので注意してください。
【糖尿病が引き起こす危険な脱水症状1】糖尿病ケトアシドーシス
糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病急性合併症である「糖尿病昏睡」のひとつです。喉の乾き、多尿、全身の倦怠感などの症状に引き続いて急激に発症し、悪化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こります。
【糖尿病が引き起こす危険な脱水症状2】高浸透圧高血糖症候群
高浸透圧高血糖症候群は糖尿病の急性合併症の一つで、高血糖に関連する病態です。糖尿病の急性合併症である「糖尿病ケトアシドーシス」に比べて、インスリンの不足やケトン体の増加は大きくありませんが、著しい高血糖とそれに伴う高度の脱水状態がみられます。また、死亡率が10〜20%と高いという特徴があります。
1日に必要な水分量
厚生労働省によると、成人が1日に必要とする水分量は2.5リットルです。もう少し細かくいうと、必要水分量は年齢や体重で異なります。たとえば、年齢が60歳で体重60kgの場合の必要水分量は1.8リットルです。年齢が25歳で体重50kgの場合は、必要水分量が2.0リットルとなります。
水分は食事からも摂取できます
「水分補給=水を飲む」と考えてしまいますが、食品にも水分が含まれているため、食事からも水分を摂ることができます。そのため、食事の内容も重要です。水分をたっぷり含んだご飯やサラダ、スープを良く食べる人は食事から摂取する水分量も多くなります。水分や栄養素を取るための食事については「千葉県栄養士会のホームページ」をご覧ください。
水分の摂取目安
上述した通り、一般的に成人が1日に消費する水分量は約2.5リットルです。したがって、最低でも1日でこの量を補給することが必要です。なお、このうち体内で作られる水分量が約0.3リットル、食事から摂る水分量が約1リットルあるため、水分補給としては約1.2リットルが必要だと言えます(汗や尿の量に合わせて適宜補給をしてください)。
水分補給のタイミング
水分補給のタイミングは、主に汗をかくタイミングです。汗をかく前後で身体に水分を補給してあげるのが理想的です。
【水分補給のタイミング1】起床時
成人で1晩にコップ1杯ほどの寝汗をかいていると言われています。そのため、寝起きに水を飲むことで寝ている間に失った水分を補うことができます。
【水分補給のタイミング2】運動時
運動中の水分補給のタイミングとしては、運動「前・中・後」がおすすめです。夏は深部体温を上げないように冷たい水で、冬は常温または白湯などで体温を下げないように工夫してください。なお、運動すると発汗し体温が上昇しますが、水分補給をすることで脱水症状の予防や体温の上がりすぎを防ぎます。
【水分補給のタイミング3】入浴前後
入浴中はたくさんの汗をかきます。汗をかくことで血液中の水分が減り、血行が悪くなるため、血管が詰まりやすくなるのです。そのため、入浴前後には水分補給を行ってください。
【水分補給のタイミング4】就寝前
寝ている間は汗をかくため、脱水症状にならないためにも水分補給が必要です。特に飲酒した場合は注意しなければなりません。「お酒を飲んでそのまま寝る」という人も多いかもしれませんが、アルコールは利尿作用があるため、水分を体外に排出します。また、アルコールの分解で水を必要とすることから飲酒後は脱水症状となりやすいのです。注意してください。
水分補給のポイント
水分補給は、一度に多量に摂ると体内で利用されずに排出されてしまうため、こまめに摂ることが大切です。また糖尿病の患者さんは「のどの渇き」に気がつきにくいため、1日の中で水分補給をするタイミングを決めると確実な脱水予防につながります。たとえば、コップ1杯(150ml)を1日8回、起床時、3回の食事、入浴前、就寝前に必ず摂るようにして、残り300mlを日中の合間に飲むようにすると、適切な水分摂取ができます。
糖尿病についてはお気軽にご相談ください
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.02
【糖尿病改善と予防】運動療法の効果や注意点について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、糖尿病治療の基本である「運動療法」について解説していきます。後半部分では、「運動療法の注意点」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
運動がなぜ糖尿病に効果的なのか
運動療法とは
運動療法の目安:どの程度の運動が良いのか
運動療法の注意点
運動療法についてお気軽にご相談ください
運動がなぜ糖尿病に効果的なのか
日本人の糖尿病患者さんの約95%が「2型糖尿病」と言われています。2型糖尿病の原因には色々とありますが、主に「太り過ぎ」「運動不足」「ストレス」などの生活習慣によって引き起こされやすくなることが知られています。そのため運動を習慣づけ、規則正しい食生活を送ることが糖尿病予防の大きな一歩となります。なお、運動には血液中のブドウ糖を消費して血糖値を下げたり、肥満を解消して筋肉などでのインスリンの働きを高めたりなど様々な効果があります。また、「ストレス性疾患の改善」にも効果が期待されています。
運動療法とは
