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2型糖尿病患者の高血圧管理|最新ガイドラインに基づく血圧コントロールと合併症予防
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では「2型糖尿病患者の高血圧管理」について解説します。後半部分では「糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
2型糖尿病の特徴
2型糖尿病と高血圧の併発が危険な理由
糖尿病患者における血圧目標値とガイドライン基準
糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方
血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズム
効果的な家庭血圧測定と記録方法
生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロール
まとめ
2型糖尿病の特徴
2型糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が慢性的に高くなる代謝疾患です。日本の糖尿病患者の約95%を占める最も一般的な糖尿病であり、生活習慣病の代表的な疾患として知られています。この疾患の主な特徴は、膵臓からのインスリン分泌低下と、筋肉や肝臓などの組織におけるインスリン抵抗性の両方が関与している点です。遺伝的要因に加えて、肥満、運動不足、食べ過ぎ、ストレスなどの環境要因が複合的に作用して発症します。また、多くの場合、中高年以降に発症し、初期段階では自覚症状が乏しいため、健康診断で発見されることが少なくありません。なお、2型糖尿病では慢性的な高血糖が全身の血管に障害をもたらし、その結果として網膜症、腎症、神経障害のいわゆる三大合併症が進行する可能性があります。さらに、動脈硬化が促進されることで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。特に高血圧を併発しやすいため、これらの合併症リスクを一層増大させる要因となります。したがって、血糖管理と並行して血圧管理を行うことが治療における重要な柱となります。
2型糖尿病と高血圧の併発が危険な理由
2型糖尿病と高血圧の併発は、単独の疾患よりもはるかに深刻な健康リスクをもたらします。この危険性の根本には、インスリン抵抗性と血管内皮機能障害による動脈硬化の著しい促進があります。インスリン抵抗性は血管の平滑筋細胞に直接作用し、血管壁の肥厚と硬化を引き起こします。同時に、慢性的な高血糖状態は血管内皮細胞を障害し、一酸化窒素の産生低下により血管の拡張能力が著しく低下します。これらの機序により動脈硬化が急速に進行し、血圧上昇がさらに加速されるという悪循環が形成されます。また、この相乗効果により、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクは健常人の3~4倍に増大し、腎機能低下も急激に進行します。特に糖尿病性腎症の進展は高血圧により著しく促進され、末期腎不全に至るリスクが飛躍的に高まります。さらに、網膜症の進行も血圧上昇により加速され、失明のリスクも増大します。このため、2型糖尿病患者における血圧管理は血糖管理と同等の重要性を持ち、より厳格な血圧目標値の設定が必要となります。
糖尿病患者における血圧目標値とガイドライン基準
糖尿病患者における血圧管理は、心血管疾患や腎症などの合併症予防において極めて重要な位置を占めています。現在の日本高血圧学会の推奨では、糖尿病患者の診察室血圧目標値は130/80mmHg未満と、一般的な高血圧患者よりも厳格に設定されています。これは糖尿病患者における心血管リスクの高さを反映したものであり、複数の大規模臨床試験により、この目標値達成が心筋梗塞や脳卒中のリスク低下に有効であることが証明されています(家庭血圧においては125/75mmHg未満が推奨されており、診察室血圧よりもさらに低い設定となっています)。なお、現在、高血圧治療ガイドライン2025の草案が発表されており、2025年7月に6年ぶりの改訂が予定されています。新ガイドラインでは高血圧の基準値140/90mmHgや合併症のない75歳未満の降圧目標130/80mmHg未満は維持される方針ですが、糖尿病合併例に対する具体的な推奨事項の詳細な見直しが行われています。血圧管理においては薬物療法に加えて、減塩、適度な運動、体重管理といった生活習慣の改善が基本となり、患者個々の病態に応じた包括的なアプローチが不可欠です。
糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方
糖尿病患者における高血圧治療では、単純な血圧降下だけでなく、腎保護効果や血糖代謝への影響を総合的に考慮した薬剤選択が重要です。ここでは、「適切な降圧薬の選び方」について解説します。
糖尿病と高血圧に適した降圧薬の選び方
糖尿病患者の降圧薬選択において最も重要な原則は、血圧降下効果に加えて臓器保護作用を持つ薬剤を優先することです。薬剤選択の基本戦略として、まず患者の腎機能、アルブミン尿の有無、心血管疾患の既往を評価し、個々の病態に最適化された治療方針を立てることが必要です。糖尿病患者では一般的に複数の降圧薬が必要となるため、薬剤間の相乗効果と副作用プロファイルを十分に検討する必要があります。また、血糖代謝に悪影響を与える薬剤は可能な限り避け、逆にインスリン感受性の改善に寄与する薬剤を積極的に選択することで、血圧と血糖の両方を効率的に管理できます。なお、薬剤選択に際しては、患者の年齢、併存疾患、生活習慣などの個別因子も考慮しながら、長期的な予後改善を見据えた包括的な治療アプローチが求められます。
第一選択薬として腎保護作用を有するACE阻害薬・ARB
ACE阻害薬とARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、糖尿病性高血圧患者における第一選択薬として強く推奨されています。これらの薬剤は、レニン・アンジオテンシン系を阻害することで、血圧降下に加えて顕著な腎保護効果を発揮します。具体的には、ACE阻害薬は、糸球体内圧を低下させ、アルブミン尿の減少と腎機能保持に優れた効果を示します。代表的な薬剤にはエナラプリル、リシノプリル、ペリンドプリルがあり、多くの大規模臨床試験でその有効性が証明されています。一方、ARBは空咳の副作用が少なく、患者の忍容性に優れているため、ACE阻害薬が使用できない場合の代替薬として有用です。両薬剤とも、糖尿病性腎症の進行抑制において、血圧降下効果を超えた独立した保護作用を持つことが特徴的です。特に微量アルブミン尿期から顕性腎症期にかけての患者では、これらの薬剤による早期介入が長期予後の改善に直結します。
カルシウム拮抗薬と利尿薬の併用療法における血糖値への影響と注意点
カルシウム拮抗薬は糖尿病患者に対して血糖代謝への悪影響が少なく、ACE阻害薬やARBとの併用において優れた降圧効果を発揮します。特にアムロジピンやニフェジピンCR錠は、血管選択性が高く、糖代謝に中性的な作用を示すため、糖尿病患者に適した選択肢です。一方、利尿薬の使用には慎重な検討が必要です。サイアザイド系利尿薬は血糖値を上昇させる可能性があり、特に高用量での使用時にはインスリン抵抗性の増悪リスクがあります。しかし、低用量での使用であれば血糖への影響は軽微であり、心血管イベント抑制効果が期待できます。なお、併用療法においては、薬剤相互作用と電解質バランスの監視が重要です。特にACE阻害薬と利尿薬の併用では高カリウム血症のリスクがあり、定期的な血液検査による安全性の確認が不可欠です。患者の腎機能と血糖コントロール状態を総合的に評価し、最適な薬剤組み合わせを選択することが治療成功の鍵となります。
血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズム
