消化器内科

消化器疾患の症状とは?消化器疾患になる原因と予防方法を解説

2021.05.31

食道や胃などの器官に違和感や痛みを感じて、検索すると「消化器疾患」という病名を目にすることがあると思います。消化器疾患とは、消化器系の病気を指す言葉で、さまざまな症状が見受けられます。この記事では、消化器疾患の症状について解説します。 消化器疾患になる原因や、予防方法などもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

消化器疾患とは?

消化器疾患とは、消化器(胃腸)系の病気のことを指します。

消化器官は口から肛門まで続く器官で、摂取した食物を栄養素に分解(消化)したり、栄養素を血液中に吸収されたり、消化しにくい部分を体から排出したりする役割を担っています。

消化器官に該当する器官は下記の通りです。

・口
・のど、食道
・胃
・小腸
・大腸
・肛門

また、消化器官には消化器の外部に位置している「膵臓・肝臓・胆嚢(たんのう)」なども含まれます。これらの器官に何らかの病気が生じることを、「消化器疾患」と言います。

そして、消化器疾患として多いのは「食道がん・胃がん・大腸がん」と言われています。

 

消化器疾患の症状

上記でお伝えした通り、消化器官に該当する器官・臓器は多くあるため、消化器疾患の症状も多数見受けられます。消化器疾患の症状は、1つだけが起こることもあれば、複数が同時に起こることもあり、人によっては時間差でさまざまな症状が起こることもあります。

消化器疾患の症状して考えられるものを、いくつかご紹介します。

 

腹痛

腹痛は消化器官である、食道や胃に病気が発生したときの症状です。
日常生活で腹痛を感じることはあると思いますが、消化器疾患の症状としては、「締め付けられるような痛み」や「焼けるような痛み」といった特徴があります。

また、お腹全体に痛みを感じることもあれば、一部分だけに痛みを感じることもあり、姿勢や食事などによって痛みが変わります。日常生活で感じている腹痛とは異なる違和感を感じると、消化器疾患の疑いがあると判断できます。

 

胸やけ

胸やけとは、みぞおち(胸骨の下)辺りに感じる痛みや不快感を指します。
胸やけは、消化器官である胃に病気が発生したときの症状になります。
胸やけの症状から考えられる病気は、「十二指腸潰瘍・胃癌・胃炎」などさまざまです。
ただし、消化器官の病気が発生していなくても、胸やけを感じることはあります。

 

逆流

逆流とは、吐き気を感じていないにも関わらず、食道や胃から食べたものが上がっていることを指します。本来、吐き気を感じてから食べたものが上がってくるため、逆流は消化器疾患の症状として考えられます。

 

食欲不振

食欲不振とは、本来人間が感じる「空腹感」が欠如して、食べたいという気持ちがなくなることを指し、「食欲がない」という状態を食欲不振と言われます。食欲不振は、さまざまな消化器疾患の症状として考えられ、炎症や感染症によって発生するケースが多いです。

また、消化器官が「がん」になっているときの症状としても考えられます。

 

吐き気

吐き気とは、嘔吐感やめまい、お腹の不快感などの不快な感覚を指します。
食道や胃などの乱れから吐き気が起こることが多く、アルコールの飲み過ぎや、飛行機などの乗り物酔いなどで感じることもありますが、それらは消化器疾患の症状とは考えられません。
アルコールを飲んでいないときや、乗り物に乗っていない状態で、吐き気が生じると、消化器疾患の疑いがあると判断できます。

 

嚥下(えんげ)困難

嚥下困難とは、食べたものがのどを降りていく途中で詰まった感じがすることを指します。
消化器官に病気が発生していなければ、感じることがない症状だと考えられて、のどや食道などに何らかの障害物ができていると起こります。
嚥下困難の症状から最も考えられる病気が、食道がんです。
食道がんは移転するまで症状が発生しにくい傾向があるため、嚥下困難を感じたときには、すぐに病院に訪れることをおすすめします。

 

下痢

下痢は消化器疾患の1つの症状として考えられますが、下痢だけで消化器疾患を疑うことは難しいです。人によって便の固さや色は異なるため、下痢だけで消化器疾患を疑う必要はありません。
しかし、便の色が「黒い」ときは、消化器官の中で出血が起きている可能性が考えられます。
また、同時に吐き気を感じた場合には、消化器疾患の疑いが強くなります。