運動療法は糖尿病治療の基本の1つです。食後の運動により食後高血糖を抑えて血糖コントロールをよくすることや、運動を継続することでインスリンの働きをよくすることが重要な目的です。また、2型糖尿病患者さんでは、脳卒中の発症率や死亡リスクが運動療法により半減することが明らかになっています。運動療法は、これまで運動医学由来の整形外科的なアプローチが主体でしたが、近年では“生活習慣病改善”や“心臓リハビリテーション”のような内科的アプローチも臨床で活用されるようになってきています。運動療法について「厚生労働省のホームページ」に詳しく記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
運動療法の目安:どの程度の運動が良いのか
運動の頻度は「できれば毎日」、少なくとも“週に3~5回行うのが良い”とされています。運動強度については、中等度の全身を使った有酸素運動、運動時間については各20~60分間行い、計150分以上が一般的に勧められています。また、週に2~3回のレジスタンス運動を同時に行うことが勧められています。「有酸素運動」と「レジスタンス運動」については、以下をご覧ください。
【糖尿病を改善するための運動1】有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。有酸素運動について詳しく知りたい方は「糖尿病を改善するための運動を紹介しているサイト」をご覧ください。
【糖尿病を改善するための運動2】レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことです。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
運動療法の注意点
その日の体調や血糖コントロールの状態のほか、合併症の有無などによって、運動を行ってはいけない場合があります。運動療法を始める前に必ずメディカルチェックを受け、主治医のアドバイスを受けるようにしてください。以下、運動療法の主な注意点です。
【運動療法の注意点1】準備体操
急に運動を始めるとケガをする可能性があります。特に運動習慣がない方は注意が必要です。ケガをしないためにも、運動する前はしっかりと準備体操を行なってください。
【運動療法の注意点2】水分補給
運動中は、こまめに水分補給をし、脱水にならないようにすることも大切です。運動中は想像以上に汗をかいておりますので、こまめに水分補給を行ってください。
【運動療法の注意点3】血圧
運動をすると、一時的に血圧は上がります。ですので、重症の高血圧の方、労作性狭心症や心不全、腎不全、重症の眼底網膜病変などを合併している方は運動に注意が必要です。運動をはじめるにあたっては、主治医とよく相談してから行ってください。
【運動療法の注意点4】軽い運動
気合を入れて運動することはいいことですが、ケガをする可能性があります。特に運動習慣がない方は危険です。運動する際は無理せず、軽い運動から始めてください。
【運動療法の注意点5】高血糖
血糖がコントロールされていないⅠ型糖尿病患者さん、空腹時血糖250mg/dL以上または尿ケトン体陽性者では、運動中に高血糖になることがあります。ですので、運動療法を始める前に必ずメディカルチェックを受け、主治医のアドバイスを受けるようにしてください。
【運動療法の注意点6】低血糖
運動を行う時間に決まりはありませんが、空腹時は低血糖になる可能性があるので避けてください。また、インスリンや内服薬で治療している患者さんでは、運動中だけでなく、運動したのち、しばらく時間が過ぎた後でも低血糖が起こることがあるので注意してください。
運動療法についてお気軽にご相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。運動療法に取り組みたいと考えている方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.12.01
糖尿病の原因となる食べ物について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つきます。そして将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。そのため糖尿病の症状が見られた際には放置せず、速やかに糖尿病専門医による診察を受けることが大切です。
この記事では、「糖尿病の原因となる食べ物」について解説していきます。後半部分では「糖尿病予防につながる食事のポイント」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病の原因となる食生活の特徴
日本人の糖尿病患者さんの約95%が2型糖尿病
糖尿病の原因となる食べ物について
積極的に取り入れたい食べ物
食物繊維を多く含む食べ物
極端な糖質制限はかえって悪影響です
糖尿病予防につながる食事のポイント
食生活の見直し、糖尿病予防についてご相談ください
糖尿病の原因となる食生活の特徴
糖尿病になってしまった一番大きな原因は、「糖質・炭水化物」の摂り過ぎです。糖質の多い食品を多く摂取すると、血糖は上がりやすくなります。また、糖質が多い食品を摂取すると、血液中のブドウ糖の量が急激に上昇します。通常であれば、すい臓からインスリンが分泌され、2~3時間もすれば食事前の血糖値に戻りますが、糖質を摂りすぎたり、血糖値を急上昇させるような食べ方をしたりすると、血糖値がうまく下がらず、糖尿病をはじめとした様々な健康トラブルの原因になるのです。
日本人の糖尿病患者さんの約95%が2型糖尿病