糖尿病患者において、適切な血圧管理は合併症の発症・進行を劇的に抑制する重要な治療戦略です。血糖管理とともに血圧を厳格にコントロールすることで、腎症、網膜症、神経障害といった重篤な合併症を効果的に予防し、患者の長期的な生活の質向上が期待できます。
血圧管理で予防できる糖尿病合併症とそのメカニズムについて
糖尿病患者における血圧管理は、微小血管症と大血管症の両方の合併症予防において決定的な役割を果たします。高血圧と高血糖の相乗効果により、血管内皮細胞の機能障害が著しく促進され、全身の臓器に不可逆的な損傷をもたらすためです。具体的には、微小血管症では糖尿病性腎症、網膜症、神経障害が代表的な合併症として挙げられます。これらの病態に共通するメカニズムとしては、血管内皮細胞における一酸化窒素産生の低下、血管透過性の亢進、ならびに血管基底膜の肥厚が認められます。一方、大血管症においては、動脈硬化の進展によって心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患の発症リスクが飛躍的に増大します。加えて、適切な血圧管理は血管壁への機械的ストレスを軽減し、プラークの破綻や血栓形成の抑制にも寄与します。したがって、適切な血圧コントロールは、これらすべての合併症に対して包括的な保護効果をもたらす、糖尿病治療における根幹的なアプローチといえます。
糖尿病性腎症の進行抑制と腎機能保護における血圧コントロールの効果
糖尿病性腎症は、日本における末期腎不全の最大の原因疾患であり、血圧管理がその進行抑制において最も重要な介入手段です。腎症の病態には、糸球体内圧の上昇、メサンギウム細胞の増殖、基底膜の肥厚、ポドサイト障害が複合的に関与しています。また、血圧上昇は糸球体毛細血管への過剰な圧負荷を引き起こし、糸球体硬化症の進展を著しく加速します。特に収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の状態が持続すると、アルブミン尿の出現と腎機能低下が急速に進行します。なお、ACE阻害薬やARBによる血圧管理は、糸球体内圧を選択的に低下させ、アルブミン尿の減少と糸球体濾過率の保持に顕著な効果を示します。これらの薬剤は血圧降下効果を超えた腎保護作用を有し、微量アルブミン尿期からの早期介入により、透析導入のリスクを50%以上削減できることが大規模臨床試験で証明されています。
糖尿病網膜症リスク低減のための収縮期・拡張期血圧管理の重要性
糖尿病網膜症は、糖尿病患者における失明の主要原因であり、血圧管理がその発症・進行予防において極めて重要な位置を占めています。収縮期血圧の上昇は網膜血管への拍動性圧負荷を増大させ、血管壁の肥厚と内腔狭窄を引き起こします。一方、拡張期血圧の上昇は持続的な血管緊張を高め、血管透過性の亢進と血液網膜関門の破綻を促進します。これらの病態により、網膜出血、硬性白斑、軟性白斑といった典型的な網膜症変化が出現します。なお、大規模な疫学研究により、収縮期血圧10mmHgの低下により網膜症の進行リスクが13%減少し、拡張期血圧5mmHgの低下により新生血管緑内障の発症リスクが19%削減されることが明らかになっています。特に血圧130/80mmHg未満の厳格な管理により、重篤な増殖網膜症への進展を効果的に予防でき、患者の視機能保持に大きく貢献します。
効果的な家庭血圧測定と記録方法
糖尿病患者にとって家庭血圧測定は、診察室血圧だけでは把握できない日常の血圧変動を正確に評価し、適切な治療調整を行うために不可欠な管理手段です。正しい測定方法と記録の活用により、血圧管理の質を大幅に向上させることができます。
正確な血圧測定のタイミング
家庭血圧測定において最も重要なのは、一貫した条件下での測定を継続することです。測定タイミングは朝と夜の2回が基本となります。具体的には、朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、降圧薬服用前に実施します。また、夜間測定は就寝前に行い、入浴や飲酒後は避けることが重要です。なお、各回の測定では2回連続して行い、その平均値を記録してください。このとき、1回目と2回目の値に大きな差がある場合は、さらに1回測定して中央値を採用します。また、測定間隔は1〜2分間空けることで、血管への圧迫による影響を最小限に抑えることができます。週に最低でも5日間の測定を継続し、月単位での血圧変動パターンを把握することが、治療効果の評価において極めて重要です。
測定機器選択のポイント
家庭血圧測定に適した血圧計の選択は、測定精度と継続性の両面から慎重に検討する必要があります。上腕式の自動血圧計は比較的安定した測定が可能とされており、医療現場でも広く使用されています。手首式血圧計は簡便性に優れますが、測定姿勢の影響を受けやすく、精度の面で劣る場合があります。なお、カフのサイズ選択は測定精度に直結する重要な要素です。上腕周囲長を正確に測定し、適切なサイズのカフを使用してください。標準カフは上腕周囲22〜32cmに対応しており、それ以外の場合は専用のカフが必要です。不適切なカフサイズは測定値に大きな誤差をもたらすため、定期的なサイズ確認が求められます。さらに、血圧計の精度維持のために、年に1回は医療機関で使用している血圧計との比較検証を行ってください。また、記録機能やスマートフォン連携機能を備えた機種を選択することで、データ管理の効率化と継続性の向上が期待できます。電池残量の確認や定期的な機器点検により、常に正確な測定が可能な状態を維持することが重要です。
血圧日記の活用方法と主治医との情報共有における注意点
血圧日記は、単なる数値の記録にとどまらず、血圧変動の要因分析や治療効果の評価に不可欠な医療情報です。測定値とともに、測定日時、服薬状況、体調、ストレスレベル、運動量、食事内容などの関連因子も併せて記録することが重要です。これらの情報により、血圧上昇の原因を特定し、生活習慣改善の具体的な指針を導くことが可能となります。なお、主治医との情報共有においては、測定データの信頼性を確保することが最も重要です。測定条件や使用している機器の状態を正確に報告し、数値の改ざんや選択的な記録は絶対に避けてください。また、診察直前の数日間だけを測定するのではなく、日常的かつ継続的な記録が求められます。これにより、治療方針の決定に有用な、より実態に即した血圧の把握が可能となります。血圧日記を通じて医師と患者が協力し、適切な血圧管理を実現することは、糖尿病合併症の予防にもつながる大切な取り組みです。根気強く記録を続けることが、将来の健康を守る第一歩となります。
生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロール
糖尿病と高血圧を併発する患者において、薬物療法と並行した生活習慣の改善は治療効果を最大化し、合併症予防に不可欠な戦略です。食事療法、運動療法、体重管理を包括的に実践することで、血圧と血糖値の両方を効果的にコントロールし、患者の長期予後を大幅に改善できます。
生活習慣改善による血圧・血糖値の同時コントロールの重要性
生活習慣の改善は、糖尿病と高血圧という両疾患に共通する根本的な病態、すなわち代謝異常およびインスリン抵抗性に直接的に作用し、薬物療法のみでは得がたい包括的な改善効果をもたらします。なかでも注目すべきは、生活習慣の改善によって血糖値と血圧の相互に悪影響を及ぼす関係を断ち切る点です。高血糖状態は血管内皮機能障害を引き起こし、結果として血圧の上昇を促進します。一方で、高血圧は末梢組織のインスリン抵抗性を悪化させ、血糖コントロールをより困難にします。このような悪循環を断ち切ることで、糖尿病と高血圧の双方の管理が飛躍的に向上します。さらに、生活習慣の改善は薬物療法の効果を高めるだけでなく、必要な薬剤数の削減や副作用リスクの軽減にも寄与します。加えて、患者自身が治療に主体的に関与し、自己効力感を獲得することで、長期的な治療継続率の向上にもつながることが、数多くの研究により示されています。
減塩6g/日未満を実現する食事療法と塩分摂取量の管理方法