その他にも便秘などもよくみられる症状となります。

食道がんになる原因

消化器疾患の1つである食道がんは、喫煙と飲酒が原因で発生することが多いです。
食道がんにおいては、飲酒と喫煙の両方をおこなうことで相乗効果が発生し、がんのリスクが約12倍~13倍になると言われています。
さらに、飲酒に関してはより詳細に解明されていて、毎日540ミリ以上の飲酒を続けた場合の食道がん以外のがん発生リスクは、約1.7倍と言われています。
しかし、食道がんに限っては540ミリ以上の飲酒を続けることで、約5倍もリスクが上がります。
食道がんは、喫煙や飲酒の他にも、口腔内ケアをあまりおこなわない場合や、熱いものの過度な摂取も発生する原因として考えられます。
そして、食道がんは年齢が増加するとともに、発生するリスクも高くなります。50歳以上になると食道がんが発生しやすくなり、70代でピークを迎えます。
食道がんの症状である嚥下困難は、「年齢のせい」と思う方も多いので、見逃さないように注意してください。

 

参照:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」

 

大腸がんになる原因

大腸がんになる原因として考えられるのは、運動不足や野菜・果物の摂取不足、肥満、飲酒などです。大腸がんは、食生活との関わりが深いと考えられていて、牛・豚・羊といった赤身の肉や、ハム・ソーセージなどの加工肉をよく食べる習慣から、発生するリスクが高まると言われています。低繊維・高脂肪の食事、過度な飲酒、喫煙も大腸がんの発生リスクを高めると言われていて、ここ20年で大腸がんの死亡率は1.5倍に拡大しています。

また、大腸がんは家族の病歴との関わりがあるとされています。特に、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多く見受けられるので、注意が必要です。

そして、大腸がんは、初期症状が全くないケースが多く、進行するに連れて、症状が出てきます。

大腸がんの症状は、日常生活で起こりやすい「下痢・便秘・腹痛」などになるため、進行しても気付きにくい傾向があります。大腸がんは、早期で発見することが大切になるので、少しでも違和感を感じた場合には、病院で検査してもらうことをおすすめします。

 

胃がんになる原因

胃がんは長期間にわたる胃の中の環境悪化や、過度な刺激が発生する原因になります。

胃がんのリスク因子(病気を引き起こす因子)は、ピロリ菌感染や塩分の多い食品の過剰摂取、野菜・果物不足、過度な飲酒習慣、大量の喫煙、食事の乱れ、ストレスなどが考えられます。

中でも最もリスク因子として挙げられるのが、「ピロリ菌」です。

ピロリ菌は、胃の中で生き続けることできる「らせん形状の悪玉菌」で、食べ物や水から感染し、除菌しなければずっと生き続けることができます。ピロリ菌は、乳児期に感染していて、衛生環境が悪かった50代以上が保菌しているケースが多いです。

ただし、ピロリ菌に感染した全員が、胃がんになるわけではありません。

ピロリ菌に感染していなくても、塩分の過剰摂取や過度な飲酒習慣によって、胃がんが発生する可能性も大いに考えられます。

そして、胃がんは「大腸がん」同様に、初期症状が全くないケースが多く、進行しても目立った症状が起きない可能性があります。胃がんの症状として考えられるのは、「胸やけ・胃痛・食欲不振・血の混ざった便(黒い便)」などです。胃炎や胃潰瘍でも同じ症状が起こるため、気付きにくい傾向あるため、定期的に検査してもらうことが大切です。

 

参照:ピロリ菌が胃がんの原因って本当?|関係性とリスクについて解説

 

消化器疾患の予防方法

消化器疾患の多くは、生活習慣病との関わりが深いです。

上記でお伝えした消化器疾患になる原因でも、飲酒や喫煙、運動不足、食生活といった生活習慣病に関することが多かったと思います。

そのため消化器疾患の予防として挙げられるのは、生活習慣を正すことです。

生活習慣を正すことで、絶対に消化器疾患にならないわけではありませんが、少なからず可能性は低くできます。消化器疾患の中でも食道がんや胃がんなどは、年齢を重ねるごとに発生するリスクが高くなるとお伝えしましたが、生活習慣は若い頃から正すことが大事です。

そして、消化器疾患は症状だけで判断することが難しいので、定期的に検査をおこなうことも予防の1つになるでしょう。比較的、簡単に検査できるので、生活習慣が乱れている自覚がある方や、消化器疾患の症状が見受けられる方は、早めに検査を受けるようにしてください。

 

まとめ

消化器疾患とは、食道や胃、大腸など消化器官が病気になることを指します。
消化器官は体の多くの器官・臓器に該当するため、消化器疾患の症状はさまざま見受けられます。また、消化器疾患は症状の起こり方もさまざまで、時間差などで起こる可能性もあります。

消化器疾患で多いのは、「食道がん」や「大腸がん」といった死亡するリスクが考えられるものなので、少しでも違和感を感じたときには、すぐに病院で検査することをおすすめします。

そして、生活習慣が乱れている方や、家族が消化器疾患になったことがある方などは、症状が見受けられなくても、病院で検査してもらうことが大事です。