日本人の糖尿病患者さんの約95%が「2型糖尿病」と言われています。2型糖尿病の原因には色々とありますが、主に「太り過ぎ」「運動不足」「ストレス」などの生活習慣によって引き起こされやすくなることが知られています。そのため、生活習慣を改善していくことが糖尿病予防の大きな一歩となります。糖尿病にお心当たりのある方は、食事の取り方に気を付け、運動を習慣化することから始めてください。
糖尿病の原因となる食べ物について
上述した通り、糖質の多い食品を多く摂取すると、血糖は上がりやすくなります。特に甘いものなど単純糖質を含む食品は、急激な血糖上昇の原因になりますので、注意が必要です。以下、糖尿病の原因となりやすい食べ物です。
・白米
・食パン、菓子パン
・うどん、焼きそば、スパゲティなどの麺類
・かぼちゃ、じゃが芋、さつまいも、とうもろこし
・ホットケーキ、ケーキ
・饅頭
・スナック菓子、クッキー、せんべい
・ようかん、饅頭
・ジュース
積極的に取り入れたい食べ物
糖尿病改善のためには、食物繊維が含まれる食品を多く摂るように心掛けてください。食物繊維には、食後の血糖値上昇を抑え、便通を改善させる効果があります。さらに、水に溶ける食物繊維(水溶性食物繊維)には、血中コレステロールの上昇を抑える効果があります。なお、食物繊維の目標は、18~64歳においては、男性は1日21g以上、女性は1日18g以上と言われています(参照:日本人の食事摂取基準2020年版)。
食物繊維を多く含む食べ物
食物繊維を多く含む食べ物には、野菜、海藻、きのこなどが挙げられます。
【食物繊維を多く含む食べ物1】野菜
野菜は低カロリーで食物繊維が多く、糖質や脂質の代謝に必要な「ビタミン・ミネラル」が含まれています。特にブロッコリーや小松菜などの緑黄色野菜には食物繊維以外にも、糖の代謝を促進する葉酸も多く含まれています。ですので、野菜を選ぶ際は緑黄色野菜を中心に食べてください。なお、南瓜やれんこん、芋類は糖質が多い野菜なので、食べ過ぎに注意してくださいね。
【食物繊維を多く含む食べ物2】海藻
海藻は低カロリーで食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含みます。中でも「めかぶ」はおすすめです。
【食物繊維を多く含む食べ物3】きのこ
きのこは低カロリーで食物繊維が多く含まれています。食物繊維は、糖の吸収を邪魔するため、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。さらに、きのこに含まれるβ-グルカンは胃や腸で膨らむので満腹感も得られ、お通じの調子も整います。
極端な糖質制限はかえって悪影響です
食事療法の基本的な考え方は、必要以上のカロリーを摂らないようにして、すい臓の負担を軽くして働きを回復させたり、インスリンの補給による血糖コントロールを行いやすくすることです。そのため、適切なカロリーの範囲内で、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよくとることが大切です。極端な糖質制限は“腎症”や“動脈硬化”に繋がる恐れがあり、逆効果となってしまう可能性がありますので、注意してください。
糖尿病予防につながる食事のポイント
糖尿病の予防には、食べすぎないことはもちろん、血糖値を上げない「食事の方法」も大切です。以下、糖尿病予防につながる食事のポイントです。
【糖尿病予防につながる食事のポイント1】野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は野菜類から食べてください。
【糖尿病予防につながる食事のポイント2】ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
【糖尿病予防につながる食事のポイント3】規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく3食を食べることを心掛けてください。
【糖尿病予防につながる食事のポイント4】間食をしない
間食をすると血糖値の高い状態が続き、インスリンを分泌するすい臓に大きな負担がかかります。また、その状態のままで次の食事をすると、食後高血糖の原因にもなります。糖尿病を予防するためにも間食はできる限り控えてください。
【糖尿病予防につながる食事のポイント5】腹八分目でストップ
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
食生活の見直し、糖尿病予防についてご相談ください
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。食生活が不規則な方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.11.30
お酒が糖尿病に与える影響について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病と診断された方は、一般的に“飲酒を控えなければいけない”と言われています。適量以上の飲酒を続けて糖尿病が進行した場合、様々な合併症の危険性が出てくるからです。
この記事では、「お酒が糖尿病に与える影響」について解説していきます。後半部分では「糖尿病の方の適切な飲酒量」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 【目次】
お酒(アルコール)が糖尿病に与える影響
お酒によって糖尿病が悪化する危険性
糖尿病の方の適切な飲酒量