日本人の平均塩分摂取量は男性10.9g、女性9.3gと過剰であり、糖尿病患者では6g/日未満への減塩が血圧管理において極めて重要です。減塩の第一歩は現在の摂取量把握であり、24時間蓄尿による正確な評価が理想的ですが、簡易的には随時尿による推定も可能です。具体的な減塩方法として、調味料の使用量削減が最も効果的です。醤油、味噌、塩の使用量を段階的に減らし、代わりに酢、レモン汁、香辛料、ハーブを積極的に活用します。出汁の旨味を十分に引き出すことで、少ない塩分でも満足できる味付けが可能になります。また、加工食品や外食の頻度制限も重要な戦略です。ハム、ソーセージ、漬物、インスタント食品は高塩分であるため、できる限り避けるか低塩分製品を選択してください。減塩効果は2〜4週間で血圧降下として現れ、継続により降圧薬の減量も期待できます。
糖尿病と高血圧の両方に効果的な有酸素運動とレジスタンス運動の実践法
以下、有酸素運動とレジスタンス運動の詳細です。
<有酸素運動>
有酸素運動は血糖値と血圧の両方に対して即効性と持続性を併せ持つ最も効果的な介入手段です。運動により筋肉への血流が増加し、インスリン非依存的な糖取り込みが促進されることで血糖値が低下します。同時に血管内皮機能が改善し、一酸化窒素の産生増加により血管拡張作用が高まり血圧が低下します。なお、推奨される運動強度は最大心拍数の50〜70%に相当する中等度の強度であり、具体的には軽く息が弾む程度の早歩き、水中歩行、サイクリングが適しています。そして運動時間は1回30〜60分間、週に150分以上の実施が目標です。運動後の血糖降下効果は24〜48時間持続するため、週3回以上の実施により持続的な血糖改善が得られます。
<レジスタンス運動>
レジスタンス運動は、筋肉量の増加を通じてインスリン感受性を高め、基礎代謝率を上昇させることで、長期的な血糖管理に非常に有効です。筋肉は体内で最大のインスリン感受性組織であり、その量の増加は血糖取り込み能力の向上に直結します。さらに、運動後の過剰酸素消費(EPOC:excess post-exercise oxygen consumption)により、運動終了後も代謝が亢進し、血圧低下効果が持続することも注目すべき点です。レジスタンス運動の実践にあたっては、週2〜3回の頻度で、主要な筋群を対象とした8〜12種目の筋力トレーニングを推奨します。各種目は、8〜15回の反復が可能な負荷で2〜3セット行い、セット間の休息時間は1〜3分程度を目安としてください。なお、始めは自体重を利用したスクワット、腕立て伏せ、プランクといった基本的な動作から開始し、筋力の向上に応じて段階的に負荷を増やすことで、安全かつ効果的に運動を継続することが可能です。
有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせにより、血糖値は平均0.6〜1.0%のHbA1c改善、血圧は収縮期で5〜10mmHg、拡張期で3〜5mmHgの低下が期待できます。運動療法の効果を最大化するには、個人の体力レベルに応じた段階的な負荷増加と、医師との定期的な相談による安全性確保が不可欠です。
体重管理と血圧・血糖値改善の関係
体重管理は、糖尿病および高血圧の両疾患に対して根本的な治療効果をもたらす、最も重要な生活習慣改善の一つです。体重を1kg減量するごとに、収縮期血圧は平均して約1mmHg低下し、HbA1cも0.1%改善することが、大規模な疫学研究により報告されています。例えば、内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインには血管収縮作用および炎症促進作用があり、高血圧や動脈硬化の進展に直接関与します。体重減少によって内臓脂肪が減少すると、逆に抗炎症性を持つアディポネクチンの分泌が増加し、インスリン感受性の改善および血管保護作用が期待されます。なお、適正体重を維持するには、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランス調整が基本です。1週間あたり0.5〜1kgの緩やかな体重減少を目標とし、極端なカロリー制限は避けるべきです。また、BMIが25未満、腹囲が男性で85cm未満、女性で90cm未満を達成することで、血圧および血糖コントロールが著しく改善され、薬物療法の効果も向上することが期待されます。安全で効果的な体重管理を実現するためには、体重の継続的なモニタリングと、医師との定期的な相談が不可欠です。
まとめ
インスリン抵抗性や血管内皮機能障害を背景とする動脈硬化の進展を抑制するためには、血圧と血糖の両者を適切にコントロールすることが不可欠です。そのための基盤となるのが生活習慣の改善です。具体的には、食塩摂取量を1日6g未満に抑える食事療法、有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ、適正体重の維持などが推奨されます。これらの取り組みは、薬物療法の効果を高めるだけでなく、病態そのものの進行を抑制する可能性があるとされています。また、患者が日常生活の中で治療に主体的に関与することにより、治療継続率や自己管理能力の向上が期待されます。実際、生活習慣の改善に成功した患者では、血圧・血糖の安定化のみならず、服薬量の減少や医療費の軽減にもつながるケースが報告されています。さらに、こうした非薬物療法の積極的な導入は、医療資源の最適配分という観点からも重要です。2型糖尿病と高血圧の両方を併存する患者においては、生活習慣改善を柱とした多面的アプローチによって、臓器障害の発症や進行を未然に防ぎ、QOLの維持・向上に寄与することが可能となります。なお、当院では、患者一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは健康診断などで血圧値の異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
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2025.06.25
糖尿病性腎症と高血圧の関係性|血圧管理で合併症を防ぐ治療法と対策
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病性腎症と高血圧の関係性」について解説します。後半部分では、「糖尿病性腎症の降圧目標値」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症と高血圧の関係について
糖尿病で高血圧が起こる原因
糖尿病性腎症の降圧目標値
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
高血圧を下げる生活習慣改善のポイント
早期発見のための検査と症状チェック
まとめ|血圧管理で糖尿病性腎症の進行を防ぐために
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症は、糖尿病における主要な合併症の一つで、長期間の高血糖状態により腎臓の血管や組織が障害される疾患です。糖尿病患者の約30-40%に発症し、透析導入原因の中でも頻度の高い疾患の一つです。腎臓には約100万個の糸球体が存在し、これらが老廃物の排泄を担っています。しかし、血糖値の高い状態が続くと糸球体が損傷し、尿中にタンパク質が漏れ出るようになります。そして病状が進行すると、糸球体が破壊され、老廃物や水分が体内に蓄積し、腎不全や尿毒症を引き起こす可能性があります。なお、糖尿病性腎症は初期には自覚症状がほとんどなく、気づきにくいのが特徴です。しかし進行すると、微量アルブミン尿や蛋白尿が認められるようになり、さらに悪化すると浮腫、血圧上昇、貧血、疲労感などの症状が現れます。この疾患の予防には、血糖値の厳格な管理が不可欠です。定期的な血糖値の測定に加え、医師の指導に基づく食事療法、運動療法、薬物療法を継続することが求められます。また、高血圧は腎臓への負担を増大させるため、血圧管理も重要です。加えて、定期的な腎機能検査も予防の一環として重要です。糖尿病患者は年に一度、尿検査や血液検査を受けて腎機能の状態を確認することが推奨されます。早期に異常を発見できれば、進行を遅らせる治療が可能となります。
糖尿病性腎症と高血圧の関係について