糖尿病の方がお酒を飲む際に気をつけるポイント3つ
糖尿病が不安な方はいつでもご相談ください
お酒(アルコール)が糖尿病に与える影響
お酒(アルコール)はアルコールそのものの作用やアルコールの代謝に伴って、血糖値に影響を与えます。長年の多量飲酒により肝臓や膵臓に障害が加わると、コントロールが難しい糖尿病となるため、糖尿病患者さんは習慣的な多量飲酒は控えるべきです。また、「インスリン注射」や「経口血糖降下薬」で糖尿病治療をうけている方は、低血糖が起こりやすくなるので、食事を摂らずに飲酒をすることは避けてください。「厚生労働省」でも同様の見解を述べています。
お酒によって糖尿病が悪化する危険性
お酒には「百薬の長」ということわざがある通り、適量のアルコール摂取は“身体”や“健康”に良いと言われています。しかしながら、適量を超えて多量のお酒を飲むと話は違います。なぜなら、度を越した過剰なアルコール摂取は高血糖を来たし、糖尿病を発症する危険性が一気に高まってしまうからです。また、糖尿病を発症しているにも関わらず、適量以上の飲酒を続けると、恐ろしい合併症を併発するリスクが高くなります。代表的な合併症は以下の3つです。
<糖尿病腎症>
腎臓に傷みが生じて腎臓の機能が低下することを腎機能低下、腎症などと呼びますが、特に糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した場合を、「糖尿病腎症」と呼びます。糖尿病性腎症の初期には、検尿で微量アルブミンが検出され、進行すると持続性の蛋白尿となります。腎機能が低下すると、全身の浮腫や尿毒症などを来たし、透析療法が必要になります。
<糖尿病網膜症>
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。網膜とは、目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、脳への視神経に伝達する組織で、カメラでいうとフィルムの働きをしています。網膜症は、網膜内の血管に障害が起こり、視力の低下や失明を招く危険な病気です。
<糖尿病神経障害>
神経障害は、糖尿病の三大合併症のひとつです。 症状は、手足のしびれや 痛み、感覚の鈍麻、下痢や便秘を繰り返す、立ちくらみ、味覚が鈍くなる、発汗異常、排尿障害、勃起障害など、様々な形で全身にあらわれます。進行すると無自覚性低血糖や無痛性心筋虚血、壊疽、突然死のような深刻な状態に陥る危険性があります。
糖尿病の方の適切な飲酒量
厚生労働省の指針では、節度ある適切な飲酒を「1日平均・純アルコールで約20g程度」としています。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中瓶1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、焼酎は0.6合(100ml)、ワインはグラス2杯(180ml)、缶チューハイは1.5缶(520ml)となります。健康にお酒を楽しむには、摂取量を適量に抑えることが大切になりますので、くれぐれも飲みすぎには注意してください。なお、厚生労働省の「飲酒のガイドライン」では、週2日お酒を飲まず、肝臓を休める「休肝日」を推奨しています。休肝日を設けると、アルコール依存症の予防に繋がる他、アルコールによる死亡リスクの低下に繋がります。ですので、なるべく休肝日を設けるようにしてください。
糖尿病の方がお酒を飲む際に気をつけるポイント3つ
ここでは、糖尿病患者さんが「お酒を飲む際に気をつけるポイント」を3つご紹介します。
【糖尿病の方がお酒を飲む際に気をつけるポイント1】お酒と同量以上のお水を飲む
アルコールの分解にはお水が必要なため、最低でもお酒と同量以上のお水を飲んでください。ひと口飲んだら「お水を飲む」と決めておけば、必然的に飲むスピードも緩やかになり、ゆっくりとお酒を楽しむことにも繋がります。また、お水を飲むことによって、「食べ過ぎ」や「飲み過ぎ」を防ぐ効果が期待できます。
【糖尿病の方がお酒を飲む際に気をつけるポイント2】なるべく食事と一緒にお酒を飲む
アルコールは胃を通じて95%が小腸で吸収されます。小腸には絨毛という突起のようなものがあるため、表面積が非常に大きく、「食べたもの」や「飲んだもの」を吸収しやすいのです。そのため、アルコールが胃にとどまる時間を少しでも長くし、小腸に送る時間を遅らせることで、小腸でのアルコールの吸収を和らげることができます。アルコールの血中濃度の急激な上昇を抑えるためにも、食事と一緒にお酒を飲むのが効果的です。
【糖尿病の方がお酒を飲む際に気をつけるポイント3】糖質ゼロに注意
近年、「糖質ゼロ」や「カロリーオフ」を謳った商品が数多く出ています。このような表示のあるお酒は非常に魅力的ですが、残念ながら、「糖質ゼロ」と表示してあっても、「カロリーゼロ」ではありません。なぜなら、健康増進法に基づく栄養表示基準では、「飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば“糖質ゼロ”と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば“カロリーオフ”と表示できる」としているからです。詳しくは「消費者庁のホームページ」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病が不安な方はいつでもご相談ください
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
2022.11.29
糖尿病の初期症状が出た方はいつでも当院にご相談ください
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度が何年間も高いままで放置されると血管が傷つきます。そして将来的に心臓病や、失明、腎不全といった、より重い病気につながります。そのため糖尿病の症状が見られた際には放置せず、速やかに糖尿病専門医による診察を受けることが大切です。
この記事では、「糖尿病の初期症状」について解説していきます。後半部分では「尿に見られる糖尿病の初期症状」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病の初期症状の特徴
女性に起こりがちな糖尿病の初期症状
尿に見られる糖尿病の初期症状
糖尿病患者さんの尿の特徴
糖尿病は自覚症状が現れにくい病気です
糖尿病の初期症状の特徴
糖尿病は症状の自覚が難しい病気です。血糖値が少し高い段階では、自覚する症状はほぼありません。しかし高血糖のままある程度の時間が経過すると、次のような症状が現れてきます。
<糖尿病の初期症状>
・立ちくらみ
・全身の倦怠感、疲労感
・喉が渇いて沢山の水がほしくなる
・手足のしびれ、冷え、むくみ
・皮膚のかゆみ、乾燥
・目がかすむ
・視力の低下
・やけどの痛みを感じにくい
・食べているのに痩せる
・残尿感がある
・尿の臭いが気になる
女性に起こりがちな糖尿病の初期症状
糖尿病で出現する症状に男女差はありません。
ただし女性の場合、妊娠中に血糖が上がり、「妊娠糖尿病」と診断される場合があります。妊娠中は胎児へ多くのエネルギーを送るため、胎盤から出されるホルモンでインスリンの働きが抑えられます。
そのため妊娠中の女性は、通常時に比べると血糖値が上がりやすくなり、その中でも血糖のコントロールがうまくいかなくなってしまった方が「妊娠糖尿病」と診断されます。
妊娠糖尿病は、適切な治療を行わないと胎児への影響もありますので、妊婦検診などで指摘された場合は医療機関を受診して治療を行ってください。
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尿に見られる糖尿病の初期症状
糖尿病になると多尿や頻尿になることがあります。
なぜなら、糖尿病になると血液中のブドウ糖の濃度が上昇するため、その濃度を下げようとして身体が水を欲し、たくさん水を飲むようになるからです(多尿とは1日の尿量が3リットル以上のことを言います)。
一般的に糖尿病が進めば進むほど多尿になり、夜中も頻繁にトイレで起きるようになります。
糖尿病患者さんの尿の特徴
糖尿病患者さんの尿には、健康な方の尿と比べて様々な特徴があります。ここでは排尿時の尿の「泡立ち」や「色」について解説していきます。
【糖尿病患者さんの尿の特徴1】尿が泡立つ
糖尿病になると尿が泡立ちやすくなります。尿が泡立つのは尿中に「たんぱく質」や「ブドウ糖」が含まれるためです。腎臓には血液中の老廃物や塩分をろ過する役割がありますので、正常に機能していれば、尿中に「たんぱく質」や「ブドウ糖」が含まれることはありません。しかし糖尿病になると、腎臓のろ過機能がうまく働かなくなるため、「たんぱく質」や「ブドウ糖」が尿中に漏れ出るのです(たんぱく質やブドウ糖が尿中に増えると、尿が粘っこい状態になり、泡立ちやすくなります)。
【糖尿病患者さんの尿の特徴2】尿の色が濁る
糖尿病で腎臓に異常があると、尿が濁ったり、褐色のような濃い色味を帯びたりすることがあります。尿が濁っているのは、たんぱく質が尿中に含まれているからです。一方、尿が褐色を呈するのは、尿に赤血球が含まれるからです。
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糖尿病の初期症状は爪や足にも現れます
糖尿病の患者さんに生じる足のトラブルの総称を「糖尿病足病変(とうにょうびょうあしびょうへん)」と言います。病変には、足に生じる水虫や細菌感染による病変、たこやうおのめ、足の潰瘍や変形などがあります。さらに重症になると壊疽(えそ)という組織が死んでしまった状態になり、最悪の場合は足を切断することもあります。こうした状態になるのを避けるためには、糖尿病自体の治療をしっかり行って血糖を適切な状態に保つことはもちろん、毎日足の状態をよく観察して早く異常を見つけることが大切です。糖尿病の患者さんの足に出る症状については、以下をご覧ください。
<足に出る症状>
・足の先がしびれる
・足の先に痛みがある
・足の先がジンジン(ピリピリ)する
・足の感覚に異常がある(痛みを感じにくい、感覚が鈍いなど)
・足がつる
<足の外観に出る変化>
・うおのめ、たこ、まめ、靴ずれがよくできる
・小さな傷でも治らない
・足に感染症がある(水虫など)
・皮膚が赤くなったり、腫れたりしている部分がある
・皮膚が乾燥したり、ひび割れしている部分がある
・爪が変形したり、変色したりしている
・爪が異常に厚くなっている
・爪が白く濁ったり、白い線が入ったりしている
※糖尿病の患者さんの足に出る症状について詳しく知りたい方は「糖尿病患者の足にみられる症状について」をご覧ください。
糖尿病は自覚症状が現れにくい病気です
糖尿病になっても、初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病の症状かもしれない…」と気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは検診などで血糖値に異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