高血糖状態が持続すると、腎臓の微小血管である糸球体毛細血管に深刻な影響を与えます。具体的には、高血糖により糖化最終産物(AGEs)が蓄積し、腎糸球体基底膜の肥厚と糸球体硬化症が進行します。同時に、血管内皮細胞の機能障害により一酸化窒素の産生が低下し、血管拡張能が減弱します。これらの変化により糸球体内圧が上昇し、腎機能低下が始まります。そして腎機能が低下すると、ナトリウムと水分の排泄能力が減少し、循環血液量が増加して血圧上昇をもたらします。さらに、腎臓からのレニン分泌が増加し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化されることで、血管収縮と体液貯留が促進され、高血圧が持続します。この高血圧状態は腎臓への負荷をさらに増大させ、糸球体内圧をより上昇させて腎症の進行を加速させます。また、蛋白尿の出現は腎機能低下の指標となり、この悪循環により最終的に末期腎不全へと進行する可能性があります。したがって、早期からの血糖管理と降圧治療が極めて重要です。
糖尿病で高血圧が起こる原因
糖尿病が高血圧を引き起こすメカニズムは複雑で多面的であり、インスリン抵抗性、血管障害、腎機能への影響が相互に関連しています。ここでは、糖尿病で高血圧が起こる「主要な原因」について解説します。
インスリン抵抗性と肥満による血圧上昇
インスリン抵抗性は糖尿病の根本的な病態の一つであり、高血圧発症の重要な要因となります。インスリン抵抗性により代償性に「高インスリン血症」が生じると、腎臓でのナトリウム再吸収が促進され、体内のナトリウム貯留により血液量が増加します。同時に、高インスリン血症は交感神経系を活性化し、心拍数増加と血管収縮をもたらします。さらに、インスリン抵抗性は内皮由来血管拡張因子である一酸化窒素の産生を抑制し、血管拡張機能を低下させます。多くの糖尿病患者に見られる肥満、特に内臓肥満は、アディポサイトカインの分泌異常を引き起こし、炎症性サイトカインの増加により血管内皮機能がさらに悪化します。これらの複合的な作用により、インスリン抵抗性と肥満は血圧上昇の基盤を形成します。
高血糖による血管障害と糸球体高血圧
持続的な高血糖状態は、血管内皮細胞に直接的な障害をもたらし、血管機能の異常を引き起こします。具体的には、高血糖により糖化最終産物(AGEs)が血管壁に蓄積し、血管の弾性が失われて動脈硬化が進行します。また、高血糖は酸化ストレスを増大させ、血管内皮の一酸化窒素合成酵素の活性を低下させることで、血管拡張能が著しく減弱します。なお、腎臓においては、高血糖により糸球体毛細血管の自律的な血流調節機能が障害され、糸球体内圧が異常に上昇する「糸球体高血圧」が生じます。この状態では、全身血圧の変動が糸球体に直接伝達されやすくなり、糸球体構造への負荷が増大します。さらに、高血糖はレニン・アンジオテンシン系(RAA系)を活性化し、血管収縮および体液貯留を促進することで、全身の血圧上昇にも関与します。
腎症進行に伴う体液・塩分貯留
糖尿病性腎症の進行により腎機能が低下すると、水分およびナトリウムの排泄能力が著しく損なわれます。健常な腎臓では、体内の水分・電解質バランスを精緻に調節していますが、糸球体濾過率(GFR)の低下により余剰な水分およびナトリウムが体内に蓄積します。その結果、循環血液量が増加し、心拍出量の増大を介して血圧が上昇します。さらに、腎機能の低下は腎実質におけるレニン分泌の亢進を引き起こし、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)が過剰に活性化されます。アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用を有し、アルドステロンはナトリウム再吸収を促進することで、体液貯留をさらに助長します。一方で、腎臓から分泌される血管拡張因子であるプロスタグランジンやカリクレインの産生が低下し、血管拡張能の減弱が持続します。これら複数の機序が複合的に作用することで、腎症の進行に伴い血圧のコントロールは次第に困難となります。
糖尿病における高血圧の発症は、インスリン抵抗性、高血糖による血管障害、腎機能低下という複数の病態が相互に関連し合って生じる複雑な現象です。初期段階ではインスリン抵抗性と高血糖による血管内皮機能障害が主体となりますが、病態の進行とともに腎症による体液貯留とレニン・アンジオテンシン系の活性化が加わり、より難治性の高血圧となります。これらのメカニズムを理解することで、早期からの包括的な治療戦略の重要性が明らかになります。血糖管理、体重管理、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)による降圧治療を組み合わせ、各病態に対応した多面的なアプローチが必要です。また、定期的な腎機能評価により腎症の進行を早期に発見し、適切な治療介入を行うことで、心血管疾患などの重篤な合併症の予防が可能となります。
糖尿病性腎症の降圧目標値
糖尿病性腎症において適切な血圧管理は、腎機能の保持と心血管疾患の予防において極めて重要です。腎症の進行段階に応じて降圧目標値が設定されており、早期からの厳格な血圧コントロールが腎症の進行抑制と予後改善に直結します。ここでは、糖尿病性腎症における「降圧目標値」について解説します。
初期段階での血圧目標130/80mmHg未満の重要性
糖尿病性腎症の初期段階、すなわち微量アルブミン尿期(30-299mg/g・Cr)では、血圧目標を130/80mmHg未満に設定することが推奨されています。この目標値は、大規模な臨床試験において腎機能低下の進行抑制効果が証明されており、特に糸球体高血圧の是正に重要な役割を果たします。また、初期段階での厳格な血圧管理により、糸球体内圧の上昇を抑制し、糸球体基底膜への機械的ストレスを軽減することができます。これにより糸球体硬化の進行を遅延させ、アルブミン尿の増加を防ぐことが可能となります。なお、この段階での適切な血圧コントロールは、腎機能の可逆的改善をもたらす場合もあり、後の顕性腎症への進行リスクを大幅に減少させます。さらに、心血管疾患のリスクも同時に軽減されるため、糖尿病患者の総合的な予後改善に寄与します。
顕性蛋白尿期以降では125/75mmHg未満への厳格管理
顕性蛋白尿期(300mg/g・Cr以上)に進行した糖尿病性腎症では、より厳格な血圧目標である125/75mmHg未満が推奨されています。この段階では既に糸球体硬化が進行し、腎機能低下が顕著になっているため、さらなる腎保護効果を得るためには厳しい血圧管理が必要となります。顕性蛋白尿期では、レニン・アンジオテンシン系の活性化により血圧上昇が持続し、これが腎症の進行をさらに加速させる悪循環を形成します。なお、厳格な125/75 mmHg未満の目標設定により、この悪循環を断ち切り、残存腎機能の保護を図ることが可能となります。さらに、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)を中心とした降圧治療により、蛋白尿の減少と腎機能低下の進行抑制が期待されます。ただし、過度の降圧により腎血流量が低下し、急性腎障害のリスクが高まるため、慎重なモニタリングが不可欠です。
家庭血圧測定の意義と診察室血圧との使い分け
糖尿病性腎症の血圧管理において、家庭血圧測定は診察室血圧測定と同等またはそれ以上の重要性を持ちます。家庭血圧は日常生活における実際の血圧レベルを反映し、白衣高血圧や仮面高血圧の診断に有用です。糖尿病患者では自律神経障害により血圧変動が大きくなることが多く、診察室での単発測定では適切な評価が困難な場合があります。なお、家庭血圧の目標値は診察室血圧より5mmHg低く設定されており、腎症初期では125/75mmHg未満、顕性蛋白尿期では120/70mmHg未満となります。朝夕の測定により夜間高血圧や早朝高血圧の評価が可能となり、これらは腎症進行の独立したリスク因子として重要です。また、服薬アドヒアランスの評価や降圧薬の効果判定にも有用で、治療方針の決定において不可欠な情報を提供します。24時間血圧計による評価も併用することで、より精密な血圧管理が実現できます。