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2022.11.23
糖尿病と高血圧の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。
この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
糖尿病の血圧値について
糖尿病と高血圧予防
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
【糖尿病と高血圧予防】運動
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。
<高血圧とは?>
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。
糖尿病の血圧値について
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病と高血圧予防
糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
【糖尿病と高血圧予防】運動
運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。
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2022.10.05
糖尿病患者の足にみられる症状について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病はインスリンの分泌不全もしくは、インスリンが作用する臓器が十分にインスリンの効果を受けられない状態(インスリン抵抗性)、あるいはその両方がきっかけで血糖値が慢性的に高くなってしまった代謝異常の状態を指します。
血糖値が何年間も高いままでいると、将来的に心臓病や、失明、腎不全といったより重い病気につながります。
そのため、糖尿病の症状が見られた際には放置せず、速やかに糖尿病専門医による診察を受けることが大切です。
この記事では、糖尿病患者の足にみられる症状について解説していきます。
後半では「足の症状のチェックポイント」を説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
糖尿病の主な合併症について
糖尿病足病変とは?
足の症状が悪化した時のリスクについて
糖尿病患者の足に出る症状一覧
糖尿病に対するフットケアについて
糖尿病についてすぐ相談したい方はこちら
糖尿病の主な合併症について
糖尿病の合併症の中でも「糖尿病性神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」は3大合併症と言われております。
中でも「糖尿病性神経障害」は多くの糖尿病患者に起こりやすく、立ちくらみや下痢、便秘といった自律神経障害や手足の痺れ、冷えやこりといった感覚・運動神経障害といった症状が現れます。
神経障害が進行してしまうと、通常より感覚が鈍くなるため小さな傷をつくりやすいです。
糖尿病足病変とは?
糖尿病の患者に生じる足のトラブルの総称を「糖尿病足病変(とうにょうびょうあしびょうへん)」といいます。
病変には、足に生じる水虫や細菌感染による病変、たこやうおのめ、足の潰瘍や変形などがあります。
さらに重症になると壊疽(えそ)という組織が死んでしまった状態になり、最悪の場合は足を切断することもあります。
これらを避けるためには、血糖を適切な状態に保つことはもちろん、毎日足の状態をよく観察し異常をすぐに見つけることが大切です。
このような状態で外傷、靴ずれ、低温やけどなどによりキズができると潰瘍や壊疽へと悪化する恐れがあるため、注意が必要です。
自分の症状が糖尿病足病変の症状かどうか気になるという方は、いつでも気兼ねなくご相談ください。
症状が気になる方はこちらをクリック
足の症状が悪化した時のリスクについて
糖尿病患者にとって、もっとも怖い足の問題は「足を失うこと」です。
糖尿病で足を失うことは珍しい話ではなく、糖尿病の合併症である神経障害や血管障害などは、足の壊疽(組織が腐ってしまうこと)を引き起こします。
壊疽は大変治りにくい病気で、足を切断することも少なくありません。
糖尿病の症状が見られた方はすぐにでもご相談ください。
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糖尿病患者の足に出る症状一覧
糖尿病性足病変の予防には、日頃からのセルフチェックが大切です。
以下の症状がある方は糖尿病の疑いがありますので、速やかに糖尿病専門医による診察をご検討ください。
<糖尿病患者の足に出る症状>
1. 足の先がしびれる
2. 足の先に痛みがある
3. 足の先がジンジン(ピリピリ)する
4. 足の感覚に異常がある(痛みを感じにくい、感覚が鈍いなど)
5. 足がつる
6. うおのめ、たこ、まめ、靴ずれがよくできる
7. 小さな傷でも治らない
8. 足に感染症がある(水虫など)
9. 皮膚が赤くなったり、腫れたりしている部分がある
10. 皮膚が乾燥したり、ひび割れしている部分がある
11. 爪が変形したり、変色したりしている
糖尿病に対するフットケアについて