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
糖尿病性腎症における降圧薬の選択は、単なる血圧低下だけでなく腎保護効果を重視する必要があります。ここでは、糖尿病性腎症に最適な「降圧薬の選択方針」について解説します。
糖尿病性腎症に適した降圧薬の選び方
糖尿病性腎症における降圧薬選択の基本原則は、腎保護効果を有する薬剤を優先することです。最も重要な考慮点は、糸球体内圧の低下と蛋白尿の減少効果であり、これらを満たす薬剤がレニン・アンジオテンシン系阻害薬です。単剤では目標血圧に到達困難な場合が多いため、作用機序の異なる薬剤の組み合わせが必要となります。なお、薬剤選択において、患者の腎機能レベルは重要な判断基準となります。eGFR 30mL/min/1.73m²以上では標準的な用量で開始可能ですが、それ以下では腎機能悪化のリスクを考慮した慎重な投与が必要です。また、血清カリウム値の上昇リスクがあるため、定期的なモニタリングが不可欠です。併存する心血管疾患、糖尿病のコントロール状況、患者の服薬アドヒアランスも薬剤選択に影響する重要な因子となります。
第一選択薬|ACE阻害薬・ARBによる腎保護効果
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)とARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、糖尿病性腎症の第一選択薬として位置づけられています。これらの薬剤は、アンジオテンシンIIの作用を阻害することで、輸出細動脈の拡張を優位に促し、糸球体内圧を効果的に低下させます。この機序により血圧低下効果を超える腎保護効果が得られ、蛋白尿の顕著な減少が期待されます。大規模臨床試験では、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)とARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)が腎機能低下の進行抑制、透析導入の延期、そして心血管イベントの減少に効果があることが証明されています。特に微量アルブミン尿期からの投与開始により、顕性腎症への進行を大幅に抑制することが可能です。なお、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)では約10-15%の患者に空咳の副作用がみられ、この場合はARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)への変更が推奨されます。さらに、両薬剤とも高カリウム血症のリスクがあるため、投与開始後1〜2週間で血清クレアチニンおよびカリウム値の確認が重要です。
ARNI(アーニー、エンレスト)
ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)とネプリライシン阻害薬を組み合わせた新しいクラスの降圧薬であり、代表的な製剤としてサクビトリル・バルサルタン(エンレスト)があります。従来のARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の効果に加えて、ネプリライシンの阻害により利尿ペプチド系を活性化し、血管拡張、利尿、抗線維化作用を発揮します。糖尿病性腎症患者においては、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と比較してより強力な腎保護効果が期待されており、特に心不全を合併する患者では第一選択薬として推奨されています。また、蛋白尿の減少効果がARB単独より優れており、eGFRの低下抑制にも有効性が示されています。ただし、血管浮腫のリスクがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)より高く、特にACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)で血管浮腫の既往がある患者では禁忌となります。また、妊娠可能な女性では適応を慎重に検討する必要があります。さらに、投与開始時は腎機能と血清カリウム値の慎重なモニタリングが必要で、特に高齢者や腎機能低下患者では低血圧に注意が必要です。
βブロッカー(β遮断薬)
βブロッカーは心拍数減少と心収縮力抑制により降圧効果を示し、糖尿病性腎症患者においては特定の病態で有用な選択肢となります。虚血性心疾患や心不全を合併する糖尿病患者では、心保護効果により予後改善が期待できるため積極的な使用が推奨されます。また、頻脈性不整脈や甲状腺機能亢進症を合併する場合にも有効です。糖尿病患者におけるβブロッカーの使用では、血糖値への影響と低血糖症状のマスキング効果に注意が必要です。特に非選択的βブロッカーは血糖上昇作用があるため、β1選択的薬剤(メトプロロール、ビソプロロール、アテノロールなど)の使用が推奨されます。なお、これらの薬剤は心臓への選択性が高く、糖代謝への影響が少ないという特徴があります。慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息の患者では呼吸器症状の悪化リスクがあるため、使用前に十分な評価が必要です。また、腎機能低下患者では薬剤の蓄積により過度の徐脈や低血圧のリスクがあるため、腎機能に応じた用量調整と慎重なモニタリングが重要となります。
併用薬|カルシウム拮抗薬と利尿薬の使い分け
レニン・アンジオテンシン系阻害薬単剤で目標血圧に到達しない場合、カルシウム拮抗薬または利尿薬の併用を検討します。以下、それぞれの特徴と使い分けについて詳しく解説します。
<カルシウム拮抗薬>
カルシウム拮抗薬の中でも、ジヒドロピリジン系は血管拡張作用により降圧効果が高く、糖代謝に悪影響を与えないため糖尿病患者に適しています。特にアムロジピンやニフェジピン徐放錠は、24時間持続する降圧効果により早朝高血圧の改善にも有効です。これらの薬剤はレニン・アンジオテンシン系阻害薬との併用により、異なる機序による相加的な降圧効果が期待できます。なお、副作用として下肢浮腫や歯肉増生がありますが、一般的に忍容性は良好です。
<利尿薬>
利尿薬については、チアジド系またはチアジド様利尿薬が第一選択となります。これらは体液量減少による降圧効果を示し、ACE阻害薬やARBとの併用により相加的な効果が期待できます。特に体液貯留傾向のある患者や塩分感受性高血圧の患者に有効です。ただし、血糖や尿酸値の上昇、低ナトリウム血症、低カリウム血症などの電解質異常のリスクがあるため、定期的な血液検査によるモニタリングが必要です。なお、腎機能が高度に低下している場合(eGFR 30mL/min/1.73m²未満)では、チアジド系利尿薬の効果が減弱するため、ループ利尿薬の使用を検討します。
併用薬の選択においては、患者の浮腫や体液貯留の程度、心機能、電解質バランス、副作用のリスクを総合的に評価することが重要です。カルシウム拮抗薬は降圧効果が高く忍容性に優れる一方、利尿薬は体液管理に優れるという特徴があります。したがって、患者の病態に応じて最適な併用薬を選択し、定期的なモニタリングにより安全で効果的な治療を継続することが求められます。
高血圧を下げる生活習慣改善のポイント
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者において、生活習慣の改善は薬物療法と同等の重要性を持ちます。適切な食事療法、運動療法、体重管理により、降圧効果だけでなく腎保護効果も期待できます。しかし、腎機能低下を考慮した制約もあるため、個別化されたアプローチが必要です。ここでは、糖尿病性腎症患者における「効果的で安全な生活習慣改善のポイント」について解説します。
減塩療法|6g未満を目指す食事指導
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者では、1日の食塩摂取量を6g未満に制限することが推奨されています。減塩は体液貯留の改善により降圧効果をもたらし、同時に腎臓への負担軽減にも寄与します。日本人の平均食塩摂取量は約10gであるため、大幅な食生活の見直しが必要となります。なお、効果的な減塩のためには、調味料の使用量を段階的に減らし、だしや香辛料、酸味を活用して味付けの工夫を行ってください。具体的には、加工食品や外食には多量の塩分が含まれているため、これらの摂取頻度を減らし、新鮮な食材を使った手作り料理を心がけることが重要です。また、カリウムを多く含む野菜や果物の摂取は、ナトリウムの排泄を促進し降圧効果を高めますが、腎機能低下がある場合は高カリウム血症のリスクを考慮して摂取量を調整する必要があります。
糖尿病性腎症におけるタンパク質制限との両立
糖尿病性腎症の進行期では、腎機能を保護するためにタンパク質の摂取制限が必要となり、一般的には体重1kgあたり0.8-1.0g程度に制限されます。この制限と減塩療法を両立させるには、質の高いタンパク質源の選択と調理法の工夫が重要です。具体的には、魚類、鶏肉、卵、大豆製品などの良質なタンパク質を適量摂取し、同時に塩分を抑えた調理法を取り入れることが推奨されます。また、タンパク質制限によって食事の満足感が低下しがちですが、野菜や穀類を中心とした食事構成によってカロリー不足を補い、栄養バランスを維持することが求められます。さらに、リンの過剰摂取にも注意が必要であり、加工肉やインスタント食品の摂取は控えるようにします。管理栄養士と連携し、患者の嗜好や生活スタイルを考慮した個別化された食事療法を継続することで、減塩とタンパク質制限の両立が可能となります。
運動療法と体重管理の注意点
糖尿病性腎症を合併する高血圧患者における運動療法は、腎機能レベルを考慮した安全な範囲で実施する必要があります。軽度から中等度の腎機能低下(eGFR 30mL/min/1.73m²以上)では、週3-5回、1回30-60分の有酸素運動が推奨されます。具体的には、ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水中歩行などの低強度から中強度の運動が適しており、最大心拍数の50-70%程度の強度で行ってください。なお、高度な腎機能低下がある場合には、運動強度をさらに制限し、理学療法士や運動指導士の監督下で、個別化されたプログラムを実施することが望ましいとされています。また、体重管理においては急激な減量が腎機能の悪化を招く可能性があるため、月に1-2kg程度の緩やかな減量を目標としてください。さらに、運動前後の血圧測定や脱水の予防、過度な疲労の回避も重要です。めまい、息切れ、動悸などの症状が現れた場合には、直ちに運動を中止してください。定期的な腎機能の検査により運動の安全性を評価し、病状の進行に応じて運動プログラムを柔軟に見直すことが求められます。
早期発見のための検査と症状チェック
糖尿病性腎症と高血圧は初期段階では自覚症状に乏しく、発見が遅れると不可逆的な腎機能低下を招く可能性があります。ここでは、糖尿病性腎症の早期発見に必要な「検査項目」と「症状」について解説します。
定期的な尿検査と血圧測定の重要性
糖尿病患者における糖尿病性腎症のスクリーニングには、年1回以上の尿中アルブミン測定および血清クレアチニンを用いたeGFRの算出が不可欠です。なかでも、尿中アルブミン排泄量は腎症の最も早期に現れる指標であり、微量アルブミン尿(30-299mg/g・Cr)の段階で発見することにより、適切な治療介入を通じて顕性腎症への進行を予防することが可能となります。また、アルブミン測定は一般に随時尿によって行われますが、より正確な評価を行うためには、24時間蓄尿あるいは早朝第一尿での測定が推奨されます。なお、血圧測定においては、診察室血圧だけでなく家庭血圧の併用が重要です。糖尿病患者では自律神経障害により血圧変動が大きく、診察室での単発測定のみでは正確な評価が困難なことがあります。そのため、家庭血圧は朝夕2回ずつ、1週間以上継続して測定し、平均値で評価することが望まれます。さらに、24時間血圧測定(ABPM)によって夜間高血圧や早朝高血圧の把握が可能となり、血圧管理の精度が高まり、腎症進行リスクの適切な評価に資することができます。
微量アルブミン尿や蛋白尿の意味と対処法
微量アルブミン尿は糖尿病性腎症の最も早期の徴候であり、この段階での発見と治療開始が腎症の進行抑制において極めて重要です。正常では、尿中アルブミン排泄量は30mg/g・Cr未満ですが、30-299mg/g・Crの微量アルブミン尿期では糸球体の軽度障害が既に始まっています。この段階では血糖管理の強化とACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)またはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の導入により、腎機能の改善や正常化が期待できる場合があります。一方で、顕性蛋白尿期(300 mg/g・Cr以上)に進行すると、糸球体硬化が進行し、腎機能低下が顕著になります。この段階では、蛋白尿の程度が腎機能低下の速度と相関するため、蛋白尿の減少を治療目標として設定することが重要です。特に、蛋白尿が50%以上減少することで、腎機能低下の進行を著しく抑制できるとされています。そのため、定期的な尿検査により蛋白尿の推移をモニタリングし、増加傾向が認められる場合には治療の強化を検討する必要があります。また、蛋白尿が急激に増加した場合には、他の腎疾患の合併が疑われることがあり、このようなケースでは腎生検による確定診断が求められることもあります。
受診すべき症状と緊急性の判断基準
糖尿病性腎症の進行に伴い現れる症状には、浮腫、息切れ、倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐などがあります。これらの症状は腎機能低下による体液貯留や尿毒症の徴候として現れるため、出現した場合は速やかな医療機関受診が必要です。特に急激な体重増加(1週間で2kg以上)や下肢浮腫の出現は心不全や腎機能急性悪化の可能性があり、緊急性が高い症状として認識すべきです。なお、血圧に関連する症状では、頭痛、めまい、視野異常、胸痛などの高血圧緊急症の徴候に注意が必要です。収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧が120mmHg以上で、これらの症状を伴う場合は高血圧緊急症として直ちに救急受診が必要となります。また、尿量の急激な減少(1日400mL未満)、血尿の出現、発熱を伴う側腹部痛なども腎機能急性悪化や尿路感染症の可能性があるため、早急な医療機関受診が推奨されます。定期受診時には血圧手帳や症状日記を持参し、医師と情報共有することが適切な治療方針決定に重要です。
まとめ|血圧管理で糖尿病性腎症の進行を防ぐために
糖尿病性腎症における血圧管理は、腎機能保持と心血管疾患予防において極めて重要な治療戦略です。高血糖により生じる血管障害と腎機能低下による体液貯留が相互に影響し合い、高血圧の発症と腎症の進行を加速させる悪循環を形成するため、早期からの包括的なアプローチが不可欠となります。腎症初期では130/80mmHg未満、顕性蛋白尿期では125/75mmHg未満という病期別の厳格な血圧管理により、糸球体内圧の低下と蛋白尿の減少が期待できます。また、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)を第一選択薬とし、必要に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬を併用することで、降圧効果と腎保護効果の両立が実現されます。さらに、生活習慣改善も薬物療法と同等の重要性を持ちます。1日6g未満の減塩療法、腎機能レベルに応じたタンパク質制限、安全な範囲での運動療法と体重管理により、降圧効果の向上と腎機能保護が図られるため、根気強く継続することが求められます。なお、当院では、患者一人ひとりの状態に合わせた総合的な治療を提供しています。糖尿病の初期段階から進行した症例まで幅広く対応しておりますので、糖尿病の症状に心当たりのある方、もしくは健康診断などで血圧値の異常を指摘された方などいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