糖尿病性足病変を予防するためには、日頃から自分の足を気にかけて、フットケアすることが大切です。
毎日足の隅々まで見て触ってよく観察しましょう。具体的な足の糖尿病対策については以下をご覧ください。
【糖尿病対策1】見えないところは鏡を使って観察しましょう
毎日明るい場所で足の裏側を鏡にうつしてみたり、目の悪い方は、周りの人にみてもらいましょう。
長時間歩いた後や運動後は特に念入りに観察してください。
【糖尿病対策2】爪は切り過ぎないようにしましょう
神経障害が進んでいると「違和感」や「痛み」を感じません。
伸びた爪はケガのもとになりますので、こまめに手入れをしてください。なお、硬くて切りにくい爪は無理に自分で切らずに医師や看護師に処置してもらいましょう。
【糖尿病対策3】足を清潔に保ちましょう
感染を防ぐためには、足を清潔に保つことが重要です。足は石けんをよく泡立てて、柔らかいタオルやスポンジで優しく洗ってください。指の間も忘れずに洗いましょう。
【糖尿病対策4】自分の足に合った靴をはきましょう
靴が足に合っていないと、靴ずれを起こしたり、血管を圧迫したりします。
そのため、足の糖尿病対策として靴選びは重要なポイントです。靴を選ぶ際は以下のポイントに注意して選びましょう。
<靴選びのポイント>
1. つま先に1センチ程度の余裕があり、足の形に合っている
2. 革や内張りが柔らかく、靴の内部に硬い縫い目がない
3. クッション性がよく、靴底が安定している
4. ハイヒールなど、一カ所に体重がかかるものは避ける
5. 一日の中で最も足が大きくなる夕方を基準にサイズを選ぶ
6. 通気性のよい綿かウールのものを選ぶ
<靴を履く時のポイント>
1. 新しい靴は最初から長時間履かずに少しずつ慣らしていく
2. 毎日履きかえて清潔に保つ
3. 靴の中に異物がないか、よく確認してから履く
4. 運動や散歩をする時は足首が固定されるよう、紐やマジックテープが付いた運動靴を履く
【糖尿病対策5】必ず靴下を履きましょう
足のケガの防止のため、靴下を必ず履くようにしましょう。
靴下を履くことでケガだけでなく、水虫の予防にもなります。
靴下の選び方については「糖尿病ネットワーク」をご覧ください。
【糖尿病対策6】やけどに注意しましょう
神経障害により足が冷えることはよくありますが、そんなときは熱さに対しても鈍くなっています。
湯たんぽやこたつ、電気カーペットなどでは低温ヤケドに十分注意しましょう。
これまで紹介してきたように糖尿病は放っておくと深刻な症状が出てまいります。
早期発見、治療が何よりも大切ですが、糖尿病は患者本人が気付きにくいという厄介な病気でもあります。
例え身体がどこもおかしくなかったとしても、ほんの少しでも気になることがありましたらまずは相談だけでもご検討ください。
当院ではどんな些細なことでも気軽にご相談いただけるようなクリニックを目指しております。
ちょっとした変化でも気がかりな方は、いつでも当院にお越しください。
相談されたい方はこちらをクリック
2022.05.25
小児糖尿病の子供にみられる症状と治療法について
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、お子様が小児糖尿病かをどうかチェックする際のポイントを紹介していきます。
記事の後半では「合併症のリスク」や「糖尿病の治療方法」についても解説します。
小児糖尿病についてすぐ相談したい方はこちら
【目次】
子供が発症しやすい小児1型糖尿病について
1型糖尿病の2型糖尿病との違いについて
小児糖尿病にみられる症状とは?
糖尿病性ケトアシドーシスとは?
合併症のリスク・症状について
子供の糖尿病治療方法について
糖尿病の治療方法①インスリン療法
糖尿病の治療方法②食事療法
糖尿病の治療方法③運動療法
子供が発症しやすい小児1型糖尿病について
そもそも糖尿病とは、すい臓で作られるインスリンの分泌不全またはインスリンが作用する臓器が十分にインスリンの効果を受けられない状態(インスリン抵抗性)、もしくは両方がきっかけで血糖値が慢性的に高くなってしまった代謝異常の状態を指します。
そのうち1型糖尿病とは前者のインスリン分泌不全に該当します。
すい臓にはランゲルハンス島という細胞の集合体があり、その中にあるβ(ベータ)細胞がインスリンを分泌しています。
小児1型糖尿病とはそのβ細胞が壊れてしまうことで生じるインスリンが原因で引き起こされる症状なのです。
なぜβ細胞が破壊されてしまうのか、その原因についてはウイルス感染の関与も疑われておりますが、詳しい原因は完全に解明されていません。
1型糖尿病は小児期に発症することが多く、小児1型糖尿病と呼ばれるのはそのためです。
日本内分泌学会の公式HPでも小児1型糖尿病について紹介されています。
1型糖尿病の2型糖尿病との違いについて
インスリンは骨格筋や肝臓などの(標的)臓器に作用し、糖の吸収を促します。
肥満などでインスリンの効果を調整する物質(アディポサイトカインと呼ばれます)の分泌異常が起こると、インスリンが標的臓器に対して効果を十分に発揮できなくなります。
つまり2型糖尿病とは、標的臓器のインスリンに対する感受性が下がり、(分泌量は十分でも)インスリンの作用が十分になされないことが原因で起こる症状です。
前段の通り、1型糖尿病との違いとしては血糖値が高まる原因が異なります。
糖尿病の子供の大半は1型の小児糖尿病ですが、近年2型糖尿病の子供も増加傾向にあります。
糖尿病かどうか診察したい方はこちら
小児糖尿病にみられる症状とは?