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2025.06.25
糖尿病と塩分の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
この記事では、「糖尿病と塩分の関係」について解説していきます。後半部分では「塩分摂取量を減らすコツ」について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 .cv_box {
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【目次】
糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください
塩分の摂りすぎは糖尿病を悪化させます
なぜ塩分を摂ると高血圧になるのか
塩分を摂りすぎないために
まとめ
糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください
糖尿病はインスリンが十分に働かないために、血液中を流れる“ブドウ糖”という糖が増えてしまう病気です。糖尿病では、「糖分の多い“炭水化物”や“甘いお菓子”の摂りすぎを控えなければいけない」というイメージがあるかと思いますが、実はそれだけではありません。糖尿病では塩分の摂りすぎも大敵となります。ですので、糖尿病の方は塩分の摂りすぎにもご注意ください。
塩分の摂りすぎは糖尿病を悪化させます
塩分は血糖値に直接的に影響しませんが、高塩分で濃い味の食事はつい食べ過ぎたり、飲みすぎたりするため、体重増加の原因になります。その結果、インスリンが聞きにくくなる“インスリン抵抗性”を引き起こし、2型糖尿病のリスクを上昇させると考えられております。また、血糖値が高いと高血圧の影響を受けやすく、血糖値と血圧がコントロール不良であれば「心疾患」や「慢性腎臓病」などの合併症リスクが上昇します。糖尿病が引き起こす合併症については以下をご覧ください。
【糖尿病の合併症1】心筋梗塞
心筋梗塞とは、心筋に血液と酸素を送る冠動脈が動脈硬化で硬くなり、心筋に血液を送ることができない状態になることです。これにより、心筋が酸素不足に陥り壊死を起こしてしまう状態を言います。心筋梗塞は日本人の死亡原因の上位に挙げられている疾患で突然死の原因にもなり得る、恐ろしい疾患の一つです。
【糖尿病の合併症2】脳卒中
脳卒中とは、急性期脳血管障害のことを指し、突然脳の血管が詰まったり、破れたりして引き起こされる病気の総称です。脳卒中は原因によって「脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞、一過性脳虚血発作)」と「脳の血管が破れるタイプ(脳出血、くも膜下出血)」の2つに分けられます。脳卒中は、障害を受けた脳が司っていた「身体機能」や「言語機能」が失われたり、場合によっては死に至ることもありますので、非常に危険な疾患です。
【糖尿病の合併症3】腎不全
腎不全とは、腎臓の働きが正常の30パーセント以下に低下した状態を言います。腎不全は初期の頃には無症状のことが多く、進行するにつれて様々な症状が出現してきます。
【糖尿病の合併症4】動脈硬化
動脈硬化とは、文字どおり動脈が硬くなる状態のことです。動脈硬化は、中高年の人に生じる病態と思われがちですが、実は小児期から徐々に進行し、様々な病気の原因となります。そのため、若い頃から動脈硬化の進行を予防することが大切です。動脈硬化は、糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病によって進みますので、十分にご注意ください。
【糖尿病の合併症5】高血圧
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧症と診断されます。高血圧症は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」と言われております。
なぜ塩分を摂ると高血圧になるのか
人間の体の中では、水分と塩分が一定の濃度に保たれています。食塩をとり過ぎると、一時的に高くなった塩分濃度を下げるために、体内に水分がため込まれます。これによって、心臓に送り込まれる血液量が増え、血管にかかる圧力が増し、血圧が上がってしまうのです。
塩分を摂りすぎないために
糖尿病患者向けの治療ガイドラインでは、糖尿病の合併症の危険性を抑えるために、塩分摂取量を控えることが勧められております。日本食は健康的な食事として評価されておりますが、みそ・塩・しょうゆといった調味料から塩分を摂り過ぎる傾向がありますので、調理する際には工夫が必要です。なお、塩分摂取量を減らすコツについては、以下をご覧ください。
【塩分摂取量を減らすコツ1】食べる直前に味付けをする
食べる直前に味付けをすることで、少量の調味料でも味を感じやすくなります。ですので、味付けはなるべく食べる直前に行ってください。
【塩分摂取量を減らすコツ2】酸味や香辛料を積極的に用いる
酸味や、香辛料を用いると、味のアクセントとなるため、薄味でも気にならなくなります。
【塩分摂取量を減らすコツ3】練り製品や加工食品は茹でる
練り製品や加工食品(ハム・ソーセージなど)は塩分が多い食材です。これらの食材は、一度茹でることで、塩分を少し落とすことができます。
【塩分摂取量を減らすコツ4】低塩分のものを使う
ハーブやスパイスといった塩分を含まないもの、もしくはマヨネーズやケチャップといった低塩分の調味料を使用してください。塩とは別の風味になるものの、料理次第で満足度の高いおかずになります。なお、どうしても醤油や塩を使いたい場合は「減塩タイプ」の商品を使ってください。
【塩分摂取量を減らすコツ5】カリウムを積極的に摂取する
カリウムには体内の塩分を体外に排出する働きがあるため、塩分を控えたいと考えている方にとって重要な栄養素になります。ですので、摂取する塩分量をコントロールするためにも、カリウムの摂取を意識してください。なお、カリウムが多く含まれている食品としては、「ほうれん草」「わかめ」「アボカド」などが挙げられます。
【塩分摂取量を減らすコツ6】既製品や加工食品の使用をなるべく控える
既製品や加工食品には多くの塩分が含まれていることが多いため、使用を控えるようにしてください。たとえば、レトルトや加工肉、外食の食品などは意外にも多くの塩分が含まれています。薄味に感じても、塩分を大量に摂取している可能性がありますので注意してくださいね。
まとめ
糖尿病になっても初期段階では自覚症状がありません。そのため健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということも多々あります。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、「糖尿病かもしれない…」と感じている方は、早めに受診することをお勧めします。糖尿病にお心当たりのある方、あるいは健康的な食事について相談したい方などいらっしゃいましたら、まずお気軽にご相談ください。
当日の順番予約はこちらから
2023.03.01
糖尿病と高血圧の関係
糖尿病・代謝内科に関する記事です。
糖尿病患者さんにおける「高血圧」の頻度は非糖尿病者に比べて約2倍高く、高血圧患者さんにおいても糖尿病の合併頻度は2~3倍高いと報告されています。
この記事では、糖尿病患者さんに向けて「糖尿病と高血圧の関係」を解説していきます。後半部分では「糖尿病と高血圧の予防」について解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【目次】
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
糖尿病の血圧値について
糖尿病と高血圧予防
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