子供が小児糖尿病を発症した場合、どのような症状があらわれるのでしょうか?
以下の症状が見られた場合は、小児糖尿病の疑いがあります。
お子様に当てはまる症状があれば、速やかに診察を受けてください。
<糖尿病の子供によくみられる症状>
1. 何度もトイレにいく
2. 喉が渇いて沢山の水がほしくなる
3. 食べているのに痩せる
4. お腹が痛くなる
5. だるい、疲れやすい
6. 意識を失う
子どもの年齢が幼いほど自分から身体の異変を訴えることは難しく、その分小児糖尿病は通常の糖尿病よりも気付きにくいという厄介な病気です。
ただ大人の方でも子どもが本当に小児糖尿病なのかどうかを判断することは難しいでしょう。
些細な変化でも気になることがあったら、すぐに医師にご相談ください。
当院では予約を取らずに受診いただけます。
以下のボタンから当日の順番をお取りいただければスムーズに診察ができますので、ご活用ください。
小児糖尿病について相談したい方はこちら
糖尿病ケトアシドーシスについて
インスリン不足がさらに進むと「糖尿病ケトアシドーシス」という合併症を引き起こす恐れがあります。
糖尿病性ケトアシドーシスになるとだるさ、頭痛や痙攣といった症状になり、最後には昏睡状態になってしまう状態で、最悪の場合死に至ることもあります。
糖尿病性ケトアシドーシスは1型糖尿病がきっかけで起こることがほとんどで、インスリンが不足することで脂肪がエネルギーとして使われるような状態です。
糖尿病合併症のリスク・症状について
糖尿病の恐さは、自覚症状のないままに重篤な合併症が進展することです。血糖値が高い状態が持続すると「数年~十数年」の経過で合併症が生じます。
小児1型糖尿病では、失明したり、腎不全となり透析をしなければならなくなったり、痛みを感じにくくなったりします。
また大人になると、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、歯周病、感染症などになりやすくなることもあります。
ですので、お子様に糖尿病の症状が見られた際には絶対に放置してはいけません。
糖尿病の合併症のリスク・症状については「MSDマニュアル」に記載しておりますので、より詳しく知りたい方はご覧ください。
小児糖尿病の治療方法について
小児糖尿病の治療は、健康な子供と同じ発育と生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)の確保が前提となります。
本人や家族はもちろん、学校の先生やまわりの友達にも、糖尿病の病気への理解と、きちんとした治療が必要であるという意識をもってもらうことが大切です。
以下、糖尿病の治療方法になります。
小児糖尿病の治療方法①インスリン療法
インスリンが不足した状態になっているときに、インスリン注射等で外部からインスリンを補うことによって血糖を下げます。
これにより健常な子供と同等の血糖値変動パターンに近づけることが可能となり、日常生活における支障を和らげることができます。
小児糖尿病の治療方法②食事療法
食事療法は糖尿病治療の基本です。
1. 食べすぎず、腹八分目に抑える
2. 朝昼晩、規則正しく食べる
3. バランスよく食べ、食事中はゆっくりよく噛んで食べる
4. 寝る間際に食べすぎない
これらのことをきちんと守り、3大栄養素(脂質、糖質、タンパク質)をバランスよく摂取してください。
千葉県の公式HPでも「子供の糖尿病治療と管理について」にて糖尿病の子供に関する治療法を紹介しています。
小児糖尿病の治療方法③運動療法
運動療法の基本は、運動によるエネルギー消費・肥満の解消や抑制です。
運動療法により血糖コントロール・インスリン抵抗性・脂質代謝の改善が得られ、糖尿病の症状が改善に近づきます。
子供にとってはストレス解消や筋力の増加にも役立つので、積極的に取り入れてほしいです。
運動療法については「糖尿病を改善するための運動」にも記載があります。
小児糖尿病は早期発見・早期治療が何よりも肝心です。
どんな小さなことでも気になる方は気兼ねなく当院にご相談ください、糖尿病専門医の医師が丁寧に診察致します。
小児糖尿病について相談したい方はこちら
2022.05.24