【糖尿病と高血圧予防】運動
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
糖尿病の方がなぜ高血圧になりやすいのか
糖尿病患者さんは「高血圧になりやすい」といわれています。なぜ糖尿病の方は高血圧になりやすいのでしょうか。糖尿病患者さんが高血圧になりやすいのには、以下の理由があげられます。
【糖尿病と高血圧の関係1】高血糖で循環血液量が増えるからです
血糖値が高い状態では、血液の浸透圧が高くなっています。そのため、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓からの水分の吸収が増えたりして、体液・血液量が増加し、血圧が上昇します。
【糖尿病と高血圧の関係2】肥満
2型糖尿病患者さんには肥満が多いのが特徴です。肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されるため、高血圧になります。このようなことから、糖尿病患者さんは高血圧になりやすいと考えられています。
【糖尿病と高血圧の関係3】インスリン抵抗性があるからです
インスリン抵抗性とは、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態です。インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなったのを補うためにインスリンが多量に分泌され「高インスリン血症」を招きます(インスリン抵抗性自体が糖尿病の原因にもなります)。高インスリン血症では、交感神経の緊張、腎臓でナトリウムが排泄されにくい、血管壁を構成している細胞の成長が促進されるといった現象が起きて、血管が広がりにくくなり、血液量も増え、血圧が高くなるのです。
<高血圧とは?>
高血圧とは、運動したときなどの一時的な血圧上昇とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。具体的には「収縮期血圧が140mmHg以上」「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合をいい、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。高血圧は自覚症状がほとんどありません。しかし放置してしまうと心疾患や脳卒中など生命を脅かす病気につながるため「サイレント・キラー」といわれています。高血圧が引き起こす合併症について知りたい方は「高血圧の症状にお困りの患者の方へ」をご覧ください。
糖尿病の血圧値について
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています。高齢者では、それぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。詳しくは「高血圧治療ガイドライン2014」に記載していますので、ご興味のある方はご覧ください。
糖尿病と高血圧予防
糖尿病と高血圧予防に有効な対策は「食生活の改善」と「運動」です。順番にご説明していきますね。
【糖尿病と高血圧予防】食生活の改善
食事は、自分の適正エネルギー量を知り、その範囲で栄養バランスを考えてさまざまな食品をまんべんなくとることが大切です。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、朝食、昼食、夕食の3回ゆっくりよく噛んで、腹八分目で食べるよう心掛けてください。バランスのとれた栄養を1日の必要量のカロリーでとることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の能力は回復されます。
糖尿病と高血圧予防|食事のポイント
糖尿病と高血圧を予防するためには「食べ方」も大切です。食事する際は以下のポイントに注意してください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント1>野菜類から食べる
野菜類から先に食べることで食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、野菜や豆類などで少しお腹をふくらませておくと、肉類やご飯の量を減らすこともできます。ですので、食事をする際は、野菜類から食べるようにしてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント2>ゆっくり食べる
早食いは食べすぎの原因となるほか、急激な血糖値の上昇を招きます。食事をする際はひと口入れたら箸を置くクセをつけ、ゆっくり食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント3>規則正しく3食を食べる
1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。食事を抜いたり、まとめ食いしたりはせず、規則正しく「3食」を食べることを心掛けてください。
<糖尿病と高血圧予防|食事のポイント4>腹八分目
慢性的な食べすぎは、余分なブドウ糖をつくり、糖尿病を発症させる最大の原因となります。いつもお腹いっぱいに食べないと満足できない人は、注意が必要です。とくに脂肪分の多い肉類の食べすぎは、カロリーの取りすぎにつながりやすいので、量を控えてください。
【糖尿病と高血圧予防】運動
運動をすることで、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、インスリンに頼らずに糖分が細胞や筋肉の中に吸収されるようになり、血糖値の低下が期待できます。また、長期的には、インスリン抵抗性を改善させ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールできるようにすることが期待されます。なお、おすすめの運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」です。それぞれの運動については下記をご覧ください。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動1>有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことです。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。有酸素運動は時間をかけて体を動かすため「心肺機能の向上」や「体脂肪の減少」などの効果が期待できます。
<糖尿病と高血圧予防|おすすめの運動2>レジスタンス運動
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操など、標的とする筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います(レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します)。レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。
糖尿病と高血圧予防|運動の頻度について
運動の頻度は「できれば毎日」少なくとも週に3~5回行うのが良いといわれています。しかし、普段から運動に親しんでいない方(または高齢の方)などでは、急激な運動はかえって体の負担となり、思いがけない事故を引き起こしてしまうこともあります。ですので、無理のない範囲で行なってください。運動は定期的に長く続けられることが秘訣です。自然の中で風景を堪能しながらの「ウォーキング」や楽しく続けられる「スポーツ」など、自分にあった運動の方法を探してみてくださいね。
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2022.10.05
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